博士の本棚

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著者 : 小川洋子
  • 新潮社 (2007年7月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104013050

博士の本棚の感想・レビュー・書評

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  • 小川洋子さんの書評本。

    話題になった『博士の愛した数式』を中心にいくつか小川さんの著作を読んできたけれども、どこか無機質なものに対する関心が強い作家だとどこかで思っていた。『薬指の標本』『密やかな結晶』『寡黙な死骸 みだらな弔い』『完璧な病室』『ブラフマンの埋葬』などなど。。タイトルだけ並べてみても、生命の宿っていない「もの」自体か、死を感じさせるものばかりである。『博士の本棚』にはそんな小川さんの秘密が垣間見えるかもしれないと淡い期待もあったように思う。

    読んでの印象はなんと謙虚な方であろうか、ということ。作家をとりあげて語っていくところでも、あくまで一読者としての視点で、どこか作家に憧れている文学少女のような趣すら感じさせるところもある。とは言いつつも文章自体はけっこう骨太でとても地に足がついている人、という印象を受けた。小川さんの関心が数学のような、ともすると文学の領域外のようなところに及ぶところがあっても、自分の中の世界へ上手く取り込んで融和が図られている。それも、とてもゆるやかに。

    こういう方が愛する本はやはり惹かれてしまう。『富士日記』は最近別の本でも読みたい気にさせられたが、小川さんとの結びつきが強く連想される『アンネの日記』や、村上春樹さんの『中国行きのスロウ・ボート』。オースターなども自身最近ご無沙汰であったが、また読んでみたい。

    阪神タイガース好きなのもまたよし。

  • 至福の一時だった。
    始まりは小学校の図書室での思い出。
    静かな図書室で大好きな物語と向き合っている少女と、何も言わずにその時間を共有する司書の先生の関係がとてもうらやましい。

    愛に溢れた書評が多く、紹介されている本のほとんどを読んでみたくなったし、数は少なかったけれど読んだことのある本について書かれていると無性に嬉しかった。

    何度も読み返すことになると思う。

  • 「本」がすぐそばにある
    そんな暮らしをしている人には
    きっと 手を伸ばせは゛届くところに
    置いておきたい一冊になるでしょう

    「本」なんて ちょっと ごぶさただなぁ
    という人にとっても
    おっ こんな「本」があるのか
    と確実になる一冊になるでしょう

    「書物」そして「身の回りの小さなもの」
    に対する愛情がひしひしと伝わってきます

  • (2011.05.23読了)(購入時期・不明)
    本についての思い出、好きな本について、書評、等についてのエッセイを1冊にまとめたものです。「博士の愛した数式」の著者による本に関するエッセイ集に「博士の本棚」と名付けるとは何とも絶妙です。
    沢山の本を紹介してくれているのですが、小川さんに紹介されるとどれも読んでみたくなるのですが、小川さんのような感受性はないので、小川さんが感じたようには読みとれないだろうという気はあります。もし、小川さんが紹介していた本を読む機会があれば、その際は、小川さんの書評を読み返してみたいと思います。
    小川さんが、繰り返し言及している本がいくつかありますが、その中で印象に残ったのは、以下の三冊です。どれもまだ読んでいません。
    「アンネの日記」アンネ・フランク著
    「中国行きのスロウ・ボート」村上春樹著
    「富士日記」武田百合子著

    章立ては以下のようになっています。
    1、図書室の本棚 子供の本と外国文学
    2、博士の本棚 数式と数学の魅力
    3、ちょっと散歩へ 犬と野球と古い家
    4、書斎の本棚 物語と小説

