ぐるりのこと

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著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2004年12月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104299041

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ぐるりのことの感想・レビュー・書評

  •  なのに僕は
     こっちにいるからあっちに行けない

    と言った黒木瞳の詩を思い出す。
    詩の題は「境界線」だった。

    このエッセーには著者が、深く丁寧に考えている物事が書かれていて
    今ひとつピンとこない部分もあるが、たびたび出てくるのが自分と
    他者の間にある「境界」のこと。お互いを理解するにはどうしたら
    よいのだろう、そもそも境界というのはなぜ存在するのか、自分の境界を
    押し広げて向こう側を覗くこと・・・奥が深い。

    その後、小説「沼地にある森を抜けて」も読んだが、小説でも「境界」が
    テーマの一つになっていて、はからずも「ぐるりのこと」を読んだことが
    予習になった。

  • 梨木香歩さんのエッセイ、というには少々重い著述されたもの。
    先に読んだ『村田エフェンディ滞土記』に繋がる作者の思い、といったもの。

    個を守るために確たる境界は必要だろうか?
    生垣のように、その境界自体に色々なものを内包したあちら側とこちら側も
    存在できるものは造り得ないのか。

    中に、長崎の少年が幼児を殺害した事件について書かれた項がある。この作者の
    見方はとても沁みた。
    あれから何年も経つし、語られた事も多いけどこのようにストンとわたしの
    心に受け入れられる気持ちや、考えはなかったように思う。

    読み終わって、「ぐるりのこと」を思いながらこの装丁を見直すと、また
    とても良い。買うなら単行本が良いなあ。

  • 憧れている図書館司書の方に勧められたので読んだ。
    P134、「一人の人間を神格化して崇める、という行為には、自分で考える努力を放棄し、判断し決定する責任を他に押しつけた怠惰のにおいがする。」のところが大好き。そして反省する。一人の人間を神格化させがちなので。
    気を付けよう。

  • 自分のみじかな社会や文化とそうでないものの間にある境界について、想いを巡らすエッセイ。分からないものに対しても、偏見を持たず心を開き理解したいと願う。何度も繰り返して読みたい。

  • すばらしく静かな本だと思った。
    エッセイというには、硬いような、難しいような…誰かに勧める?と聞かれれば、答えはNOだけど。
    わたしは、好きかもしれない。
    硬質な文章は説明文みたいだし、考え方もわたしとは異なるタイプだし。この人の小説は好きなんだけどな、と最初はがっかりしたけれど。
    少しずつ読む分には、嫌いじゃないかも。

  • タイトルから勝手に軽い内容のエッセイを予想していたんだけど、梨木さんに軽い内容などないのだった・・・。

    連載時の時事が多少絡んでいる内容で、基本的にはなんだか変わってしまった日本や日本人、世界に対してどうにもならない思いがあるけど、やりきれなくて悲しい・・・というような感じ。

    世の中みんながみんな自己中心的とは思わないけど、みんな多かれ少なかれそういった面は持っているものだし、それを隠すでもなくおおっぴらに欲望のままに行動しているから、それが問題なんだな。

    かといって、何をどうこうしようとも思わないし、どうこう出来るとも思わない。だから梨木さんは悲しんでいるようだけど、
    まぁしょうがないなぁなんだよ。

  • 梨木香歩のエッセイ。ちょっと難しい。著者が様々な場所を巡り、様々なことを考え、思ったことが書いてある。

  • 静謐な雰囲気のエッセイ集。
    少し重い感じ。決して嫌な重さではないのだけど…。

    草木や環境の事、そして宗教や事件(報道)に関しての考察に、色々考えさせられた。
    あと、境界についての話も多くて、身の回りの事を“ぐるりのこと”というのが、なんだか凄くしっくりきた。

  • 中盤以降からおもしろくなった。西郷隆盛のところあたり。

  • かんがえること、の大切さ必要性が書かれたエッセイ。幼児化された日本は、誰にとって都合がよかったのか?

