ソロモンの偽証 第III部 法廷

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著者 : 宮部みゆき
  • 新潮社 (2012年10月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (722ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103750123

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ソロモンの偽証 第III部 法廷の感想・レビュー・書評

  • ついに完結。
    Ⅰ、Ⅱと同様、睡眠削って2日間で読んだ。
    1か月ブクログ放置してた私に、レビュー書かなきゃ!という気持ちにさせてくれた本。

    Ⅲ部は丸々法廷編、白熱の5日間。
    これまでの調査の結果明らかになった事実を法廷で証言してもらい、真相に迫っていく。
    証言は出尽くしたと思っていたところで、登場する最終日の証人たち、そして最後の証人は…。

    もう知っている事実だったりもするのに、証言という形になるとまた違う迫力が出ますね。
    日本の裁判制度とはだいぶかけ離れているのだけど、だからこそすらすら読めたのかも。
    プロ顔負けの尋問を堂々とする検察官と弁護人の見事さったら。
    その他の登場人物も、みんなみんな立派すぎる!
    検察官役の涼子は、後半かなり神原くんに食われてしまってました。
    表の主役は涼子だったけれど、影の主役は神原くんだったんだなー。

    特に、大出に対する弁護人の主尋問がよかった。

    「被告人はこれまで、本校というひとつの社会の中で、実にしばしば、間違ったふるまいをしてきたと思いませんか。その間違ったふるまいの結果が、被告人をそこに立たせたのだとは思いませんか」
    個人的に、ここがハイライトだった(笑)

    こんなに肝のすわったたちって中学生いるんかなぁと思ってきたけど、
    でも要は、柏木君は重い中二病で自殺に至ったわけで、その死の真相を
    自分たちの手で明らかにする主体は、やはり中学生である必要があったのだろう。
    大人ではなく、でも子どもと思われたくない中学生という微妙な時期。
    ここまでじゃなくても、この世代の肥大化した自我っていうのはいつでも厄介なものでして。
    ある程度予測がついていたからかそんな驚愕するようなラストではなかったけれど、
    歪みきって濁りきっていた学校に、新しい風を吹かせ、少なくともこの裁判を通じて
    救われ、次の一歩を踏み出せるようになった人たちがいた。
    (しかし当の柏木君の両親は、真相を知ってよかったのだろうかとも思う…)

    樹理や大出はその後どうしたんだろうとか、法廷の場面に比べてちょっと評議の場面が
    簡単すぎるなぁとか(法廷で真相は明らかになったからこれは仕方ないかな?)、
    いつものことながら?、色々広げすぎて回収が追い付かなかったところは
    やや物足りなくもあったんだけど、3冊通して一度も止まらずに読み切れた、
    宮部さんのこの圧倒的な筆力には脱帽しかありません。
    あー、面白かったなぁ。

  • “終戦記念日は、毎年必ず、よく晴れる。(略)開廷時間は午前九時である。礼子は余裕を持って支度をした。衣服は簡素な麻のスーツを選んだ。”

    第三部『法廷』のこの書き出しを読んで胸が躍った。
    読んでいる自分自身も、何を着ようかと身支度を整えたくなり、思わず背筋が伸びた。
    ついに中学生たちによる学校内裁判の開廷である。
    これまで第一部、第二部で1400ページ以上に渡って展開された事実の裏に何があるのか、長い物語がこの第三部で終わりを迎え、法廷で真実が明らかになる。
    考えただけでも、ページを捲る指先に力が入った。
    ここまで引っ張れる宮部みゆきの筆力、さすがである。

    ──そして。
    何度かの休憩をはさみながら、700ページ余りを読み終え、感動的な小説に出会えた幸運と満足感で一杯になった。
    読んでいる最中、早く結末を知りたくもあり、逆にまだまだこの物語を読み続けたくもあり、心が揺れた。
    たくましく成長した少年少女たち。立派な裁判だった。みんなが素敵だった。
    よくやったと、肩を叩いてやりたくなるような生徒たちだった。
    この素晴らしき中学生たちに拍手を送りたいとも思った。

    個々のページから途中までの印象を語れば。

    P56:誇らしいのだろうと、礼子は思った。
    ──私も同じ気持ちだった。この物語の中だけの架空の生徒たちがまるで実在するかのように、彼ら彼女らが誇りに思えた。

