- Amazon.co.jp ・本 (93ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103534266
作品紹介・あらすじ
覚醒する新世界。目覚めつづける女の不定形な日常を描いた短編『眠り』が、21年ぶりの"ヴァージョンアップ"を経ていま再生する-ドイツ語版イラストレーション、日本版のためのあとがきを収録した、村上世界の新しい「かたち」。
感想・レビュー・書評
-
久しぶりに魂が喜ぶ?本に出会えました。
美術書のような装丁で、挿絵も個性的で楽しめます。不眠から広がって行くお話です。
個人的な事で恐縮なのですが…私は事象をなぞるような細かい理屈っぽい描写が好きで、そんな表現から自分の感覚が研ぎ澄まされ、キャッチした物で気持ちが高揚するという[流れ]が好きです。そこに芸術を感じます。
この少し長めの短編小説は、その[流れ]を何度も楽しませてくれました。共感できる箇所も多数で…。何で村上春樹さんはこんなに女性のことがわかるんだろう。気持ち悪いくらいです。
明瞭簡略だったり、言葉に言外の意味を含ませることが少なくなった最近の読み物では刺激が足りないので、とても楽しめました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
装丁と挿画が幻想的で美しいことに感激します。いつまでも眠らない主人公(ちなみに不眠症ではありません)、ありゃ~どうしたの? と思いながらぐいぐい引き込まれてしまう、ある種の狂気に脱帽。とても短いお話なのですが、生きる、ということについて苦悩した哲学的作品に仕上がっていると思います。
「……それでは私の人生とはいったい何なのだろう? 私は傾向的に消費され、そのかたよりを調整するために眠る。それが日々反復される。朝が来て目覚め、夜が来て眠る。その反復の先にいったい何があるのだろう? 何かはあるのだろうか? いや何もない、と私は思う。たぶん何もない。ただ傾向と是正とが、私の体の中で果てしない綱引きをしているだけだ」
あとがきを見ると、この作品は、「ノルウェイの森」の大成功の後、作者が小説を書く気持ちになれなかったころに書かれたようです(それでもこんな短編が誕生するから凄い……)。きっと世間の称賛のみならず羨望やら怨嗟といった様々なプレッシャーやストレスがあったのかもしれないな……。
「これが本来の私のあるべき姿なのだ、と私は思った。大事なのは集中力だ、私はそう思った。集中力のない人生なんて、目だけ開けて何もみていないのと同じことだ」
主人公の危うい苦悩にはらはらとし、その眠ることのない哲学にちょっぴり共感しながら楽しく読了。
そして私はぐっすり眠ります(^^♪ -
(2024/1/20読了)
タイトルを見て、既読の本と思ったけど、読書記録にはないし。で、読み始めたら、読んだ記憶がぼんやりと。でも、最終的にどう言った話だったのか、イラストにも覚えがない。
そして、本書巻末の村上春樹さんのあとがきを読んで納得。「TVピープル」という短編集に収録されていたのだった。成功を収めた後、書けない時期を経て書かれたとのこと。
「TVピープル」を私が読んだのは2014年。このブグログの本棚に収まっているので感想を見たら、今とは違う受け止め方をしていた。
17日間眠らない女性。眠らない日が進むほどに、体からも頭からも余計なものが(余計…)削ぎ落とされていく。
その余計なものは、多分、妻となった者や母となった者の心の奥底にある、そう思ってはいけないモノなのだと私は思う。
男性がこの感情を言葉に表していることは、流石だと思う。
独特なイラストは、本書は実はドイツの版元である美術書を出しているデュモン社から出たモノで、それを日本版にしたからだそう。最初のセミには驚愕した。
同じような装丁で、「バースデーガール」がある。内容は忘れてしまったけど。 -
村上春樹の本てなんでこんなにももう一回読み返したいって気分になってと終わるんだろう
-
村上春樹の、少し長めの短編。力を抜いて読める。
-
定期的に村上春樹を読み漁る時期が来る
-
1980年代に書いた本を、イラストを入れて書き直したという本だというが、私は初めて読んだ。
就寝前に読み始めたが、先が気になり、一気に読んでしまい、その後眠れなくなった。 -
あなたにはあるものが私にはない。でも、それって変?変ではあるけど許容できる?
捉え方一つで無限の可能性になること。
退屈でどうしようもない人生を二度と忘れられない一日に誰しも変えられる。
もう、戻ってこれないかもしれない、それでもやりたいならやればいい。あなたの人生はあなたのもの。 -
素敵だった 前に読んだ同じ短編よりも少しバージョンアップしてる
同じ毎日を繰り返すことの退屈さ、
永遠に続くことなどないのに、一定期間は本心でなくても繰り返すことができる、
そんな自分が分離しているような感情に以前はよく悩まされた
「それではあの時代に、私が本を読むことで消費した厖大な時間はいったい何だったのだろう?」p44