  • 2011/8月
    梨木さんの世界観の由来がわかるような「ぐるりのこと」に関するあーだこーだ。 自分と自分のいる環境と自分の内側とが実はすべて連動して同一なのに、違う感じ方をしているこの世界を梨木さん的ぐるりのことから綴っている気がする。

  • 考えることを考える本

  • エッセイなのだけど、深くて静かなお話みたいだなぁと思います。

  • 穏やかな語り口。脈絡なく選ばれているようにみえる話題は、たいてい梨木さんが身の回りで見聞きしたことから始まりますが、いつの間にか、民族問題や教育問題、環境問題などへ、話は発展していきます。いくら考えてもなかなか結論の出ない問題。でもそれについて辛抱強く考え続けること、思考の道筋を間違えないことが、答えを出すよりも大切なことなのだと感じました。書き留めたい言葉はたくさんありましたが、一つ引用するとすれば、「・・・手で触り、目で確かめ、皮膚で感じ取ったものを自分の内側に帰納させてゆく、その生活の場での積み重ねを基点に、世界に足を踏み出してゆく、そうでなければ「確からしさ」というものが一体どこから湧いてくるというのか。」。思考の道筋のヒントになるかもしれません。

  • (2006.12.28読了)(2006.12.25購入)
    「考える人」に2002年夏号~2004年秋号、掲載したものを一冊にまとめたものです。
    題名の通り、身近なことをテーマにしながら社会についてまで考察を進めるという「考える人」に相応しい内容のものです。フィクションで空想の翼を羽ばたかせることもできるし、随筆でも、十分読み応えのあるものを書くことのできる人のようです。
    川上弘美の場合は、フィクションは得意なのですが、随筆は苦手のようですので、人により様々のようです。

    興味の範囲が広いようです。
    不審船騒ぎから、1808年の長崎港における英国軍艦フェートン号事件に話題が移ったり、牛の瞳の話からローザ・ルクセンブルクに話題が移る。
    生垣の話が、イスラームの女性の被り物の話につながり、藤原旅子の陵墓の話に移る。
    トルコの旅行の話とテレビアニメの「キテレツ大百科」の話がつながったりする。

    ●加藤幸子著「ジーンとともに」(29頁)
    全く自分が鳥になったかのような錯覚を覚える、不思議な作品を読んだことがあった。ある小鳥の誕生から死までが、その鳥自身で語られる。純粋に、鳥が自分の生活を、語る。まるでレポートでも読み上げるように、鳥としての本能が自分を突き動かす様を、遺伝子が自分を導く巧妙さを、淡々と述べていくのだ。その視座の、なんとも不思議な在り方に、最初眩暈がしそうだった。
    文庫版「心ヲナクセ体ヲ残セ」加藤幸子著、角川文庫、2008/9/25
    ●「逆縁」(97頁)
    「冠婚葬祭大事典」では、「逆縁」とは、親を看取るべき子ども、夫を看取るべき妻、がその任を果たさなかったことで、そういうものの葬式には出てやることはない、と言う理屈だ、と説明している。文字通り「先立つ不孝」と言うわけだ。
    ●船と飛行機(107頁)
    「ヨーロッパに着いてしばらくはまだ、本当に自分がヨーロッパにいると言う気がしないものだが、三ヶ月ほど経つとようやくその実感が湧いてくる。考えてみればこの三ヶ月と言う時間は船旅と同じ時間で、体と魂を同時に運ぶと言う点では船旅が一番適していたのだろう、飛行機は体だけ運んで魂のことを忘れている」
    ●心の奥に届く(141頁)
    しんとした真夜中、ペンを持ち原稿用紙に向かっていると、ただどうしてもこうとしか思われない、自分の存在の奥から立ち上がってくる思いがある、それが自分を突き動かす、どうしても書かずにはおれない、と、そういう風にして生まれる文章しか、もう人の心の奥には到達し得ないように思う。

    ●梨木香歩の本(既読)
    「西の魔女が死んだ」梨木香歩著、楡出版、1994.04.19
    「春になったら莓を摘みに」梨木香歩著、新潮社、2002.02.25
    「家守綺譚」梨木香歩著、新潮社、2004.01.30
    「村田エフェンディ滞土録」梨木香歩著、角川書店、2004.04.30
    「沼地のある森を抜けて」梨木香歩著、新潮社、2005.08.30
    (2007年1月10日・記)
    著者 梨木 香歩
    1959年 鹿児島県生まれ
    英国に留学、児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事
    1994年「西の魔女が死んだ」で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、小学館文学賞受賞
    1996年「裏庭」で児童文学ファンタジー大賞受賞
    2005年「沼地のある森を抜けて」でセンス・オブ・ジェンダー賞大賞受賞、紫式部文学賞受賞

    (「BOOK」データベースより)amazon
    高千穂岳に近い山荘で出会った一頭の鹿のこと、イギリスのセブンシスターズの断崖でドーバー海峡の初夏の風に吹かれながら友と交わした会話、トルコのモスクでのヘジャーブをかぶった女たちとの出会い、イラク戦争の衝撃、少年少女による殺害事件への強い思い... 続きを読む