    P113:「<人生に意味はあるのか>。<人間は何のために生きるのか>。<死は本当に誰にとっても平等なものなのか>」
    ──柏木則之が卓也と交わしたと言うこの議論は、まさにこの作品の本質的なテーマであり、私たち読者への問いかけでもあると思った。

    P171:「兄さんなんだからもっと大人になれとか、きれい事を並べて僕を否定せずに、僕のわがままを丸ごと受け入れてくれました。それがなかったら、僕はどこかで道を踏み外していたろうと思います。つまり、家の外で問題を起こすとか」
    ──柏木則之の祖父母に対するこの感謝の発言は、問題が起こった時に誰かが支えてくれなければ、どんな人間でも誤った方向に進んでしまう可能性を示唆している。それを阻止するためにも親子でも兄弟でも先生と生徒でも正確にその人間の状態を把握してくれる存在が必要なのだと。
    現在起きている実際のいじめによる自殺の問題でも、誰かどこかに心打ち解けられる理解者がいれば、それを防ぐ方向に持っていけるのではないかと。

    P269:「人間の愚かさについて考えるならば、それは正しいことと間違っていること、善と悪について考えることになります」
    ──これもまた、この作品のテーマであろう。それを追求するためにもこの裁判の存在理由があるのだから。

    P275:「教師からは管理教育というひとつの物差しで測られ、選別され、生徒同士のあいだでは、容姿や身体的能力や人付き合いの上手下手でまた選り分けられ、排除されたり攻撃されたりする。そこには確かに“悪“がありますが、誰もそれを”悪“とは名指ししない」
    ──丹野先生のこの言葉はまさに現在の学校の実態を端的に表現している。みんながそこから目を背けようとするから、いまだにイジメはなくならないし、それによる悲劇的な自殺も起こるのだ。

    P277:「学校からは出ていっても、世界から出てゆくのはまだ早い。世界のどこかには絞首台のない丘があるはずだと、彼に言いたかった」
    ──柏木卓也に言いたかったというこの言葉はぐさりと胸に突き刺さる。そういう希望がどこかにあるはずだと、わたしたちは悩む子供たちにしっかり教えていかなければならないのではないかと。

    P281:「お辞めにならないでください」「柏木君のように、先生と一緒に画集を見たり絵の話をすることで学校のなかに居... 続きを読む

  • 総ページ数2178。読み終えた。
    達成感が沁み入る。
    物語の結末を見届けたという達成感。

    ミステリーの結末はⅡ部で十分に提示されていた。
    その結末を支える運びが見事だった。
    そう、まるで法廷の最後の証人の声を聞いているかのように。
    絵筆を何度も何度も重ねて描いていくMONSTERを間近で見ているかのように。

    宮部みゆきさんは社会課題をこれでもかと打ち付けてきた。
    本当は大人が受け止め解決しなくてはいけないことを、子どもに肩代わりさせないと大人が真に理解できないかのごとく。

    爽やかな読後感ではない。
    ずっしりと心に留まる読後感だった。

  •  2178ページにわたる、壮大な物語、ここに完結!!早く読みたくて読みたくて、第三部は購入してしまいました。ハードカバーを購入したのは、何年ぶりだろう。
     息をするのも忘れて読みました。


     証人尋問も、もちろんよかったけど、神原弁護人が、被告人大出俊次に対して行った本人尋問がこれまた素晴らしかった。
     被告人を守るはずの弁護人から、今まで被告人が三中生に対してやってきた様々な暴力を暴かれる。


     (傷つけられた人たちの気持ちを考えたことはありますか。)
     「告発分を、誰が書いたのかは、関係ない。なぜ、大出君、きみが被告人にされたのか、ちゃんと考えてみなよ」
    和彦は糾弾する。すべての真相を知る和彦だからこそできる本人尋問だった。
     これには、藤野検事も、野田助手もびっくり。もちろん、被告人大出俊次もびっくり。

     ただ、三宅樹理には彼の思いが通じる。

     利己的な柏木卓也の死。暴君大出俊次に対する三宅樹理の復讐。神原和彦の贖罪。

     これが、自殺で始まり、偽証で終わる。すべての顛末。

     はー、もっと詳しく書きたい。でも、ネタばれにはしたくないので、このあたりが落としどころ?


