丹生都比売 梨木香歩作品集

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著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2014年9月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104299102

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丹生都比売 梨木香歩作品集の感想・レビュー・書評

  • 1994~2011年のあいだに書かれた、梨木香歩さんの短篇を1冊に集めた本。

    草壁皇子を主人公にした表題作は、以前別の出版社から単行本として刊行されましたが、本書に収録されている短篇がもともとの形なのだそう。
    権力のために血族同士で殺し合う血生臭い時代において、草壁皇子は優しすぎる心を持っておられたのでしょう。
    彼は、いつか母親に殺されるだろうと予感しつつ、それでも母親を愛していました。
    親に間引かれそうな燕の雛を、一生懸命助けようとする彼の心のうちを思うと、苦しくなります。

    静かだけれど、強く胸に迫る物語に魅せられました。
    ひとつひとつの作品が心の中に引っかかりを残していくのです。
    読後、目次に並んだ題名を眺めると、ふわりふわりと物語の場面が立ち上ってきて、ゆっくりと身を浸すように余韻を味わったのでした。

  • 梨木香歩さんの短編集。
    あとがきによると
    「ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく」
    という芯を持つ蔓でつながった短編たちとのこと。

    静かに変わりゆくものたちの物語、そんな言葉にすればおそらく全ての物語がそうなんだろうけど、でもやはり梨木さんの物語の静かさと不思議さと美しさは特別だと思う。
    特に好きだなと思ったのは、「コート」と「夏の朝」。
    変わってしまうことの寂しさ、そして変わらない優しさにぎゅっと胸がしめつけられる。
    いつだって世界や人を取り巻く優しさに気付いていたい。
    そう思えた。

  • 梨木香歩の初期作品集。静かに澄みわたる9つの世界。

    部屋にあらわれる鳥『月と潮騒』『トウネンの耳』、池に住む人魚『カコの話』、山で迷う男『ハクガン異聞』…これらは『家守綺譚』を彷彿させる。
    少しわかりにくい作品、『本棚にならぶ』『旅行鞄のなかから』があるのも梨木さんらしい。
    『コート』コートで繋がる姉妹の切ない話。
    『丹生都比売』以外で一番良かったのが『夏の朝』。
    もし、我が子がすごく空想家で他の子と違ったら…
    母としてどうするだろうか。
    子を守りたい母、(空想の)友を守りたい子。
    最後のまとめ方がきれい。
    全ては夏ちゃんにとって必要だったんだね。
    絶版していた『丹生都比売』がたくさんの人に読んでもらえるといいな。
    美しい日本古代ファンタジー。
    『丹生都比売』の感想は『丹生都比売』で登録しています。

  • シンプルな紺地のカバーが、文学的な雰囲気の短編集。
    しんとした気持ちで読みたい。

    短篇集とはいえ、表題作の『丹生都比売』(におつひめ)は独立して一冊で出版されたことのある長さであり、あとがきによれば、これは核になるお話で、他の作品もここから同じ蔓が伸びていった…ということだ。

    対象年齢も主人公の年齢もまちまちの、「ジャンル分けできない一冊」になった、というが、確かに同じ種から伸びている蔓のように感じられる。

    登場人物も、人なのかどうなのかよく分からない物もあり、しかし読んでいて、目に見える形が人であれ植物であれ鳥であれ、それは些細なことのようにも思えてくる。

    草壁皇子に関する、吉野裕子氏の説というのは初めて知るが、ああ、あるかも知れないと思ってしまった。
    かなしい皇子である。

    月と潮騒/トウネンの耳/カコの話/本棚にならぶ/旅行鞄の中からなかから/コート/夏の朝/丹生都比売/ハクガン異聞

    『コート』は、姉妹のかさねた歴史がしみじみと、最後になつかしく哀しかった。

  • 梨木さんのファンタジーは、普段の日常に負けず劣らず現実的だったりします。その苦味が結晶した作品集でした。
    数年ぶりの「丹生都比売」にまたもや陶酔…。「夏の朝」の世界観もすばらしかった。夏ちゃんの守護霊(実は伯母の芳子さん)が、「世の中にはたくさんの人がいる。その数だけ世界を見る方法が違う。」と言う(思う?)場面がありますが、このモノローグの旋律がすべてのお話の根底に静かに流れているように感じました。

  • 本をとじる。
    はぁ。泣きそう。大好きな梨木さんの世界。感想が書けない。具体的な言葉が出てこないよ。
    霧深い静寂な森のなかを、ひとりで彷徨い歩いているような感じだった。
    森へ一歩足を踏み入れたときには、何をしにいくのか、どこに向かうのか、目的や辿り着くべきところがあったのだろうけれど、気がつけば、それらのことは何の意味も持たずに、只々ゆっくりゆっくりと歩を進めている。

    そう。自分の心のなかを、冷めた自分が外側からじっと眺めている感じ。時折、どんよりした闇が胸の奥底から湧き出ては、何かに追われているように、動悸が激しくなる。

    それは、わたし自身?

