明るい夜に出かけて

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著者 : 佐藤多佳子
  • 新潮社 (2016年9月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104190041

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明るい夜に出かけての感想・レビュー・書評

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  • あるトラブルをきっかけに大学を休学し、ひとり暮らししながらコンビニで深夜バイトをする富山。偶然コンビニで出会った客は、大好きなラジオ番組のハガキ職人だった。
    コンビニの頼れる同僚で「歌い手」の鹿沢、お節介な同級生でヘビーなラジオリスナーの永川、ハガキ職人で個性的な女子高生の佐古田。富山を中心として出来上がった、ちょっと不思議なコミュニティ。煩わしいと思いながらも彼らと関わることで、過去の傷と向き合わざるを得なくなる富山。
    本書で大きく取り上げられるのは、伝説のラジオ番組と言われるアルコ&ピースの「オールナイトニッポン」。まだANN歴の浅い私はその番組を聴いたことはなかったけど、ラジオ好きな人ならあの独特のワクワクする空気感が伝わってくるのではないかと思う。読みながらANNオープニングの「ビタースウィート・サンバ」が脳内を駆け巡った。
    LINE、Twitter、ニコ動、アメーバピグ…多様なコミュニケーションツールが頻出し、巻き込まれていくうちに、富山の内に秘めていたものがだんだんと溢れていく過程がさすが。読む側もどんどん引き込まれていく。ANNといいSNSといい、作品に軽やかに絡ませてくるなんて、佐藤さん…感性が若いなぁと驚いた!(佐藤さんより若いはずの私が初めて知ることもあり。)でも、繊細な心理描写や包容力はベテランならでは。一歩間違えば薄っぺらくなりそうなところを丁寧に描いており、懐かしさと新しさがバランスよく感じられる。
    よくよく考えたら、佐藤さんの作品を読むのは実に27年振り。MOEでデビュー作を読んで以来…あっという間に人気作家の仲間入りで、敷居が高くなっちゃった気がしていたのだ。でも、今回久しぶりに読んで、醸し出す空気感が当時とあまり変わらない気がして…ほんのり嬉しかった。
    アルピーのANNを聴いてたら、細かいネタの意味がわかってもっと面白かったのかなぁ、と思うとちょっと悔しいが。それでも、ラジオ番組を愛する気持ちはすごく共感できる。リアタイは無理だがANNを聴くようになり、パーソナリティとリスナーの程よくも濃い距離感がたまらなく心地よいからこそ。ANNに関わらず、ラジオという媒体のよさを再認識しているからこそ。
    そして、友達って安易に呼びたくない…あえて名前を付けたくないような彼らの繋がりがすごくいい。終始泣きそうになりながらページを捲ってました。物語終盤の、意外な人物による意外な言葉がとても誠実で、ものすごくしみたなぁ。
    表紙はニッポン放送のスタジオの写真、カバーを外すと舞台の金沢八景の夜景と、内容にピッタリな装丁が素敵。年齢的に夜更かしすることも夜に出歩くこともなくなったけど、若い頃の「明るい夜」の思い出って、誰もがあるのではないだろうか。本書を読んだことで、痛くて甘くて懐かしい、そんな思い出が甦り…点々と今につながって、私の足もとを照らしてくれている気がした。

  • ぐわあ…そうね、ハガキ職人って憧れですよね…。
    オールナイトニッポンのすごさはあまりよく知らなかったけど、アニラジ…szbhが大好きだった身としては、あの謎の「つながっている感」を思い出さざるを得なかった…。
    うう、まさに紛うことなき青春…夜の片隅の青春である…。

  • タイトルがまず本当に良い。すべてが詰まってる。
    高校生の頃、深夜ラジオを聴いていたころを思い出した。
    田舎の片隅、山の奥の一軒家の子供部屋で。
    雑音だらけの電波を受信しようとアルミホイル巻いたアンテナ目一杯立てて方向もダイヤルも微調整しまくった赤いダブルデッキで。
    下ネタだらけのオールナイトニッポン。
    静かで真っ暗な夜の底でラジオから聞こえてくる人の声だけが明るい、あの感覚。
    時代が変わっても、見知らぬ誰か達とつながっている、心強さみたいなものは変わらないのだなあと。

    あと、ラスト近くでコンビニでの深夜バイト、2人で8時間も10時間も過ごすことはなくなるのだな、と主人公がふと思う、その猛烈なさびしさとかにも覚えがあって。
    未来へ進むためのステップの一つだからどうしようもないんだけど、それでもさびしいっていう感覚。モラトリアムの贅沢と言わば言え。あーわかる、ってなった。

    リアルな若者とか言うとかっこわるいのかな。
    でもこんなだよね。
    つながり方も。
    家族構成も最終学歴も知らない。
    でもどんな声で歌うのかとか、どんなネタが好きなのかは知ってる。
    良し悪しではなくてそういうものなんだっていうのを切り取って見せてくれてる。

    明るい夜に出かけて。

    とりあえずradikoでアルピーの番組は聞いてみたよ。

  • リアルな世の中で、少しだけ生きにくそうな4人。
    少し変だけど、優しい4人。
    この繋がりはいつか絶えてしまうのかもしれないけれど、
    今この時に会えてよかったねと素直に思った。

    フィクションの存在の中に、
    実在するラジオ番組が入り込んでいる。
    作者のラジオ熱みたいなものがぐわっと迫ってきて、
    聴いていないのに、まるで一緒にラジオを聴いている気分。
    勢いに押されて、一気に読んだ。

  • +++
    今は学生でいたくなかった。コンビニでバイトし、青くない海の街でひとり暮らしを始めた。唯一のアイデンティティは深夜ラジオのリスナーってこと。期間限定のこのエセ自立で考え直すつもりが、ヘンな奴らに出会っちまった。つまずき、人づきあい、好きだって気持ち、夢……若さと生きることのすべてが詰まった長篇小説。
    +++