     さすが、構想15年、執筆に9年かかっているだけのことはある。これは間違いなく、歴史に残る作品になる。
     そして、間違いなく、私の2013年上半期ベスト5に入る!!


     

     


     

  • いよいよ最終章。
    事件は学校内裁判で決着がつくことになる。
    裁判の様子は実際の裁判員裁判さながらに進んでいく。
    弁護人と検事のやり取りは一体いつ練習したんだとつっこみをいれたくなるほど、プロ顔負け。

    確かに登場人物一人一人の細かい描写やプロットは評判通りで、ぐっと熱くなることもしばしば。
    でもいかんせん長い。ここまで長くする必要があったかなあ・・・。
    途中から結末は見えてるし、もうちょっと短くても良かったかも。
    それとみんないいこちゃんすぎて、物足りなくもある。

    宮部さんとはやはり相性が悪いのかな・・・。
    もうちょっとチャレンジしてみたいところだけど。うーん。

  • 読み終わった〜〜〜(^u^)なんだかすごい達成感が(笑)
    少しは中だるみ感があるかと思ったけど全然感じなかった。
    むしろ予想していたよりも中学生たちの裁判はとてもピュアで良かった。
    それだけにラストには彼らの想いがストレートに伝わって来てじんわりと目頭が熱くなった。
    やっぱり中学生らしからぬ大人顔負けな発言や行動は随所であったけども三宅さんへの裁定はもちろん被告の大出くんや弁護人の神原くんへの思いやりを持った評決は中学生らしい。
    さわやかな読後感。また機会があったら読みたいな。

    2000P超えを感じさせないほどすごく読み応えがあった。
    10年にわたる連載だったらしくすごいなと思う。宮部さん、お疲れ様でした。
    宮部さんに これだけの大作をありがとう!といいたい。

  • やっと読み終わった。
    ここ1週間くらい夜更かししてひたすら読んでた。
    雪の日の自殺はトーマの心臓を思い出して、その年代特有の物事への真摯さのようなものを感じて、とても考えてしまった。
    あたしは中学生の頃こんなにいろいろ考えてないで無為に毎日を過ごしてた気がする。
    もったいないことしたかもって思う。
    真実を知りたいと立ち上がった藤野涼子がとても好き。
    みんなどこかしらいいとこがあって思い入れがたくさんある。
    14歳の死で始まり、偽証で終わる。
    最後まで読んでその意味が分かったとき感動した。
    久しぶりに読書に没頭するきっかけになった本。

  • 結局一気読みしてしまった。心臓の動悸が苦しくてじっとしていられないくらいで、手に汗を握りながら、ハラハラしながら読み通してしまった。
    新聞の広告には「だれもこの結末を予想できない」と書いてあったが、珍しいことに私には予想がついた。というか、この結末しかありえないだろうと思った。
    第Ⅰ部の冒頭で、小林電器店のおじさんが見かけた男の子の姿が、3冊通して読む間ずっと脳裏から離れなかった。どうして彼はそんなに疲れていたのだろう。ほんの短いシーンなのにひどく印象的だった。

    14歳くらいのときに、死について考えたことがない人は幸せだと思う。
    自殺とか死なんてものに心を引っ張られることなく過ごせたら、それに越したことはないのだ。
    私には柏木卓也の考えていたことが、ほんの一部だけどわかる。同じようなことを考えたことがあるから。でも私は彼ほど完璧な人間じゃなかったから、自分をそこまで追い込むことはできなかった。だから今でも生きている。

    それにしても、1冊が4㎝もあるような分厚い本が3冊もあるというのに、この物語のまとまりようはどうだろう。決して拡散していくことなく、詳細で丁寧な語り。まるごとその世界で生きていたかのような感覚がいつまでも抜けない。
    もともと宮部さんの作品はそういう読後感が多いのだが、本作はその中でも飛び抜けて「その世界で生きている感じ」が強い。

    また読み返したら違う感想を持つかもしれないので、とりあえず一読後のそのままの感想をあげておく。

  • すごい読み物だった。
    もうもう、ひたすら取りつかれたように読まずにはいられなくて
    時には鳥肌
    時には涙
    時には、嫌悪感
    いろんな気持ちが入り交じった。
    中学生は本当に多感な時期だし、繊細で、大人には下らないって思うことにも真剣に突き詰めすぎてしまって悩んだりとか
    この作中の中学生まではいかないけど、考えることはたくさんあって、世界は学校しかなくて。
    それがすごくうまい具合に描かれてて、なんというか本当にすごかった。
    もちろん中学生には出来すぎと思うけど、それを抜きにしても、読めてよかった。
    不幸な出来事がたくさん起こってしまったことは悲しいけど、少し現実離れしてるとこはあるけど、
    それが彼らの心を強くして、普段なら見えない部分もみれて、普通の言葉だけど、成長に繋がったんだろうな。
    中学生とか学生に読んでほしいなー長すぎるかなー

