望みは何と訊かれたら

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (487ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104098088

感想・レビュー・書評

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  • 大人の恋愛小説を味わいつつ、私自身の学生時代の謎が少し解けた読書体験だった。

    昔の男性との思い出をこんな風に情熱的に思い出せるのは素直に羨ましい。流れにまかせてその時々の男性に身を委ねてきた主人公だが、意外と侮れない。当時の大場に対する思いも誤魔化しなく認めて整理できているあたり、かなり頭の良い人物なんだろうなぁ。

    普通の人たちが学生運動に入っていく空気感も納得できた。時代が重なれば多分私も似たようなところに足を踏み入れていたんだろう。自主ゼミで知り合った人が「もっといろんな話をざっくばらんにしようよ」なんて誘ってくれてだんだんその場所に居場所ができるようになり…リーダーといい感じの関係になってきて…うんうん、想像できるできる。
    卒業から10年経つが、私の出身大には当時まだ学生運動の空気が残っていて、年に一度機動隊がやってきていた。デカいことをしよう!とデカい声で叫びビラを配っている彼らのやりたいことがよく分からず、私は距離を取っていた。なぜこんなことにこんなに時間を使っているのか理解できなかったのだが、この本を読んでなんとなく彼らの気持ちに近づけたような…?気がする。

  • 読了日2011/10
    学生運動、浅間山荘事件、三島由紀夫、連合赤軍。。。
    言葉は知っていても、詳しい内容は殆ど知らない世界、時代。

    ブント、革マル、赤軍派、べ平連、全共闘、セクト、アジビラ、アジ演説、オルグ・・・
    初めて聞く単語がたくさん出てきて調べながら読書。脱線、脱線で時間がかかってしまったけど、面白かった。

    その当時の日本で何が起こっていたのか、日本の若者が何を思っていたのか、少し分かりました

  • 終わり方が綺麗

  • いわゆる連合赤軍事件をモデルにしている。あの団体から逃げた女性が、出会った男性と刹那的な愛を交わす話。
    赤ちゃんプレイ。いわゆる「客観的には無能だが主観的には万能である」ていう状態かな。倒錯した恋愛。思想にはまった女性がそれを望む、というのが不思議な感じになる。
    しかし、吾郎が普通すぎる。そこまで思い焦がれるような男かと。小池真理子は好きなんだけど、どうも女に比べて男が薄いんだよなあ。

  • 70年安保の時代、武力革命論や文学談義をもてあそぶセクトのリーダー大場に惹かれるまま、爆弾製造そしてリンチ殺人にまで関わってしまった21歳の沙織はアジトを脱走、衰弱して動けないところを19歳の吾郎に匿われることになる。
    「革命」に疲れ傷ついた娘が、安心して依存できる誰かの下で濃密な性愛のときを過ごすという基本的な骨格は、前作『恋』とまったく同じだ。この作家にとって「あの時代」とは、背伸びしてふりまわす革命論議と性愛、そして幼児めいた依存であるらしい。
    自分は常に「本質」を追い求めてきたのだと、この小説の主人公は言う。しかし彼女がしているのは、自分の力で「本質」に到達することではなく、「本質」をあたえてくれそうな誰かを求め、すがることだけだ(『恋』の主人公と同様に)。彼女がしがみつく大場と吾郎は対照的な人間だが、作中で彼女はどちらのことも「神」と表現している。そのことに作家自身は気がついているのだろうか?
    もちろん、当時の若者をただ断罪するつもりはない。その時代にもし自分が生きていたら、同じことをした可能性の方が高いと思う。それでも残念でならないのは、そのような体験を経てきたこの作家が、革命という名で他者に依存していた若い娘を批判的に内省し、こんどこそ自分ひとりの力で社会と対峙しようとするヒロインを描けていないということだ。端的にいえば、小池真理子の描く女性たちは、闘うことをやめてしまっている。社会に向き合わず、かつての世間から隔絶された性愛の世界にたてこもっているだけ。「あの時代」から得られたことがそれだけだなんて、あまりにも情けない。
    たぶんこれ以上、小池真理子の作品を読むことはもうないと思う。

