薬指の標本

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著者 : 小川洋子
  • 新潮社 (1994年10月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104013012

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薬指の標本の感想・レビュー・書評

  • 「薬指の標本」
    標本技術士の男から贈られた靴はぴったりと足に合った。
    ある日、靴磨きの男に言われる。
    今すぐ脱がなきゃ逃げられない。もう靴は足を侵食し始めている。
    けれども彼女は思う。
    靴を履いたまま彼に封じ込められていたい。
    「六角形の小部屋」
    プールで見かけた女性の、何が彼女を引き留めたのだろう。
    彼との約束に送れると思いながら、少し言葉を交わした。
    ある日スーパーで彼女を見かけて、そのあとを付けた。
    青年に呼びかけられて入った部屋の片隅に、それはあった。

  • 標本師と言う透明感あふれる設定だが、ややマゾヒスティックな恋愛がえがかれている。

  • 標題作と「六角形の小部屋」の2編からなる作品。なんとも言えず淫靡な世界を静かな言葉で紡いでいくような物語。
    読みながら背中がひんやりとするような感じ。

  • 小川洋子作品はいつも、現実感と非現実感のバランスが絶妙だと思う。
    ボタンを一つだけ掛け間違えた世界、という印象。
    掛け間違えているのは、こちらの世界なのかも知れないけれど。

    標本、浴場、靴。
    美しいそれらを静謐な文章が繋いでいく。
    標本は自己愛の表れなのだろうと思った。
    失われた時間を磔にしておきたいと思う時点で、それは単に自分のためだ。
    それがどんなに温かい記憶であっても。
    ただ一人、人との繋がりでなく、自分自身だけを閉じ込めた主人公を読み終わってすぐは好きになれなかったけれど、少し時間を置いて思い返すと一番潔かったのかも知れないと思った。

    この作品は十年ほど前にも一度読んでいるのだけど、読後感が異なる。
    またしばらく経ってから読み返してみたい。

  • 人の悲しみや痛みを象徴する品を「標本」にすることで、それらの感情を封じ込め、分離し、完結させる「標本室」。――『薬指の標本』

    街の片隅の空家に設置された「語り小部屋」。その内部の濃密な空間で、人々は言葉を紡ぎ、自分の内面へと降りてゆく。――『六角形の小部屋』

    なんかこう、静かーな、大人っぽーい短編2篇。
    つまらなかった訳ではない(それどころか「標本室」の設定に心奪われまくり)けど、読後感は「ふぅん……」でした。好きな人には堪らないんでしょうねー私にはわかんないけど、みたいな。

    だって……”全裸に革靴”……でしょう……?

    想像するだけで私はちょっと笑っちゃうんですけど、でも考えてみたら私が愛してやまない某ミュージカルだって、知らない人にとっては「ぴったり全身タイツに派手なカツラとメイクで猫の真似する変な人たち」にしか見えない可能性が大なわけで。フェティシズムって難しい。

    帯には「あまりにもフェティッシュな、そしてあまりにも純粋な恋愛。」の文言が。
    まあ、帯がそう言うんだったらそうなんじゃないですか?嗜好って人それぞれですもんね!と現代人らしい当たり障りのなさで本を置いたのでした。

    それはそうと文庫版の表紙の方が10倍くらいかっこいい。

  • 2編の関連のない短編からなる一冊 なんなんだろう、離別の余韻がすごい ぐっと盛り上がる話ではない ただただ残る

  • 以前の職場であるサイダー工場で薬指をなくした私。そのわたしの次の職場はなんでも標本に出来る標本技術師である弟子丸氏の職場である不思議な標本室。
    文句のつけようがない、フェティッシュな恋愛小説。
    デートの場所であるかつて浴場であった場所、プレゼントされた革靴、靴と同化する事を望む私。
    弟子丸氏の言葉も行動もシンプルなんだけれど、それが私の心を捉えて離さない。
    結構酷い事をされていたりするのですが…。
    薬指の浮かんだピンク色のサイダーが浮かんだり、標本室が想像出来たり、その世界にとことん浸れます。
    小川洋子さんの文章が美しくて、そこでどんどん惹き込まれていくのかも。
    フランス映画のようだ、という感想を多く見ましたが、まさにそれだなと思いました。
    実際フランス人の監督で映画化されていますもんね。