  • ついに3巻読破!達成感(?)~(笑)。
    それにしても学校内裁判。
    ぐいぐいひきつけられました。
    最後の最後に陪審員たちが下した評決。
    そして、エピローグ。
    読み応えがありました。

  • 小説なんだから、「あんな中学生いない」とか「学校裁判なんてリアリティがない」とかいうのはナンセンス。その世界に引き込んでくれさえすればいいんです。とはいうものの、あんな嘘っぱちの告発書をもとに裁判なんて、どう物語を展開して行くのだろうと思いましたが、さすが宮部さん!第三部では、それまでの登場人物の人間関係を描く中で示したどんな伏線も見事に回収。そして、最後の証人によって転落死した柏木卓也自身のグロテスクな一面が明らかになって行く終盤には、弁護人、神原和彦がこの裁判で明らかにしようとする本当の狙いが明らかになってきます。第一部、第二部と、長い長い助走ではありましたが、読み続けた甲斐がありました。全てが解き明かされた後も、最終弁論、評決に至る過程を丁寧に描き、長い余韻を楽しませてくれます。さらには、10年後のエピローグまで。宮部ワールドを久しぶりに堪能できる大作でした。

  • 読みきった~久しぶりの大作だったわ。
    学校内裁判、法廷のシーンだったので一気に読めた。
    凄いわ。この中学生たち凄すぎるわ。

    最後の最後、神原弁護人の最終弁論、私も拍手を送ります。

  • 半年ぶりの再読です。

    三冊一気にゆっくり(#^.^#) 読むことができて、あぁ、面白かったぁ~~!
    今更いうまでもないけど、傑作ですね。

    その場の勢いでのやりとりで、
    とんでもないところに飛んでいくのではないか、と危惧される場面が多々あるのに
    ふっと洩らされる本音や、期せずしての巧みな言葉の力により
    人間本来の善性(もっといい言い方ないかなぁ)に立ち返る流れがとても嬉しい。

    ネタバレありです。


    しっかりしている中学生もしっかりしてない(汗)中学生も、
    また、考えが足りなかったり、勘違い野郎だったりする大人たちも、
    それぞれ、とても頷ける人間性を提示してくれ、
    それでも、皆、どこかしら救いのあるエピソードを付け加えられているところが
    宮部さん、優しいなぁ、人間というものが好きなんだぁ、と。

    しかも、どんなどうしようもない人でも根っこのところではいいヤツなんですよ、
    とまでは済ませない、
    つまりやったことの報いはしっかり落とし前をつけてもらい、
    また、成長したとは言っても、それぞれの限界もあった・・という展開が
    より嬉しい。

    それにしても、
    繰り返し、必要悪と言われた学校という制度。
    確かに、うんうん、いるよ、そういう先生!と思える人たちが描かれ、
    私自身も学校がとても嫌いだったから、ホント、それには共感至極だったのだけど、野田健一くんが教師になっていた、という後日談が、無理なく温かみを感じさせる方向に読者を連れていってくれて。

    最後の最後まで、宮部さん、うまい!
    と嬉しく読みました。(#^.^#)

  • 最近涙もろくなったんでしょうかね。
    涙なくしては読めなかったです。
    宮部みゆきさんのすごいところは、文章に力があることです。
    まるでイジメや人を殺すときの狂気や、冤罪が起こる過程をまるで見て、経験して知ってるかのような文章です。
    きっといじめる人はこんな感じなんだろうな、いじめられる人はこれほどまでに心が悲鳴をあげてるんだな。
    前にも書きましたけど、「模倣犯」を読んだときに享楽殺人をする人の心理がちょっと分かった気になった…そんな目に見えない力です。

