- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104231065
感想・レビュー・書評
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38億年の進化を200頁強に纏めた。
だからと言って生物進化の入門書という訳でもない。
難しい部分は難しいし、読みやすい部分は面白い。進化の話は嫌いじゃない、むしろ好きな部類。
ブルーバックス大好きな時期もありましたから。
生命の誕生の話は難しい。タンパク質ありき、RNAありき、DNAありき、なんだそうだけど化学記号が飛び交うと、もうチンプンカンプン。(死語?)
カンブリア紀の大爆発まで来ると著者の舌も滑らかになってくるから、ここからは頁が進む、進む。
確かに進化を通しで(発生から現人類まで)書いている作品は少ないのかも。
カンブリア紀に匹敵する生命の多様化は他にもあったそうだし大絶滅も何回もあったそう。
進化とは?を判りやすく、尚且つ学問的に説明してくれる良書。
でもやっぱり好きでないと面白くは無いかも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生物進化の通史。38億年を一冊にまとめた本は案外と少ないので本書を読んでから詳しい各時代の書籍を読むと理解がしやすいだろう。
元はエッセイなので文体も読みやすい。
最近はネオダーウィニズムに批判的なのが主流派になったようだ。 -
面白い。生物38億年の歴史を遡れます。
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(2011.06.17読了)(2011.05.25借入)
この本を書いた動機を著者は「あとがき」に以下のように書いています。
1.38億年にもわたる生物進化の歴史を時間軸に沿って年代順にコンパクトにまとめて読める本はほとんどない(本書を通読すれば、生物の歴史の概略はほぼ理解できるはず)
2.進化史を画するような大きな出来事は、遺伝子の突然変異、自然選択、性選択、遺伝子浮動といったネオダーウィニズムの概念装置では解読不可能なことを、生物の進化史に即してはっきり示したかった(ネオダーウィニズムが説明できるのは、種内の小さな進化だけで、新たな大分類群の設立といった大進化については、遺伝子の使い方を制御しているシステムについて深く考察する必要がある)
⇒遺伝子制御システムについて考察した本が「「進化論」を書き換える」です
章立ては以下の通りです。
第1章、無生物から生物がいかにして生まれたのか
第2章、シアノバクテリアの繁栄と真核生物の出現
第3章、多様化―単細胞から多細胞生物へ
第4章、カンブリア大爆発
第5章、動物や植物が陸に上がりはじめた時代
第6章、「魚に進化した魚」と「魚以外に進化した魚」
第7章、両生類から爬虫類へ
第8章、恐竜の進化と、鳥の起源
第9章、爬虫類と哺乳類のあいだ
第10章、ほんとうの哺乳類
第11章、様々な有蹄類たち
第12章、ヒトはどのようにヒトになったか
終章、進化とは何か
●生命は宇宙から(14頁)
「生命の種は宇宙からやってきた」という説がそれなりに力を持つかといえば、地球で無生物から生物ができたその最初の過程を考えるのが非常に難しいからである。
●細菌の分岐(28頁)
生物の進化系統は、メタン菌のような古細菌と、真正細菌と、真核細菌の、三つに分岐することになる。リボソームRNAの違いを見る限り、系統的には真核生物と古細菌は近く、真正細菌はかなり異なっている。
●ウイルスの起源(30頁)
かつては、ウイルスが一番原始的な生物であり、生物はウイルスから始まった、というように考えていた人もいたけれども、ウイルスは生物のDNA断片やRNA断片が独立したものだというのが現在の通説である。
●形が先、適応は後(100頁)
陸棲から海棲になったクジラにしても、普通に足があるときには、海の中に入る必要もないのだけれども、構造が変わって足が弱小化したら、陸上よりも水中のほうが当然生きやすい。形が先で、適応は後、というのが動物の形態や機能の大きな変化(進化)の基本パターンなのだろう。
構造が先に変わり、形が変わったら、その構造や形に適した環境を、生き物は目指すのである。
(池田さんも、生き物が主体的に変わってゆこうとすることには、賛成できないようだ、形が先で、適応は後、というのでは、突然変異と自然淘汰のネオダーウィニズムと基本的に変わらないように思うのですが)
●足の指は8本(100頁)
陸上歩行には不十分だったアカントステガの足には指が八本あって、より進んだ形のイクチオステガの足の指は七本だったらしい。その後、両生類の足の指の数は減っていき、だいたい四~五本ほどになったわけである。
(指ができたのは偶然で、8本から5本に減っていったのは、機能するための必然とはいえないのでしょうか)
●昆虫の翅(100頁)
原初の有翅昆虫は翅が三対あった。飛ぶにはなはだ機能的ではない。これは、そもそも飛ぶために翅ができたのではなく、構造が変化して翅ができたから飛んでみるようになった、ということを示唆している。飛んで暮らす生活環境の中でより適応的なマイナーチェンジをして翅が二対に減ったということであろう。
●昆虫の大型化には(105頁)
現在の大気中の酸素濃度は21パーセントだが、そのころ(石炭紀後期)は30パーセント以上あったとも言われている。トンボなどの昆虫が大型化したのも酸素濃度が高かったことも関係しているようだ。
●カメの甲羅(114頁)
カメは長い進化史を通じて徐々に甲羅を作っていったのではない。遺伝子運用システムの変化によって短期間に甲羅を作ったのである。ただ、すべてをいっぺんに作ってしまうことはなかなかできなくて、いくつかの段階を踏んでいる。それぞれの段階から次の段階へは徐々にではなく一気に形態が変わる。
●魚類、両生類、爬虫類はどこまでも成長する(126頁)
人間の場合、体が大きくなるにしても、その成長を止めるシステムが働くから、ある一定の大きさ以上には大きくならない。しかし、魚類や両生類や爬虫類はその成長を止めるシステムが人間ほどには働いていないように見える。コイにしても、カメや、ワニにしても、年を重ねるほどに身体が大きくなっていく傾向がある。
●二足歩行後に草原へ(189頁)
乾燥した草原に取り残された類人猿がそこでの生活に適応するために二足歩行するようになったのではなく、森で生活している間にたまたま二足歩行できるようになった類人猿が草原に出てくるようになったのだろうと私は思う。
●ヒトの体毛が薄いのは(198頁)
体毛が無くなったことと、頭が大きくなったことは、トレードオフの関係にあるのかもしれない。脳の巨大化と体毛の減少は、これを発現させる遺伝子の使い方が、多少ともリンクしていると考えればよいのだ。
☆関連図書(既読)
「ダーウィンの夢」渡辺政隆著、光文社新書、2010.03.20
「「進化論」を書き換える」池田清彦著、新潮社、2011.03.25
(2011年6月20日・記)