    鼻の奥がつんと痛くなるような、哀愁と切なさと、戻ることの出来ない記憶のなか。しっとりと濡れた足元。それをじっとみつめるわたし。

    確かに、胸奥の深い森へと還って行く作品集。見失っていた自分に立ち返るために。

  • ほう、と読み終わった。

    ユカワアツコ氏の装画も美しく、しおりの色にも喜びを得て、ハードカバーは手痛い出費だけどついつい手を伸ばしてしまう、梨木香歩。

    初の短編集。意外。

    冒頭、「月と潮騒」から心鷲掴み。
    短いお話なのだが、耳に響く潮騒の音が不思議なエンディングを呼んでくる。

    「カコの話」では、人魚が釣れたり。

    「夏の朝」では、百合から親指姫が生まれる。

    明るいファンタジー、ではない。すぐそこにある不思議を妖しく匂わせるのが、らしくて好き。

    そうしてタイトルになった「丹生都比売」が一番長くて、切ない。
    壬申の乱を舞台に、草壁皇子の幼く哀しい優しさが、戦そのものではなく、彼を取り巻く人々の移ろう心を浮かび上がらせる。

    ページを捲る音がいつもより響くような、静寂の一冊。

  • 著者初の短編集ということで、古いものは1994年、新しいもので2011年と、かなり幅があり、書かれた時期による作風の変化なども感じられます。

    表題作は唯一中編と呼べる長さがあり、古代歴史もの(主人公は草壁皇子)を題材にしたファンタジーということもあって、まず家系図の把握など、設定を頭に入れるのに時間がかかる分、ストーリーに入り込むまでに時間がかかってしまった。こういった題材は長編のほうが有効かもしれない。

    「夏の朝」は児童文学系の作品で初期の「西の魔女が死んだ」や「裏庭」が好きだった読者むき。6歳の女の子・夏ちゃんが植えた百合の花から親指姫のように生まれてきた「春ちゃん」も可愛いし、謎めいていた語り手の正体が明かされたときはちょっと涙ぐんでしまった。

    「コート」は未発表作品で5ページくらいの掌編だけど、なぜか泣きツボにはまってしまい号泣。あとお気に入りは「カコの話」と「ハクガン異聞」。どちらも比較的最近の「家守奇譚」などに近い作風で、ちょっと不条理なような不思議なような、それでいてどちらも主人公が年配の男性ということもあり、けして甘くはないけれどファンタジー。トータルでとても良い作品集でした。

    ※収録作品
    「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」「コート」「夏の朝」「丹生都比売」「ハクガン異聞」

  • 人と人の周りにあるものとが、柔らかく不思議にとけてゆく、神話のような短編集。
    目に見えないものの豊かさを感じることができ、おだやかな気持ちになります。
    特に表題作「丹生都比売」は秀逸。
    おごそかな装丁もいいです。

  • 「丹生都比売」は、前回よりさわやかなやさしい仕上げのように感じました。
     前作、私は 号泣でした。鬼と対峙しながら激しく生きた 母 持統天皇の 孤独の淵と 草壁皇子の諦念が 水銀という美しい「毒」とからまって 胸がいっぱいになりました。

     歳月を重ねる…ということが漂っているようなしっとりとする作品集になっていると思いました。
     
     「トウネンの耳」 はらはらと涙しました。
    読み終えたら じわじわと
    自分の中で、終わったんだな っと
    寂しいような でもとても胸に落ちる
    満たされた思いが あふれてきました。 
    今の自分の気持ちを 揺らしてくれて
    出会えて 良かったと思える作品でした。

