ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ

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  • 新潮社 (2008年10月31日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103808510

ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジの感想・レビュー・書評

  • 重要文化財の源氏物語絵巻を、薄紫の無地で惜しげもなく覆い
    「九」の文字の部分だけ切り抜いてちらりと垣間見せるという、なんとも贅沢な表紙!
    表紙を捲ると、見返しの豪華絢爛な絵巻が目に飛び込んできて、素敵です。

    源氏物語の中でも有名なエピソードを、松浦理英子、江國香織、角田光代、
    町田康、金原ひとみ、島田雅彦、日和聡子、桐野夏生、小池昌代という
    9人の人気作家が自由にアレンジして描いたアンソロジー。

    書籍広告では、源氏物語のお気に入りの段をモチーフに、
    それぞれの作家が個性あふれる創作を展開するイメージだったのだけれど
    意外に原作に忠実に、自分の言葉で新訳を試みている方が多くて
    やっぱり源氏物語って、作家にとってはおいそれと換骨奪胎できない作品なのね、
    と思い知らされたりして。

    そんな中、『末摘花』に、夜中まで寝ないでジャガリコに湯を入れて
    マッシュポテトみたいにして食べる女房を登場させてしまう町田康さん

    埋めようのない男女の温度差を美しい言葉づかいで
    『夕顔』の物語に封じこめた江國香織さん

    源氏物語の中では聖母のごとく描かれた紫の上の少女時代、『若紫』を
    場末の風俗店で、幸せを手に入れるために、10歳にして手練手管で
    美しい上客に自分を「連れていかせる」よう仕向ける少女の物語として
    鮮やかに描いてみせた角田光代さんの筆が光ります。

    それにつけても、小学生向けに編集された『源氏物語』を読んで
    いくら美しくても、こんな浮気な男の人が許されていいの?!
    と信じられない思いだった自分が懐かしい、今日このごろ。

  • 源氏物語は不思議な読み物だ。小学生で読んだときはさっぱり魅力が分からなかった。中高生では源氏の傲慢さ・浮気性に憤り、大学生では単位のために分析を試みた。与謝野晶子さんや瀬戸内寂聴さん、田辺聖子さん、橋本治さん、玉上琢弥さん…色んな方の訳で読んだし、解説書も読んだ。

    それでもまだ理解しきれないし、読む度違う表情を見せる。

    推しメンと言うか、お気に入りのキャラクターも移り変わる。読み手の現状で自己投影の対象が変わるからか。

    朧月夜や紫の上、六条御息所、夕顔、葵の上、浮舟、花散里…それぞれの魅力や悲哀、秘めた想いまで、巡らせればキリがない。

    源氏に対しても、「ただの女好きおぼっちゃま」と言う認識から変わりつつある。婚姻制度も今とは異なるが、もしもこの時代に生きていたらきっと私も彼を拒めないだろう…その先にどれだけ辛い思いをしようとも。

    こちらのアンソロジーでは角田光代さんの「若紫」、江國香織さんの「夕顔」、桐野夏生さんの「柏木」が好き。元々、紫の上や夕顔は好きなのだけれど女三の宮への見方が変わる。

    「朧月夜」も読んでみたかったなぁ。忍んでくる男の顔も名も知らず身を委ねる夕顔は自分と真逆で、だからこんなに無垢で可憐なんだろう。

  • 源氏物語千年紀にちなんで、有名なエピソードを現代語で書き直したアンソロジー。
    ほとんどそのままの新訳もあれば、性格や心境を独自に書き込んだもの、まったく別な時代の話にしているものも。
    なかなか変化に富んだ面々なので、楽しめました。
    年の初めに読もうと、図書館から借りておきました。
    2011年に別なタイトルで文庫化されています。

    松浦理英子「帚木」
    え、一番最初が空蝉?と思ってしまった‥
    なるほどねえ~ある意味、現実味のある女性?
    紀伊守の父の後妻という受領階級の人妻で、身分の高い貴公子に迫られまくって一度はそういう仲になったが、その後は源氏をきっぱり拒絶した女性。
    源氏はまだ10代と若く、正妻の葵に冷たくされてふらふらしていた時期。
    雨夜の品定めで中流階級の女性がいいと聞かされて、好奇心を起こしたもの。
    当時はまず通い婚が主流だったけど、この場合は夫が同じ屋敷内に戻っているので、そりゃ、続けたくないんじゃない?
    もし違う立場だったならと、空蝉が内心考えるのも正直な。

