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この作品からのみんなの引用
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自分がなぜゴミを集めるのか。それは忠市にも分からない。「ゴミを集めている」という自覚はない。しかし、人からそれを「ゴミだ」と言われた瞬間、忠市はごみであることを理解する。理解してまた、その瞬間に、自分の中で抑え込まれていた絶望が顔を出す。
「これはゴミかもしれない。自分はゴミを集めているのかもしれない。しかし、集めたごみを片付けようとしていたのだ」と思う。そのことを理解して、自分が集めた膨大なゴミの山が、既に整理しきれなくなっていることを理解する。
― 78ページ -
「秀俊」の名に聞き覚えはある。しかし忠市は咄嗟のことに、「秀俊」が誰のことなのか、分からなかった。
「それを分かれば涙が出る」―そう思う心が、忠市の記憶の蓋を閉ざした。嘆いたところでどうなるだろう。すべては元に戻らない。時間は傾いたままで、その下り坂の途中に忠市は立っている。坂の先は暗黒で、そこから暗い靄がゆっくりと立ち上って来る。時はもう、止まっていたのだ
― 196ページ
みんなの感想・レビュー・書評
現代のなぜ?を物語の力で解きほぐそうとする、橋本治の意欲作。
「ごみ屋敷」の主と、その近所に住む主婦の話から、物語は「ごみ屋敷」の主の人生にフォーカスする。
現代に潜む世の中の不合理を、一人の主人公に商店をあてることで、解きほぐす悲しいドラマです。
我々は、ニュースを断片的に捉えがちですが、この小説では、一人の人生を丹念に描くことで、現代におけるひとつの答えを提示していると思いました。
絶望的な人間関係の溝を、我々がどう対峙するかを客観的な語り口で描ききる構成は見事。
淡々とした日常の中に、驚きや悲しみをむき出しにさせることで、ひとことでは語れない人生の深さを感じさせてくれる一冊です。
読後感も、ジーンと余韻がのこる、思い出深い作品でした。
ただ生きているだけなのに人はすれちがい、溝を深めてしまう。我が家をゴミ屋敷にせざるを得なかった男の姿に、哀れとか可哀想とかは感じないのに、なぜか涙が流れた。後半、物語全体のタイムスパンの割に残り少なくなるページ数を見て、この話ちゃんと着地させられるのかな、と心配になったが、33ページしかないのに濃密で腑に落ちる最終章に圧倒された。
ゴミ屋敷と住民の闘いの話と思いきや、後半はゴミ屋敷の住人となった男の一生が綴られている。
ゴミ屋敷の主人になった男の側からみれば、うなづける点もあり視点をかえるとこう見方が変わるのかと気付かされた。
片づけられない男・女の話があるが人生に対する虚無感がそうさせているのかもしれないな。
ゴミを自宅敷地内に溢れんばかりに溜め込み、つみあげていく男。
前半ではご近所の視点でその想像を絶する汚さ、悪臭、腐敗の様子が描かれていて目を覆いたくなる・・。
そのゴミ屋敷の住人の男はどうしてそうなるべくなったのか。
戦争中に少年時代を過ごし、戦後勢いをつけて変わりゆく世の中の流れの中で、まじめに平凡に生きてきた男の失っていったもの。
家族、人とのかかわり、心・・。
もしかしたら誰でもゴミ屋敷の住人になりうるのではないかと、読後、そんなふうに思った。
後半、このゴミの山はある人によって片付けられる。そこからラストにかけて、この長編をぐっと人間的なものにしている。(Y)
文章の言い回しとか・・・
なんだろ、とにかく最初の何ページ目かで、手が止まって
最後まで読めなかった。
ゴミ屋敷問題!時々ニュースで見ることがあったが,住人VSご近所の人。このゴミ屋敷問題の難しさは,他のことへも置き換えて考えさせられた。なぜゴミ屋敷になったのか?この本はたくさんのことを教えてくれた。
久々に一気読みをした・・・。評論なんかはよく読んでいた橋本治、そういえば読み物として読んだことってなかったなぁと改めて思った。「純文学」が売り文句だという、ふ~ん。 昭和の時代の鎮魂歌/叙情詩を読んだ気分。ラストまできて「巡礼」というタイトルを深く感じながら,遠い道の先の光を見たような読後感。 主人公は昭和一桁生まれの男、父親の世代。その時代を自分も生きてきたように感じるリアリティあふ... 続きを読む »
