人麻呂の暗号

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103719014

作品紹介・あらすじ

人麻呂を韓国語・中国語で読むと…。そこには全く別の恐しい意味が隠されていた。-千有余年の封印を解いて今明らかにする歌聖の出自と死の謎。文学史を覆す衝撃の書。

感想・レビュー・書評

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  • 32583

  • この書籍は、日本の古墳から日本古代の文学書の一つである「万葉集」などから読み解く話です。

  • 面白い書だが、信憑性のほどは如何なのだろう。他の、奈良時代の書や木簡など、あらゆる文献の解説が加わって始めて信憑性を保ちうるような気がする。

  • 質の悪い神々の指紋というところでしょうか。
    万葉集の歌の中で柿本人麻呂の歌だけに、特殊な暗号が含まれていましたという本です。
    韓国語、中国語で読むとそれがわかると言う話までは理解もするんですが、その展開のさせ方がひどい。音が同じ文字や言葉を探して、自分たちがこう読めるという意味を探して、無理やり組み立てたという印象です。もうちょっと、それっぽく探してきて欲しいところです。
    現状、朝鮮語の音を表記する方法がハングルしか無いでしょうから、ハングルで表記するのもわからないでも無いんですが、ハングルが成立した時期って柿本人麻呂生きてましたかね?と思ったりも。
    柿本人麻呂の歌については全部を解説してるわけではなく、都合のいいところだけ抜き出して居るような感じでした。全部の歌を載せて解読なんてやると、ページ数いくらあっても足りないとは思いますけどね。
    神々の指紋系ってもうちょっと系統立てたり、ちゃんと引用するものだとは思うんですが、最後に山部宿禰赤人以外の歌は、抜き出しの引用のみでしかなく、ここにもこうあるよと記載があっても二文字だけ引っ張られても何のことやらになってしまいます。
    あと、よくわからないんですが、文章の作り方なのか、表現なのか、読んでてスラスラ読めず妙にイライラする感じでした。
    とりあえず一番気に食わなかったのが、先生をアガサ・クリスティーに例えて、アガサと読んでいるところ。だいぶ、アガサ・クリスティーに失礼なんじゃないかと思います。
    解読できていないモノなのに、さも解読できているかのようにヒントを与えて、さあやってみろとかアガサ・クリスティーがやりますかね?本文にも信じて痛い目にあったようなこと書いてありましたしね。
    神々の指紋系書籍としては、ひどいものでした。

  • (*01)
    本書の評判は聞き及んでいたので、好意をもって読むように努めた。内容の大半はどうともない創作であるが、何点かの価値は見出すことができた。
    立場や方法として、アカデミズムへのカウンターとしてトラカレという通称で示された組織による、こぼれた知の回収に、へえ、と思った。この組織は、本書から推し量るに、知を欲望する人が隔てなく集まり、茶を飲み菓子を食べ食事を執りながら雑談を交え、そういった食餌とともに辞典や参考書から知を拾い、オープンに論をアーキテクチャするサロンの様に思えた。中には、祭酒やアガサと呼ばれるプロモーターともファシリテーターとも言える導師がいて、外部講師による関連インデックスの講義も催されているようであった。1980年代にこうした知の雑な方法(*02)が現れてきた事については、その起源や背景を色々に考察することができよう。
    このトラカレによるワークショップの成果が本書であるが、アカデミズムに現われた論の批評として万葉集をめぐる知を相対化する試みではなく、既往とは一線を画し、素人大工の様な不細工さで孤立した感も否めない。後半は特に危うい立論での断定的な物言いが強く、ロマンスの風情を醸している。
    万葉集の一次テクスト(二次テクスト?)(*03)である白文に、漢語朝鮮語日本語のそれぞれの辞書でアプローチして咀嚼して捻出した素材そのもの(*04)は、かなり面白いが、この素材を組み立て歴史フィクションとなす際に、稚拙が現われ、見事に柿本人麻呂が乙女な幻想世界に右往左往している様は滑稽であるし、トンデモと言えるのかもしれない。権力や哀史を絡めた死や別れの創作には、何も感じるところはなかった。

    (*02)
    本書の中で、三回ほどこの組織の方法が迫害される箇所が行き合う。一つは第三章で万葉学者のN氏にインタビューしたときで、意図した対話を築けていない。一つは第四章で公州のハルモニにかんざしを見せてもらおうとするシーンであり、このコミュニケーションは失敗している。一つは第五章に伊勢を訪ねた際に出会った万葉愛好家に朝鮮語による読みを尋ねたシーンであり、これもディスコミュニケーションに陥っている。このフィールドワークやインタビューの断絶は、通例の研究ではカットされるシーンであるが、この組織が採用する方法では採録されている。この方法の新奇性とともに考えたい問題である。

    (*03)
    万葉集の白文とその訓については、十分に研究されてきたところと思われるが、本書が指摘するように、そこには可笑しな訓が散見され、これらのおそらくは誤った訓の苦々しさをみるだけでも、万葉集は楽しい読み物である。ひとつの無理は、もちろん五七五七七の和歌調に整えようとしたところにある。万葉集にも音律はあったであろうが、この音律を和歌に嵌め詠むことのナショナルな心性には涙ぐましい努力が見え、万葉集のテクストを歪める方へと傾いた。もちろん無理筋な訓みにも万葉の本来の読みは保存されたであろうが。

