- Amazon.co.jp ・本 (741ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103750109
感想・レビュー・書評
-
気が遠くなるような図書館の予約待ち人数に「まだまだ来ないだろうな」と思っていたら
なんと冠婚葬祭ラッシュの今、予想外に早く届いて、うれしい悲鳴。
普通のハードカバー3冊分に匹敵する、なんと740頁余りという分厚さだけれど
旅行の準備に追われていようが、お鍋をかけっぱなしだろうが
本を開いたら最後、もう読み続けずにはいられません。
クリスマスの夜、中学校の校舎から少年が転落して亡くなった事件をきっかけに
同級生や家族、先生、マスコミから、隣人を逆怨みする、完全に部外者の女性まで
さまざまな人生の歯車が狂い始める。
少しずつだけれど、でも確実に噛み合わなくなっていくその歯車の
キシキシと軋む音さえ聞こえそうな、宮部さんならではの心理描写の見事なこと!
世界に何も期待せず、絶対零度と言っていいほどの冷たい視線で
何もかもを見下していた、亡き少年。
彼の残留思念に皆が踊らされているようで背筋が凍るような瞬間が幾度もありますが
彼が登校拒否になっても何の関心も示さなかったのに、
お葬式ではさめざめと泣いてみせる女子たちには仲間入りせず
マスコミの思惑や大人の論理で塗り替えられてしまう真実を
同じクラスにいた自分たちの手で明らかにしようと決意する
ヒロイン涼子の潔癖さ、ひたむきさに救われます。
どんなに忙しくても、娘の言葉にしっかり耳を傾け
危急の出来事には敏腕刑事らしく驚くべき行動力で対応する
涼子の父は、まさに理想の父親像。
もっと活躍シーンがないかしら♪ と、ついつい期待してしまったりして。
人気の本ということもあり、図書館では1冊ずつしか予約できなかったので
読み終えてから予約した第2巻は、いったいいつ届くことやら。
頼りない脳味噌からこの巻の感動が薄れないうちに届いてほしいなぁ。。。 -
2024/01/24
#このミス作品89作目①
ある冬の朝の学校裏門で
不登校の学生の遺体が発見される。
長編作の事件発生編。
感想は最終巻で。 -
中学生の転落死を発端に描く大長編~宮部みゆきの話題作。
現代ミステリは5年ぶり?
さすがの描写力で、長さを感じさせません。
雪が積もったクリスマスの朝、中学の裏庭で2年生の柏木卓也の遺体が発見された。
屋上から転落死したらしい。
一ヶ月前に不良グループ3人と揉めた後、不登校になっていた。
大出俊次をリーダーとする不良グループのせいという噂も流れるが、卓也の親が自殺と認めるような発言をしたことから沈静化する。
ところが、連鎖するように事件は起き続けて‥
大出の父親は横暴なタイプで、世間に対してはむちゃくちゃな態度で息子をかばうが、家では暴君という。
同級生の急死に女子は泣くが、クラス委員の藤野涼子の目は乾いていた。
友達ではなくほとんど知らなかったためだが、自分が冷たいのかと内心悩む。
剣道部でも活躍する文武両道の涼子のりりしさはすっきり輝いていて、親子関係も含めて、重い話の希望になっていますね。
優等生(しかも美人)は嫉妬されることもあるけれど。
発見者の野田健一は大人しく、学校では目立たないようにしているタイプ。
家では不安定な母親を支えるため、何かと我慢を重ねてきた。
父親が家を売ってペンション経営に乗り出そうとし、反対しても聞き入れないことに絶望した野田は‥
親友のおっとりした向坂行夫がいいですねえ。
柏木卓也が頭はいいが超然とした孤立しがちな性格だったので、教師達は家庭訪問を重ねてはいたが、あまり急いではいなかった。
卓也は子供のころは病弱で、幼い弟に振り回される偏った生活に兄の宏之は苦しめられ、祖父母のもとで暮らしている。
大出らにいじめられていた三宅樹理は、柏木が突き落とされるところを見たという告発文を作成、学校と、担任の森内恵美子と、藤野涼子に送りつけます。
藤野の父・剛は警視庁の捜査一課の刑事で、娘に来た見るからに不審な手紙を開け、学校へ向かいます。
森内はモリリンとあだ名される若い教師で、男子にアイドル的な人気はあるが、えこひいきするタイプだった。
森内のところに届いた手紙は、マスコミに流され、騒動に。
校長らが生徒のことを考えて伏せたことも裏目に出て、学校側のことなかれ体質が批判を浴びることにも。
ニュース番組の記者・茂木は涼子にも取材に来ます。
相次ぐ事件が噂ばかりで解明されないことに憤りを感じた涼子は、自分達で調査すると宣言する。はたして‥?