    心に傷を抱え、これまでの人生から逃げ出したくなって大学を休学してひとり暮らしを始めた若者が主人公の物語である。親の立場からすると、不甲斐なく、心配でたまらず、無意味な遠回りをしているように思えてしまい、つい余計なひと言を言ってしまいそうな若者たちがたくさん出てくる。序盤では、親の気持ちで、なにをぐうたらしているのだとイライラすることもあったのだが、読み進むうちに、彼らには彼らなりの譲れない矜持のようなものがあり、周りと足並みをそろえられなくても、各自なりのペースで確実に前に向かっているのだということが実感されて、応援したい気持ちに変わってくる。いくら人付き合いが苦手でも、やはり人間関係は大切だということも、身に沁みる。ラジオのリスナーではないので、そちらの熱狂ぶりは実感としては判らないが、ラジオの番組を通じた繋がりにも、見えないながら深いものがありそうである。タイトルの切実感が迫ってくる一冊でもある。

  • 大学を休学し、コンビニでバイトをしながら、青くない海の街でひとり暮らしを始めた大学生・富山。
    ある問題を抱えながらも、毎週金曜日の深夜ラジオを楽しみに生きてきた。
    しかしモテ男のバイト仲間・鹿沢、ミス・サイコなコンビニ客・佐古田、クソ野郎だけど唯一の友達・永川たちと交流を深めていくうちに、富山の「夜」は次第に明るくなっていき……。

    面白かった!
    最初ラジオの話と主人公の一人称にじゃっかん引いちゃったけど、ミス・サイコが出てからは一気読み。大好きだ、虹色ギャランドゥ(笑)
    あんなに誰とも関わりたくない人だった主人公が、彼女と出会って自分から関わって行くようになっちゃって。二人の掛け合いがすごく好きです。服を買いに行くくだりとか最高。もうこの二人の恋愛メインで続編書いて欲しいくらい!

    他にも絶対普通にモテるのに、ついつい変わった子ばかり構っちゃう鹿沢くんも好き(笑)
    その変わった子に主人公も佐古田ちゃんも入ってるわけだけど(笑)
    何気に天然だからツッコミ役の主人公とも相性いいんだよね(笑)
    そんな鹿沢くんの一番好きなセリフは「そんなに優しいこと言ってると、君の人生は簡単に侵略されてしまうよ」です。鹿沢くんなら侵略されてもいい(笑)

    誰かによって酷く傷つけられてしまった青年が、違う誰かと出会って立ち直っていく、とても良いお話でした。
    叶うことなら主人公と佐古田ちゃんのその後のお話がすごく読みたい。

  • 何がそうさせたのか分からないけど、胸がぐっと熱くなる小説だった。
    虹色ギャランドゥが登場した辺りからワクワクしたな。
    コミュ症だろうがネットの世界と実物が違かろうが、高校で浮いてようが、コンビニとラジオという場所で繋がって熱く語り人を動かし感動させる彼らが少し羨ましくもあり愛おしくもあった。
    深夜ラジオ。深夜のコンビニ。ネット。下北。私にとってこの小説は新しい発見と何かを思い出させる物語だった。
    ラジオの話についていけない自分が少し悔しくて星4つ。

  • 今のラジオのことを知っていたら、もっと楽しんで読めたと思う。

  • テーマとなっているラジオ番組の異質さのせいか、その実況が主人公の心情を表わす詩のように作用しているのが面白い。

    読後感は人によって変わるかも。
    個人的にはあの、ほんのちょっとした成長と、恋愛と繋がるようで直結はしないあの感じがとても好きだった。
    交友関係だって同じように続くかはわからないけど確実に大切な思い出や愛情といった気持ちが残るであろう感じも、どことなく最終回を迎えた深夜ラジオっぽい切なさがある。

    深夜ラジオとリスナーとの繋がりというのはすごく緩やかなようで、心の芯にまで食い込んでくるものだと実体験として思う。
    その感覚を非常にうまく小説に取り込んでいる作品だと感じた。

  • 深夜ラジオリスナーではがき職人の青春の1年間の物語。

    高校受験から大学受験までの間はかなり聞いていた深夜ラジオが今も若者たちに受け入れられているようでうれしかったです。
    オールナイトニッポン(ANN)は定番で、地方の自分は第一部しか聞けないのですが、第一部のテーマ曲(金麦のCMでも有名)を聞くと若い血が騒ぎます。
    とはいえ、時代はアルコ&ピースが金曜第一部MCの時で、ラジオ以外はSNS、携帯、ニコ動などが不自然なく使われていて、作者は自分と同世代なのにと驚愕しました。
    登場人物も絞りに絞ってメインの4名はもちろん、コンビニバイト先の脇キャラも個性的で、若者が語る文章にはちょっと抵抗はあったものの、読みやすかったと思います。
    また、人間関係というか接触障害に悩む主人公の挫折してから一年間での出会いと変化がリアルに描かれていて感情移入もできて、一気読みしました。

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明るい夜に出かけての作品紹介

『一瞬の風になれ』(本屋大賞受賞作)の著者、書下ろし! 青春小説に名作がまた誕生した。今は学生でいたくなかった。コンビニでバイトし、青くない海の街でひとり暮らしを始めた。唯一のアイデンティティは深夜ラジオのリスナーってこと。期間限定のこのエセ自立で考え直すつもりが、ヘンな奴らに出会っちまった。つまずき、人づきあい、好きだって気持ち、夢……若さと生きることのすべてが詰まった長篇小説。

明るい夜に出かけてのKindle版

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