  • 短編集

    『月と潮騒』
    ごく短い、冷蔵庫のお話。梨木さんのイメージとちょっと違うな、と思いつつ、でも読み終わると梨木さんの紡ぐ世界だなと。

    『トウネンの耳』
    これもごく短いお話で、梨木さん鳥が好きだからね、と思いながら読んでいる間に終わってしまう。この本の中ではあまり印象に残っていない。

    『カコの話』
    ようやくこの短編集の流れに慣れてきたのか、大好きな家守奇譚あたりに雰囲気が寄ってきたからか、この話あたりから引き込まれ始める。過去は人魚の姿をしていたりするのだ。

    『本棚にならぶ』
    部分の欠損。独特で、印象には残っている。抽象的すぎてちょっとなー。

    『旅行鞄のなかから』
    これも独特。ずっと対話調で、記憶の旅とでもいうのか。

    『コート』
    最後の重ねられたコートの光景が鮮烈に目に浮かび、悲しく美しいエピソード。前の2作品と比較して非常にわかりいやすいのがまた好ましい。良い配置。

    『夏の朝』
    これだけで単行本1冊成立するくらいの読み応えがある。
    夏ちゃんに寄り添う守護霊の視線がどこまでも温かくて、それがこの話を包み込んでいる。優しく悲しい気持ちになる。

    『丹生都比売』
    表題作だけこの本の中では一番の長編。過去に単行本として出版されたこともあるそうで、その時は書き足した部分を削って本来の形に戻されたとのこと。
    草壁皇子のひ弱なイメージが、梨木さんの美しい古代風の語りで、繊細で優しく、良い方向に引き出されている。
    水銀の禍々しさが幻想的に描写されるが、その裏に貫かれているのは母子の壮絶な物語。

  • 奇譚とか異聞とかいうとやたら観念の公房戦wを繰り広げるのが昨今の流行のようになってしまっているがそんななかシンプルな言葉を紡いで肌触りの良い上質なファンタジーを仕立てることの出来る作家のひとりが梨木さんだと思う。
    今回も老いの侘しみや生の寂しみを時を超え多面的な視点で捉えた九つの物語、アイデンティティである鳥や植物も散りばめられて梨木ワールドに彩りを添えている。
    表題作「丹生都比売」も史実の論議を外して読むならば母と子の「個」を見詰めたしっとりとした趣きで読み応えあり。
    単行本もあるようなのでそちらも読んでみたい

  • 短編集でした。
    草壁皇子が主役の長編小説と思っていたので、ちょっとびっくり。

    しかも、少し川上弘美っぽい不思議系の話。
    それはそれで好きなのだけど、思っていたのとはちょっと違うので慣れるまで少し時間がかかりました。

    でも、「コート」「夏の朝」辺りから、しみじみといいなあと。
    慈しみという言葉が自然と思い起こされる。

    で、「丹生都比売」
    飛鳥時代、奈良時代は結構権力争いに負けて命を落とす皇子がたくさんいたけど、草壁皇子は圧倒的な後ろ盾をもって皇太子になったのに、天皇にならないで亡くなってしまった。
    病弱だった草壁皇子の少年時代を書いたお話。

    悲劇の皇子と言えば有間皇子や大津皇子が有名だけど、草壁皇子の悲劇はそれとは違う。
    母親の過剰ともいえる期待を一身に受けながら、期待に応えることができない。
    そんな自分を申し訳なく思う。
    現在の子どもたちと同じ思いを抱える皇子。

    “ひとはみな、それぞれの生の寂しみを引き受けて生きていく、という芯を持つ蔓なのだろうと思う。”

    持統天皇(草壁皇子のお母さん)視点も入った、長編も読んでみたい。

  • 病弱な草壁皇子が登場する表題作をはじめ、体の一部分を少しずつ失っていく「本棚に並ぶ」他、9篇の短篇が収録されています。中でも、幼い頃からおそろいのコートを着せられてきた姉妹の物語「コート」は短いですが心に残っています。

  • 鉄板の文体。
    美しい文字の流れを読むだけで
    心がすっと落ち着いていきます。

    淡さと畏怖、綻びと静けさ。
    そういう世界はなかなか現実でも
    小説でもないことです。

    贅沢です。

    夏の朝を読んだとき、
    あるワンシーンがはっきりと映像として
    私の体をすり抜けていきました。
    その光景に泣けた。。

  • 表題作は再読。でも、短編集になっていたので図書館で。梨木さんの作品には心にじんわりと染み込んで行く独特の空気感があります。やっぱり、何度読んでも一番好きなのは表題作でした。主人公は草壁皇子です。古代の歴史は大好きなのです。凡庸な皇子と言われていますが、このお話では繊細で感受性の強いお子として描かれています。あの、清涼な空気。ピンと張り詰めた冬の冷たい朝のような気配。それが物語の中にずっとつきまとって離れない。悲しく恐ろしく美しく……でも、優しい。不思議な読後感です。

