- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103550075
作品紹介・あらすじ
女がひとりで生きていくのは大変だってわかったのは、三十八歳の時だった――。私が好きだった人たち、私を理解してくれた人たち、そして私と同じ匂いを持った人たちへ――。「ザ・ベストテン」の日々、テレビ草創期を共に戦った森繁久彌、毎日のように会っていた向田邦子、〈私の兄ちゃん〉の渥美清、〈母さん〉の沢村貞子、そして結婚未遂事件や、現在の心境までを熱く率直に、明朗に綴った感動のメモワール。
感想・レビュー・書評
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最初のエピソードが「ザ・ベストテン」で、懐かしさに悶絶。あの番組抜きに昭和の「歌謡曲史」って語れないだろうなあ。そしてあのワクワク感や信頼感は、黒柳さんと久米さんの司会コンビがあってこそのものだったんだなあと今更ながらに思う。
この冒頭の章は「私の遅れてきた青春について」というタイトルで、2013年に亡くなった、「ザ・ベストテン」のプロデューサーだった山田修爾さんの思い出が綴られている。この後の章も、ほとんどが既に鬼籍に入った懐かしい人たちを偲ぶ内容となっている。
親交のあった向田邦子さん、芸能界での「母」沢村貞子さん、「兄」渥美清さん、森繁久弥さん、賀原夏子さん…、どのエピソードも故人の人となりを生き生きと伝えるものばかりで、非常にひきつけられて読んだ。
特に強い印象を受けたのが、沢村貞子さんの生き方と死の迎え方だ。その人生については何かで読んだことがあったと思うが、身内のように親しんでいた著者が語る姿は圧巻の潔さで、こういう人もいるのだと胸をつかれる。
著者が既に八十代であるとはちょっと信じがたい気がする。大事にしてきた人たちは次々に亡くなり、タイトルの通り「ひとり」取り残されているという寂寥感が全体を流れていて、切ない。九十歳をこえた佐藤愛子先生が「長生きをするとは、話の通じる友人が誰もいなくなること」と書かれているが、ここにもよく似た寂しさがある。私にとっての黒柳さんはいつまでも「ザ・ベストテン」のタマネギおばさんのままで、時折テレビで見る姿もあんまり変わっていないように見えるのだけれど。
とは言え、本書はジメジメした感じのものではない。かつて大ベストセラー「窓ぎわのトットちゃん」を読んだときも思ったが、黒柳さんの文章ってほんとに湿り気がなくて、芸能人臭が皆無だ。テレビでのおしゃべりとはまた別の魅力がある。
青森に疎開していたとき、汽車を待つ駅で隣り合わせた行商のおばさんが、シラミだらけの小さな女の子だった黒柳さんを気の毒がって、凍えた手を一生懸命さすってくれたそうだ。そのおばさんの手も「ヒビとシモヤケと黒い絆創膏でぐちゃぐちゃだったのに。それでも親切にしてくれようとする人を、あの頃、沢山見てきた」
疎開する前、「スルメの足を一本くれるというのに惹かれて」出征する兵隊さんに日の丸を振り万歳を言いに行ったことが、ずっと心の傷になっている、と書かれている。あの兵隊さんのうち何人が無事に帰ってきたのだろうか、と。華やかな世界に身を置いても、こうしたことを忘れなかったのが著者の強い芯になっているのだろう。
ヴァイオリニストを父に持つ山の手のお嬢さんが天真爛漫なままで大人になった、というイメージをずっと持ってきたが、これを読んだだけでも様々な苦労があったのだとわかる。著者はそれを声高に語らない。大きな美点の一つである楽天性で、くよくよせずに歩んできた人生は、愛し愛された人との思い出でいっぱいなのだろう。希有な人だと思う。 -
黒柳さんのドラマはいまだに見た事がない。
私の認識は「ザ・ベストテン」からだったし、「徹子の部屋」「世界ふしぎ発見」の徹子さん。
でも凄い大御所さんだし、内容のように有名な俳優さん達が亡くなってしまう中でのタイトル通りの「ひとり」になってしまった。
NHKに入ってから今までの徹子さんの人生はメディアの歴史と一緒というか、本当に凄い。