  • 随分長い時間かけちゃいました。
    正直しんどかった。何だろう、独特の書き方というか表現というか。
    たまに話がかなり飛躍して主題を見失うこともしばしば・・・。
    解読するのにかなり時間を要してしまった。というか、多分理解していない方が多い気もする。
    エッセイという肩書きが書かれているが、どちらかと言うと紀行文のような気がしないでもない。


    「風の巡る場所」という章がある。
    その中の『Ⅱ』のパートで著者が不用意にカメラを向け、写真を撮り反省したエピソードが載せられている。これには「ギクリ」とした。観光地はもちろん、カメラ付きケータイの出現でところ構わずカシャカシャとやってしまう癖がある人は僕だけではないだろう。

    写真というのは、その風景や日常の瞬間を切り取り保存するもの。もちろん思い出の数は多い方が良いのだけれど、そんなに気軽に切り取ってはいけない瞬間だって存在する。
    特に海外でならばなおさらだ。個人情報保護法などというモノが制定されないとプライバシーも守れなくなってしまった世の中。プライバシーについては「守る」だけでなく「他人のを犯さない」ことについてももっと敏感になった方がよい。


    もうひとつ。「物語を」という章が最後に書かれている。
    導入部に傷ついたカラスの話が書かれている。

    「・・・あんたは死ぬ」

    この一文にショックを受けた。
    著者と同じ場面に遭遇したら僕もこのカラスを助けはしないだろう。
    しかし、その時の感情を文字にするとこんなにも残酷なものかと思ってしまう。
    自然の摂理。
    あたりまえの法則。
    運命。
    弱肉強食
    何とでもいえる。
    傷ついた動物、萎れた草花。目の前を通り過ぎたからといって、そのものすべてを救うことはできない。それが現実と言う名の厳しさだ。

    キレイ事と言われるかもしれない。実際にそうかもしれない。
    でも思う。

    「助けたい」

    その気持ちは捨てたくないと。


    最後になぜ今回これを読んでいるか。
    「軽く読めるエッセイ」をと友人に依頼したはずが・・・。「お薦め」の名の下に借りたものはこれ。
    全然ライトじゃなかったけどありがとうT松さん。
    自分からは絶対読まない分野なので勉強にもなりました(笑)。

    KEY WORD>>ぐるりのこと(著:梨木香歩)
    イギリスのセブンシスターズの断崖でドーバー海峡の風に吹かれながら友と交わした会話、トルコのモスクでのへジャーブをかぶった女たちとの出会い、イラク戦争の衝撃、少年少女による殺害事件への強い思い――喜びも悲しみも深く自分の内に沈めて、今いる場所から考えるエッセイ(amazon.co.jpより)。

  • 2005.3.4. 梨木さんの世界への目、日常への目がすごく真摯でびっくりした。むずかしい言葉やちょっと馴染みにくい文章、テーマもあったけど、こんなに考えていたらすごい。勉強になった…と言ったら違うけど、こういう姿勢でいる人もいるんだと、目からウロコ。

  • あーさんおすすめ

  • なんかおかしいな・・・って読みすすめてると、
    「だってそれエッセイじゃん」
    「え?ぐるりのことって実話なの?」
    「映画とまったく別物だよ」

    ・・・なるほど。
    梨木さん映画の題名お怒りだったそうで。

    読む気がなくなってしまった。

  • 自分の足元の下にあるもの、身体に感じるもの。
    そういう、あるんだけど見えないようなもの、身の周りに存在している多くのことに目を向けて綴られたエッセイです。
    彼女が感じる多くのこと、私たちには見えていなかった多くのことに目を向けさせてくれて、それでいて考えを押し付けるわけではなく、私達に“考えなさい”と提示してくれる。

    なんていうか。
    このエッセイは、梨木さんの思いの核のようなもの、と感じます。
    そういうものに対して、こんなに共感、というか、素直に受け入れることができる作品は、今までそうそうありませんでした。勿論、細かいところに違和感を感じたりすることはあったとしても。
    おこがましくも、私の感じ方は、梨木さんに近いのかもしれないなぁ、なんて思っちゃったりもしましたよ(本当、図々しい。笑)。私もそう思う!!ということがたくさんありました。
    いやぁ〜、梨木さんみたいに、とことん調べたりはできませんし、もっと曖昧な思いですけどね。