  • 梨木さんの作品は、どこか静粛な空気が流れていて、穏やかで温かい空気感があるところに、どこか一本ぴんと張りつめるような空気が通ってると思う。今回収録されている短編にも、私には難しいものもあったけれど、不思議だったり、穏やかだったり、様々な空気感があるけれど、やはり一本なにかすーっと通る部分があって、読んでいて心地よかった。

    原生林から発売された「丹生都比売」は持っているけれど、「丹生都比売」は自分の記憶が曖昧で、覚えていないほどだったので新鮮に読めました。
    「丹生都比売」は草壁皇子の視点から見た吉野の風景はどこか神々しいぐらいで、静粛としていて綺麗でした。その厳かな象徴ともいえるものが、キサでした。壬申の乱が起ころうとしている時代、今よりも吉野は厳かな場所だったのだと思いました。

    他には、「コート」「夏の朝」が良かったです。

  • 解釈よりも感性で読みました。タイトルの「丹生都比売」では、草壁皇子の儚さが史実を超えて昇華されています。吉野の山深い暮らしを語る美しい言葉にイマジネーションをインスパイアされました。

  • 2014.11.30市立図書館
    梨木香歩さんらしく、現実と不思議な世界の境界をしらぬまに行き来してしまうようなお話ばかり、単発で発表されたもの未発表のもの、掌編もややボリュームのあるものもとりまぜた短篇集。
    どれも印象的だったけど、「夏の朝」には落涙。掌編「コート」も。表題作「丹生都比売」は、やさしいです・ます調の語りでしずかに運んでいくが主人公のけなげな心に打たれる物語。ひとは一人で生きてるわけじゃないんだけど、核のところはやっぱりひとりなんだなぁと改めてひしひし感じた。

  • いつにも増して自由度の高い短編集。欠けた体の欠片が本に還ってゆく『本棚に並ぶ』、フルサイズ揃えた姉妹お揃いの『コート』など、短くても強い印象を残す物語。『カコの話』は見ちゃいけないモノを見た感じ。

  • 初読。図書館。ここ最近読んだ短編集に連作短編集が多かったせいか、久しぶりに珠玉の短編集と言い切れる短編を読んだ。わずか5ページの『コート』が最高。通勤電車の中だったので、奥歯を噛んで泣くのをこらえた。姉妹の18年間が5ページに凝縮され、思い出と温かさと悲しみがコートを通して描かれる。本当に素晴らしい一編。こういう作品に出会うと、本を読み続けてよかったなあと思う。

  • 行ったコトありません
    丹生都比売神社 公式ホームページ
    http://www.niutsuhime.or.jp/

    新潮社のPR(版元ドットコム)
    http://www.hanmoto.com/jpokinkan/bd/9784104299102.html

  • 短編がいろいろ。梨木さんはもうすっかり「好きな作家さん」リスト入り。

  • 緑表紙のニオツヒメを読んでから、こっちも読んでみた。

    短篇集ってことで、うーん、やはり一番はニオツヒメかなぁ。
    切ないような、ほんのりあったかいような。
    日本史好きだから〜とか諸々のプラスαをひいたにしても、やっぱりこの話が好きだなぁ。

    それ以外だと『本棚にならぶ』が、え…?そう言うこと?ってよくわからないままの恐怖感。コワイけど、そんな本屋さんあったら行ってみたいかも。
    欠けていって収納って、どんな時に思いつくんだろうと思った。

    特にココ!ってのがあったわけではないが、トウネンもトウネンの耳もひたすらきになる。
    表紙にいるのがトウネン?

    2017.2.16 読了

  • 綺麗な世界観だなと思うけど、印象に残らないかなー。

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丹生都比売 梨木香歩作品集の作品紹介

胸奥の深い森へと還って行く。見失っていた自分に立ち返るために……。蘇りの水と水銀を司る神霊に守られて吉野の地に生きる草壁皇子の物語――歴史に材をとった中篇「丹生都比売」と、「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」「コート」「夏の朝」「ハクガン異聞」、1994年から2011年の8篇の作品を収録する、初めての作品集。しずかに澄みわたる、梨木香歩の小説世界。

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