まだまだ元気で頑張って欲しいです。 -
なんとなく、人生捨てたもんじゃないなと思った。
黒柳徹子は芸能人という感じがしない。なんでもない一般人のぼくでも、会えば普通に楽しく話をしてくれそうに思うのだ。天然不思議ちゃんのトットちゃんがそのまま大人になって、好奇心のおもむくまま、好きなことをして、好きなひとと遊んでいるようにみえる。そう見えるけど本当は、というのが普通の大人だけれど、黒柳徹子に限ってはそのまんま、という気がしてならない。
思い出話に登場するのは久米宏、向田邦子、森繁久彌、沢村貞子、渥美清といったそうそうたるメンバーだが、たぶん彼女は別の業界に入っても、有名無名関係なく同じように豊かな仲間たちを作っただろう。黒柳徹子が人に好かれる才能の持ち主(こういう邪気のない人を嫌うのは難しい)だというだけではなく、人を好きになる(そのために森繁久彌を叱ったりする)才能の持ち主だからなんだろうなと思う。
久米宏を除けば、語られる仲間たちのほとんどがすでに鬼籍に入っている。夢中で遊んでいて気づいたら、宵闇が近づく広い公園に一人で残されている感じ、と黒柳徹子は言う。きっとトットちゃんはやがて、ああ、よく遊んだ、と暗くなる空を見上げながら、おうちに帰るのだ。
そういうの、悪くないよな。 -
黒柳徹子さんのエッセイ。ご自身の(身内以外の)身近な人々との交流を回想している。
黒柳さんという有名人だからこそ興味を惹く部分もあるけれど、そうじゃないとしても昭和の良き時代を回想した読み物としてホッコリとして良かった。
今、昭和の良き時代と書いたけど、徹子さんをはじめ登場する人たちのキラキラした様子が目に浮かぶのでそんな表現にした。実際は戦中、戦後でいっぱい苦労もしただろうに、その中でも楽しかったことや、苦しかったことも良い思い出に昇華させて表現しているところが素敵で。
そんなキラキラした時代と共に生きた人たちのほとんどはなくなってしまい、見送ってきた黒柳さん。
誰しもそういう時を迎えるのだろうけれど、胸の詰まる思いがした。
でも後味はいい。徹子さんならではの感性と文章のおかげなんでしょうね。 -
私にとっての黒柳徹子さんは、ザ・ベストテンや徹子の部屋、世界不思議発見等で、早口で話す人というイメージしかなかった。
この本を読むまでは、時々舞台に立っていることは知っていたが、こんなにも真摯に女優業を全うしていることを知らなかった。
また日本にパンダが来る前から研究していたなんて、本当にびっくり。
いつもお見かけしていても、意外と知らないことが多いのだと改めて認識した。
また、たくさんの懐かしい人達が登場し、大好きな沢村貞子さんや向田邦子さんの話を読めたのは本当に嬉しかった。
今では考えられない懐かしく優しい良き時代が自分の中でよみがえり、幸せな気分になった。
2024/02/28 23:00
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黒柳徹子さんがNHKに入ったきっかけ、その後の仕事のこと、さまざまな人との出会いのことなどが読みやすく書かれている。
私が黒柳徹子さんの番組で親しみがあるのはやはりザ・ベストテン。久米宏さんと絶妙なコンビだった。毎週楽しみにしていたのを覚えている。そんなベストテンの裏話も入っています。
年齢を重ねて高齢になると、周囲の親しかった人達が亡くなっていく。黒柳徹子さんも家族のように親しかった人々を見送ってきた。それはどんなに寂しいことだろうと考えてしまいました。
視聴者から見ても、バイタリティがあって個性的でお洒落で、私のような若輩者が言うのも失礼かもしれないけれど、存在自体がとてもキュートな黒柳徹子さん。これからご健康でご活躍されますように。 -
「トットチャンネル」が面白かったから借りることにした。
すごく文章が落ち着いていて、でもどこか寂しくしんみりとしている。
そりゃそうで、亡くなった友人との思い出話が多いからだ。
でもまだ徹子さんはまだまだお元気でインスタを始めている。
いくつになっても挑戦できるのは、徹子さんの性格もあるけど、愉快な友人たちから得たものが多いのではないか。
