- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104075034
感想・レビュー・書評
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日本に住んでいたら
多分ばーっと読み散らして「あ、そう」で
終わりにしていたであろう本であろう気がした。
しかしジックリ読んだらちがっていた。
夜の団地の敷地に灯る水銀灯の灯り、
その光の下に群がる蛾や虫。
父親の背中、ふてくされた子供。
団地の鉄のドア。そのドアが閉まる音。
一つ一つの物や人のが持つ存在の手触りや匂いや音や
空気をしっかりと確かめながら読めた味のある話。
ホームシックになりそうだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内容(「BOOK」データベースより)
炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった。Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune…〈F〉で始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして埋め込んでいったつもりだ。そのうえで、けっきょくはFiction、乱暴に意訳するなら「お話」の、その力をぼく(著者) は信じていた。 -
この作家の本はこれで何冊目だったかな。これも面白かったです。
主人公たちよりも私はちょっと年下だけど、子の親として、家族を持つ者として、年老いてきた両親の子として、いろ~んな意味で自分を重ね合わせて読みました。
どの話が一番好きか、ひとつ選ぶのも難しい。「母帰る」はうちの両親のことも田舎を離れて東京に住む自分のことも重ねて考えずにはいられなかった。
現実は小説のようにいいカンジでは終われないことが多いんだろうけど、それでもこの小説を読んで家族をもっと大切にしよう、ってありきたりだけど思いました。 -
どうしてこういう風に、書けるんだろう?
ことばが、すぅっと染み込んでくる。
登場人物の、逡巡や惑いが、生きている人間の鼓動が、リアルに伝わってくる。
家族であるかぎりは、正面から向き合わなければならない時がある。
向き合って話すことができるはずだ。
その時を逸すると、現実はとたんにうそ臭くなってしまう。 -
家族を中心に、中年になった男の哀愁と葛藤を描いている。
いい人で居続けることは、いい子でいることよりもずっと難しいだろう。
子供はやり直しがきくが、大人はそれが難しい。
レッテルの接着力が強くなるから。
そこの悲しさが増幅する短編集。
なかでも「セッちゃん」のインパクトが一番強かった。
酷なようかもしれないが、いじめっ子にも、いじめられっ子にも、ただ頑張れとしかいいようがない。 心から。
流し雛は本当に売れているのだろうか。 -
40歳前後の中年男性が主人公の短編7編。
生きるとは、リアルでシビアな現実ときちんと向き合っていくこと。 -
出版社/著者からの内容紹介
このビタミンは心に効きます。疲れた時にどうぞ。「家族小説」の最高峰。直木賞受賞作!
38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。
内容(「BOOK」データベースより)
炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのなら、ひとの心にビタミンのようにはたらく小説があったっていい。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった。Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune…〈F〉で始まるさまざまな言葉を、個々の作品のキーワードとして埋め込んでいったつもりだ。そのうえで、けっきょくはFiction、乱暴に意訳するなら「お話」の、その力をぼく(著者)は信じていた。 -
40歳前後のお父さんたちが主人公の短編、7編です。
少し前に、重松さんのナイフを読んで、ほかの話も読んでみたくなったので、この本を手に取りました。(ナイフの感想は、もう少し自分の中で整理できてから書こうと思います。)
この本の中で、私は「はずれくじ」がよかったです。私は、お父さんではないし、親でもないので、どちらかというと子供の立場から話を読んでいると思うのですが、なんだか最後でスカッとしました!小学校の高学年から中学生くらいの時期、自分の中でもやもやしていた時期でもあったような気がするのですが、当時この本のお父さんたちと同い年くらいだった父親もこんなことを思っていたのかもなあと、想像しながら読みました。
あと、「セッちゃん」!加奈子の気持ちがすごくよくわかって、なんだか痛いぐらいでした。「そんなに現実、甘くないもん」、重い言葉だと感じました。
文庫本の解説にもありましたが、すごくわかりやすい言葉しか使っていないのに、情景なども含めて、お話がわかりやすい!!すごくよかったです。
好きな台詞は、「悪い、オヤジと帰るから!」です。 -
重松はんは何とか目線が鋭いなぁ
地味なんやけどホロっといくるこの感じ
ええなぁ。 -
重松清さんの短編小説集。
アラフォーのお父さんとその家族を描いた短編集だが、なんだか、自分の歳と近いせいか、妙に親近感が湧いた作品でした。
そうか、俺もそういう歳なんだなぁ、なんて、あんまり良くない意味で感慨深く思ったりしましたが、逆に個々に描かれている主人公ほど深刻に自分の年齢って言うのを意識していないのは、いいことなんじゃないかななんて思ったり。
でも、そんな悠長なこと言っていられないなきっと。
自分の子供が大きくなったときに、この本に描かれている子供のようになって、その時自分はどうするんだろう、って考えた時が妙にリアルだったりするけど、自分としては、尋常じゃないくらい娘を愛してるし、この気持だけでも伝われば、なんとかなるんじゃないかなっていう楽観的に考えてはおりますが、その時はその時で、大変なんだろうな。