子規の音

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104100040

感想・レビュー・書評

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  •  子規を読むことは五感の解放である…この帯に惹かれて手にしてみたのだけど。確かに森まゆみさんはすごい。膨大な資料、文献を読み込んでの執筆だということは想像に難くない。けど、知識をあれもこれも詰め込んで備忘録的な面が否めなくて・・もう少し整理されたものを読みたかったというのが正直な感想。なので☆二つ。
     ただ、それだけに細かな史実に関しては、へぇ~ということも山ほどあった。

     愛媛出身の男子学生が東京などに進学するための学生寮。その前身が常磐会寄宿所で、伊予松山藩主久松家が旧藩の優れた若者を育成するためにつくった合宿所。明治21年に正岡子規が入っている。
     この常磐会寄宿所、実は坪内逍遥が掛川藩の人に頼まれて学生の監督を引き受け3年ほど住んだあと、久松家が買い受けた・・そうな。ちなみに明治16年の地図を見ると「茶畑」だった、とか。
     トルコが親日であることの根の一つにあげられる紀伊半島沖で座礁したエルトゥールル号事件。救助された乗組員を日本の軍艦がトルコ・イスタンブールまで送り届けたのは存じてましたが、その軍艦に秋山真之が乗り込んでいて、「世界は広くてよほど狭い」と思った、とか。

     生誕150年を迎え、私の中で正岡子規がとてもホッとな今、細々とした知識の木の幹が太くなり、枝ぶりも随分広げてくれた一冊ではありました。

著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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