死ぬのも悪くない。たくさんの人が待ってる。徹子さんの場合。
そう思う。 -
『トットてれび』視聴の影響で読みました。黒柳徹子さんに特別興味があったわけではないのに文章を読み進むうちにどんどん惹きこまれてしまった。
黒柳徹子さんて好奇心旺盛で素直でどんなに物事に慣れてもすれるということがないひとで、そんなところに惹かれました。
タイトル通りトットちゃんの親しい人達が次々と鬼籍に入りそれを見送るエッセイなのでしんみりすることも多かった。でもなんて豊かな人間関係なのだろう。
この時代感を実際知っている読者は懐かしさも感じるのでしょうか。自分は残念ながら知らない時代の話が主なので活気が煌いていてやがて過ぎ去るさみしさをぼんやりと感じました。
黒柳徹子さんの他の著書も読んでみたい。
あと。向田邦子さんの著書を読んだことがなかったので、これを機会に読んでみようと思いました。 -
子どものころ、『ザ・ベストテン』を見て
黒柳さんが大好きになった。
高校生のころ、『窓ぎわのトットちゃん』を読んで
黒柳さんみたいな大人になりたいと思った。
そして今、この本を読んで黒柳さんになんだかさようならを言われているような気がして、
淋しくなってしまった。
黒柳さんが大好きだったのは
『この人はきっと本当のことしか言わない』と子ども心に思ったから。
黒柳さんのようになりたいと思ったのは
黒柳さんが子どもの頃の気持ちを少しも忘れずに大人になっていたから。
この本にはそんな思いを裏付けるようなエピソードがたくさん出てきました。
ちゃんと自分の頭で考えて行動すること。
人にも自分にも正直に嘘をつかず生きること。
人を差別したりせず、思いやりと愛情を持つこと。
本当なら人として当たり前ことのはずなのに、
今こんなことができる大人が世の中にどれだけいるんだろう。
黒柳さん、『ひとり』なんていわないで
まだまだ人生を謳歌してくださいね。 -
長生きって心が強くなくちゃできないなって思った。
黒柳さんが過去に関わった人との楽しい思い出話は『へえ〜、あの人とそんな繋がりがあったのか〜』『あの人はそういう人だったのか〜』と楽しく読めるけど、その分その人を亡くした時の話は切なすぎる。それを何度も何度も繰り返して今の黒柳徹子がいるんだなぁと思うと尊敬に値すると言うか…。
黒柳さんは常に何か意味があって行動する人だなぁと思った。パンダを好きになった理由、ユニセフ大使をするようになった理由、NHKを受けようと思ったきっかけ、38歳で一度仕事をリセットしようと思った理由、徹子の部屋をするに当たって自分なりに決めたこと、髪型を玉ねぎにし続ける理由…。
どれも、なんとなくとか、流れで、とかそういうのがなくて、常に明確なのが読んでて凄く心地いいし納得がいくし、その全てが黒柳徹子という人を作っているんだなーと思った。
盟友が次々といなくなるのは辛いと思うけど、どうかいつまでも元気で長生きして欲しいと思う人です。
本当に彼女の生き方も文章も魅力的で私もとても魅かれます。
いつもお前は幾つだ...
本当に彼女の生き方も文章も魅力的で私もとても魅かれます。
いつもお前は幾つだ三十は鯖読んでるなといわれるんですが、たまたま私は記録媒体で「バス通り裏」や「若い季節」や「魔法の絨毯」や「1丁目1番地」や「夜の仲間」などを幼いころから見たり聞いたりしていて、黒柳徹子はとても身近な存在なのです。
立て板に水の彼女が、入れ歯のせいで活舌がわるくなったのが無念でしかたありません。
いつもタイムラインでお名前を見ているので、言われてみればご無沙汰しているかも、という感じです。
「バ...
いつもタイムラインでお名前を見ているので、言われてみればご無沙汰しているかも、という感じです。
「バス通り裏」「若い季節」はタイトルのみ知ってますが、「魔法の絨毯」?「夜の仲間」? 私のほうが絶対年上だと思うんですけどねえ。
オマケに、幼いころから? どういう環境で育たれたのか興味津々です。
あの早口で、あの聞き取りやすさ、きれいな言葉遣い、まったくすごい人ですね。