沼地のある森を抜けて

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著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2005年8月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104299058

沼地のある森を抜けての感想・レビュー・書評

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  • ホラー風味のファンタジーだと思ったが、読み進むにつれて、宇宙的というか、生命の起源的なお話になった。

    フリオと光彦のあたりは理解しやすいが、間に挟まれる「シマの話」は、自分勝手に理解しても良いのだろうか…
    まだ生殖ではなく分裂で種族を増やしていた何かの記憶?

    連綿と続く命や時間の流れの中では、必ず、突然変異はおこり、変化がはじまる。
    変わらないものなどない。
    しかし、その根底に流れつづけるのは、終わりたくない、命を存続させていきたいという本能。

    何かが終わったのだろうが、終わることによって新しい物が生まれた。
    たとえば、湿って腐りかけた重い衣を脱ぎ捨てて新しく生まれ変わったような、すがすがしいラストだった。

  • 学生のときに読んで、複雑すぎて分からないのに大好きだった本。しばらくたってまた読んで、やっぱりよく分からなかったけど大好きだと思った。酵母菌をきっかけに、有性生殖と無性生殖、性とジェンダー、自然と文明などなど、命の営みを壮大な視点でとらえたお話。壮絶な孤独から生まれる命はなんて尊いものだろう。

  • 死んだ叔母からマンション一室と一緒に相続した“家宝”のぬか床は、毎朝毎晩必ずかき回さねばならない。でないと呻くのだ。厄介払いにその世話を任される羽目になった久美は、ある日ぬか床に卵が出現していることに気づく。卵は日に日に増え、一つがヒビ入ると、部屋に半透明の男の子が現れた──。
    何故人は有性生殖を行うのか、単性生殖(生物)にも、我々より優れた調和があるし、人がそれを行っても良いのではないか? そんな寓話も交えつつ我々が繁殖する意味、生物の根元的哲学にまで践み入った物語。梨木香歩ってすげー。

  • すごい。圧倒された。
    著者の洞察力の深さと視野の広さが存分に発揮された、ここ何年かで読んだ本の中でも5本の指に入る傑作だ。ストーリーの面白さも然ることながら、結局は著者の人間力なのだと思う。繰り返しになるが、洞察力の深さと視野の広さ。ものを書く人にとってはこれが大きな資質と云えるのではないだろうか(もちろん文章力という大前提があるが)。本書を読み終えた時にぼくは、梨木香歩という人物について、或いは梨木香歩という人物が影響を受け吸収してきたものについてもっと知りたくなった。

  • ぬか床から人間が現れるという、奇想天外なところから始まる、
    ファンタジーといえば、ファンタジー。
    梨木さん、すごい小説を書かれたなあと思いました。
    誰しもが本を読むときには、きっとこんな感じのところにたどり着くのだろうなと、ある程度予感を持って読み始めるのではないかと思いますが、
    このお話の場合、予感しなかった出口に連れて行かれて、思いもかけなかった光景を見せられたという印象があります。
    生命とかジェンダーとか、自然とか人間の絆とか、
    この世界のあらゆるものが、根っこの部分で繋がっているのだなと、そんな風に思わされました。

  • 沼の再生と同調するように久美と風野が結ばれるクライマックスシーン。
    即物的な表現を排した美しい描写ながら、強烈なエロティシズムを感じる。
    それは、エロティシズムというものが生命活動の根源としての男女の交わりの本質的な部分からもたらされるものなのかもしれない。

    久美が奇妙な先祖伝来の糠床を叔母から受け継ぐことから始まる物語は、父祖の地の枯れた沼に糠床を返すことにより幕をおろす。
    一旦は自己の性を捨てた男女が出会い、協力して沼の再生に手を貸す過程で連綿と続く命のつながりの奇跡に目覚める物語。
    命の大切さ、生命の連鎖の最先端に立つ自分という存在、未来を見つめて生きることの意味を教えてくれる物語だ。

  • 【内容】
    叔母の死を機に,上淵家に代々伝わる家宝「ぬか床」を久美が管理することになる.これが普通の「ぬか床」とは違い,朝晩に手入れをしないと祟られるし,手入れをすれば,「ぬか床」から人が生まれるという厄介な代物だった.

    【感想】
    「ぬか床」を通じた人情物語なのかとおもいきや,
    2章以降,「ぬか床」をめぐる因縁,ミステリー,種の生存というテーマ…と,終始,不安定にさせられました.

    この物語では,「ぬか床」の内生菌といったものが,人に寄生し,
    例えば,精神的・肉体的に寄生された時,自分の身体が自分の一人の問題ではなくなっている時,「自分」という境界がどこまで広がるのか,という問題提起がありました.

    例えば,私達の日々の食物や空気といったものに心があって,私達の身体の一部となり,私達の思考の一部を担っている…こんな読みかたは少数派だと思いますが,日々の食事に感謝したくなりました.(笑)

  • 性を持つってなんだろう。
    有性生殖する意味って。

    波紋が生まれては、消えていく。
    じぶんもその波のひとつ、か。

  • なんと感想を書いたらいいのだろう?
    スケールの大きな、ファンタジーとも言える話だった。
    味のある登場人物と、命の誕生。
    また、時間をおいて読み直してみたい。
    読むほどに理解が深まり、味わいが豊かになる感じがする。

  • またまた梨木さん。
    むっちゃ変な話やけど、違和感、不快感なく、読み進むことができるのはすごいと思う。

    ぬか床から人が生まれてくる?話。

    とだけ聞くと、「なんじゃそれ!?」って感じやけど、梨木さんの手にかかると、「・・・ありえるかも?」と思わされるのですごいね。

    この突飛な話を、「酵母」とか、「純粋培養」とか、「クローン」とか、専門的、現実的な観点からも探っていくところにリアリティがあるのかも。

    もっともっと梨木作品を読みたくなりました。

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