ソロモンの偽証 第I部 事件

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (741ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103750109

感想・レビュー・書評

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  • お、お、面白い~~!!なんだこの物語は~~!(*^_^*)




    冬のある朝、中学の校舎から転落して死んだ中学二年生の男の子が発見された・・・。

    学校を舞台にした死の話、とくれば、苛め?事件?と、それだけで嫌な思いにとらわれ、また、学校内部のヒエラルキーとか、隠匿体質とか、事なかれ主義とか、勘違い野郎とか、ただの野次馬とか、とにかく心騒がす要素が大きくて、なんとなく避けてきたところがあるのだけど、

    さすが宮部みゆき!

    そんな通り一遍の事象では考えられない、人間というもの、何かことが起こる時のどうしようもない流れというかタイミングというもの、を奥行き深く描いていて、ひたすら読ませられた。

    悪意の人や気持ちが、意識的だったり無意識だったりの形で種々提示されるのだけど、それが腐臭を放ってはおらず、むしろ、とても悲しいもの、身近なものとして感じられるところも非常に面白く読めた。

    物語の筋のために、やたら迷惑な人を配置してそれに翻弄される形で話が進んでいく、という小説は多々あるけれど(私はそれがすごぉ~~くイヤ・・)宮部さんの描く迷惑なヤツにも背景があり、本人なりの正義もある、という・・・。そんな人間を、ただ包み込むのではなく、また、糾弾するだけでもなく、“人間”を描いている技量に唸らされた。

    主要となって動いている生徒、先生、保護者、警察、マスコミの人間だけでも、かなりの人数なのに、きちんと描きわけられいて、普通、その他大勢の扱いになりそうなちょっとした出番の人でさえ、気持ちの奥にある逡巡や喜び、畏れをきちんと描いているところには、ホント、舌を巻いてしまう。

    そして・・・イヤな奴だなぁ、と思って読んでいると、いつの間にか、これって私も持っている要素じゃない?もしかして、私の無意識の言動にこんな悪意が見え隠れしてて、他の人たちにはダダ漏れだったの?なんて、とても恐ろしい想いにかられたり、逆に、地味な存在の登場人物たちにある時瞬間的に光が当てられ、人間っていいよね、と思わせられたり。

    これは、第Ⅰ部でもうすぐ第2部が発行、来月には第Ⅲ部、と、続けてとても贅沢な読み方できそうなのも嬉しい。

    どんな結末が待っているのか、少年の死の真相はどこに隠れているのか、この中学はどうなるのか、楽しみに待ちたいと思う。

  • どどーんと三部ともいっぺんに図書館の順番が来てしまった。
    第一部を半年待ったのだが、予約数を見るに、どうも第一部でやめてしまう人が多いようだ。
    巻数順に貸してもらえるようお願いしていても、結局これだけの分厚い本が三部ほとんど同時にやってくるので、図書館の方に言わせると「ソロモンは苦情が多い」とのこと。(いや、私は苦情なんて申していませんよ(^_^;)びっくりしただけです)
    「(年末年始だから特別に貸出期間が)3週間ありますから頑張ってください」と励まされてお借りしてきた。

    図書館で借りずに買えば期間を気にせずゆっくり読めるじゃないかという考え方もあるとは思うのだが、私には、購入した本はその無期限状態にホッとしてしまい、ほとんど積読状態にしてしまうという良くない傾向がある。
    だからこのような分厚い本こそ期間限定が丁度良いのだ。

    さてそうやって読み始めた本作。
    まず、人物相関図があって本当に助かる。
    最初の百数十ページまでは普通に読み進めた。

    が、柏木卓也の兄宏之の心理描写から私は一気に引き込まれた。
    あとは野田健一君の辛い気持ちも痛いほどよくわかる。
    私はこれをサスペンスやミステリーだとは捉えていない。
    ただもう本当にひたすら人間の心理描写がうますぎて、それを味わうために一言一句飛ばさず噛みしめながら読んだ。

    今後これが模擬裁判という展開になっていくのには、ついていけるかどうか自信がないが、とりあえず第一部は面白かった。
    年越しは第二部でということになりそう。

  • 文庫換算で6冊分にもなる大作、
    長い休みの楽しみのはずが、あまりに面白くて読むてが止まらない。

    それぞれの思いが交錯しまくる1巻。
    真実は、どこにあるのか。

  • 先月のオーディブルで無料になっていたので、せっかくだからと思い、第一部上巻を購入したら、想像以上に引き込まれて、けっきょくこれ以降の分もすべて購入して現在読んでいるところ。

