王国―その1 アンドロメダ・ハイツ―

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (134ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103834038

感想・レビュー・書評

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  • とても納得する言葉と、そうかな?と思うことが織り交ぜられて、
    私にとって不思議な感じのするお話だった。
    ストーリーの流れが、ではなくて、受け取る雰囲気が。

    友達は納得して会話を終える。
    ああ、これってできているものだろうか。
    いつも必ずなんの誤魔化しもなく、
    お互いの話を聞いて、納得できるものだろうか?
    違うところだけが目立って、納得もできずに終わることってないだろうか。

    匂いで物事を感じてしまうところが、
    ある意味楓の能力よりもどきっとした。
    一体私は雫石にとって、どんな匂いがすることだろう。
    良い匂いである自信が、正直言って無い。
    特に精神が不安定なとき、きっと顔も匂いも
    駄目なことになってるだろうなと思う。


    何度か、涙ぐんで読んでしまった。
    インコのところとか、サボテンのところとか、片岡さんのところ。
    特に片岡さんは、絶対こんなこと言われて顔合わせていらんない、
    と思っていたのに、あっさりいい人だ、と思ってしまうくらい。

    第六感とか虫の知らせとよく言うけれど、本当に、
    人間はそういう力を持っていてそれが薄れてしまったんだと思う。
    残っている人や思い出した人が、
    超能力者や占い師として持て囃されているのだと思う。
    そしてそれは、自然を削ってしまったとか、
    自然の脅威みたいなものを忘れがちになっているせいなのだと思う。
    一番身近な『自然』が、自分自身の体なんじゃないだろうか。
    自分の体と対話しないで、無理にまかせてこき使っているから
    病気になったりするんじゃないだろうか。そんな気がする。

    そういう所謂不思議な力と言うのは、実は万全ではないものだ。
    昔話に出てくる神様が、人間ぽくて
    うっかりミスをやらかしちゃうのと似ている。
    楓だって、火事になってしまうと分かっていたら、
    もっと具体的なアドバイスをしたかもしれない。
    でも、そこまでは分からなかった。
    全てが起ってから、ああ、このためにサボテンを借りたのだ、と分かる。
    それは雫石や楓のおばあちゃんが言っていたように、力の本質だ。
    特別なことをしているわけでも、自分が格別すごいわけでもなくて、
    できることをしているだけ。仲立ちをしているだけ。
    そしてまた雫石自身も、
    「何故もっとちゃんと教えてくれなかったんだ」ではなく、
    「お陰で一部のサボテンは助かった」と思えるからこそ、
    力が正しく作動したのだと思う。

    こんな風に、しかもすぐに、感謝の念を覚えることができるだろうか。
    恨み言じゃ無しに。私は。

  • さあ始まったって感じ。
    よしもとばななの世界。

  • 「自分が何かしてあげている気になったときがおしまいのときだ。」

  • よしもとばななのライフワークだそうだ。このシリーズはその4まであって、完結編のその4は新潮の2月号に一挙300枚掲載された。もちろんこれも読ませていただいた。というより、即読まずにはいられなかった。もともとよしもとばななは大好きな作家の一人だが、この「王国」はよくまとまっていて、素晴らしい出来栄えだ。「その1 アンドロメダ・ハイツ」は主人公の雫石(これは名前だ。苗字ではない)が、筋書きの前提となる出会いと別れを経て、火事にあうまでの話だ。筋は読むときのお楽しみとして、よしもとばななの小説は、別に筋立てが面白いわけではない。雫石のその時々の思ったこと、考えたことを綴っているだけのことだが、それがまことに親近感を抱くというか、その運命についつい共鳴してしまうというか、とにかく引き込まれてしまう。その文体は才能というしかいいようがない。結果的にこの「王国」という物語は、雫石の一生とさらにはそれに続くもの(まあ、子供のことなのだが)の話であり、ある意味で壮大な広がりを持つ。まさにおすすめ中のおすすめである。ぜひ、あらゆる人たちに読んでほしい。よしもとばななは現在の日本の最も優れた小説家の一人であることは疑いない。ちなみに、副題の「アンドロメダ・ハイツ」というのは、イングランド出身のパディ・マクアルーンを中心に結成された「プリファブ・スプラウト」というバンドの6枚目のアルバムの名前だ。 有名なバンドだから知っている人は多いだろうが、じつにすばらしいバンドなので、ぜひ聞いてみてください。

  • わたしは、よくテレビに出てくる超能力者や霊能者を
    まったく信用していません。でも、この小説に出てくる
    楓という青年のちからは信じています。

    この小説に出てくる「ふしぎなちから」というのは、
    なにも、だれかの病気を治してしまう能力や、前世とか
    先祖と会話ができるといった眉唾なちからではなくて、
    本来、人間が持っていただろう野生の感というか、そういう
    ちからのことで、そのちからのことを説明しようとすると、
    やっぱり眉唾ものの説明しかできなくなるのが悔しいくらいで。

    副題につけられた「アンドロメダ・ハイツ」はわたしの大好きな
    アーティスト「プリファブ・スプラウト」の曲のタイトルで、
    そんなことも相まって、とにかく、この作品が大好きなのです。

  • ばななさんの文章が自分の心にぴたりとはまってしまった1冊
    ゆったりと穏やかで心に残りました。
    もちろん、さぼてんは買いました♪

  • 2003/5/18読了

  • 全3巻

  •  雑誌の星占いなんかは読み流すけれど、占いの館に出向くなどということは
    一回もしたことがない。

    若い頃、職場の同僚に行きつけの占い師がいると聞き面食らったりした。

    そんな私が一年ほど前、ちょっとしたきっかけで女性の占い師と知り合ったのだ。
    その頃の私は悩み事があって、ネットの世界へいつも逃げていた。

    そのネット上で知り合ったわけだが、彼女は「あなたとは直接お話をする必要がありますね。」
    と言って電話をしてきてくれた。


    彼女は「占いはむやみに利用するべきではない。占ってもらう人は必ず代償をとられるのです。
    それは自分の命、大切な人の命かもしれない。」といくつかの話を教えてくれた。


    結局私は占ってもらったわけでなく、「なんでも他人のせいにしがちなあなたは、目を背けずに
    自分の醜いところを見て。自分が変わらないと相手も変わらない。」とありがちなことを言われただけ。

    でもその言葉には何かずっしりと重いものがあった。


    彼女との関係はその一瞬だけ。
    縁というのものの不思議さも知った。

    今も相変わらず悩みは続いているけれど、それは私が自分の醜いところから目を背け続けている、
    いや見ているとしても、変われないからだろう。


    彼女が「本をたくさん読むといいですよ。」と言っていた。
    もともと本はたくさん読むほうだったけど、当時はネット依存で活字は完全に遠のいていた。

    その彼女が薦めてくれたのが「よしもとばなな」だったのを思い出した。
    このアンドロメダ・ハイツに彼女と全く同じ空気を感じた。

  • 2009.9.1 家の本。
    よしもとばななの本ってストーリーとか関係なくて人生における教訓、自然界の教え、などが書かれた発言集、ありがたいお言葉集みたいなもんだよね。

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著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

よしもとばななの作品

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