- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104075133
作品紹介・あらすじ
あの時のぼくたちは、「奇跡」を信じて待つことができたんだ――。両親がいて、子どもは二人。それが家族の「ふつう」だったあの頃。一人っ子で鍵っ子だったぼくとハム子は、仲良しというわけではないけれども、困ったときには助け合い、確かに、一緒に生きていたんだ。昭和40年代の団地で生きる小学校六年生の少年と少女。それぞれの抱える事情に、まっすぐ悩んでいた卒業までの日々の記憶。
感想・レビュー・書評
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2021/01/07読了
#重松清作品
想像したより重い展開だった。
どう足掻いてもひっくり返せない
家庭の事情や境遇に反発する子どもたち。
息苦しいストーリーだったが
エンディングのシーンではグッときた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭───
ぼくとハム子は、小学一年生の秋に出会った。
ハム子は転校生だった。お母さんと二人でぼくたちの団地に引っ越してきて、ぼくたちの小学校に転入して、ぼくと同じ一年一組になった。
転校初日、担任の岩崎先生はハム子の名前を黒板に書いた。
藤田公子。
もともと、字のあまり上手ではない先生だった。
───
昭和四十年代、高度経済成長真っただ中の日本。
一人っ子が珍しい時代だった。
だいたいが、兄弟二人の四人家族、或いは三人の五人家族。
それが当たり前だった時代に、クラスで一人っ子だったのはぼくとハム子だけだった。
そういえば、そうだったなあ、あの頃は。
兄弟のいない一人っ子は、一緒に遊ぶ人間がいなかったので、ぼくらはよく、一人っ子の友だちの家に呼ばれて遊んでいたものだ。
ハム子と思わず呟いてしまった僕の一言に、ハム子は何気ない素振りを見せたかと思ったのもつかの間、ぼくの机に跳び蹴りを食らわせてきた。
その事件をきっかけに、ぼくとハム子は友だちになる。
それから四年半、ぼくらは六年生になった。
小学校の最上級生にもなると、いろいろ大人のような悩みも出てくる。
下の階に引っ越して来たみなしごのオサム。
母子家庭だったハム子は、母親が再婚して弟ができた。
ぼくとハム子を取り巻く環境も変わり、ちょっとした事件も起こる。
大人になりかけのぼくとハム子は問題に直面して、もがきながらも成長していく。
重松清の小学生を描く作品も、ワンパターンすぎてマンネリ化してきたかな、と思って読み進めたが、それでも結末に向かって心を揺さぶる構成には、いつものようにほろりとさせられた。
小学生は、こんな風に少しずつ大人の階段を登っていくのだなあ、とあらためて考えさせられた。
自分もそうだったかな------。 -
記録
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小学六年生って大人が思うより意外と大人で、大人がしきりに隠していたりする本当は知られたくないことを知ってたりするんですよね。
家庭のどうにもならない事情を抱えながら生きる小学生達のお話、心に染みました。
ノブが小さい頃に交通事故で亡くなった弟さんの存在が個人的には一番辛かった…。 -
クラスでたった2人の一人っ子。
2人だけの一人っ子同盟。
一人っ子だけど一人っ子じゃない。
一人っ子じゃないけど一人っ子。
少年少女の複雑な感情。
オトナになると忘れてしまう、コドモにしか分からない。
コドモのココロは、オトナには分からない。
オトナのココロは、コドモには分からない。
オトナになると思い出せないコドモのココロ。
だから、重松清で思い出すのだ。
奇跡を信じて重松清を読むのだ。 -
腹が立つ。腹が立つ。子供を大人に変えてしまう大人に腹が立つ。大人の事情で子供を子供でいさせない大人に腹が立つ。
子ども扱いして肝心なことを面と向かって話さないくせに、面倒くさいことは、何も言わずに分かってよと言う大人に腹が立つ。
腹が立って仕方ない。 -
一人っ子が珍しかった、離婚再婚が珍しかった
あの昭和の時代。私の中にも自然と普通の定義が出来上がってて、心ないことをしてしまってたかもしれないなぁ…。読後、小学校時代のことをぽつぽつと思い出したりした。
去年、小学校の卒業以来久しぶりに会った恩師と話をしていると、やっぱり子どもの私には分からなかった事情をかかえた家庭の子がその頃いっぱいいたらしい…。
大人の話に加えてもらえなくて歯がゆかったノブの気持ち、よく分かる。
強がって、気持ちとは反対のことをしてしまう、本当は優しいハム子の気持ち、よく分かる。
人の気持ちがじわぁと伝わって来る、いい作品です。 -
何年ぶりかの重松さんの作品。
昭和40年代に珍しかった一人っ子をテーマにしていた。
一人っ子になってしまったもの。
一時的に弟が出来たもの。
事情があって転々として来て生きてきた転校生。
三者三様の悩みがありありと表現されていた。
子供なりに抱える悩みってこんな風だったんだと
振り返ることが出来た。
でも、重松さんの作品としてはちょっと物足りなさを感じてしまった。 -
一人っ子が珍しかった昭和40年代。
兄を事故で亡くして一人っ子となったノブ、
母子家庭で一人っ子だったのに母親の再婚で弟ができたハム子、
両親を亡くして親戚中をたらいまわしにされているオオカミ少年のオサム。
そして私も昭和40年代のわけアリ母子家庭一人っ子。
当時の小中高の名簿は住所電話だけじゃなく保護者の名前と続柄までかかれていて、母子家庭というのが丸わかり。
それが本当に嫌で嫌で仕方がなかった。
そのときの記憶がこの小説を読みながらブワっとよみがえってきた。
ハム子の「どうにもならないことってある」。
そう、自分が母子家庭で一人っ子だったのは自分ではどうにもならないこと。親が再婚したり離婚したりするのも子供の自分にはどうにもならないことだった…。だからこそ悲しくて、悔しくて。
当時の私もよくそんなことを考えてた。
どうでもいい嘘をついてみんなに嫌われるオサムのことも理解できる。一人でいても平気なふりをして心が壊れないように精一杯自分を守ってる。
あまり期待していなかった1冊だったけれど読んでいくうちに自分の経験とシンクロされていつのまにか涙がでてた。たぶん、兄弟がいる人両親がそろっていてそれなりに裕福な生活をしてきた人にはわからない感情だと思う。
そして自分も親になって、
ノブのお父さんの「自分のこどもに、好きな場所や、好きなことや、好きなものがあるっていうのは、親としてはなによりもうれしいんだよ」「好きなものを訊かれて、ちゃんと答えられるうちは、人間、みんな、だいじょうぶだ」
すごく共感。こどもの好きな物を知っている親になりたい。 -
一人っ子ではないから一人っ子の気持ちはわからないけれど、こんなことを考えて生活しているんだなぁ。
団地の風景はわからなくもないけれど。
同級生が大勢いた時代は、確かにこんな感じで遊んだりしてたもんなぁ。
大人の事情というか過程の事情を考慮するほど大人じゃなかったけど(笑)。