    江國香織「夕顔」
    どこか頼りなげで素直な夕顔。
    男性の人気ナンバーワンだそうですよね。
    ほとんど人生をあきらめているかのような面と、ふわふわと女っぽい面と。
    夕顔はまあ‥
    六条御息所がかわいそうなのよね。

    角田光代「若紫」
    現代版に大胆な書き直しをした辛口な作品。
    東南アジアかどこか?父に売り飛ばされた少女が、まだ店には出られない年齢で下働きをしている。
    そこへ現れた金持ちの男に、自分を引き取らせようと思い‥?

    町田康「末摘花」
    これ、傑作!吹き出しちゃいました。
    美貌を誇るいい調子の若者の一人称で、でもけっこう周りに振り回されているのね。
    頭の中将がストーカーめいたキャラになっていて、おかしい。
    末摘花の家が質素を通り越した貧乏なのを勝手に理想化するあたりも、いかにも。

    金原ひとみ「葵」
    現代に舞台を移し、光の母親も生きているが上手くいっていないという設定。
    妊娠がわかって動揺する葵と、頼りない若い夫?の光。
    いつしか強くなろうとする葵。
    生々しさで読ませるが、源氏物語と関係なさすぎかも。

    島田雅彦「須磨」
    別れの寂しさを嫋々と描いて、独特な雰囲気。
    歌のやり取りを丁寧にしていく文化が、ありありと感じられます。

    日和聡子「蛍」
    源氏の元に引き取られている玉鬘の君。
    父親のように思っていた源氏に言い寄られて困惑する。
    源氏はほかの男性に引き合わせることも考えていて、玉鬘の姿を垣間見させるために蛍を飛ばすという手も使う。
    落ちがないけど、当時の生活ぶりや源氏の考えが出ているくだり。

    桐野夏生「柏木」
    尼になっている女三の宮の一人語りが、面白いです。
    皇女だったが、14で40歳ほどの源氏に降嫁した。
    ほんとうは三の宮は気が進まなかった。
    教養豊かな美女揃いの六条院の館で、源氏は紫の上に気をつかって、あまり渡っても来ない。
    おっとりして気が利かない三の宮は、何かと叱られてばかり。
    柏木に姿を見せたうかつさは、実は確信犯だったという。

    小池昌代「浮舟」
    現代の女性が、わがことのように浮舟を感じ取る。
    一人暮らしで、勤めて50年になる会社でもうすぐ定年を迎える。
    源氏物語にはまり、毎晩読みふけっていた。
    浮舟の心境を実感する様子が無理なく描かれていて、いい読後感でした。

  • 源氏物語を、9人の作家さんがそれぞれの解釈で描いた作品集です。

    企画が面白いですね。アレが良かった悪かったと、勝手な批評を読者が自由に言いやすいところが楽しい。私も一言♪

    他の方のレビューを読むと、町田さんの末摘花の人気が高いみたいだけど、私てきには全く刺さりませんでした・・・
    私のイチオシは角田さんの若紫。
    角田さんの作品は「八日目の蝉」しか読んだことなくて、それが私には合わなかったから他の作品を読む気がしなかったんだけど、いやーわからないものです!
    雰囲気作りも、源氏の胡散臭さ加減も紫の状況も、あの場面設定の中、原作に忠実、としか言いようがない。この一作で、角田さんの他の作品もチャレンジする気になりました。。

    次点は桐野夏生さんの柏木。
    こんなに人気作家なのに、なぜか桐野さんの作品は読んだことなくて・・・視野が狭かったかな。
    源氏の老いからくるいやらしさがとても自然。女三宮の心情が理屈にかなってる。

    この企画、第二弾もやってほしいな。いろんな作家さんのセンスがみえる、というか、私との相性がわかる気がして楽しかったです。

  • 「末摘花」/町田康 のみ読了。
    相変わらずの町田節。
    原作の「末摘花」(瀬戸内寂聴 訳)と照らし合わせるとなおさら面白い。そして結構、出来事に関しては原作に忠実で細かい。
    …なるほど、頭の中将はストーカーだったのか(笑)。
    源氏物語 町田康 訳が読みたい。是非読みたい。 ぎゅんぎゅんになるけど。

