- Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104004270
感想・レビュー・書評
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いやぁ、予想以上に面白かったです。
本書、宮城谷昌光氏の随想となっていますが、つまり昔の様々な出来事を思い出しながら執筆されたエッセイ集と言えるでしょう。
著者が、色々な出版物で依頼されたときの作品も多数含められているようです。
著者本人も、一人の作家の随想なんて読んでも、読者はオモシロイとは思わないんじゃないかというようなコトワリを書かれていましたが、どうしてどうして、下手なショートショートを読むよりも格段に面白かったです。
著者については、歴史作家のイメージで定着していましたが、意外な側面を多数紹介されていました。
クラッシック音楽や陶磁器、カメラにのめり込んだ経歴の持ち主かと思えば、英語の学習塾をされていたり、かと思えば競馬で生計をたてていた時代もあるとか(笑)。
しかしいずれにしても、そののめり込みようが半端ではない。しかも、好奇心のアンテナの感度が素晴らしい。反応しないかと思う対象にも、反応してしまったりする。
博学で、しかもボキャブラリーが恐ろしいほど豊か。そして文章が美しい。カッコイイ作家ですね。よりファン度が増しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
・石水院は高山寺内の建物で、国宝である。石水院のなかにはいり、明るい縁側にすわってみる優雅な赤松の多い山容は絶景である。京都では、どこかへゆくより、この風景を観るために石水院にきたほうがよい
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エッセイ集である。採録された物はこれまでこうして単行本としてまとめられなかったものばかりと思われるが、年代や初出の先がバラバラである。
古くは91年の物から、最近では14年の物まで、元は小説新潮での連載が半ば以上を占めている。
その意味で、前半の小説新潮連載分のまとまりに比べると、全体的にはやや雑多な感も否めないが、なんにせよ、ひさびさに宮城谷先生の随筆に触れさせていただいた。やはり上手い。描写の美しさに心惹かれるところなど、らしいなと。
写実的な描写が写真趣味から来ているだろうことを指摘しているところなどは興味深く読ませていただいたし、見合いの話などの私的な話は初出であろう。
ファン向けではあろうが、良い一冊だった。星としては四つ半と評価している。