太陽を曳く馬 (下)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 717
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103784074

感想・レビュー・書評

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  • 合田雄一郎シリーズ
    読んだことない話だーと喜んで借りたら、さっぱり意味がわからなかった…。
    作者がオウムの事件について気になったんかな?あまり小説読んだ気分にならない。
    あと母晴子、と言う文言があったから、もしかすると晴子情歌⇨新リア王の後に読まないと分からないのかも。
    旧仮名遣いの手紙を読むのも大変だった…

  • 高村薫の長編をじっくり一週間かけて読んだ。オウム真理教のタブーにも思いっきり切り込み、仏教と異教徒として見た一般的とも言える主人公の目と、実際にその中に居て、存在であったり、自己を見つめた者に焦点を当てる。オウムからお寺に来たてんかんを持つ男が車にはねられて死んでしまった事件。その背後にあったのは、異物への畏怖なのか、自殺であったのか。曖昧で解決できないでいるもどかしさと、少しずつ明らかになる関係者達の証言から、真実に近づいてくサスペンスの中に、宗教への見方や偏見も含めた部分を淡々とえぐっていくのは高村薫らしさ全開だ。自分的にはレディージョーカーが最高傑作だけど、読後の重たさでは本作も素晴らしい。

  • 上巻はわりと普通に読めたんですが、後半宗教対話みたいになってくると、興味がないとなかなかついて行けない。
    私とは、人の意識とは、と際限なくどんどん底に沈んでいく感覚。
    合田はホント刑事に向いてないと思う。
    解るとか解らないというより、皮膚感覚が合うか合わないかというのもあるのでは?

    ミステリーとしての結末をお望みの方にはおすすめしません。
    こんな風に悶々としながらの幕切れの方が現実的には多いのかもと思いますが、やはり合田の悶々が心配。
    人の内面に入り込みすぎると出てこれなくなりそうで、みなさんも心配しているように、合田の社会復帰を危ぶみます。
    個人的には元奥さんのことや義兄のことなど、合田が何がしかの答えを出すのかと思ったんですけど。

    これは福澤家シリーズらしいので、次の合田シリーズの方に戻ってくれて、その方がやはり合田らしいかな。

  • 『晴子情歌』『新リア王』に続く福澤サーガの完結編ということだが、この2冊は未読。
    合田雄一郎が登場するので手に取ったのだが・・・。

    読み進むのに苦労した。
    前半は現代美術、後半は仏教と見慣れぬ言葉の羅列を追うのに必死で何も頭に入らない。
    そして物語の結末はというと、不明なまま。

    上下巻800頁近い物語の果てがこれではちょっと・・・。
    合田は捜査の現場に戻れるのだろうか。

  • 上下巻併せての感想。
    福澤家サーガ前2作を挫折した過去アリ…。
    故に、合田刑事シリーズとして読み始めたので、意外に読み易かった。

    ある2つの事件にかかわるのが、福澤家の人間なのだが、そこに関わる人物に、シンクロしてしまう合田刑事の切なさたるや否や。いままでの作品以上である。そして、読んでいる私も、合田刑事にシンクロしてしまい…。ああ、もう俗物的なあの検事の発言…。読んでいる私も打ちのめされてしまった。

    現代絵画と仏教がキーワードにもなるが、詳しかったらもっと楽しめたかもしれないが、それ以上に、前半での秋道に対する周囲の反応、後半、作中での知識のやりとりに対する答えのようなもの等々、描き方が圧倒的で、夢中になって読み進めた程。一番は、福澤親子のやり取りなのだが(といっても、父からの一方的なものであるが)、彼の中で答えがでないからこそ、ああいった終わり方になったのだな、と感じた。

    生きることは、「問う」、「問い続ける」ことなのだろう。
    答えがないからこそ、問い続ける。それが生きること。
    死に対する感覚は、個々だろうが、仏の道に問いを求めた彰之も、絵に問いを求めた秋道も、向かった方向は一緒なのだろう・・・。

    そして。
    これから合田雄一郎に、幸せや、平穏な心が訪れる日が来るのだろうか。
    イチ合田ファンとして、いつの日か髙村薫が書いてくれることを信じたい。

  • なぜ絵を描くのか?
    なぜ信じるのか?
    なぜ殺したのか?
    そして、その殺意の出所は?
    その問を投げかけ続ける合田が痛々しかった。
    合田の「なぜ」という問いは、合田の言葉を通して私の苦しみとなる。
    観念的な言葉、言葉の意味、有と無、それらが襲い掛かってくる。
    合田は大丈夫だろうかと心配になった。
    とても硬質な世界かと思ったら、軟質に変化し、
    笑ってしまう場面もあり、何が何だかわからなくなる。

    彰之は、秋道と向き合う。
    上巻では放浪する半身と向き合うかのように、
    自分自身と向き合っているような気がした。
    下巻で明かされる手紙、特に最後の手紙の場面がとても好きだ。
    彰之の手紙は、絵のことばかりで、優しい人だと思った。
    彼なりに真摯にひたすら理解しようともがいていると感じた。
    哀しい、寂しい、そんな言葉が浮かぶ。
    彰之は半身と対話しているのでなく、確かに父となっている。

  • 最期まで苦行は続いた。
    合田ってこんな男だったっけ?

  • 生きる意味とは何か。この本源的な問を問う意味があるのか。意味が意味をなさず、言葉が溢れ、価値が無価値となる中ひとはそれを心の奥底で自覚しながら、意味を求め彷徨する。

  • 難解でした。
    宗教のことが分からないと途中で何度も引っ掛かると思います。事件を捜査する過程で合田の思考が引っ掛かる部分に、「何故合田はそう思うのか?」を理解しがたいがために宗教の教義を確認するという・・・
     私は「晴子情歌」は未読です。
     読めばもっと感想が違うかもしれない。

     ミステリじゃないな、これ。マークスみたいな警察小説でもない。
     でも人の内面といういものについて、人の内面に大きく作用する宗教と言うものの功罪について、考えさせられる良書だと思う。
    (読むの苦労したけど・・・!)

     合田はこんな繊細な心でこのまま警察組織にいられるのかが心配。

  • 高村薫、久々に読んだけれど、どこか、大江健三郎を読みたくなったのは何でだろう。にしても、長編。疲れたけれど、火がついたら、すんなりすんなり。オウム真理教に関してを絡めての絡めての。ロスコの画が表紙なのが、とても、いいです。(12/2/9)

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著者プロフィール

●高村薫……1953年、大阪に生まれ。国際基督教大学を卒業。商社勤務をへて、1990年『黄金を抱いて翔べ』で第3回日本推理サスペンス大賞を受賞。93年『リヴィエラを撃て』(新潮文庫)で日本推理作家協会賞、『マークスの山』(講談社文庫)で直木賞を受賞。著書に『レディ・ジョーカー』『神の火』『照柿』(以上、新潮文庫)などがある。

「2014年 『日本人の度量 3・11で「生まれ直す」ための覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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