    ●文学とは(103頁)
    もはや名前もわからなくなった人々を死者の世界に探しに行くこと、文学とはこれに尽きるのかもしれない(フランス人作家パトリック・モディアノ)
    ●小川さんの小説作法(103頁)
    これまで私が描いてきた人物たちには、ほとんどモデルはいない。一行目を書きつけ、実際に小説世界が動き始めるまで、彼らは名前もなく、輪郭もない存在として私の中を浮遊している。彼らがどこからやって来たのか、自分でもうまく説明できない。
    ただ、一個一個石を積み上げるようにして言葉を連ねて行くうち、次第に彼らは姿を鮮明に表わして来る。
    ●小学校の健康診断(116頁)
    私が本当に恐れたのは、保健室の先生ではなく、検査結果だった。もし座高がクラスで一番高かったら困る。きっと男子に笑われる。もし私の肺だけに何か妙なものが写っていたら?聴力検査のヘッドホンから、死んだ人の声が聞こえてきた場合、どうしたらいいのだろう。果たしてボタンを押しても構わないのだろうか。
    あるいは、私が台に上がった途端、機械が故障して、何千倍もの放射能が発射されるかもしれない。あるいは、歯医者さんがうっかり、私の喉の奥に、丸いミラー付きの棒を落とすかもしれない。
    次々と心配ごとがわき上がってくる。
    (こういう想像力が作家の資質なのでしょうか)
    ●棺に弁当(189頁)
    棺に納めるお弁当を作ることになった。死んだ人にお弁当を持たせるのは、聞いたことのない習慣だったが、考えてみればこれから長い旅に出発する人を見送るのだから、残ったものたちがお腹の心配をするのは当然のことだった。
    ●エゴン・シーレ(197頁)
    シーレはその時の私の心にすんなりと入りこんできた。特に人物画に引きつけられた。彼は数多くの自画像を残している。ほとんどが裸体だ。計算されつくした構図でありながら、装飾は一切はぎ取られている。しかも、愛する自己を他人にさらすことで完結する自画像ではない。拒絶の混じった目で自己を徹底的に分解し、その果てにあるものを引きずりだそうとするような裸体なのだ。
    ●「アンネの日記」(235頁)
    この日記が世界中で読み継がれてきた理由は、歴史的背景の意味を超える、すぐれた文学性にあると思う。思春期の少女の内面をこれほどまでに生き生きと描いた文学を、私は他に知らない。
    キティーという架空の友人に語りかけるスタイルを取ったことからもわかるように、アンネはただの一人よがりなつぶやきを書き記したのではなく、自分の世界を言葉で構築して他者に伝えようとした。十代はじめですでに彼女は、冷静さとユーモアを持った視点、個性的な観察力、言葉の豊かさなど、驚くべき資質を備えていた。

    ☆小川洋子のエッセイ(既読)
    「深き心の底より」小川洋子著、PHP文庫、2006.10.18(1999.07.)
    「犬のしっぽを撫でながら」小川洋子著、集英社、2006.04.10
    「物語の役割」小川洋子著、ちくまプリマー新書、2007.02.10
    「博士の本棚」小川洋子著、新潮社、2007.07.25
    「妄想気分」小川洋子著、集英社、2011.01.31
    (2011年5月26日・記)

  • 小川洋子さんが大好きなので、好きな本が似ていて嬉しかった。
    読みたい本がまた増えてしまった。
    書き手として優秀な人って、読み手としてもやっぱり優秀なのだなーと思った。

  • 実はこれがファースト小川本です。

    タイトルからして『〜愛した数式』つながりの本?との第一印象でしたが、開いてみると全く違いました。幼いころの愛読書や忘れられない本など、「作家・小川洋子を作ったもの」が詰まった読書本です。

    全体的にみると、採りあげられている作品は古典というより、比較的最近のものが多いように思います。本の批評といった点はまるでなくて、中身を紹介しつつも、それを通して自分の経験や考えを描いているという側面が強いように思います。そのテイストはやさしく穏やかで、ちくっとした痛みを感じさせる小川さんの作風そのままです。

    個人的には「図書室の本棚」「書斎の本棚」の章が小川洋子エッセンス満載で好きです。装丁も穏やかで、読んでいてやさしい気分になります。たびたび登場する「同級生の勝谷くん」に「へーっ!」と思うことしきりです(笑)。

    読書本というのは、自分の読書体験とあまりに合わないと反感めいたものも出てくるように思うのですが、この本では「こんな繊細で豊かな世界を感じさせるんだ」とうらやましさばかり残りましたので、この☆です。最初は☆5つで考えていましたが、『博士の〜』という題はやはりどっちでもいいように思いますので、1つ引きました。

    [2007.8.13 に Amazon.co.jp のサイトにアップしたレビューを一部書き直し、たなぞうに再アップしました]

  • 小川さんの言葉はとても綺麗なので、読んでいると自分もこんな綺麗な言葉を使えるようになるんじゃ?って錯覚するなー。バーネットとアンネしか読んだ本が被らないのががっかりだけど(´・_・`) ちょこちょこ入る犬のラブの話が好き。ラブと落ちていたナスを見ていた下りは、ずっと覚えている気がする(´ε` )

  • エッセイ集。
    静かな文章がつむがれていく先に見えてくる日常、本。

    読んでみたい本が増えてうれしい。

    2016.12再読

  • 本や
    日々の暮らしなどにまつわる
    エッセイ集。
    同じ話が繰り返し登場したりして
    小川さんの興味の方向が
    うかがえる。
    何冊か読みたい本と出会えた。

  • 本や本作りにまつわる親愛や慈しみが溢れている。「翻訳者は妖精だ」なんて、素敵やなぁ☆

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