一人々々がそこにいるかのようにありありと描写されていきます。
それぞれの家にある思いがけない事情。
親の影響を強く受け、意志は持ち始めていても上手く伝えるすべも知らない子供達。
少年課の佐々木礼子刑事が、問題児を見る現実的なまなざしにも納得。
時代がバブル末期の1990年という設定なので、まず携帯が出てきません。
他にどんな意味があるのだろうか‥?
いじめの質やスクールカーストは違うのでしょうか。
重い内容だけど、重苦しすぎることはなく、先が知りたくなるばかり。
さすが宮部さんというか~最近のものでも、かなりいいほうですよね! -
クリスマスの夜、雪の校庭に急降下した柏木卓也14歳
彼の死を巡り、乱れ飛ぶ様々な憶測と次々に起こる怪事件
関係者全員、学校全体が、まるごと何者かに取り憑かれたように、壊れていく・・・
卓也の兄、宏之は言う
卓也はただ繊細なだけの弱虫なんかじゃなかった。あいつは策士だった。他人を操っても他人に操られるなんてことはない
こんなバカどもを操ってたって、もう別に楽しくも何ともないや。退屈だ。ついには世の中というものも、生きるということも見限ってしまったのだ。だから死んだ
でも、ただ死んだのではない。自分の死があとあとまで "生きる"
方法を選んで死んでいった
柏木卓也の死の真相はどこにあるのか
不登校だった卓也に対して、何の関心も示さなかった級友たちが告別式で泣き崩れる様を見て、困惑と違和感を感じる藤野涼子
泣けない自分に対して?
人がが死ぬということへの不満?
何に対する怒りかはわからない。ただ心の中の小さな小さな声が理不尽だと訴えている
そして、涼子は
「自分たちで真実を見つけます。あたしたちは自分で知るべきだと思います」
と言って、立ち上がり、第Ⅱ部 「決意」へと続く
741pの大作だったが、息もつかせぬ展開に魅了されてしまった
14歳というとても不安定で多感な時期の青少年の心理描写は、何よりうまいし、共感できた
大人には、なりきっていないけれど、子どもだからと無視もできない、複雑で脆くて、壊れそう、それでいて、冷たくて辛辣な心
人はみんな、こんな危うい時期を経て、大人になっていくのだなと思う
今後、どんな展開になっていくのか、第Ⅱ部が楽しみだ
-
雪のクリスマス。発見された中学生の死体。自殺か? 他殺か? 何故?
少年は自問する。
「なぜ、自分だけがこんなに苦しまなければならないのだ」と。
少女は自問する。
「なぜ、わたしだけがこんな辱めをうけなければならないのだ」と。
別の少女は自問する。
「わたしは、本当に他人のことを思いやって、この行動を起こしたのか」と。
若い女性教師は自問する。
「わたしは何もしていないのに、どうして糾弾されなければならないのだ」と。
家族、学校、社会。
人間が生きていくなかで、何が正しいのか? 何が過ちなのか?
一人の少年の死を通して、明るみになっていく現代社会の様々な問題の縮図。
嫉妬、羨望、後悔、疑念、不安、葛藤、苦悶。
いろいろな心情を抱きながら、悩み、苦しみ、でも前へ進まなければならない。
少年少女たちはその問題をどう乗り越えていくのか。
まだ物語は始まったばかり。
プレーヤーに配られたカードは裏返しのまま。
カードを捲ると出てくるのはジョーカーか? はたまたスペードのエースか?