    最初に「しょうがないなぁ」という言葉が出てきたときには、共感を抱くと共に、少し違和感を感じました。実は、私もそう思っている。でも、私はそれはいけない考え方だと思ってた。
    でも、その後の章で、もう一度別の場面で「しょうがないなぁ」という言葉が出てきたとき、私は涙が出そうでした。
    ああ、梨木さんの「しょうがないなぁ」は、とてつもなく大きな愛なんだ。
    多くの色んなことを受け入れる、大きな器なんだ。

    世界を憂い、変えたいと願う心があって、では、そのために何ができるかを考えて一生を終えてしまうことは多々あるでしょう。
    何ができる?
    自分と繋がっている、周りを見てみることです。
    少しずつ、一歩ずつ、祈りを行動に変えていくことです。一人の力で、何ができるでもない。
    それが、大きな力の轍を追っていく一つに、唐草模様の数センチになれるよう。

  •  著者の気持ちに共感でき、気持ちよく読めた。悲惨な事件が起こったときの、当事者へのインタビュー。私も以前からこれが嫌だった。被害者へのインタビューはあまりに気の毒で、そっとしておいてあげて欲しいと思いながら。学校でのいじめなどの事件での校長の会見。自らの能力のなさを露呈しているような判で押したような心のこもっていない言葉に、被害者の悲しみを増幅させるだけと思いながら。

    「ぐるり」この言葉は母がよく使っていたなぁ。また母を思い出した。

  • 引用の引用だけど

      小林秀雄の「一ツの脳髄」の中で、
      主人公が、船に乗っていて、
      他の客と同じように自分の体も揺れる。
      それがどうにも我慢ならないのだけれど、
      どうしてもそこから逃げる方法が見つからない、
      というようなところが・・・略

    凄い納得。
    凄い思う。
    よく感じる。

  • 「ぐるりのこと」=身の回りのこと、をいちいち深く考えることによって
    世界とつながっていくその態度が素晴らしいと思う。
    私などは、どうしても身の回りのことと、世界で起きていることが
    地続きだという実感が持てないでいるから。頭では分かっていても。

    続きはこちらから
    http://yurinippo.exblog.jp/8313145/

  • 雑誌「考える人」に2002年から2年間連載されたエッセイ集。エッセイとはいいながら、本書を読むには頭をフル回転させる必要のある、大変に身の詰まった内容になっています。しかし本書は私に、この雑誌の講読のきっかけを与えてくれた本でもあります。
    高千穂のある店で出会った親子連れ、友人と訪れたセブンシスターズの断崖、長崎で起きた悲しい事件、引き裂かれた広島の千羽鶴、イラクの戦争・・・私の、そしてあなたの見聞きするこの世界は、こんなにも考えるべきことで満ちている。けれどそれらは、決して他人事ではない。報道で知るような事件も、私の生活の中で体験することも、すべては私を包む皮膚一枚という厳然たる境界を隔てたところで、けれどその境界の本当にすぐ隣の場で、起こっている。そのことにしっかりと向き合う感受性を持つことの、なんと大事なことか。そう、本書の著者は訴えているように感じられます。
    「考える」とはそもそもなにか。それは普通の「思考する」こととはどこか違うような気がします。もしかしたら考えることとは、ただ思考する以上のもの、考える主体のなまの感覚を持ったものでないといけないのではないか。この本を読んで恥ずかしながら少なからず涙しながら、そんなことを私は思うようになりました。けれどそれを実行することは、著者も書いているようにとてもとても難しく、目標地点は、はるか天の高みにあるように感じられます。
    著者はこの本の中で、自分の周囲で見聞きしたことから出発し、ゆっくりと着実に、時には袋小路に迷いながら、思索を進めていきます。そのプロセスのひとつひとつが丁寧につづられた文章は、力強くも繊細で、作品世界をにおいたたせるような質感を持った文体を通して、私の前に立ち現れるようです。哲人のような複雑な機能を備えたあたまを持ち合わせていない私にとって、本書は、考えることの何たるかを教えてくれるテキストとなり、また私もかくありたいと思える目標になりました。私もまた、私を「ぐるり」と取り巻く世界のことを、じっくりと考えられる存在になりたい。
    最近また、痛ましい災害や凄惨な事件を耳にすることが多くなりました。そんな体験に接するとき本書は、それらをどう考え、どう私のなかに定位させていけばいいのかという問題のヒントを、与えてくれているような気がしています。

    (再読)

  • なんだか集中できなくてじっくり読めなかった。また読み直そう。

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