隠された刻(とき): Hidden Times

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 62
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104147069

作品紹介・あらすじ

南太平洋の王国・イリアキに伝わる、予言の砂絵「金の汗」。そこにはかつて跋扈した日本人の欲望と情念が隠されていた。明治末期に移民として辿り着いた鉱夫。戦時中に軍の機密を帯びて訪れた特攻隊兵士。彼らはこの地に何を遺したのか?三つの時代を往還しながら物語の陶酔に誘う南洋小説の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 南の島に古くから伝わる砂絵サリタを軸に、戦前、戦争末期、そして現代のストーリーが交代で進んでいく。途中からは、死んだ人間の視点も時折加わり、それぞれのストーリーがひとつにつながって、伝承の謎も解明された…と思いきや、時間が巻き戻され…。
    夢だったというよりも、もうひとつの未来だったのか。

    視点が変わるたびに、前の段の言葉をつないでいく手法も凝っていて、うまい。勤勉とは対極にある、南の島の粗野な力強さは、作者の得意とする舞台設定で、描写にも熱い息づかいを感じる。

    直木賞を受賞した山妣の印象が強烈で、ずっと追いかけているが、じつのところ最近はピンとくる作品がなかった。本作は、久し振りに読み応えがあった。

  • やはり、坂東眞砂子は、おもしろい。テンポが、他の作家と違う。亡くなる前の力作であり、秀作と思う。
     時空を超えた話が、違和感なく伝わる点では、タイトル、サブタイトルなどを外連味たっぷりで、出版社と売らんかなとしてかいている時代劇やミステリー作家とは、明確に一線を画しており、読みごたえがある。
     この本では、作者の幅広い知識が詰め込まれ、散りばめられている。量子の世界や、放射線など、難解な学問すら、文学に転換されている。
     
     売らんかな作家とちがい、日頃から、人というものを、その根幹である生命と生殖で見つめて、平たくいえば生と性を大事に考え抜いた作家だったと思う。
     物理、医学までの幅広い知識を持って考えるこの作家は、情理だけでしか行動しないネット社会民からは理解されない子猫殺し事件発言で、自らバッシングの対象となった。

     この女性の作家は、芥川龍之介や水上勉、横溝正史などと並ぶ文筆家と思うが、女性であることは、やはり違いがでる。
     
     全てが遺作となったの今、久々に読んだ坂東眞砂子さんの作品。安物のミスがはやる中、時々読みたいと思う。
     

  • 2020/4/14
    面白いが、いささか複雑。

  • ウ~ン、色々な出来事が全て夢でした的な内容なので酷く読後感が悪かった。いくら小説とはいえこれはないだろう!安くないし、厚いので読むのに時間かかったが終りがこれじゃあと言う事でこの著者の本は今後読まないと思う。

  • 故人となられた坂東さんの作品は結構読んでいる方だと思うが、
    郷土色豊かな「死」をコンセプトにした作品が多い中、
    この作品はちょっと異例だと思う。

    南太平洋の王国・イリアキに伝わる、予言の砂絵「金の汗」。
    その謎を解き明かそうと、動き出した日本メディアの北添真一と
    現地ホテル従業員の美郷と竜治。
    砂絵を調べるうちに、予言のような詩の中に
    甦った現地人の祖先「ヒタ」と
    鳥のように飛べる神「シバ」の存在があるのに気が付く。
    これは何を意味しているのか。

    太平洋戦争時のジャングルの中。
    特攻隊兵士睦郎は、飛行機の不調によって、
    このジャングルへ不時着した。
    大統領を町まで送り届ける任務の別の軍隊に、随行を頼み、
    敵にみつからないよう、ジャングルを彷徨っていた。
    やがてめぐり合えたかつての航空学校上司から、
    軍の機密を帯びることになった。

    そしてまた別の時代、
    明治末期に移民として辿り着いた鉱夫の竹松は、
    苦しく虐げられた鉱夫の生活から逃げるため、
    仲間の金を盗み、町へと逃亡していた。
    警官につかまりそうになったとき助けてくれたのは、
    売春婦のファヌアだった。
    やがて竹松はファヌアの助けを借りて、
    彼女の故郷の島へと渡航する。

    現代(平成)、昭和初期(終戦前後)、明治末期と
    3つの時代の話が交互に描き表わされ、
    この話がいつひとつの結果に繋がるのか、と興味深く読み進めた。
    そして謎が解けたとき、正直驚いた。

    南太平洋の島々に散った日本軍の
    隠された秘密をめぐるヒタとシバの争い。
    南の島の住民たちの伝説にもなるような結末で
    飽きることなく、最後まで読めた。

    そういえば天皇陛下も
    この辺りの島へ慰霊の旅に出掛けられたっけ。
    まだまだ、島には秘密があるのかもしれないなあ。

  • 時空間での南洋ファンタジー夢オチ編。

  • 南国の砂絵の謎解きや
    日本軍の隠し財産の宝探し
    時代が行きつ戻りつするため必死に読む
    ハラハラしておもしろかったです

    真さんが強烈に印象に残りました

    20130506

  • 幻の話だったのか?
    最後に少しホッとしたり、あれこれくびを突っ込むものではないと思ったり。
    どの地域にも言い伝えというようなものがあるように思う。物事を具体的に示しているというわけではなく、何かになぞらえて示しているような歌のようなものであったり、絵などであったり。
    宝探し的なことって人をワクワクさせるものなのかなぁ。

  • この作家は文章が余り上手くない。でも意欲は感じる。

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著者プロフィール

高知県生まれ。奈良女子大学卒業後、イタリアで建築と美術を学ぶ。ライター、童話作家を経て、1996年『桜雨』で島清恋愛文学賞、同年『山妣』で直木賞、2002年『曼荼羅道』で柴田連三郎賞を受賞。著書に『死国』『狗神』『蟲』『桃色浄土』『傀儡』『ブギウギ』など多数。

「2013年 『ブギウギ 敗戦後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂東眞砂子の作品

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