- Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103957034
作品紹介・あらすじ
「診察したいんです。あなたのセックスを」体の痛みを喪った青年は、その若い麻酔科女医にとって舌なめずりしたいような実験材料だった。他者への共感を生来持てなかった彼女は、快楽の在処を確かめるべくセックスを繰返す。痛みと愛を前提にこの世が成立っているのなら、私たちはその向う側を目指すべきじゃないかしら……。人間の倫理とDNAを決壊させる長編小説。
感想・レビュー・書評
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美しくスマートな女性麻酔医師、万浬。ペインクリニックに勤務し、痛みに常に注目している。ある人から紹介され、爆破テロに巻き込まれ身体的に痛みを感じなくなった森悟と出会い、肌を合わせることで感覚、痛みを研究してゆく…。痛みは普通に感じるので、痛みの仕組みや重要性などあまり考えなかったけれど、なかなか深く掘り下げられ。それにからめて、森悟の痛みの原因となった背景、万浬の家系が語られ物語は深くなる。体に痛みを感じない人と心の痛みを感じない人、その内容をどう書いてゆくかだけでも興味ある。下巻がどう展開されるか、万浬のその後が非常に楽しみである。心に痛みを感じないというのもあるけれど、万浬は超人(?)っぽく書きすぎかなあといった感。
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心に痛みを感じない女医の万浬。体に痛みを感じない森悟。万浬は研究の素材として、森悟は万浬の魅力に惹かれ、互いが互いを深く求め合うようになる。
それぞれの章で、万浬の母親や祖母の物語があり、万浬がこういう性質になったことの側面を知ることができる。また、森悟はテロの被害に遭い、そうした体になったのだが、森悟のエピソードも興味深い。
この作品には、かなりエロティックなシーンが多いのだが、ともすればただのエロ本になり得るところを、そうしたエピソードを描くことで物語を深みのあるものに仕上げている。
問題は下巻。私の中ではまだどっち付かずの感想。面白くなるのか、読まなければ良かったと思うのか。作者のお手並み拝見といこう。-
読む予定の本にあるんだけれど、どうも残念風の内容のようですね。そう覚悟して読んでみるとします!読む予定の本にあるんだけれど、どうも残念風の内容のようですね。そう覚悟して読んでみるとします!2018/06/12
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2018/06/14
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天童ワールド炸裂。テーマは肉体的・精神的両方の痛みだ。心の痛みを感じられない女医の主人公万浬と、テロによって痛覚を失った森悟が出会う。痛みを追求する万浬は何を求めどこへ行くのか…。「サイコパス」という言葉を思い浮かべながら下巻へ。
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この本を書くに構想20年って書いてあったけど、作者は20年もこんなこと考えていたんですね‥‥‥
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痛みって奥が深い。
…って気付かされた上巻でした。 -
人間にとって「痛み」とは何か?何とか痛みから逃れたいという苦しみ、逆に痛みを感じないことの辛さ、怖さについてフィジカル・メンタル両面から掘り下げ、刺激的なストーリーで楽しませる。
主人公・万浬はペインクリニックで勤務する優秀な若手麻酔科医。彫りの深い美貌の持ち主で、幼い頃から痛みに強い関心を抱いていた。
だが、医学生の頃から多くの医療関係者と性的関係を持ちながら、彼らに冷ややかな対応をするというモンスター的な一面も持っていた。
彼女は、院長を通して無痛症の青年のことを知る。彼は、海外でテロ爆破事件巻き込まれた影響で痛みを失っており、彼女にとっては格好の実験台になった。
ここから、この本のクライマックスとも言える官能的な場面展開となり、万浬のセクシーかつ異様な実像が存分に描き出される。 終盤では、冷悧だが大胆で、精神的な痛みを感じない彼女の生い立ちが、ミステリーの謎解きのように明らかにされる。
原因の見いだせない耐え難い痛み、人それぞれに違う痛みがあること、逆に痛みは生命維持、健康維持のための大切なサインであり、それが感じられなければ命の危機にさらされること、痛みを感じない人間には刑罰は役に立たないなど、考えさせられる要素も多々散りばめられており、単なる興味本意のエンタメ小説ではないと感じた。 -
こんなに痛みと向き合ったことはなかった。
痛みのないという苦しさ
痛みがあるということの当たり前のことの良さ「?」
とにかく読むのも苦しくなったこともあった。 -
痛みとはなんだろう。
心の痛み、体の痛み、その関係とは。
それをわかりたいために
心の痛みを感じない主人公が
医学の知識で科学的な意味合いの性行為を繰り返す
これでもかと性描写があるが
エロというより芸術的な描写
とはいえ決して美しくもない
どーなるんでしょ。 -
生まれながらにして心の痛みを感じられない麻酔科医・万浬と、業務中に爆発テロに遭い身体の痛みを感じられなくなった青年・森悟。
痛みについての研究をずっと続けていた万浬にとって、森悟はまさに探し求めていた逸材だった。
痛みと、愛と、セックスと。果たしてそこにつながりはあるのか?人類にとって痛みとはなんなのか?人間の深淵に迫る傑作長編。
まだ前編なのですが、すでに読み進めるのが惜しいほど信じられないくらい面白い。
第二部で語られる万浬の生い立ちが衝撃に満ちている。母親のイレーヌ、父親の十市、祖母の陸子の代にまで遡る「痛み」との因果。
痛みとは底なし沼だ。私たちは心やからだの様ざまな痛みに捕らわれ、かつ救われている。自ら望んで痛みを引き受けている。痛みは甘やかで、愛や幸福や快楽につながっている。
しかしまた同時並行的にその痛みに苦しめられ、取り除こうと馬鹿馬鹿しくもがき続けるのである。なんて野蛮で愚かなんだろう。
進化を遂げた痛みを感じない者は、人類史上で新しいモデルとなり得るのだろうか?戦争や苦しみやいっさいのしがらみから逃れて、古い脳の上に新しい脳が生まれるように。
でも私は痛みからは逃れられない。どうしようもなくその事実に気づいてしまった。私は痛みを愛している。
痛みを感じることのない万浬は、精神を病んで痛みを失った母親とも最後の最後まで嘘を言い合うしかなかった。最も良き理解者である祖母にも嘘で答えるしかなかった。理性でもって脳は意図して騙せるのだ。
万浬の存在は、絶望や虚無である以上に、本当に希望で救いなのだろうか。
ぐるぐるぐるぐる考えさせられながら、目が離せないストーリーに翻弄される、とにかく面白い小説です。
性描写も理系のセックスというか、こうすると脳からこのホルモンが分泌され快感になる、こうすると脳からこの信号がでて身体はこう反応する、といかにも研究や実験のようでした。納得してしまった。
下巻も楽しみすぎる。