    自分の目に見えるものだけが真実とは限らない。
    自分が正しいと思ってることが、必ずしも正義とは限らない。

    あらためて考えさせられる作品でした。

  • 勢いついて読み切った!
    これだけ長くて複雑な話の結末をどう持ってくのかとこちらも緊張しましたが、なんか結構泣けたなー。
    最後までおもしろかった。複数視点でしっかり描かれてるからこその決着なのでしょう。

    こんな中学生いないよね、って子たちでも、ああやっぱり中学生なんだなって感じられるところが良かった。
    あの頃の不安定で自己中心的で自己完結的な青臭い感性と、大人や学校や社会の体制に反発して立ち向かっていく姿はいいなあって、いい年の大人には素直に思えます。

    柏木卓也は「死人に口なし」だし、彼の家族も結局救われない感じはあるが、それだけ自殺は罪深いということだと思う。
    死ねば終わり、なんてことはない。
    死んでもだれも救われない。生きてるからこそ。

    だいぶ違うけど、なんか「僕らの七日間戦争」ぽい。
    それにしても、とてもいい話だと思う。名作。

  • 図書館より。
    ラストはとにかく一気読み!手に汗握りながら読了。
    まさかの!そして伝説になったのか。
    ラストの友達になりました、の言葉に心を打たれた。
    裁判は終わったけど、彼ら彼女らの時間は進んでいたんだな。
    スゴいよ。面白かった。

  • 第一部を手に取った時に、予備知識として中学生が校内での事件について疑似裁判をやる話、と知っていた。
    ふぅむ、いじめ問題か というのが真っ先に思い浮かび、次に、裁判っていささか強引じゃないか? と危惧。

    なぜ、裁判という手法を取ったのか。
    それは、証人喚問という形で 登場人物に真っ正面から向き合い、心のうちを全部聞き届けるため。

    よく、子供と向き合うとカンタンに言うけれども、信頼を得て子供の恐怖や打算をとりのぞき、心のうちを曝け出させるのがどれほど難しいことか。
    親でも難しいのに、学校という場にそれを押し付けることがどれほど安易であることか。

    「思春期の子にとって大事なのは親でも先生でもない。友達だ。大人の言うことには耳を貸さない子も、友達の言葉は真剣に聴く。」と、これは個人的に繰り返し受け取ったアドバイスだけれども、宮部さんは、校内裁判というかたちで、登場人物の心中を聞き届けたのでしょう。

    宮部さんは、それぞれに瑕のある完璧ではない大人たちにも温かい。
    が、思わぬ敗者とマスコミにはかなり厳しい視線を向けている。
    ちゃんと向き合え、相手を蔑み自己満足に陥るな、と。

    読後は、ひと夏で見違えるほど成長する中学生を見守った気分。

    初出は小説新潮 2007年6月号から2011年11月号連載

  • なんとなく自分でも結論を予想していたけれど、本当の結末はもう少し深いものだった。

    色々なところで言われることだけど、普段人は他人の一面しか見えていないんだなと改めて思う。
    人の本性や考えなんて、噂やイメージのベールで簡単に覆われてしまう。

    だから他人がどう生きているかなんて、基本的に深く考えることなんて滅多にないけれど、ソロモンの偽証では中学生たちがそれを解き明かしていく。
    柏木くんは何故死んだのか、誰が殺したのか。その真実をつかみ、自分たちも傷から立ち直るために。


    真実に近づいていくのは分かっていても、確証がない。見えそうで見えない。
    段々左手で持つページが減っていき、終わりを感じ始めると、このまま終わってしまうのか、みんなはどうすんだ、と一心不乱に読んだ。

    読み終わって少したつけど、まだ気持ちがふわふわしている気がする。
    物語は終わってしまったけど、その後の登場人物たちの心情をあれこれ考えることもでき、読後感もよい。
    改めて凄いものを読んだなあ。
    宮部さんありがとうございます!

