薬指の標本

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104013012

感想・レビュー・書評

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  • あなたのための・・・

    【内容】
    中編二編。
    たまたまそこに勤めはじめた女が体験した、個人的な標本を作ってくれる不思議な標本室でのできごとを描く表題作。
    ただその中でとりとめなく自分のことを語るだけの部屋を描く「六角形の小部屋」。

    【感想】
    解釈する必要はないのでしょう。
    詩的空間をただ感じればいい。
    それ自体はたとえばクラフト・エヴィング商會が紹介してくれるような奇妙な商売を。

    (2013年02月11日読了)

  • 標本屋。六角部屋の中で懺悔
    靴磨きのおじさんはちょっと蛇足
    風呂場のタイルがつめたいから夏に読む

  • 職場の娘のオススメで読んでみました

    ススメられなければ読んでなかった読めてよかった

    まあなんという男弟子丸氏女をその気にさせる技

    浴場へ誘ってくれるのかどうか、私もそわそわしたからぁ

  • 【薬指の標本】
    清涼飲料水を作る工場に勤めていた頃、機械に指を誤って挟んでしまい、左手の薬指の先の肉片が、ほんのわずか欠けた。

    それから偶然見つけた標本室で、様々なモノに個人的な思いを抱いた依頼人たちを満足させるように対応し勤め始めた。

    いくつもの出来事が、やがて一つのつじつまの合う事実に結び付くまで
    読んでいくうちに主人公より先に結末が見えてしまい余計ドキドキする。

    【六角形の小部屋】
    「意志や努力が既に運命なのだと、」
    「自分の足で心の奥底へ降りてゆく意志」
    誰に話すわけでもなく、自身に問い掛けるべき言葉はなかなかよろしい。

    スタバで結構読めた。
    内容しっかりで読みごたえがある)^o^(

  • ふとした時に読み返したくなる。

  • (2005.08.22読了)(2004.06.13購入)
    この本には、2つの中篇が収められています。「薬指の標本」と「六角形の小部屋」です。不可思議な雰囲気が漂っているので、ちょっとミステリアスな小説となっている。

    ●「薬指の標本」
    「私は海に近い田舎の村で、清涼飲料水を作る工場に勤めていた。ある夏の、一年中で一番出荷量の多い大忙しのある日、私はサイダーを溜めたタンクとベルトコンベヤーの接続部分に、指を挟まれてしまった。幸運なことに怪我は大した事はなかった。左手の薬指の先の肉片が、ほんのわずか欠けただけだった。あの事故のために、私はサイダーが飲めなくなり、工場をやめてしまったのだった。欠けた薬指と一緒に私は街へ出た。」
    街を歩き回っているうちに、標本室の求人広告に出会った。標本室の仕組は、「まず、標本にしてもらいたい品物を持って、来訪者が現れます。あなたは必要な手続をした上でそれを受け取り、僕は標本を作製します。そして、それぞれの標本に見合ったお金を受け取ります。」標本室には、雇われた、私と、「経営者であり標本技術士である弟子丸氏の二人だけです。」「ここは昔、女子専用アパートだったんです。入居者が減って寂れてきたのを、最後まで残った二人のご老人はそのままで、標本室として買い取ったのです。」
    「家が火事になり、父と母と弟が焼け死んで、私だけ助かりました。」という16歳くらいの女の子の依頼で作製したというきのこの標本を見せてもらいました。「火事の次の日、焼け爛れた地面に、このきのこを見つけたんです。三つ寄り添って生えていたので、思わず摘み取ってしまいました。いろいろ考えて、ここで標本にしてもらうのが一番いいだろうと思いました。燃えてなくなってしまったものを全部、きのこと一緒に封じ込めてもらいたいんです。」という依頼でした。
    「作製された標本は依頼者には返しません。標本は全部、僕たちで管理、保存するんです。依頼者たちは、好きな時に自分の標本と対面することができます。でも、ほとんどの人がもう二度とここへは現われません。封じ込めること、分離すること、完結させることが、ここの標本の意義だからです。繰り返し思い出し、懐かしむための品物を持ってくる人はいないんです」
    私は、弟子丸氏から黒い革靴をプレゼントされた。私は毎日、黒い革靴を履いて標本室に通った。「靴は軽やかで、歩きやすかった。ただ、両足に透き間なく吸い付いてくるように感じることがあった。」
    依頼者の靴磨きのおじさんが、私の履いている靴を見て、「いくら履き心地がいいからって、四六時中その靴に足を突っ込むのは、よくないと思うよ。靴と足の境目が、ほとんど消えかかっているじゃないか。靴が足を侵し始めている証拠だよ」といった。
    きのこを標本にしてくれるよう依頼した少女が再び現れ、頬の火傷を標本にして欲しいという。弟子丸氏に相談したら、依頼を引き受け、少女を標本技術室へ連れて行った。彼女が標本技術室から出てくるのを確認できなかった。
    私は、失った薬指を標本にしてもらうことにし、標本技術室のドアをノックした。

    著者 小川 洋子
    1962年 岡山市生まれ。
    早稲田大学文学部卒。
    1988年 海燕新人文学賞を受賞。
    1990年 『妊娠カレンダー』により芥川賞受賞

    (「BOOK」データベースより)amazon
    靴みがきは予言した。“今すぐ脱がなきゃ、逃げられない。絶対にこの靴はお嬢さんの足を自由にしないよ”―標本技術士から贈られたその黒いハイヒールには恐ろしい秘密が隠されていた…。あまりにもフェティッシュな、そしてあまりにも純粋な恋愛をひそやかに語る表題作ほか。日常の裂け目に絡めとられてしまう女を独特の透明感漂う文体で描く珠玉の二篇。

  • 弟子丸さーん!!!
    僕がもっと喋れたなら、この標本室に勤めたいと思った。
    何て静かに束縛する人なんだろう。
    僕も弟子丸氏にプレゼントされたい\(^p^)/咲←

    『六角形の小部屋』も凄く静かな雰囲気。
    頭の中ではつらつらと言葉が湧き出て来るのに、実際に口に出して言うと、駄目なんだよなぁ…
    でもそんな僕でもこの小部屋に来たら難なく話す事が出来るのだろうか。

    この人の書くお話って何て静かで儚いんだろう。
    好き!
    機会が有ったら他の本も読んでみたいな。

  •  私の面白い面白くないの判断基準のひとつは、読み終わったあと。面白かった小説は何度も何度もお気に入りの場面や、心に残ったせりふが頭を駆け巡る。
     今回は残念ながら駆け巡らなかった。可も無く、不可も無く。

  • 「薬指の標本」「六角形の小部屋」の2編が収録されている単行本。どちらも設定が面白くて時間を忘れてしまう。「単なる好奇心・興味が日常を一変させてしまう」共通点はそれだろう。あとなんだか不健康そうな世界だなあ、と。書かれたのは13〜15年前なのにちっともそれを感じさせない(ポケベルが出てきたのは流石に時代を感じた) 読んでいる間、濃い紫の色が思い浮かびました。

  • 大学の友達がこの作品に惚れ込んでいて、
    その影響で読んでみた作品。
    一度読んだときは???な感じだったけど、
    読めば読むたびにはまって来ました。

    小川洋子を読み始めるきっかけになった本。
    だけどこの作品が一番好き。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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