- Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104013067
作品紹介・あらすじ
物語は心の薬-人生の危機に当たっても、生き延びる方法を、切実な体験を語りつつ伝える。河合隼雄氏が倒れられる直前に奇跡のように実現した、貴重な最後の対話。
感想・レビュー・書評
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話を聴く人というのは、自分で勝手に相手の物語を作らない
誘導するような質問をしたりしないし、じっと聴いて相手が答えを出すのを辛抱強く待つ
その時の空気に耐えられなくなって下手なことを言えば、相手に簡単に見破られてしまう
自分の物語は自分でつくるとは、自分で考えて決定していくということ
発する短い一言もそれしか持っていない言葉であったのか、沢山の選択肢の中から選ばれた言葉なのかによって受け止められ方が違う
そう言った河合先生の言葉はとても重い
沢山の選択肢を持って選択しながら前に進む、言葉を伝える
そうやって人と関わり進んでいきたいと思う詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小川洋子さんと河合隼雄さんの対談
博士の愛した数式を読んでいないので、はじめの方はよくわからなかった。
診療療法。とにかく相手と同じレベルに立って、ただただ聞くこと。 -
だいたい人を助けに行く人はね、強い人が多いんです。
そうするとね、助けられる方はたまったもんじゃないんです。そういう時にすっと相手と同じ力になるというのは、やっぱり専門的に訓練されないと無理ですね。
分けられないものを分けてしまうと、何か大事なものを飛ばしてしまうことになる。その一番大事なものが魂だ、というのが僕の魂の定義なんです。
分けられないものを明確に分けた途端に消えるものを魂という。
やさしさの根本は死ぬ覚悟
あなたも死ぬ、私も死ぬ、ということを日々共有していられれば、お互いが尊重しあえる。
命というものはそもそも矛盾を孕んでいるものであって、その矛盾を生きている存在として、自分はこういうふうに矛盾してるんだとか、なぜ矛盾してるんだということを、意識していくよりしかたないんじゃないかと、この頃思っています。そして、それをごまかさない。
「その矛盾を私はこう生きました」というところに、個性が光るんじゃないかと思っているんです。
そこで個人を支えるのが物語なんですね。 -
「たくさんの中から選ばれた言葉か、
唯一それしかもっていない人の言葉か、」
という言葉に、ボキャブラリーが少ない私ははっとさせられました。対人援助職として、もっと言葉を身につけたい、と。
選ぶことができるくらいの豊かさを、身につけたいと思います。
また、カウンセリングは、
「望みを失わない限り大丈夫」との言葉に勇気付けられました。
支援する側が、決して望みを失わないこと。
一冊を通して、多くの気付きがあり、多くの学びをいただきました。支援者として、心に刻みたいと思います。 -
小川さんの言葉「人生は、物語みたいだなあ、とふと思う。その瞬間、私は現実の本質に最も接近している実感を持ちます。現実と物語が反発するのではなく、境界線をなくして一つに溶け合った時こそ、大事な真実がよく見えてくるのです。だからこそ作家は、現実を正しく見なければならないのです。たとえ参考文献もなく、取材にも出かけず、ただ想像だけで書く小説だとしても、現実世界のありようを注意深く観察することを怠っては、良い物語は生み出せません。河合先生の忠告を私はそのように受け取りました。物語は、既にそこにある。」
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人は、生きていくうえで難しい現実をどうやって受け入れていくかということに直面した時に、それをありのままの形では到底受け入れがたいので、自分の心の形に合うように、その人なりに現実を物語化して記憶にしていく(小川洋子)
私は、「物語」ということをとても大事にしています。来られた人が自分の物語を発見し、自分の物語を生きていけるような「場」を提供している、という気持ちがものすごく強いです。(河合隼雄) -
晩年の河合隼雄さんと、小川洋子さんとの対話をまとめた本。もっとずっと読んでいたかったですが河合さんが亡くなられて、もう実現不可能になってしまいました。本当に残念です。物事がうまくいくときというのは、本当に信じられないほど驚くほどあれこれうまくいくものだ、例えば、外に出たら一億円落ちていた、というくらいのことが起こる、というくだりは大変興味深かったです。なかなか掴みきれないことをテーマにしつつも優しい平易な言葉での対話の記録なのでとても読みやすかったです。果たしてお二人が理解し合い共有されたことのどの位を自分が読んで受け止められたのか、そこは少々不安ですが、大変面白かったです。
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生きるとは、自分の物語をつくること。小説を書くとは、誰かの物語を語ること、臨床心理士とは、誰かが自分の物語を語り直す手助けをすること。
物を書いて仕事をする人になりたい、と子供の頃思っていた自分が、今は福祉分野で相談援助職を目指している。その繋がりがこれまで自分でも分からなかったが、この本で上記のことを二人が話しているのを読み、すとんと胸に落ちる思いがした。 -
昔話や童話、神話が好きなのでその解釈に関する本を結構読んだことがあるけれど、タイトルでもある「生きるとは、自分の物語をつくること」というのは、今まで読んできた解釈をうまくまとめた言葉だなと納得。生きるということは、楽しいこともあれば、つらく哀しいこともあり、それはきっと現代でも人類が出現した頃の遥か昔でもきっと変わらない。そういった生をなんとか自分で受け止められるように、変えていけるように、物語が必要になってくる。
昔カウンセラーを目指していた頃もあったけれど、こういう本を読むと、とてもなれない、少なくとも自分には向いていないと実感。人の物語をただ受け止め、どんな時も希望を失わずにただ寄り添うということの、なんと難しいことか。 -
心理臨床家で文化庁長官を務められた河合隼雄先生と作家の小川洋子さんの対談集。
小川さんの小説『博士の愛した数式』について語る河合先生は本当に楽しそうで、先生が感動されているのが、こちらにも伝わってきます。先生の笑い声や息遣いまで伝わってきそうです。
箱庭、『源氏物語』、一神教と多神教についてなど、物語をつくる、物語を生きるという観点から生き生きと語られています。
2006年6月のお二人の対談が結果的に最後の対談となってしまいました。その対談では、小川さんの『ブラフマンの埋葬』について河合先生が、ユングがブラフマンという言葉が大好きであることを紹介されて、次回の対談でそのことを話しましょうと提案されていました。河合先生が倒れられ、闘病を経て旅立たれたので、お二人の対談続きは読むことが出来ません。それはすごく残念なことであり、悲しいことです。しかし、対談は今でも続いているのではないかと思えてなりません。河合先生が亡くなられた故に、続いているのではないか、小川さんの胸中で。そして、新たに始まったのではないか、我々読者の心の中で。
河合先生と小川さんの対話に、ハッとされられたり、唸らされたり。そのため本にはたくさんの付箋を貼らねばなりませんでした。その中でも、京都の国立博物館の文化財修繕の話しは、本当に身につまされる思いでした。
布を修理するとき、後から新しい布を足す場合、新しい布が古い布より強いと古い布を傷つけてしまうことになる。人を助けようとする人は強い人が多い。そうすると助けられる方はたまったもんじゃない、と。
河合先生が遺して下さった数々の心理臨床に関する著作を読み直さないといけない、そう感じさせられました。そして、小川さんの『博士の愛した数式』『ブラフマンの埋葬』も読んでみたいと思います。