太陽を曳く馬 (下)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103784074

感想・レビュー・書評

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  • 『晴子情歌』『新リア王』に続く福澤彰之シリーズの完結編。ずっと彰之を追い続けてきたけども、けっきょくのところどういった人物だったのかなあと考えることにも疲れたというのが正直な感想。ほんとに、言葉にできない。感覚的にしかつかめていない。ただなんとなく、このひとはどこまでいっても独りきりなんだろうなあという気はしたけども。なんか、それってすごく残酷。
    宗教論争なんかはやっぱり理解できなくて(基となるものを知らない人間からしたら理解できないのもあたりまえだと思える濃さ)最終的には禅僧だってひとりの人間であって、俗世を捨てようとしてもそれにつながる感情までは捨てきれないということを考えさせられた。そういう表面的なものしかさらえない自分の読解力のなさがくやしいと思える。
    捜査を続ける合田の不安定さもあいかわらずで、このひとは生きているの?と何回も思うぐらいだった。最後あたり検事に警察やめればいいよといわれていたけども、いまの合田からこれをとったらなにが遺るんだろうなあと考えたらぞっとした。ほんとに、このひとにはなにものこらないんじゃないのか。
    いままでは近くに加納がいて、会ったりなんだりできただろうけど、いまは加納が隣に存在していないから、ほんとに独りきりな合田のことを考えたら胸が張り裂けそうになった。だから最初から最後までこんなに孤独のにおいが強かったのかとひとりで納得してみる。
    最後に、彰之と秋道はあの彰之の一方的な手紙が最初で最後の親子としてのつながりだったんだろうなあと考えたら涙が出た。

    (787P ※上下巻)

  • 動きのある小説ではない。どこまで行くんだというくらいの独白、思考の文章化。これはどういうジャンルの小説なのだろうか。哀しいことにほとんど頭に残らず、理解できずにそれでもがんばって読了した。がんばって読んだというマラソン的な観念を残し、振り返れば上下巻で読むのに一カ月かかってしまった。高村薫は嫌いではない、だが自分には合わない気がする。

  • 僧侶たちが話す。オウムについて。てんかん持ち僧侶が死んだ晩について。
    刑事事件とは立件できない。世田谷一家殺人事件に駆り出されるゆうちゃん。
    さいごは、息子の秋道君にあてた手紙。
    難しい。いきなりこれを読んだからか? 最初から読もうかな・・・

  • 合田と福澤が合流する、彰之シリーズ最終章。芸術と殺人、宗教の対話を通して一人の僧侶が遂げた謎の死の真相を浮かび上がらせる。宗教の教義の話は特に難解で作者はこれを書くのに相当勉強したのだろうなぁと推測する。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file7/naiyou6708.html

  • 上巻は流し読み。下巻はすごい。簡単にいうとオウム真理教の話です。ヨガや後期密教における気味の悪い身体行法が何を目指していたのか。それらを妙にキャラ立ちした僧侶たちがディスカッションする。

  • <span style="color:#cc9966;">死刑囚と死者の沈黙が生者たちを駆り立てる。僧侶たちに仏の声は聞こえたか。彰之に生命の声は聞こえたか。そして、合田雄一郎は立ちすくむ。―人はなぜ問い、なぜ信じるのか。福澤一族百年の物語、終幕へ。 </span>

    <blockquote><div class="mm-small" style="margin-bottom:0px;"><div class="mm-image" style="float:left;"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103784067/konnoe-22/ref=nosim" target="_blank"><img src="http://ecx.images-amazon.com/images/I/41QqAJr%2B5hL._SL75_.jpg" alt="太陽を曳く馬 (上)" title="太陽を曳く馬 (上)" width="52" height="75" border="0" /></a></div><div class="mm-content" style="float:left;margin-left:10px;line-height:120%"><div class="mm-title" style="line-height:120%"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4103784067/konnoe-22/ref=nosim" target="_blank">太陽を曳く馬 (上)</a></div><div class="mm-detail" style="margin-top:10px;">高村 薫 / 新潮社 ( 2009-07 ) /<img src="http://images-jp.amazon.com/images/G/09/x-locale/common/customer-reviews/stars-4-0.gif" border="0" alt="アマゾンおすすめ度" style="vertical-align:middle;" /><div style="margin:7px 0px"><a href="http://mediamarker.net/u/konnoe/?asin=4103784067" target="_blank">konnoeのバインダーで詳細を見る</a></div><div style="text-align:right;font-size:7pt;font-family:verdana"><a href="http://mediamarker.net/" target="_blank">MediaMarker</a></div></div></div><div style="clear:left"></div></div></blockquote>

  • 仏教の本だった。

  • 9.11の同時多発テロ、オウム真理教事件といった現実の事件と、抽象画を巡る芸術論、新興宗教の教義を巡る宗教論といった複雑なテーマに、「マークスの山」、「照柿」の合田雄一郎が愚直にも執拗にも「何故?」と問いかけながら取り組んでいく。読後にすっきりするような解は提示されないが読み応えはあり、読後感がずっしり残る。宗教における真理、芸術における究極の表現といった、辿り着かないことを知りながら求め続けることを止められない何かについて、深く考えさせられる作品。

  • 高村薫の三部作は、延々と仏教とオウム真理教との違いを明らかにし、最後は福澤彰之からの秋道への手紙で終わります。
    三部作の最初の2巻は読んでいませんが、『新リア王』『太陽を曳く馬』を通じて、津軽の冬の海を思い返しました。筒木坂の寺を訪ねてみたいと思います。

  • こう言ってはなんだが、これ、小説にする必要があったのかしら?
    ストーリー(事件)は付け足し程度で、内容はほぼ宗教論、プラスちょっと美術論だ。
    それに興味がある人は新書なりで入門書を読んだほうがいいし、この手のミステリを期待している人は『薔薇の名前』『鉄鼠の檻』など、宗教とミステリが見事に融和している小説を読んだほうがいいと思う。

    などと言いつつ、こういう類いの小説は嫌いではないので『土の記』も読んじゃおう。

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著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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