8月の果て

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著者 : 柳美里
  • 新潮社 (2004年8月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (832ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104017089

8月の果ての感想・レビュー・書評

  • 20160925
    従軍慰安婦の記述が印象に残りました。

  • 1936年のベルリンオリンピックのマラソン金メダリスト、孫基禎と同時代の有望な長距離ランナー、李雨哲、走ることが生きがいだった祖父が、なぜ競技も国も家族も捨てて、日本へ逃れたのか?12歳年下の弟、李雨根ら李家一族の物語を軸に、激動の時代に重ねて描く長編小説。とぎれとぎれの新聞連載中も、大きな反響を起こしましたが、今までに読んだ柳さんの本の中では、
    一番すばらしい、ズッシリ重い厳しい内容ですが、暗くはなく感銘を受けました。『すっすっはっはっ』というランナーの呼吸音の間に、走者の意識が流れる印象的な文体。「死者」が語るというスタイル、どうすれば、ほんとうは不可能な「死者」に語ることができるのか?
    名前と祖国を失った一人の男、李雨哲、名前と祖国を失うということは、言葉を失うこと、だからここに書かれているのは言葉を失った者たちの悲劇、しかし悲劇は「彼ら」だけだったのか?我々もまた、そのことに気づかぬまま言葉を失っているのではないか?奪った国の言葉と奪われた国の言葉が、かつて見たことのない美しさで並び立つ、この小説の言葉の連なりの中に、我々と「彼ら」が共有することが可能な未来を見たような、
    そこに確かに一人の男の声が、さらにその向こうに、たくさんの声が聞こえたような気がしました。少し前に、村田喜代子さんの渡来陶工一族の結婚騒動『百年佳約』を読んでいたので、死者が語ることや、韓国の結婚や葬儀について多少馴染みがあったのがよかったのでしょう。柳さんも、小説を連載される前にフルマラソンに挑戦し、4時間54分22秒で完走されています。
    苦しいときに聞こえてきた、名付け親でもある祖父の言葉『痛みはおまえの敵じゃない すっすっはっはっ 痛みはおまえの伴走者だ すっすっはっはっ すっすっはっはっ 痛みの果てにおまえの名が待っている すっすっはっはっ』

  • (2004.03.16読了)(新聞連載)
    (「MARC」データベースより)amazon
    祖父はなぜ、競技も国も家族も捨てて、独り日本へ逃れたか。幻の五輪マラソンランナーだった祖父の生涯を追いながら、戦前から現代に至る朝鮮半島と日本の葛藤をえぐりだす。『朝日新聞』夕刊および『新潮』連載を単行本化。

    ☆関連図書(既読)
    「命」柳美里著、小学館、2000.07.20

  • 厚さ4.5センチの大長編小説。
    前半は第二次世界大戦下の朝鮮半島の様子を中心に、作者の曽祖父と祖父の壮年時代までを描いています。
    読んでみると、作者の祖父(李雨哲)の家には様々な不幸が起こり、その上曽祖父は愛人との間にも一子をもうけ、李雨哲は妻を含めて4人の女性との間にそれぞれ子供をもうける。

    いや~半分作者の創造としても小説のネタに困らない家族です。
    李雨哲は日本のオリンピックボイコットにより走る希望を失うのだけど、それにしても妻以外3人の女性を関係を持つというのは、一所に居られない本人の資質が大きい気がしました。
    そういった意味では、前半は戦争を通してといっても李家の個人的な歴史になっている。自身のルーツをたどりたいという気持ちはわからなくもないけど、ここまで赤裸々に家族のことを書いてもいいのかな?という気持ちは多少持ちました。
    ただ、日韓併合時の朝鮮半島の様子はイキイキと描かれていて、それだけでも読む価値はアリかな?とも思います。


    さて、後半は第2次世界大戦の終盤から現在の韓国までの話。
    こちらは終戦から戦後の動乱がメインに描かれています。
    福岡の軍服工場で働かないかと誘われて行くとそこは従軍慰安所だったという少女の話。
    そして抗日運動を起こして戦った人々の激動の運命。
    終戦直後はヒーローとして扱われた彼らは、後にアカ狩り(共産党員狩)によって同じ朝鮮人に殺されていく。

    後半の描写は迫力があってすさまじいものがありました。
    従軍慰安婦のひどい扱われようからアカ狩りの処刑の様子、そして処刑された者達の親族にまで及ぶ弾圧。
    教科書では得られない衝撃を受けました。
    従軍慰安婦の話などは時々テレビで見るけど、「私はなんて認識が甘かったんだ・・・」と憂鬱になると同時に、戦争というものの悲惨さをすごく近いところに感じた。


    この作品については、作者のルーツである祖父の話と戦争の悲惨さがうまく絡んでいないような違和感を覚えたのですが、描かれていることの一つ一つは、日本人として知っている方がいいと思えることが多かったです。
    私も近くて遠い隣国の歴史をきちんと知りたいという思いを強く持ちました。

  • 在日である筆者の、先祖の物語。日本統治下の朝鮮、内戦のときの朝鮮、それらをバックグラウンドに人々の思いを描いた群像劇。全800ページを超す大作。

    女性に対し嫁ロボットであることをのみ要求し、男が産めなかったら平気で家から追い出す封建制度が色濃く残る朝鮮で、日本の統治下にあって言語と名前を剥奪され、そして冷戦のなかに組み込まれ…朝鮮半島の命運はどうなるのだろうと日々思いつめつつ生きなければならない人々の思考が、どんなものであるのかを著者は抉り出す。恨という言葉があるが、まさにそれに満ちた小説である。

    知識として日本は朝鮮を併合し、同化政策を強要したことを知ってはいても、おれは不肖ながら実際のところどうだったのかを知ることはなかった。
    この小説で、ガツンとやられた気分だ。日本は朝鮮を侵略した。中国も東南アジアも太平洋も侵略した。この事実から目を背けてはいけない。これらの国々が第二次世界大戦後に次々と独立を果たしたのは日本のおかげだという言説もあるが、それについては今のおれは判断を留保する。それについて答えられるだけの学習をしていない。

    とにかく、著者の先祖は苦難のなかを生きていた。それを紹介してもらうのは悪くはあるまい(どこまで真実かはもちろん疑問だが)。いい小説だ。

  • 2004年8月15日。日本・終戦記念日/韓国・解放記念日。日韓同時発売。

  • 「アンジェラの灰」と「介護入門」のミックスされた傑作

  • まだ読んどらんけえ。

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