騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103534327

感想・レビュー・書評

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  • 1Q84の穏やか版。
    免色さんが出てくるたびに、
    スプートニクの恋人を思い出す。

    美術館に行くのが楽しくなった。
    ミュシャ展に行った時、ものすごくこの話がちらついた。

  • 『青年時代の私は、フォルムの形式美やバランスみたいなものに強く惹きつけられていた。それはそれでもちろん悪くない。しかし私の場合、その先にあるべき魂の深みにまでは手が届いていなかった』―『4 遠くから見ればおおかたのものごとは美しく見える』

    遠くからきれいなものだけを眺めていたいのなら小説など読まないほうがいいのかもしれない。近寄ってみれば大概のものは凸凹でグロテスクあったり色々なものが一緒くたになって汚らしかったり。人も仮面の下でベロを出してこちらを見ているか、顔だけはこちらに向けながら全く別のことを考えているか。小説はそういうものを全て白日の下に晒してしまう。

    村上春樹に関して言えば、やたらと投げ込まれる性的な描写と、もはやお馴染みになったアンダーグラウンドのドロドロ。それをどう受け止めるかということになるのだろう。それは誰の心にもあるんだよ、という語りかけが、この随分と非現実的な例え話を通して続く。そんなものかな、とも思うし、そんなことはない、とも思う。積極的に見たくはないのに目を逸らすことも出来ない。思考停止ではなく思考過多による機能不全。思考することを可能にした脳の発達によって人間は飛躍的に進化したというけれど、その思考によって人間は不自由でもある。そんなことをぽつりぽつり考える。

    「1Q84」がそうであったように、この物語も閉じているようで何も閉じていない。村上春樹の書く物語に大団円など期待している訳ではないけれど、このあちらこちらに開きっ放しになつている物語を一つ一つ閉じなければ現実の世界には戻れないよと、ミヒャエル・エンデの物語のように問われたら、村上春樹は暗いアンダーグラウンドから戻ってくることは出来ないだろう。もちろん村上春樹の主人公はいつも現実の世界に戻って来る。戻ってきた所が、元の現実の世界かどうかの保証は無いけれど。そして底無しの暗くドロドロとした穴の中に何があるのかも解ったようで判らない。ただ、いつもカエルくんのような存在がいて穴の底に落ち込んでしまわないよう助けてくれる。そんな風にまとめてしまうと村上春樹はいつも同じ話を書いているのだとも言える。

    土地の名前、車の種類、ウィスキーのメーカー、そして、音楽に関わる固有名詞たち。そういうものはどれもこれも実際の名前であるのに、そこから何かが連想されて物語に影響を与える訳でもないところも村上春樹的だな思うところ。それは舞台の小道具のようにさり気なく置かれたという文脈の中に在りながら、かなりわざとらしく存在が主張される。そのイコンの意味するものは何か。これもいつものことだが、その意味を上手く掴み取ることが出来ない。それは、あたかも現実の世界を見分ける符丁であるかのように書き込まれるのだが、シンボリックなものであればある程嘘臭く実在が不確実に見える。例えばハメットの小説に登場する小道具も決まりきっているけれど、存在が否定されるかのように扱われる。そのシンボリックな意味合いは、例えば路地裏に転がるウイスキーの空瓶のように、大概の場合明らかだ。それに比べて村上春樹の小道具は存在を強烈に主張するが故に名詞に張り付いた意味が文脈から逸脱する。例えば白いスバル・フォレスターが持つ意味のように。この固有名詞の意味するものの表層的な印象とその仮面の下にある暗澹たる本質のコントラストと言うものが何よりも村上春樹的であるように思う。

    それにしても、本書も「1Q84」と同じように、次の巻に続くのだろうな。何しろカオナシとペンギンのチャームの物語はまだ開始されてもいないのだから。

  • 村上ワールド!

  • タイトルからイメージしてた話では無かった

  • あまり好きではないけど続きが気になりどんどん読んだ。
    やっぱりよくわからんな

  • オーディブルで聴いてる時、とにかく大好きで、原本を読んでみたらやっぱり好きで、読むのが楽しい。
    しかし最後のエピローグのあたり、「えっ、なにそのまとめ方ダサイ」と思ってしまった次第…
    それに顔のない男も、ペンギンのフィギュアも、どこいったん?
    それはともかくすごく好きな本なのだけど、もしかしたら村上春樹の実力はこんなものではないの?
    これから図書館に行って「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を、読んでみたくてたまらない。

  •  今まで読んだ村上春樹のどの小説よりも楽しく読めた!
     私の脳みそがついに成長して、こういう抽象的で静的なお話を楽しめるようになってきたのかな?
     村上春樹の小説には、内向的で思慮深い男性がエネルギッシュな女性に惹かれ振り回されるという構図が多いと感じて、その感じが好き。

  • (図書館)

    村上作品は自分は波があるんだけど
    氏の年代と自分の歳が合うとはまる感じ。

    昨今の「お話が読みたい」という自分の欲求にはまる作品でした。こういう現実界でありながら微妙にファンタジー、って書ける作家さんて他にいなくないですか?
    そうか、ファンタジーか、と納得すると、いずれ「僕」がなぜかモテるのもなんかわかる気がして、得てして男性諸君はハルキストはあんまり公言しない方がいいんだわと個人の感想でした。

  • 村上春樹読むと、やたら小難しい話しようとしちゃうのどういう現象なんだろ、笑
    語彙というか言い回しというか、春樹節(笑)

  • 村上春樹の作品、はじめて読めた。以前、別作品でチャレンジしたが、わずか数ページで挫折した。今回は、我慢して読み進めるうちに、不思議な事が起こりはじめ、最後まで読めた。続きを読みたい。
    一つの事の表現を、多方面から長々と説明する、作者独特の言い回し。音楽や車、ファッション等、様々な事に詳しい。特に、主人公が絵を描くにあたっての技法、精神等の表現は、素晴らしくよく伝わった。

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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