    静かな部屋で、静かな夜に、読みたい本です。

  • 冷たい。
    無機質な雰囲気。
    でも、そこに渦巻くのは人間。人の心。
    どうしようもない、自分。

    読むほどに刺され、苦しみ、震えた。
    それでも、読まずにいられなかった。

    読書でこんなになったのは、久しぶりだった。

  • 「薬指の標本」、「六角形の小部屋」の2篇。

    二作品とも短篇で、小川洋子さんの世界が現れている。
    とても、おもしろくよんだ。

    不思議な世界。

  • あなたのための・・・

    【内容】
    中編二編。
    たまたまそこに勤めはじめた女が体験した、個人的な標本を作ってくれる不思議な標本室でのできごとを描く表題作。
    ただその中でとりとめなく自分のことを語るだけの部屋を描く「六角形の小部屋」。

    【感想】
    解釈する必要はないのでしょう。
    詩的空間をただ感じればいい。
    それ自体はたとえばクラフト・エヴィング商會が紹介してくれるような奇妙な商売を。

    (2013年02月11日読了)

  • 標本屋。六角部屋の中で懺悔
    靴磨きのおじさんはちょっと蛇足
    風呂場のタイルがつめたいから夏に読む

  • 職場の娘のオススメで読んでみました

    ススメられなければ読んでなかった読めてよかった

    まあなんという男弟子丸氏女をその気にさせる技

    浴場へ誘ってくれるのかどうか、私もそわそわしたからぁ

  • 【薬指の標本】
    清涼飲料水を作る工場に勤めていた頃、機械に指を誤って挟んでしまい、左手の薬指の先の肉片が、ほんのわずか欠けた。

    それから偶然見つけた標本室で、様々なモノに個人的な思いを抱いた依頼人たちを満足させるように対応し勤め始めた。

    いくつもの出来事が、やがて一つのつじつまの合う事実に結び付くまで
    読んでいくうちに主人公より先に結末が見えてしまい余計ドキドキする。

    【六角形の小部屋】
    「意志や努力が既に運命なのだと、」
    「自分の足で心の奥底へ降りてゆく意志」
    誰に話すわけでもなく、自身に問い掛けるべき言葉はなかなかよろしい。

    スタバで結構読めた。
    内容しっかりで読みごたえがある)^o^(

  • ふとした時に読み返したくなる。

  • (2005.08.22読了)(2004.06.13購入)
    この本には、2つの中篇が収められています。「薬指の標本」と「六角形の小部屋」です。不可思議な雰囲気が漂っているので、ちょっとミステリアスな小説となっている。

    ●「薬指の標本」
    「私は海に近い田舎の村で、清涼飲料水を作る工場に勤めていた。ある夏の、一年中で一番出荷量の多い大忙しのある日、私はサイダーを溜めたタンクとベルトコンベヤーの接続部分に、指を挟まれてしまった。幸運なことに怪我は大した事はなかった。左手の薬指の先の肉片が、ほんのわずか欠けただけだった。あの事故のために、私はサイダーが飲めなくなり、工場をやめてしまったのだった。欠けた薬指と一緒に私は街へ出た。」
    街を歩き回っているうちに、標本室の求人広告に出会った。標本室の仕組は、「まず、標本にしてもらいたい品物を持って、来訪者が現れます。あなたは必要な手続をした上でそれを受け取り、僕は標本を作製します。そして、それぞれの標本に見合ったお金を受け取ります。」標本室には、雇われた、私と、「経営者であり標本技術士である弟子丸氏の二人だけです。」「ここは昔、女子専用アパートだったんです。入居者が減って寂れてきたのを、最後まで残った二人のご老人はそのままで、標本室として買い取ったのです。」
    「家が火事になり、父と母と弟が焼け死んで、私だけ助かりました。」という16歳くらいの女の子の依頼で作製したというきのこの標本を見せてもらいました。「火事の次の日、焼け爛れた地面に、このきのこを見つけたんです。三つ寄り添って生えていたので、思わず摘み取ってしまいました。いろいろ考えて、ここで標本にしてもらうのが一番いいだろうと思いました。燃えてなくなってしまったものを全部、きのこと一緒に封じ込めてもらいたいんです。」という依頼でした。
    「作製された標本は依頼者には返しません。標本は全部、僕たちで管理、保存するんです。依頼者たちは、好きな時に自分の標本と対面することができます。でも、ほとんどの人がもう二度とここへは現われません。封じ込めること、分離すること、完結させることが、ここの標本の意義だからです。繰り返し思い出し、懐かしむための品物を持ってくる人はいないんです」
    私は、弟子丸氏から黒い革靴をプレゼントされた。私は毎日、黒い革靴を履いて標本室に通った。「靴は軽やかで、歩きやすかった。ただ、両足に透き間なく吸い付いてくるように感じることがあった。」
    依頼者の靴磨きのおじさんが、私の履いている靴を見て、「いくら履き心地がいいからって、四六時中その靴に足を突っ込むのは、よくないと思うよ。靴と足の境目が、ほとんど消えかかっているじゃないか。靴が足を侵し始めている証拠だよ」といった。
    きのこを標本にしてくれるよう依頼した少女が再び現れ、頬の火傷を標本にして欲しいという。弟子丸氏に相談したら、依頼を引き受け、少女を標本技術室へ連れて行った。彼女が標本技術室から出てくるのを確認できなかった。
    私は、失った薬指を標本にしてもらうことにし、標本技術室のドアをノックした。