    (*04)
    第二章の枕詞の解釈は、説得的であり、おそらくここに書かれた通りであろうと思われる。フレーズを繰り返すリフレインが枕詞の無意味や難解を導いているのだと思う。朝鮮語で読むことそのものも方法論としての可能性はあるが、通読できる方法ではないだろう。第一章で示された多言語な情況はあったと思われ、だからこそ朝鮮語の音「だけ」でなく、朝鮮語の音「も」使われたのであろう。現代のヒップホップのリリックが駄洒落ないしは掛詞や韻を多用すれば、そこには聖俗古今東西さまざまな言語が集うのである。

  • (2014.03.02読了)(2014.02.21借入)
    【日本の古典の周辺】
    「水底の歌」梅原猛著、を読んだので、ついでに人麿についての本を読んでみようと、図書館の蔵書検索システムで検索してみたら、この本がヒットしたので、借りてきました。
    『万葉集』は、万葉仮名と呼ばれるものですべて綴られています。万葉仮名とは、漢字を片仮名代わりに使用したものです。したがって、漢字は、意味を表さず、音のみを表しています。とはいえ、そのような使い方をされているのは、万葉集全20巻の後半部分といわれます。柿本人麿の歌が含まれている最初の方の巻では、ある程度漢字の意味も考えた上での使い方もあるようです。
    この本は、韓国での音や中国での元の意味などを調査しながら、初期の万葉集の歌を読み解いてみるとどうなるかを試みたものです。
    そうすると、語呂合わせの意味しかなさそうだった、枕詞は、意味を持ったものになり、人麿の歌も表面上の内容とは、別の意味を暗示しているというふうなことが見えてくるというのです。
    とんでも本として、楽しむ読み方もあると思いますが、まじめに付き合うには、韓国語を勉強しないと、いけないのではないでしょうか。
    逆から行けば、韓国語を学んでいる人にお勧めの本かもしれません。
    万葉集を読むときは、通常、漢字かな交じり文に訓み下されたもので読んでいるので、もとの万葉仮名での歌を見ることはありません。
    どう訓み下したらいいのかわからず、いろんな訓み下しが行われている歌もあるようです。ひょっとして、和歌とは違う形式の歌も混じっているのではないでしょうか。
    この本では、通説の訓み下し文は、そのままで、その裏に隠されている意味を解き明かそうとしています。是非、新しい訓みき下し文を提案してもらえないだろうかと思いながら読んだのですが、それはありませんでした。
    収穫は、柿本人麿は、帰化人だという説があるということぐらいでしょうか。

    【目次】
    第一章 開かれた古墳・万葉集
    第二章 枕詞が解けた
    第三章 多言語を操る歌詠み
    第四章 人麻呂は告発する
    第五章 死のジグソーパズル
    第六章 人麻呂の遺書
    アガサからの手紙
    後記

    ●『古事記』『日本書紀』(19頁)
    自分たちの出自も、ことばも、何もかも、もとからこの日本で生まれたのだと主張するようになる。それが『古事記』『日本書紀』の編纂の目的だった。それ以前にもさまざまな文字の表現で、多くの文献が編まれていたに違いない。だから、新しく覇権を握った支配体制がまっ先に行ったのは、他の系統の出自をわずかでも暗示する文献をきれいに抹殺することだったろう。『古事記』『日本書紀』という支配者の文献が、現在最古ということ自体、この間いかに多くの証拠湮滅、焚書があったかを思わせる。
    ●枕詞(46頁)
    枕詞イコール被枕詞
    ●人麻呂は安産の神(148頁)
    ヒトマロ、ヒトマル、ヒトウマル(人産まる)という連想で、安産の神として祀られている

    ☆関連図書(既読)
    「万葉集入門」久松潜一著、講談社現代新書、1965.02.16
    「万葉集」坂口由美子著・角川書店編、角川ソフィア文庫、2001.11.25
    「水底の歌(上)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
    「水底の歌(下)」梅原猛著、新潮文庫、1983.02.25
    「悲歌 大伴家持」田中阿里子著、徳間文庫、1991.04.15
    (2014年3月5日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    人麻呂を韓国語・中国語で読むと…。そこには全く別の恐しい意味が隠されていた。―千有余年の封印を解いて今明らかにする歌聖の出自と死の謎。文学史を覆す衝撃の書。

  • 当時中学生だったのでちょと難易度が高かった。
    違う言語にしても意味があるっていうのが新鮮な驚きでした。

  • 「ことばあそび」というキーワードが当時の自分のニックネームというか枕詞と一致していて驚く。時代に「もし」はありえないが、もし、私の大学時代がバブル時代でなければ、もし私がその時このグループの存在を知っていたら、もしかしたら「私が」藤村由加だったかもしれない。

    「枕詞」とか「かけことば」について、日本で教育を受けた人は知っていると思う。また、一つの漢字が全く別の意味を持っている、連想させるということもも日本語をある程度習熟している人々には理解されると思う。そういう「ことばあそび」が大好きだったし、自分で言うのもなんだが、正直、秀でていたと思う。
    しかし「藤村由加」になり損ねた理由は15年経った今だからこそ判る。
    (2004.9.25)

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