  • 14歳の少年の謎の死から大きく広がり、そして、少年たちの手で一つの結論に辿り着くまでを、学内裁判という形をとりながら、描ききる。
    『ソロモンの偽証』というタイトルから、全てを知っている者が嘘をついている、学校という一つの体制が嘘をついている、等と考えられるが、誰かを傷つけても気づかない少年、嘘を信じ込もうとした少女、一人になりたいと願った少年、自分の嘘を誰かに知ってもらいたかった少年。自分自身を死なせてしまいたかった少年、無関心を決め込もうとしていた少女――そんな中での学校内裁判によって、一つの真実から、複雑に絡みあった互いの心をほぐしてゆく。それは、読者の中にもある、そうした少年少女の気持ちを解放していく物語のようにも感じられる。
    そして、ラストの「僕らは――友人になりました」という一文がここまで読んできた緊張をほぐしてくれる。

  • 三部通して星5である。
    とにかく、分厚いことを感じさせず、ノンストップで読みきれる。久しぶりに宮部みゆきにのめりこんだ。
    学校を舞台にした新手のファンタジーではないか、と思えるほど、現実的ではないが、登場人物の圧倒的な存在感と、心の機微にはっとさせられ通しである。
    誰もが真っ白でも真っ黒でもなく、善意と悪意のバランスの中で生きていることを、中学生たちが教えてくれる。だれもが、大出にも三宅樹理にも柏木にもなりうることを、教えてくれているのだ。

  • 校内裁判開始から結審へ、一気に流れていく第3部722ページ。
    天才と言われるタイプで、繊細で哲学的思考のスパイラルにはまってしまい、ともすると人の痛みや気持ちがわからない困ったちゃん、粗暴で物事を深く考える習慣が育ってないタイプで、やはり人の痛みや気持ちが分からない困ったちゃん、あるいはどの人間にも有りがちな心理のアヤを巧みに使い、それを中学生というまだ未熟な年代の事件と設定したことが良かった。(いや、高校生以上には無理な設定か…)
    最後の1ページがこの長い物語を清々しく読了させる。
    映画化されるというのを読み終えてから知った。
    現時点では、主人公の女子中学生役選考を宣伝のメインにしているが、私はむしろ、野田、柏木、神原の3人に重点があると思うので、この男子生徒役に興味がある。

    こんなに長いものを読んだのは久しぶり。第1部のとっかかりに少し苦労したが、話がすすむにつれ、集中できた。

  •  700頁3冊目、読了~! これだけ長くつきあっていると、登場人物たちに情がうつってきます。クールビューティ藤野さんや、モテ要素完全装備の神原君はもちろん、「俺の法廷でなにをやらかすつもりなんだ」の井上君、無敵の廷吏・山崎君、そして究極のジコチュー・三宅さんまで。700頁3冊も読んだのに、彼らの人生の続編を読んでみたくて仕方ありません。宮部みゆき、恐るべし。

  • とうとう裁判が始まった。登場人物達の緊張感
    が読者の私にも伝わってくる。とうぜん傍聴席
    に座っている感覚で読み進める。弁護側検事側
    の駆け引きに引き込まれる。飽きることなく傍
    聴できた感覚で読後は達成感でいっぱいだ。
    廷吏の山崎君や判事の井上君…誰もが脇役では
    なく主人公である。三宅さんの心の傷は将来ど
    う癒されていくんだろう。神原君を苦しめてい
    たものを野田君がきっとその後の人生に友達と
    して大きく関っていってくれているはずだが…
    そして藤野涼子さんに魅かれていただけに…
    ひょっとして野田君の身近で素晴らしい女性に
    なっている事を想像するのだが、エンディング
    に少しだけ登場させて欲しかったなぁと想う。

  • 読了、ネタバレあり。95点。読むのは非常に疲れますが読んで絶対に損しない小説です!

    **
    学校内裁判がいよいよ始まった。
    2-Aの柏木卓也が死亡した事件に対して、元2-A学級委員長の藤野涼子が検事として、
    告発された大出俊次を被告人としその被告人を弁護する立場として神原和彦が対峙する。
    全ては事件の真相を知る為に。
    **

    遂に完結巻です。
    いろいろ語りたい部分がありますがなかなか纏まらなくて読み難い形になっているかもしれませんが。

    さて、この小説はここから法廷ミステリとしての色を強めて行きますが、一方でこの裁判があくまでも
    学校で有志が行いその結果に何ら法的拘束力を持たない疑似裁判であることが逆に日本を舞台にした法廷ミステリとして上手く機能しているように感じました。
    それを特に強く感じたのは、大出たちが他の中学の学生に対して暴行恐喝を行った件で、最初に検事側が証拠として提出しようとした際にその証拠の採用を認めず、
    翌日弁護側が別の証人の供述に際してその暴行恐喝事件を証拠として提出した手際、これが実際の日本の裁判で行われるようなやり取りかは判りかねますが、
    このようなやり取りが現実の裁判を扱った小説中に描かれていたら多少疑問を感じたかもしれません、がこの小説で行われているのが、語弊がある言い方をすれば裁判ごっこである為にそれが単純に弁護側の上手さに繋がりつつ不自然さがなかったことに繋がっているのと感じました。
    もちろんここまで上手く展開を作ってきた著者の筆力が前提としてあり、同じ手法を用いても筆力が無ければそれこそ単なる"裁判ごっこ"になってしまうとは思いますが。