  • 松浦理英子の帚木、江國香織の夕顔、金原ひとみの葵、
    島田雅彦の須磨、日和聡子の蛍、小池昌代の浮舟、
    桐野夏生の柏木。

    どだい1000年の年月に晒されて残ったものに
    ン十年をぶつけるのも難しい試みなのかな~と思いつつ。
    意外に・・・

    「須磨」はもともと好きってこともあるし、
    島田だから、っていう(←一応ファン)バイヤスも
    かかっていたかもしれないけど、
    「柏木」はあんまり好きな巻じゃないのに
    しっかり引き込まれてしまった。

  • 現代の作家9人が源氏物語を書くとどうなるか。

    松浦理英子(帚木)、日和聡子(蛍)は現代語訳の風情。島田雅彦(須磨)、桐野夏生(柏木)、小池昌代(浮舟)はもうちょっと柔らかく。江國香織(夕顔)、町田康(末摘花)は横文字も使ってさらにくだけて。角田光代(若紫)、金原ひとみ(葵)は時代を飛び越えて。

    町田康の末摘花が抜群に面白かった。光源氏がくだけすぎだし、ストーカー(笑)頭の中将もチャーミングで好感が持てる。次によかったのは桐野夏生の柏木。通常の訳とどんなふうに違うか、比べながら読むとより楽しめそう。

  • 各章ごとに、作者が変わる源氏物語。いろんな源氏が、楽しめる。

  • 性懲りも無く日和さん目当てで読んでみたのだが結果は流麗ながら凡庸、さすがにこの錚々たる面子の中では個性を発揮するまでには至らず優等生的な現代語訳となってしまったようだ。
    ではその錚々たる方々はどうかというと…町田町蔵は反則(大笑い) 、金原ひとみは我が道を突き進み、角田さんは技あり、意外な伏兵は小池さんか。
    しかしやはりこの歴史的レディコミの怪物をさらりと退治してしまうのは江國さん。きっと式部と共鳴する琴線を持っているのだろう、まるで違和感のない夕顔は九篇のなかでも一押し。
    原点を知る人も知らぬ人もそれなりに楽しめる企画本かな…私はこれ以上知るつもりはないが

  • 9人の現代作家が描く源氏物語。
    一人一帖を受け持って、それぞれの解釈やら超訳やら。
    読みやすい現代語に訳したものあれば、おもいっきし視点を変えて再構成したものあり。現代に置き換えたもの、異国の物語になったもの、なんでもありなアンソロジー。

    大変おもしろかった。
    企画的に大勝利なんじゃないだろうか。
    特に以下の4帖がお気に入り。
    源氏物語について詳しくなくても読めそう。知ってたらより楽しいけど。
    勿論他の話もおもしろい。

    ・江國香織『夕顔』
    江國香織作品の雰囲気をすっぽり被ってしまった。
    個人的に従順で儚くて可愛い夕顔という女君はあまり好きでなかった。何考えてるかわからないし。
    でも、この人の描く夕顔はすごい良い。

    ・町田康『末摘花』
    この作品を読む為にお金を出しても惜しくない!
    源氏視点で、末摘花との場面を描くんだけども、笑いが止まらない。ボロボロな言われようの頭中将が哀れだ。大輔の命婦もいいキャラだ。
    こんな主人公で54帖続いてたら大変身近な気分がしてしまう。
    突然虚無的になってびっくりだが、それも良い。

    9編のオムニバスの中、私の一番はこの作家。確実に。
    今までこの人を知らなかった。今度この人の本を買おう。

    ・桐野夏生『柏木』
    桐野夏生は凄い。
    女三宮視点からの物語は初めて読んだ。
    紫の上と対比して幼稚で浅はかで、お人形のようなイメージがあった女三宮。しかし、この作品では皇女としての自覚を持った女三宮が居て、老境の源氏の身勝手さを責め立てている。
    「わざと」柏木に姿を見せた彼女の心境が新鮮だった。
    目から鱗な感じで大変おもしろかった。
    話の筋を知ってるはずなのに、また面白い読み方ができて嬉しい。


