月日の残像

著者 :
  • 新潮社
3.24
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103606086

作品紹介・あらすじ

消えようのない記憶を刻んでいった人々がいよいよ鮮やかに甦る――。疎開先で亡くなった母、早世した四人の兄たち、後妻としてやってきて、三年で去っていった理知的な義母、若き日の松竹撮影所時代の思い出、木下恵介、寺山修司、向田邦子ら忘れえぬ人々。時間の堆積のなかからうかびあがる苦さと甘やかさのないまぜになったさまざまな記憶を練達の文章で描きだす、大人のためのエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 新潮社の季刊誌「考える人」に9年にわたって連載された35篇のエッセイをまとめたもの。
    テレビドラマの脚本家として高名な著者の晩年の心境が過去の思い出や交流関係を素材として語りかける。
    松竹映画からテレビドラマへと師匠格だった木下恵介や大学時代の盟友寺山修司、同時代の脚本家向田邦子、市川森一を扱ったものが印象に残った。
    ただ何処か欧米文化に引きずられた世代の古さを感じてしまう点や文章の回りくどさが折角の味わいを減殺するような印象を残すものもあって初めて著者の著作を読んだものの老いの混濁した痕跡が残滓のように思えたのは残念だった。

  • 2023.12.3市立図書館
    訃報を聞いて、追悼読書用に。「考える人」に連載されたエッセイ(2005年冬号〜2013年夏号)の書籍化。脚本を書いたドラマや小説にはまったく縁がなかったが、目を向けていること考えていることはとても興味深い(ということを、頭木弘樹さんの本にたびたび引用されているところから知った、そのひとつ、車中でバナナをすすめられて食べなかったエピソードもこの本で改めて読めた)。
    木下恵介の葬儀の後の話は怪談のようでおどろいた。結核で早逝した兄の恋人の話を始め、事実は小説より奇なりといいたくなる話も多く、中盤の「女と刀」あたりから俄然おもしろくなった。

    この人の文章は急いで読めるものではないから文庫版(新潮文庫2016)でも手に入れようかと思ったのだが、店頭在庫もないしウェブストアでの扱いもないようなので困っている。時間切れで半分ちょっとまで読んでいったん返す。

    2024.3.1市立図書館再借り出し
    最後まで読み終えた。亡父が山田太一のドラマをみていたかどうか知らないけれど、根のところの考え方などはけっこう近いのではないかなと思えた。

  • p9 フェリーニ 成功と虚栄は人間を弱くして、未熟なまま年をとらせる

    p15 死は当人にはすべての終わりだが、周囲にはその人ぬきの新しい世界の始まりだ

    p167 木下恵介 浜松に記念館

  • 2013年発行。9年間にわたって季刊『考える人』に連載されたもの。助監督時代、木下恵介の話などから、「食べることの羞恥」「忘れた自分」といった日常のこと、「オスマン・トルコ軍楽隊」などの旅行記、向田邦子等著名人との思い出などいろんな切り口でのエッセイ。山田太一ならでは。山田太一は常識を見返す柔軟の観察力と視点が好きだが、このエッセイにも散見できる。もっとも活字なのでもっと鋭いものを期待しなくもなかったが。

    小道具さんら職人が好きで仲良くしていると、別の助監督からたしなめられる。

    『君はいなに監督になるのだろう。彼らと親しみすぎてはいけない。命令する立場になるのだ。いまのままだと、彼らは君を軽く見るだろう』

  • 「君を見上げて」「丘の上の向日葵」など楽しく読みました。1934年浅草生まれの山田太一さん、今年82歳、「月日の残像」は2013.12発行、著者79歳の作品です。季刊「考える人」に9年間にわたって連載したエッセイの全部、35作だそうです。幼少時からの著者の半生が切れ味のある筆の滑りで描かれています。再読しました。
    山田太一 著「月日の残像」、2013.12発行、エッセイです。次の2点が心に留まりました。①七十歳になっても、二十代の頃といくらも変わらない内面で街を歩いている自分に気づくことがある。私もそうですw。今、気づきました。肉体は年老いているのに~。②「死んだあと、その人間のことを書いたりしゃべったりする奴は、ろくなもんじゃない」木下恵介さんの言葉だそうです。いい人だったなと思い出を語るのはいいと思いますが。今、高倉健さんのことを語ってる小田貴月さんはどうなんでしょうね・・・。

  • 2015年10月26日読了

  • 2015.10.2
    扱うジャンルが馴染みのないものばかりで、最後まで読めませんでした。

  • 平松洋子さんと小川洋子さんの「洋子さんの本棚」で紹介されていた。
    声に出して言うほどでもない自分が感じるちょっとした違和感、についてうなずける箇所が多々あった。
    三島由紀夫、向田邦子、ポルトガルの詩人、フェルナンドペソアが度々出てきた。向田邦子さんの「阿修羅のごとく」のあのメインテーマはトルコの軍楽だそうだ。
    かつて夫婦だった沢村貞子さんと藤原釜石さんに共演を依頼して受けくださったが、顔合わせの時にほとんどお互いを見ることない姿から、「ひとの過去を軽くみるなよ」とたしなめられているように感じたというのも印象的。
    日記代わりにつけていた読んだ本からの抜書きも、山田さんらしいと思った。

  • この本を持ち歩くときは、メモとか、まあ写メとかでもいいかもしれないけど著作権の問題などがあるかもしれないので、せめて付箋も一緒に持ち歩くといいかもしれない。山田太一さんがこれまでテレビで描いてきたような、人間のやさしさやかなしさやいとおしさ、可笑しみなどが詰まったこのエッセイには、心の底にしみわたる、易しく優しいことばや文章がたくさん書かれているから。山田さんが引用しているものも含めて。またそのことばや文章の登場のしかたがニクいから、ついうるっときてしまう。ウマい。

    生きるってかなしいけどやさしいなあ、と思える1冊、また、同じように感じてほしい人に読んでほしい1冊でした。文章のリズムもたまらなく心地よい。

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著者プロフィール

1934年、東京生まれ。大学卒業後、松竹入社、助監督を務める。独立後、数々のTVドラマ脚本を執筆。作品に「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」他。88年、小説『異人たちとの夏』で山本周五郎賞を受賞。

「2019年 『絶望書店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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