    また作中では著者の教育観の一部を伺わせるシーンも一部にあり、引用で挙げていますがこの点に関しては非常に強く感心させられました。
    言われてみればその通りだと思う反面自らそう考えたことがなかったので、この点でもさすが、と言いたくなる部分です。

    この長い長い物語の締め括り方としてのこの裁判の決着は非常に良かったと思います。
    そもそも一連の事件を通して誰も彼もが傷付いており時間と共に解決するという大人のスタンスに対して、
    子供たちがそれを否定しとことん傷を曝け出しながらその傷と向き合って癒すという、中学生でなければ成り立たない物語で
    特定の誰かが傷つけられたまま終わるのではなく、その差はありながらも全員に癒しがあったことはこの本を人に薦める際に安心出来るポイントですし、後味も綺麗だったと思います。
    さらにこの点で著者の構成力の凄さを感じさせられたのは弁護助手を勤めたのが野田健一であり、彼が第Ⅰ部である事件を起こそうとしたことが
    最終日のあるシーンの布石になっていることです。

    もし機会があれば、この部分を最初から考えて書き出したのか、それとも話を進める途中で自然とそうなったのか伺ってみたいと思いました。


    やや気になった点を挙げると、裁判における検事側or弁護側というのはあくまで役割であって、それも本来の目的である真実を解明する為のツールに過ぎない筈なのに、
    その役割に拘り過ぎていて、異議あり、と目的にそぐわない場面で強勢に唱えてるシーンが極稀にあったことです。
    そのようなシーンは基本的に涼子の側に多く、中学生なのに大人以上に大人に描かれてる彼女の人物像からするとやや不自然な印象が残ってしまいました。


    +++++
    追記
    他の方のレビューに目を通しながら思ったこと、また小説を読みながら思っていたことを思い出したので少し綴ってみます。

    第Ⅰ部を読みながら思っていたことは、人間は他の人に影響を与えながら、与えられながら生きているし生きていかなきゃならないのに、それに無自覚の人間が多く感じられて、そ... 続きを読む

  • 体験したものにしか、「そこ」を見たものにしかわからないことというのが確かにこの世にはあると思います。年齢に関わらず。
    「そこ」は底であり、その場所という意味でもあります。
    「そこ」の体験があまりにも激烈だった時、人は生きる道を狭められてしまうものなのかもしれません。
    ある意味でぐれたり逃げたりするのも状況によっては正しいのかもしれない。それができるだけまだいいということもあるかもしれない。生き続けるという意味においては。

    どんなに明晰であろうと冷静であろうと3巻目読んだら、中学生はやはり中学生なのだな、と思ったものです。宮部さんすごい。

    どの子もみんな抱きしめたくなりましたよ。真実に立ち向かった子も、気の弱かった子も、いろんなことから逃げたり人に暴力をふるったり卑怯だったりした子も死んでしまった子もみんなとても傷ついたから。

    大人になれば通り過ぎることができることでも、子供の時には今そこで体験していることが全てですね。大人になるとそういうこと忘れがちです。
    中二病という言葉で片付けないで、子供が真剣に人生の問いに苦しんでいる時には、答えがたとえ出せなくても、せめてきちんと向かい合える大人でありたいものだと読了して思いました。

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ソロモンの偽証 第III部 法廷の作品紹介

この裁判は仕組まれていた!? 最後の証人の登場に呆然となる法廷。驚天動地の完結篇! その証人はおずおずと証言台に立った。瞬間、真夏の法廷は沸騰し、やがて深い沈黙が支配していった。事件を覆う封印が次々と解かれてゆく。告発状の主も、クリスマスの雪道を駆け抜けた謎の少年も、死を賭けたゲームの囚われ人だったのだ。見えざる手がこの裁判を操っていたのだとすれば……。驚愕と感動の評決が、今下る!

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