われはフランソワ

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著者 : 山之口洋
  • 新潮社 (2001年2月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104270026

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われはフランソワの感想・レビュー・書評

  • 後の大詩人、フランソワ・ヴィヨンを主人公に据えたピカレスク。
    パリ大学を出、詩作でバリ中にその名を知られながら、学生を煽動して大騒ぎした挙げ句、人を殺してしまいパリを出奔せざるをえなくなる。流れていたところを盗賊団に尻尾を捕まれ、泥棒稼業に身を落とすはめになる。
    盗人でありながら、詩人として詩作を趣味とするオルレアン公シャルルの館に食客として居候することになったヴィヨンは、やがてその妻であるマリー・ド・クレーヴと心を交わす。
    城内で行われた詩作会でも大喝采を浴びるが、盗人の身では留まることは出来ず、仲間に呼ばれ再び盗人稼業に。

    そんな、流されるだけのフランソワに見えるが、芯の部分には自分の強い意思が見える。意思で世間に反抗し、意思で自分の欲望を解き放つ。それは、オルレアン公シャルルの厭世的な生き様との対比によりいっそう鮮鮮やかに記憶に残る。
    自分探しになど目もくれず、才能と感情の赴くままに生きていく。困難も成功も、ともに自分の意思だと歩む姿には羨望さえ覚えるほどだ。
    ユーモアとカタルシスにあふれた一級のエンターテイメント。
    この作中でも有名な詩のいくつかが読まれているが、この作品で彼の詩を味わえた人は実に幸せだ。かつて場の文学であった詩を、確かにその場にいたように感じることが出来るからである。
              
    とりとめのないレビューに困惑された方も、是非一読されたい。

  • フランソワ・ヴィヨンの伝記だが、多分実在の人物であるヴィヨンとはあまり関係がないのだと思う。

    威勢良く「われはフランソワ」と名乗るタイトルに反して、この主人公はちょっと呆れるくらい自分のことが分かっていない。

    自分が何をしたいのか、そもそもどこに向かっているのか、最後の最後までよく分かっていなくて、成り行きから悪事に惹かれ、人を殺してしまったり盗みを働いてしまったりする。

    それでいて、いざとなると悪人になりきれなかったりもするのである。

    しかもこいつが、社会のはみ出者を真っしぐらにいきながら、詩を歌うとなると、するどい観察と機知を働かせ、右に出る者のいない天才詩人の顔も持つ。

    文字通り
    「自分のこと以外ならなんだって分かる」
    と謳うのがどうやらこの物語の主人公の本性らしい。

    悪に惹かれ、悪に染まり、それでいながら悪を恐れ、悪を恥じ、矛盾こそが人間の正体であろうと察するこの主人公は、だから結局は
    「われはフランソワ」
    と述べる以外、自分というものを語る術を持てないのかもしれない。

    確固たる「わたし」というフィクションを突き破って、矛盾だらけの人間の本性を生きているフランソワが実に魅力的。

    あと、シャルル・ドルレアンがかなり重要な役どころで出てくるんだけど、このシャルル殿がとても良く描けていて、アジャンクールの戦い辺りの回想も読み応えがある。

    単純化を恐れず敢えていえば、多分詩というのは単声の芸術であり、それに対して小説は多声的な芸術である。

    その意味では、この作品はフランソワ・ヴィヨンの詩が奏でるメロディに実に見事に多声的な伴奏を添えたと言えるかもしれない。

    「伴奏」という言葉に、もちろんこの作者の才能と技量への最大限の敬意を込めて。

    とても面白くユニークな作品なので、ぜひ一人でも多くの人に読んでもらいたいと思いました。

  • 15世紀フランス。
    放蕩詩人フランソワ・ヴィヨンの生涯を描いた物。
    ジャンヌ・ダルクが処刑された年に生まれたフランソワ。
    イギリスはフランスの統治権も主張し、フランス内でもアルマニャック派とブルゴーニュ派が長年争っていた。
    養父ギヨーム・ヴィヨンは教会の司祭。
    ある未婚の母が子連れでは働けないからと預けて行ったのだ。

    パリ大学に通うが、酒に博奕と放蕩の限りを尽くす。
    パリ大学の教職員と学生にはいくつも特権があったそうです。
    陽気な詩を作って酔客を笑わせて人気を取り、酒代をただにして貰う毎日。
    娼婦に入れあげて居続ける生活も何度も繰り返す。
    逆恨みで襲われたはずみに刺し殺してしまったのが運の尽き。
    追っ手を恐れて逃げるうちに本格的な盗賊団コキャール党の仲間にされ、抜けられなくなる。事件は正当防衛として許されていたとも知らず…

    小物売りの行商で流れていったブロアの街で、詩を愛するオルレアン公シャルルの宮廷に招かれて、呆れられつつも詩才を認められ、楽しい半年を過ごす。
    シャルルの年の離れた美しい妻マリー・ド・クレーヴ。
    シャルルはかってアルマニャック派の首領だったが、十数年もイギリスに囚われの身だったために、生きる意欲を失っていた。
    シャルルを笑わせてくれという公妃の願いを受けて立つフランソワ。このあたり、楽しいです。マリーの子が後に巡り巡ってフランス王ルイ12世になったという。

    呆れるほどの破滅型ですが、憎めないところがある男。どこまでが史実なんでしょうねえ。いきのいい詩が挟まれて、うまくまとまっています。
    著者は1960年生まれ。98年「オルガニスト」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。

  •  読了。これはすごく面白い!

  •  フランスの詩人ヴィヨン=フランソワが振り返って語る我が人生の物語。 百年戦争終結直後、中世から近代へと移行する途中で絶対王政が確立する以前の混沌とした、だからこそ民衆が強く逞しかった、そんな時代の空気を生き生きと力強く描いていて、読むのがとても楽しかった。 最後まで読んで初めて、タイトルの真の意味が判るという趣向も素晴らしい。 実際の「詩人ヴィヨン」とはどういう人物だったのか、とても気になった。

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