ハラハラドキドキ。全三巻の合計2200ページにも及ぶこの物語は最後にどういう結末を迎えるのか。
一度読み始めたら、先が気になってページを捲る手が止まらない。
700ページのなんと短いことか。
この第一部だけで40人以上もの人物が登場するのだが、それぞれの個性、特徴の書き分け方が素晴らしい。
見事にキャラが立っていて、しっかりと一人一人がイメージできる。
心理描写の記述や表現の上手さも作者ならでは。どんどんのめりこんでいく。
1日に200ページ程度。3~4日かけて読めばいいか、と思っていたが、一気に1日で読み終えてしまった。
だってそれほど面白いのだから……。
すぐに次の第二部『決意』に手を伸ばしたくなります。
(第二部のレビューへ続く) -
どどーんと三部ともいっぺんに図書館の順番が来てしまった。
第一部を半年待ったのだが、予約数を見るに、どうも第一部でやめてしまう人が多いようだ。
巻数順に貸してもらえるようお願いしていても、結局これだけの分厚い本が三部ほとんど同時にやってくるので、図書館の方に言わせると「ソロモンは苦情が多い」とのこと。(いや、私は苦情なんて申していませんよ(^_^;)びっくりしただけです)
「(年末年始だから特別に貸出期間が)3週間ありますから頑張ってください」と励まされてお借りしてきた。
図書館で借りずに買えば期間を気にせずゆっくり読めるじゃないかという考え方もあるとは思うのだが、私には、購入した本はその無期限状態にホッとしてしまい、ほとんど積読状態にしてしまうという良くない傾向がある。
だからこのような分厚い本こそ期間限定が丁度良いのだ。
さてそうやって読み始めた本作。
まず、人物相関図があって本当に助かる。
最初の百数十ページまでは普通に読み進めた。
が、柏木卓也の兄宏之の心理描写から私は一気に引き込まれた。
あとは野田健一君の辛い気持ちも痛いほどよくわかる。
私はこれをサスペンスやミステリーだとは捉えていない。
ただもう本当にひたすら人間の心理描写がうますぎて、それを味わうために一言一句飛ばさず噛みしめながら読んだ。
今後これが模擬裁判という展開になっていくのには、ついていけるかどうか自信がないが、とりあえず第一部は面白かった。
年越しは第二部でということになりそう。 -
文庫換算で6冊分にもなる大作、
長い休みの楽しみのはずが、あまりに面白くて読むてが止まらない。
それぞれの思いが交錯しまくる1巻。
真実は、どこにあるのか。 -
先月のオーディブルで無料になっていたので、せっかくだからと思い、第一部上巻を購入したら、想像以上に引き込まれて、けっきょくこれ以降の分もすべて購入して現在読んでいるところ。
一人の自殺がもたらす学校内の混乱は波紋が広がるようにじわじわと中学生の心を飲み込んでいく、その様子がすごく興味深かった。中学生という揺れる年頃だからこそ絶妙な無関心さと関心の強さが描けるのかなと思った。 -
第3部が出るまで我慢しようと思っていたが、ほんの少し読み始めたら止まらなくなってしまった。続きが出るのが1ヶ月先なのがもどかしい。それまでにもう一度読み返そう。
携帯電話が出てこないのだ、というのが第一印象だった。舞台が1990年だから、携帯電話は普及していないのだ。かわりにポケベルが登場するが、中学生はまだポケベルを持っていない時代である。
そのことが妙に懐かしさを醸し出している気がした。
宮部みゆきの小説に登場する少年少女たちはみな大人びている。年齢相応に幼い者もいるが、中心になる子たちはみな非常に聡明で真摯である。その聡明さは己の醜さにも立ち向かうから、時として胸を刺すような痛みを読んでいる私につきつけてくる。
この事件編は本当に序章に過ぎない。ようやく手札が揃ったというところで、これから物語は大きく動いていくのだろう。
早く続きが読みたい。
宮部みゆきの作品を読むたびに思う。彼女と同時代に生きていられてよかったと。彼女の作品を読むことは、私にとっての最高の幸せなのだ。
本当に面白いです。やめられません。700ページあっても、あー、もう終わりそう、やだなあ、読み終わりたくないなあ。と思ってしまう作品です。
涼子パパの活躍シーンもあります!!第2部だったかどうかは謎ですが。
読みました、読みました!
あやこさんの仰る通り、確かにものすごく登場人物が多いのですけれど
そこはさすが宮部さん、見事な人物...
読みました、読みました!
あやこさんの仰る通り、確かにものすごく登場人物が多いのですけれど
そこはさすが宮部さん、見事な人物描写で、ひとりひとりが印象的ですよね♪
あやこさんの、この情熱的なコメントを見てしまうと、
第2部・第3部を早く読みたくて禁断症状が出そうです(笑)
今月末まで冠婚葬祭ラッシュで北海道から九州まで飛び回ってるので
ほんとは本が届かないほうがいいのだけれど
でもでも、早く届いて~!と祈ってしまう私です。
涼子パパ、やっぱり活躍してくれるんですね!楽しみ♪♪♪
はじめまして、わざわざコメントいただいてありがとうございました。
こちらこそまろんさんの本棚を参考に本選びさせていただきたいな...
はじめまして、わざわざコメントいただいてありがとうございました。
こちらこそまろんさんの本棚を参考に本選びさせていただきたいなと思ってフォローしました。
どの本も丁寧な感想を書いてあり、感心しきりです。このソロモンの偽証は分厚いですがとっても読み応えがあり、3冊通して何度涙を流したことか…。やはり宮部さんはすごい方だなと改めて感じました。是非最後まで読んでください、お勧めです。