映画「嫌われ松子の一生」に漂う悲哀と、同種のものを感じた。
ゴミ屋敷周辺住人の愚痴から始まり、登場人物が順番に入れ替わるようにして、当のゴミ屋敷に暮らす老人の半生~ごく普通の商店がゴミ屋敷に変貌していく様子を描く、ストーリー展開が見事。
最後に救いが用意されていて、読み手の私も救われた。
p.17 ともかく、悪臭がひどい。生ゴミの腐った臭いが饐えて、邪悪な獣のように襲いかかる。風が不快な刺激臭を撒き散らすと、地底から湧き上がったような黴臭さが、まるで打水のように広がる。黴臭さと腐臭が、低音と高音をこき混ぜた不快な音楽のように、南西の風に乗って波打ってくる。夏の湿気がそのまま臭気に変わったような堪えがたい雰囲気の中で、蝿がぶんぶん飛び回る。朝の内に差し込んでいた日の光が、昼になっ... 続きを読む »
購入した本。
いまはひとりゴミ屋敷に暮らし、周囲の住人たちの非難の目にさらされる老いた男。戦時中に少年時代を過ごし、昭和期日本をただまっとうに生きてきたはずの男はいつ、なぜ。
橋本治の視線は、冷ややかではあるけれどやさしい。
重い物語をとても静かに紡ぎ出す。
時折、メディアが冷ややかにゴミ屋敷を伝えるとき、私はずっと
かなしかった。どうして捨てられないのか。ゴミと同じだけの大事な思いもあるのではないかと。
けれど、物語には出来ずにいて。
……だから、橋本治は好きだ。
ゴミ屋敷と呼ばれる家に住む人の内面を描いた作品。彼の来し方、周辺の状況、役所の対応など淡々と綴られていく。
弟の出現から急展開。何とも言えない、やるせない気持ちになる。
ゴミ屋敷の主である老人及びその周囲の人をめぐる一大叙事詩。戦後の復興期に普通に真面目に生きていたはずなのに、様々な思惑が重なって少しづつ老人が世間とズレていく様が見事に描かれている(ただし老人以外の人々についての描写がやや詳しすぎるため、物語全体が若干散漫になっている感は否めない)。 自分探しとか生きる意味への探求がもてはやされる現代。ただひたすらに生きることしかしてこなかった老人も、人生の... 続きを読む »
男性っぽい書き方。
なんかしっくりこない。
時代背景や置かれている環境が
全体的に古くさくて
新鮮味がなく、なんで話題になるんだろうな…。
朝日新聞で誰かが推薦していたけど…。
4.5。橋本さんは初めて読みました。あまり男性っぽくないかな。特に最初の主婦たちのシーン、ねちねちした感じとか、女性作家的な心理描写かなと思いました。この主婦たちの動きが引き続きありそうでないのがちょっとひっかかったのですが、全体としては非常に興味深く面白かったです。住宅街にあるごみ屋敷の話です。最近テレビでよくやってますよね。困った人、迷惑な家、どうしたらいいのかわからない変人、といった感じでと... 続きを読む »
ゴミ屋敷を作ってしまった男の話。
ゴミ屋敷を取り巻く近所の人たちのあり方がものすごくリアル。
出てくる人はみんな空虚というか、あまり自分を持たない人たちばかり。
ゴミ屋敷を作った男も同じ。
ではなぜゴミ屋敷を作った人と作らない人に分かれてしまったのか…。
大きく変わる時代について行けた人とそうでない人の違い?
まだ良く分からない。
どこまでもリアルな前半に比べ、後半はどこか幻想的。
どこまでも孤独なゴミ屋敷の主が見た幻想なのか、とも思える。
でもやっぱりこれは救いの物語なのかな。
ゴミ屋敷の住人とその周辺を描くことで、地方都市の戦後の歩みが写し出されているように感じました。1960年代生まれの私には、いろいろと思い出されることも多くて。忠市は「新しい時代」に常に乗り遅れた人だったのかもしれない。四国巡礼が彼に安らぎをもたらしたのなら嬉しい。(四国に住む者として)

「ゴミ屋敷」の特集は、TVで何度か見たことがあった。
でも、なぜ人がゴミを集めてしまうのか、納得がいかなかった。
でも、この小説を最後まで読んで、
このような理由からゴミを集める人もいるのかもし...