    ・小池昌代『浮舟』
    源氏物語最後の女君、浮舟。
    薫と匂宮の二人に慕われ、悩み苦しんだ浮舟のお話。
    独身で定年間近の現代の女性が夢の中で見た浮舟の姿。
    最後の濡れた服が暗示するのは何だろう。
    どちらが夢なのか。そういうぼんやりした雰囲気が良い。
    どっちにも決めない浮舟についてもあんまり好きじゃなかったんだけど、これもまたちょっと好きになった。


    金原ひとみの『葵』は生々しすぎてちょっとなー。
    その生々しさで、是非とも六条御息所のところを書いて欲しかったなー。

    なにはともあれ大変面白いアンソロジーでした。満足。

  • 好きな作家のアンソロジーだったので読んでみたり。源氏物語といえばやはり「あさきゆめみし」だなと…。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:913.68||N
    資料ID:50800748

  • この本は現代の作家が各自、自由に書くように
    企画されてのものなのだろうか。
    そうだとしても、皆が好き勝手に書いていて
    全体のまとまりがなさ過ぎて、わざわざ「源氏物語」
    をこうして取り上げる必要があったのだろうか?
    という気がした。
    でも、冒頭の「帚木」(松浦理英子)から「夕顔」(江國香織)
    までの流れは自然に文章がつながっている感じでよかった。
    江國版「源氏物語」を読んでみたい。
    私は葵の上がすきなので、それを書いた金原ひとみさんに
    期待したが、原典まったく無視の乱暴さにゲンメツした。

  • これの「夕顔」が素晴らしいというので読んでみた。


    確かに素晴らしい。というか、やっぱり「夕顔」が良い。
    光源氏は夕顔が一番好きだったんだろうなというのが個人的な解釈なので、一番好きな巻は夕顔ですね。


    源氏物語は、寂聴訳しか読んだことなかったので、他の人の訳で読むのは非常に新鮮でした。
    寂聴訳はちょっと上品過ぎて微妙かなと思ってましたが、他の人と比べてわかったんですが、凄く上手な訳だなあと思います。
    違和感なく現代語訳するのは相当難しいんでしょうね。
    妙に現代的にしすぎるとそれはそれで違和感が出てしまうし、古めかしすぎると伝わらない部分が多すぎる。
    そのバランスという意味では、寂聴の訳本はかなり素晴らしいんじゃないかと思います。

    宇治十帖はほぼ入ってませんが、源氏物語の大略を掴むという意味では面白い本だと思います。
    あと、作家の個性が如実に現れているので、その辺も読みどころなのかなと。

  • 原作のイメージを壊さないものから打ち砕くものまで。幅広い解釈の源氏本。

  •  いつかは読みたいと思っていた物語の一つに「源氏物語」があります。
     新訳にチャレンジした事も数知れず・・・新訳の筈なのに、意味不明に陥り、ことごとく挫折。自分には理解出来ないと諦めたり、諦められなかったりの繰り返しでした。この本も図書館の棚で見かけたて、また性懲りもなく、どうかな~と手に取ってみました。

     現代用語に訳しているものだと思っていたら、かなり違っていました。
     新訳、現代風会話にアレンジ、話を基に場面を変えてとそれぞれに嗜好を凝らしてあって、不気味に思ったり、笑ったり悲しくなったりと案外楽しめました。
     
     

  • 出来の良い作品と不出来なモノの差があり過ぎて全体として過小評価にせざるを得ない、、哉。

  • 江國さん、そして久々の金原ひとみさんが気になって手に取りましたが
    題材が源氏物語。現代語訳でかかれてるのですがだいたいを読みにくかった。
    まぁ苦手分野ってだけですが

  • 源氏物語でアンソロジーを作るっていう発想がすてき。
    町田康さんと桐生夏生さんのが特に好きだなあ。
    完璧じゃない光源氏が好きみたい。
    性格歪んでるくらいがお話として面白いの。

