- Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104056040
作品紹介・あらすじ
「今は無視されても50年後、100年後に評価される写真を」陸軍の宣伝機関「東方社」の写真家達が、写真部長・木村伊兵衛の呼びかけに応え、自らの良心と使命感に駆られ撮影した生々しい東京の惨状。戦後67年の封印を解き、米軍の無差別爆撃の実態を証す。
感想・レビュー・書評
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戦時、陸軍参謀本部の下に置かれた「東方社」という団体があった。外国向けの写真宣伝物の制作に携わっていた団体である。後の写真界の巨匠やグラフィックデザイン界の第一人者を始め、知識人の錚々たる面々が集まっていたという。
この東方社に所属するカメラマンが撮影した、空襲中や空襲直後の写真のうち、焼却処分を免れて、長く保存されてきたものがあった。近年、その膨大なネガ・フィルムが保存者より東京大空襲・戦災資料センターに寄贈された。
NHKがこれを取材し、NHKスペシャルとして放送した。放送を元にして、写真集とその背景を解説するドキュメンタリーの2冊の本が出版された。本書は写真集の方。ドキュメンタリーは『ドキュメント 東京大空襲: 発掘された583枚の未公開写真を追う』として、同じ新潮社から出ている。
東方社所属のカメラマンは、軍の直轄であるだけに、取材の自由もかなり利いたのだろうか。
焼け野原とか焦土とかいうが、いや本当にこんなに焼けてしまったのだなと思わされる。壊滅的被害と言葉にしてしまうと軽いが、そうとしか言えない惨状だ。
寺社も学校も民家も。
プロパガンダを目的としているだけに、中には、「被害を受けても淡々と工場で働く雄々しき国民」といったような、被写体にポーズを取らせていると推測されるヤラセ感の強い写真もある。
が、多くは記録として貴重なものだと思われる。
焼け跡で仮店舗を開く理髪店や花屋などは、確かに、立ち上がろうとする人々の力を感じさせる。
東方社は器材や施設の面でも非常に恵まれており、多くの人材を集めた。が、東方社に所属した人々は、戦後、追及を恐れることもあり、多くを語りたがらなかったという。
こうした経緯は戦争画に携わった画家たちを連想させるが、本書では東方社について非常に詳しく述べられているわけではないので、この団体を知ったというに留めたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:210.75//N77
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何もこの年末によまなくても…という本だけど、政治がいろいろとアグレッシブな方向になりつつある空気をひしひしと感じる現代こそ、遇えて読み直した方が良いと思う。戦争に参加することがいかにバカらしく、空虚なことだったかが手にとるようにわかる。この写真たちを見て、アメリカの片棒を担いで他国に対し、同じことをしてしまう可能性がなくはない今の危うさをもう一度確認すべきだろう。正直なところお断りだ。
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終戦間際の東京の姿を垣間見ることができる。
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近年発見された、東京大空襲関係の未公開写真。
旧陸軍の傘下にあった団体のメンバーによる撮影で、プロパガンダ的な要素もわずかながらあるものの、基本的には空襲当時の風景や人々の姿を克明に記録しています。
歴史的資料って、研究が進んでいるようでもまだまだ未発見のものが埋もれているのだなぁ。 -
戦争を体験された人々や被災された方々には本当に申し訳ない言い方になるのだが、爆弾や焼夷弾による火災をバケツリレーで消し止めようと日頃から訓練されていた事実を思うと、日本の政府や軍部がいかに間が抜けているのか唖然とするとともに、ある種の滑稽さを感じてしまう。
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戦後60年以上経ってから、新たな資料が発見されるとは・・・!
あいにく、NHKスペシャルそのものは観ていないが、
こちらの本だけでも充分読ませられてしまう。
しかしながら、肝心の写真は写真集を購入しないと見られない。
写真集を購入すべきか否か、迷う・・・