  • 余韻を残して終わる。
    終盤での大転換。
    長い前振り。

    小池真理子の小説の基本要素を含んでいる。
    最後に「望みは何」と訊かれても,答えないのが小池真理子流。

    映像作品の「水戸黄門」の印籠のようには明示的ではない。
    小池真理子の印籠は、あると思わせて出さないところに価値があるのかも。

  • ある革命グループから命からがら逃げてきた女が、たまたま遭遇した男にかくまわれます。生きる意志をなくした無気力な女に、男はスプーンを女の口に差込み食事を与え、風呂に入れ、そして女は赤ん坊のように甘えます。男が捨て犬を拾ってきて面倒みているようなものです。女は食事を与えられる行為に快楽を感じます。

    ちなみに、食べなければ生きられないという状況において、食事を与えられる行為は心理学的に性交と同じ感覚らしいです。

    この生活の中で、男は女に存在価値を認められ、女は男に生存欲求を満たされます。そのとき二人の間にあったのは、強い依存の上に成り立つ倒錯的な愛でしかない。でも、考えてみたら、ほとんどの恋愛は少なからず依存関係で成り立っているのかもしれません。

    30年後に二人が再会したとき、あのとき刻み付けれた強烈な感覚はいとも簡単に二人を支配します。男が女にプリンを食べさせる、そして甘美で退廃的な空気が二人を包み込む、、、

    30年という長い時間の中で消えることがなかった感覚、そしてその感覚に支配されてしまう人間の危うさ、快楽への強い欲求、人間が理性でコントロールできない衝動に圧倒されました。

  • 赤軍派、今の若い人は知らないでしょう。私もまだ小学生だった。
    異常な世界から逃げてきた女性と、彼女をかくまうことになる若者。この二人の閉ざされ、濃密な、不思議な時間・空間。
    小池真理子の最高傑作だと勝手に思っています。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    二〇〇六年二月、夫と娘と暮らす槇村沙織は過去を共有する秋津吾郎と曇天のパリで再会する。一九七二年、彼女の属するセクトは市民社会の破壊と再生にむかって突き進んでいた。革命活動という名の狂った坩堝。アジトから脱走したわたしを救ってくれた青年との闇の時空は、不思議な静謐と確かな充実に満たされていた。そして、いま…。名作『恋』を超えた「愛」の形を描く著者最高傑作。

  • 「望みは何?」
    凄まじい質問だ、と思った。こんな恐ろしい質問は、これまで受けたことがない。

    二〇〇六年二月、夫と娘と暮らす槇村沙織は過去を共有する秋津吾郎と曇天のパリで再会する。一九七二年、彼女の属するセクトは市民社会の破壊と再生にむかって突き進んでいた。革命活動という名の狂った坩堝。アジトから脱走したわたしを救ってくれた青年との闇の時空は、不思議な静謐と確かな充実に満たされていた。そして、いま…。名作『恋』を超えた「愛」の形を描く著者最高傑作。

    小池さんの作品は『恋』に続き、2作目です。
    恋といい、本作といい、なんでそんなに学生運動に焦点が?と思って筆者についてみると、彼女も実際学生運動に参加していたことがあるそうな。そういう面では、ある種自伝的小説? 仙台に引っ越したという点も一致するし・・。

    ただ、性描写にしろ、暴力表現にしろ、ちょっと生々しすぎて、狂気じみすぎていて、共感はできない。

    文章がどうとか、世界観がどうとかっていうよりは、ただ単純に合わないのかな。
    他の有名な作品のあらすじ見ても、舞台が軽井沢とか三島由紀夫を絡めてたりと共通点が多い気がしたので、しばらく敬遠しそうです。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

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