- Amazon.co.jp ・本 (722ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103750123
感想・レビュー・書評
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大方の予想通りの展開。しかし証人神原以降の展開はシビれたわ。流石。ラストの2010年のシーンも蛇足にならない程度ですっきり終わってて良かった。2100ページをその量を感じさせないハイテンションで一気に駆け抜けた。
1990年が舞台と言う事で携帯もインターネットも無い世界に公衆電話やバブル経済がうまく組み込まれてた。ただ突っ込みたいのは「イケてる」や「コクる」などの言葉は1996年頃関東では一般に使われ始めたという点で、そこにはかなりの違和感を覚えたかな。
とにかく面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今年読んだ中で一番かもしれない!
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中学2年の男子生徒の転落死の真相を明らかにしようと同級生たちが学校内裁判を始めた。彼の死を巡って様々な証言が集まり、そして…。
この大作、ストーリーを追うだけならここまでのボリュームにはならなかったと思う。
ただものではないスーパー中学生、等身大の中学生、教師、警察、保護者たち、それぞれの異なる見解、気持ちのズレが丁寧に描かれているからこそ、読み応えがある。
Ⅰ部、Ⅱ部では読後感が熱く先が気になるばかりだったが、Ⅲ部を読み終わってからじわじわと余韻を味わうように振り返りながら、検事となった涼子の気丈さ、弁護人助手の健一の意気地、告発文を出した樹里の歪み、そして他校生ながら弁護人となった晶彦が抱える辛い心に思いを馳せた。
これは高校生が主人公ではこうはいかない、特に多感な年頃の中学生だからこそ、だと思う。
自分と他者、その区別が急に意識され、人目を気にしたり、自意識過剰になったり、自己を演出したり、強がったり。いろんな思いが、まだ幼さの残る小さな胸に渦巻いている。
そんな機微とストーリー興味深さが見事な大作。 -
第三部の帯、「禁じ手を犯した最後の証人に法廷は沸騰する!」にわくわくしながらついに結末へ。
最後どころか中盤あたりから何度も驚かされ興奮しました。
心臓がドキドキしていっぱいいっぱいになり、一気読みはとても無理。
この第三部だけでも1週間かけて読みました。
本当に面白かったです。大満足!(^ ^)/
こんな大作を書いた宮部みゆきさんを尊敬します。
展開が練りに練られていて本当に引き込まれました。
法廷の緊張感、弁論の切り返し、驚く証言。
なんて中身の濃い法廷でしょう。
神原弁護士の被告への尋問が凄かった。
大出被告が自分の行為を思い知ったであろうその切れ味のある尋問にこころがうち震えました。
終盤、明らかにされた真相が痛ましい。
裁判をやり遂げた生徒たち、お疲れさま。自分も傍聴できてよかったです。
納得の判決をありがとう。
宮部作品はほとんど初めてですが、読みやすくわかり易い文章。
読者を裏切らない親切さ。とても好きになりました。
長い長い作品になりましたが、登場人物たちをきちんと存在させてくれるための描写があるからなんですね。作者のやさしさを感じます。 -
第Ⅰ部と第Ⅱ部における詳細な人物描写が、
第Ⅲ部(法廷)をひときわ魅力的に引き立てる。
真実を求めて、いよいよ開廷された学校内裁判。
藤野検事と神原弁護人による大人顔負けの弁論風景。
関係者が語るそれぞれの真実。
多面的に次第に明かされていく柏木卓也の人物像。
他人を理解するってことは、とても困難なことだね。
自分のことすら理解出来てるとは言えないからな~~。 -
遂にクライマックスを迎える。ただし「中学生たちが学校で裁判を行う」という行為自体は「あり得ない」ことだ。またその裁判の進め方も大人も顔負けの展開である。しかし、しかしである。それが現実には成立しないことであっても宮部ワールドでは全く違和感なく受け入れられるのである。ある意味、宮部みゆきの「あんじゅう」等のこの世ではあり得なさそうなことを違和感なく描く物語と同じなのかもしれない。
エンターテイメントの形式を取りながら、思春期の若者たちの鬱積する人生に対する思い、苦悩を描いているのだろう。そのような瑞々しく、辛く、純粋な時代は遙か昔のことである私にとっては懐かしいものとして受け入れられるが、当事者である十代の若者たちは時代は変われど、同じような思いを、また経験をし続けるのだろう。
いつもながら宮部みゆきの描く十代の子どもたちのきらきらとした純粋さ、そしてどんな「悪」を描いても優しい目線が感じられるところが好きだ。 -
どエラい小説だった。分量もそうだけど笑、オチも二部の後半あたりから朧げに掴めるけど!すごい読ませる小説だった。
一人の自殺から滲み出る思惑に乗せ、拡散していく不安、それに立ち向かう中学生たちの学校内裁判、そこに現れる部外者、そして真実へ。圧倒的だったと思います。 -
これだけ分厚い本を立て続けに読んだわりに
あっという間に読み終わってしまった。
う~ん、それにしてもどれだけ思慮深い子どもたちなんだろう。
大人でもこんなに深く他人のことを思いやれるだろうかと感心してしまう。
学校内裁判、新しい証人が出てくるたびに、
傍聴人よろしく「おぉ~」となりながら
素敵な廷吏に「ヤマシンはかっこええな~こんな子が自分の子供やったら
どんなに頼もしいか」なんて思いながら本当に楽しませてもらった。
被告人尋問で神原君が大出君に畳み掛ける言葉、
そのあとの三宅樹里の反応には、思わず声を漏らして泣いてしまった。
この裁判に関わった人全員が納得でき、
それぞれがいい方向に進んでいく道筋が作られた
本当の裁判以上に、中身のある素晴らしい裁判だった。 -
ついに物語は夏の5日間の『学校内裁判』へと進む。
被告人は、校内一のワル、大出。検事は刑事を父に持つ才媛の藤野。弁護人は校外から名乗りをあげた謎の残る少年、神原。
容疑は、クリスマスイブの日に学校で死んでいた柏木卓也の殺人。
多数の証人が、大人も中学生も問わず召喚され、舌戦のもとに、なぜ柏木卓也は死んだのか、それは自殺か大出による他殺かが論じられる。
恐るべき14歳たち、スーパー中学生の藤野と神原の行う裁判は、どちらにどう転ぶのか。やがて隠されていた闇が明かされていく。
中学生の行う裁判、それもわずか数日間のことだけで、この紙幅というのがすごい。そしてそれがまったく負荷に思えないほどぐいぐい引き込まれる語り口の巧さに、「書き手の力」というのはこういうものかと思った。
安易に取り上げればつまらなくなってしまうような内容なのに、最後、胸を打たれる。
一番最初に引用されたタナ・フレンチの一文がとても効果的に心に響いた。14歳の夏、というかけがえのない時間を思う。
語り手の視点がさまざまな人に動くこともよかった。とりわけ、ただの脇役でしかないと思っていた人物の目を通して裁判を見つめることで、新たな発見がある。
個人的に、今回いいなぁと思ったのは廷吏を務めた奇跡の男、ヤマシン。この少年が今後どんな大人になりどんな恋をするのかとふと思った。
彼に限らず、すべての登場人物たちがこれからどんな大人になっていくんだろう、と想像したくなる、そんな力がこの物語にはある。