    著者 小川 洋子
    1962年 岡山市生まれ。
    早稲田大学文学部卒。
    1988年 海燕新人文学賞を受賞。
    1990年 『妊娠カレンダー』により芥川賞受賞

    (「BOOK」データベースより)amazon
    靴みがきは予言した。“今すぐ脱がなきゃ、逃げられない。絶対にこの靴はお嬢さんの足を自由にしないよ”―標本技術士から贈られたその黒いハイヒールには恐ろしい秘密が隠されていた…。あまりにもフェティッシュな、そしてあまりにも純粋な恋愛をひそやかに語る表題作ほか。日常の裂け目に絡めとられてしまう女を独特の透明感漂う文体で描く珠玉の二篇。

  • 弟子丸さーん!!!
    僕がもっと喋れたなら、この標本室に勤めたいと思った。
    何て静かに束縛する人なんだろう。
    僕も弟子丸氏にプレゼントされたい\(^p^)/咲←

    『六角形の小部屋』も凄く静かな雰囲気。
    頭の中ではつらつらと言葉が湧き出て来るのに、実際に口に出して言うと、駄目なんだよなぁ…
    でもそんな僕でもこの小部屋に来たら難なく話す事が出来るのだろうか。

    この人の書くお話って何て静かで儚いんだろう。
    好き!
    機会が有ったら他の本も読んでみたいな。

  •  私の面白い面白くないの判断基準のひとつは、読み終わったあと。面白かった小説は何度も何度もお気に入りの場面や、心に残ったせりふが頭を駆け巡る。
     今回は残念ながら駆け巡らなかった。可も無く、不可も無く。

  • 「薬指の標本」「六角形の小部屋」の2編が収録されている単行本。どちらも設定が面白くて時間を忘れてしまう。「単なる好奇心・興味が日常を一変させてしまう」共通点はそれだろう。あとなんだか不健康そうな世界だなあ、と。書かれたのは13〜15年前なのにちっともそれを感じさせない(ポケベルが出てきたのは流石に時代を感じた) 読んでいる間、濃い紫の色が思い浮かびました。

  • 大学の友達がこの作品に惚れ込んでいて、
    その影響で読んでみた作品。
    一度読んだときは???な感じだったけど、
    読めば読むたびにはまって来ました。

    小川洋子を読み始めるきっかけになった本。
    だけどこの作品が一番好き。

  • 【メモ】表題作/六角形の小部屋・「薬指の標本」標本室、ソーダ工場で怪我した薬指、浴室、足を侵食する靴・顔の火傷の少女・地下室・「六角形の小部屋」背中の痛み、独り言を言う為だけの部屋、説明のつかない嫌悪、たどり着けたことが重要、時期(タイミング)

  • なんでも標本にしてくれる。
    私は何を標本にしたいだろう。

  • 雰囲気に浸れる小説。弟子丸氏は怪しいおっさんにしか思えないんだけど、みんな取り込まれていってしまう。みんな地下室にいるんだろうか。怖いなあ。

  • 誰しもが形で残しておきたいものを、標本にして預かってくれるというなぞの標本屋さん。主人公の彼女はどうして、それを標本にしたかったのだろう。

  • 主人公「わたし」は海辺の工場でビンにサイダーをつめる仕事をしていたが、ある日機械に指を挟まれ左薬指の先が欠けてしまう。
    その後工場を辞めて町に出て、弟子丸氏の標本製作所で事務員として働き始めた。
    色々な人が標本に封じ込めたい品物を持ち込み、できた標本は永久に標本室に保管される。
    この標本室には、標本にできないものは無い…

    静かで淡々としている。
    まったりしたい時には小川洋子。

    短いのであっさりと読み終わったあと、ぱらぱらと色んなイメージが残っている。不思議な話だ。
    夏の海辺のサイダー工場とか、古い集合住宅とか・・・(同潤会アパートみたいな感じなんだろうか?)じっくり余韻に浸ろう。

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