    一人の自殺がもたらす学校内の混乱は波紋が広がるようにじわじわと中学生の心を飲み込んでいく、その様子がすごく興味深かった。中学生という揺れる年頃だからこそ絶妙な無関心さと関心の強さが描けるのかなと思った。

  • 中学生一人の死亡というネタから、話が展開していく。
    う~ん、長いなあ、と思いながらも、だんだんと面白くなってきた。

    以下は、2017年6月10日追記。
    NHKテレビを見ていたら、朝ドラの「ひよっこ」に出ている藤野涼子という17歳の女優は、映画「ソロモンの偽証」の作成に際して、オーディションで主役を勝ち取った人物のようである。

  • 第3部が出るまで我慢しようと思っていたが、ほんの少し読み始めたら止まらなくなってしまった。続きが出るのが1ヶ月先なのがもどかしい。それまでにもう一度読み返そう。

    携帯電話が出てこないのだ、というのが第一印象だった。舞台が1990年だから、携帯電話は普及していないのだ。かわりにポケベルが登場するが、中学生はまだポケベルを持っていない時代である。
    そのことが妙に懐かしさを醸し出している気がした。

    宮部みゆきの小説に登場する少年少女たちはみな大人びている。年齢相応に幼い者もいるが、中心になる子たちはみな非常に聡明で真摯である。その聡明さは己の醜さにも立ち向かうから、時として胸を刺すような痛みを読んでいる私につきつけてくる。

    この事件編は本当に序章に過ぎない。ようやく手札が揃ったというところで、これから物語は大きく動いていくのだろう。
    早く続きが読みたい。

    宮部みゆきの作品を読むたびに思う。彼女と同時代に生きていられてよかったと。彼女の作品を読むことは、私にとっての最高の幸せなのだ。

  • Audibleで読みました。
    3部作のまず序。
    メインとなる飛び降り事件の顛末に沿って、登場人物の背景や舞台となる中学校の風景が語られます。
    1部を貫くテーマに学校の隠蔽体質がひとつあると思いますが、自己の保身から生じるものと、一方で生徒を思いやる余りに結果的に硬直的になってしまうもの、そしてそれらが意図的かどうかが繊細に書き分けられているように感じました。
    たとえば薄暗い曇天の空でも、雲間を見ればわずかにグラデーションがあるように、善悪一方に偏らない登場人物たちの揺れる心のようなものを映し出しながら、次々と連鎖する事件にドキドキしながら読みました。

    もうひとつ、中学生の一人ひとりまでもが様々な内面をもって描かれていて驚きました。子どもと大人の両面を持った14歳という人間が、宮部さんの筆力にかかればこれほどに深味を持つものか。自分を振り返れば、こんなに深く物事を考えたことはなかったなと恥ずかしくすらなりました。
    新人類というフレーズには失笑させて頂きました。

  • 再読です。 14歳の男子生徒の死。そこから波紋のように広がる風評。子どもたちの間に、関係者の間に...それぞれが、それぞれの思いの元に事件を見つめる中で、目を背ける者、正義を振りかざす者、正面から向き合おうとする者etc そうしている間に、第2、第3の事件が起こり、いやが応にも大きなうねりの中に巻き込まれてしまいます。第II部の‘決意’へ続く。

  • 城東第三中学校2年A組の柏木卓也が、クリスマスの朝、学校内で遺体で発見される。
    当初、誰もが自殺を疑わなかったのだか…

    読みたいと思いつつも、なんせ第1部だけで700ページもある長編。
    手を出すのに勇気がいりました(笑)。
    が~、勇気を出して良かった!!
    面白い~!。なかなか本を閉じられず、家事、そっちのけで読みました。
    第Ⅱ部が楽しみ♪

  • 読み始めてすぐ「あぁ宮部さんのミステリだ♪」と少し嬉しくなる(^^)第1部は「事件」というだけあって、まさに事件につぐ事件!雪の日に死体で発見された柏木卓也をきっかけに中学生達が闇にのまれていく〜(・・;)でも登場する中学生がそれぞれしっかりした想いを持っててビックリ!!自分はのほほんと中学時代を過ごした気がするので…(--;) 人の嫌な部分がたくさん出てくるけれど、それを乗り越え真相をつかむ事ができるのか?このドキドキ感が続いているうちに、第2部が図書館に返却されていますように(^人^)

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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