女神(じょしん)

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著者 : 久世光彦
  • 新潮社 (2003年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104101078

女神(じょしん)の感想・レビュー・書評

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  • 木のもとに臥せる仏をうちかこみ象蛇どもの泣き居るところ
     正岡子規

     1958年、銀座の文壇バーで作家たちに愛された「ムウちゃん」が、睡眠薬で自殺した。40代。色の白さが評判で、一度話すだけで人を引き付ける魅力があった。
     遺体のもとに、大岡昇平、小林秀雄、河上徹太郎ら、名だたる作家たちが次々と訪れる。そこに春雷。随筆家の白洲正子は、ふいに、掲出歌の下の句を口にした。正岡子規が釈迦涅槃図を見て作った歌である。釈迦の死を嘆き、象や蛇など動物までもが涙を流すという場面だ。
     そうだ、おまえらは「象蛇」のようなけだものだ、と小林秀雄が自嘲も込めて叫ぶ。小林はかつて、ムウちゃん=坂本睦子と婚約した時期もあった。直木三十五、菊池寬、坂口安吾、中原中也ら、睦子と関わった男性たちはつねに昭和文学史の一線にいた。
     長く愛人関係にあった大岡昇平は、睦子をモデルに小説「花影」を書いている。周囲の作家からはうそが多いと批判されたが、約40年後、それらさまざまな事情も含めて、久世光彦が客観的に小説化したのが「女神【じょしん】」である。
     久世は、「大岡の睦子への哀憐も、執着も、迷いも怖れ」もすべて、あふれるように「花影」に描写されている、と評価している。かつ、睦子を、男性を破滅させる魔性の女性ではなく、巫女的で、素のままなのに男性をとりこにする天性の力を備えた女性として描いている。
    だからこそ、掲出歌の「仏」=睦子を囲み、男性たちが涙に暮れているのだ。昭和文学史のサブテキストとしても読みたい。

    (2014年4月27日掲載)

  • 直木三十五に処女を奪われ青山二郎がパトロンで坂口安吾と中原中也が獲り合って、菊池寛、小林秀雄、河上徹太郎、大岡昇平と昭和の文壇の錚々たるお歴々と関係があり宇野 千代、

    白洲正子と交友があった「銀座に生き銀座に死す-昭和文学史の裏面に生きた女」と言わしめた人の物語。「長谷川泰子」なんかも名前だけ登場して楽しめた。もうおっさんになって小林秀雄の評論を読む体力はないけど(;´∀`)中也よりだいぶ歳をくちゃったしね…「汚れちまった悲しみ」を感じることすら出来なくなるくらい鈍感に”生きる”という反復行動に摩耗してるよね。

    それはさておき、東京タワーが出来かけの頃の物語。

    採算度外視でドラマ化して欲しいな。壊れた感じの、自身は不感症なんだけど男の勃起中枢を刺激する感じの…最近の広末涼子にやってもらいたいな。昭和の文人達を体の奥の粘膜で受け止めた女性の物語でした。久しぶりにランボー、ボードレール、中原中也という固有名詞を読みました。

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女神(じょしん)の作品紹介

あのころ"文壇"というものがあった。そこには、才能に溢れ見栄っぱりで無頼で友情に篤い文士たちがいた。あたしは十六の時から彼らに愛され、求められ、他の男へと奪われ続け、結局誰のものにもならなかった-。誰をも惹きつける魔性の魅力で銀座に生き、自ら死を選び伝説と化した女ムウちゃんこと坂本睦子を多面的に捉えた渾身の長篇。

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