  • 古典の授業でちょびっと習ったのと、現代語訳で1回読んだっきりの「源氏物語」。知識不足で、比べてどうなのか分かりません。原作を気にせず楽しめたのは、金原、町田、小池の三氏の作品です。特に町田氏のは笑えました。「末摘花」、というのもありますが。
    表紙のタイトルの筆書が、翻訳され欧米の書店に並んでいる日本文学の表紙に通じるものがある気がして苦笑しました。

  • たなぞうで教えてもらった本です。

    「白の祝宴」以来、源氏と細い糸で繋がっている感じが、なんか嬉しいです。

    9人の小説家が描く彼らなりの源氏物語。
    江國香織による「夕顔」が、源氏に会った時点で人生を余生を考えていた故の、あのふわふわ感だったのだ、とか、源氏の独白のぶっとびぶりに爆笑の町田「末摘花」(これは新解釈なんてもんじゃないよね、もうパンクだぁ!)とか、数々のうかつさを示すエピソードが実は確信犯だったという桐野夏生「柏木」の女三宮とか。(源氏が年取って口うるさい、というのも、絵柄として浮かんでくるのが可笑しい。)

    シェイクスピアと同じで、どんなアレンジも許してしまう源氏物語を持っている日本国民は幸せなのだなぁ、なんてまで思ってしまった次第。(*^_^*)
    面白く読みました。

  •  源氏物語ベースの短編集。もっといろいろアレンジされているのかと思っていたが、意外に原典よに感じられた。
     源氏物語を読んだことがないため(古典の授業で部分的にしか)、こういうストーリーなのかと思ってしまい、どのあたりがアレンジされているのかわからなかったのは、ちょっと悲しかった。

  • 11/04/26 新潮文庫発売予定。

  • やっぱり、作家さんによって好き嫌いがあるので、もうひと声といった感じですかね。

  • 角田光代、江國香織、桐野夏生、町田康、金原ひとみなど、人気作家9人が、源氏物語から一つの章を選んで、現代風に換骨奪胎したパロディ小説集。


    たとえば、角田光代の「若紫」は、少女の紫の上が、何らかの事情で身売りにあってキャバクラで働いているという設定で、そこにやってきた得意客の若くて美しい源氏が、身請けするという話。生娘のはずの紫の上が(だいたい8〜12歳くらいの設定のよう)、源氏に出会った事をきっかけに、本能的に媚態を演じている自分に気づくという解釈が新しくてよい。


    しかし、断トツで面白いのは町田康の「末摘花」。劣等感のある人間のぐにゃぐにゃとした内面を描かせたら随一のこの作家が「末摘花」を選ぶとあって、絶世の不美人である末摘花の自意識を浮き彫りに?と期待していたが、予想を美しく裏切って、光源氏の自意識を現代ジゴロ風に(しかもかなりパンクに)解釈しなおしていた。


    源氏の「貴族で楽器も歌も超絶にうまくて玉のように美しい俺」の、色好みで自堕落な自意識のありようを余すところなく描いている。粗末な家に住んでる末摘花に、「あえて質素で粗末なところに住んでいるのだから、逆説的に真実の愛を知っている人に違いない」と身勝手で強引な誇大妄想を抱き、無理矢理押し倒しちゃって、翌日に顔を見たら失望して、それでも自分の対面を重んじて嫌々ながら面倒を見る。


    末摘花が壁越しに琴を弾く場面では、「ミュートして音がぜんぜん聞こえない」とムズがる源氏に爆笑!ミュートて!笑


    もうひとつ面白いのは「頭の中将(とうのちゅうじょう)」の描き方。オリジナルでは源氏の血縁つながりであり、ライバルであり、源氏と一緒に「抱きたい女の条件」について夜な夜な語り合っちゃうような男友達なのだが、町田康の創作では、「源氏に憧れているんだけど、その憧憬が執拗なかたちで表出しちゃう奴」と再解釈されていて、御忍びの帰りの牛車のなかで、横笛で「セッションしようよ」と強要してきたり、女を抱いた後になぜか庭からぬうっと顔を出して「寝たの?」みたいに話しかけてきたり、気持ち悪くて笑える。

    オリジナルストーリーから最も大胆に飛躍しながら、それでもなおこの物語をもっともよく解釈しているのが町田康なのではないかと思わせる、すさまじい筆力であった。

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