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著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104326044

感想・レビュー・書評

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  • 福島第一原発の、特に3号機の冷却に立ち向かった自衛隊や、発災直後に沿岸部への道路を切り開いた国交省東北地方整備局など、災害復旧・援助のために戦った人たちの物語。
    被災直後の、住民の話を書いている本は多いが、こういったお役所がどう対応したかという本は少ないのでなかなか貴重な話だった。
    福島第一原発の対応は、情報が錯綜し、政府も対応が後手に回り、東電もまったく危機管理ができておらず、結果現場に入った自衛隊等が一番苦労するという大変な状況だったというのがよく分かる。一方で、東北地方整備局がいかに道路を「啓開」したかということは好意的に描かれている。たしかに、災害が起きたときにまずすべきことは「救助」だが、その救助のためのアクセスの確保というのはさらに早くしなければならないことで、実は影のヒーローなんじゃないかとまで思った。なかなか取り上げられることはないが、こうしたインフラを支える人たちは偉い。

  • 麻生幾さんがドキュメンタリー?っていう意外感満載で読みはじめましたが、仕事柄かなり引き込まれました。特に第二部はご本人にもお話を伺ったので、非常に臨場感がありました。

  • 震災7年目を迎えた2017/3/11に読み始め、本日読了。第1章は福島原発事故関連。当時の経産大臣と東電の対応を痛烈に批判している。本来指揮命令権がない者が命令を下し、対応する自衛隊等には必要な情報や居住場所さえ提供しない。これが事実なのか? 第2章は国交省の道路復旧にかける組織一丸となった活動に感動。第3章は省庁間の動きとDMAT。著者の得意分野である安全保障関連の指向が、現地へ出動した自衛隊などの動きをことさら「出撃」などと言う言葉で表現するのに辟易したが、読んでよかった一冊といえる。

  • 第1章の、自衛隊等の動きをめぐる、東京(中央)の指揮命令系統の乱れや暴走による混乱と、第2章の、現場任せにしてくれた大畠国交大臣の英断とその下での機敏な東北地整の活躍の対比が印象に残る。(一方で、第3章は政府の様々な部門について広く浅く述べられているため、正直に言ってあまり琴線に触れない)

    ただし、東北地整の働きが、柔軟なトップ(大臣、局長)と職員たちの機転のみによってもたらされたのではないことにも注意すべきである。東北地整により公開された『災害初動期指揮心得』にもあったとおり、機転よりもむしろ、それを支えた「備え」こそ、語り継がれるべき。
    また、リエゾンのことも(本書ではわずかな記載だが)『東日本大震災 語られなかった国交省の記録』に詳しい。
    とはいえ、震災発災後わずか3か月程度での速報的なるポタージュとしては十分すぎるクオリティであり、特にこれまであまり光のあたってこなかった東北地整等にとって有意義な出版といえる。

  • 2011年3月11日に起きた東日本大震災。

    地震に津波、原発の事故。

    地震発生直後から動き始めた自衛隊や警察、DMAT(災害派遣医療チーム)
    などあまり報道されなかったそれらの活動や葛藤。

    麻生幾がそれらの取材を行って纏めたドキュメント。

    読んでいくと、自衛隊や警察だけでなく、道路行政を管轄する、
    国土交通省のすばやい対応などが良くわかります。

    それに付け加えて、政府の混迷振りも良くわかりました。
    (日本政府がどれだけ緊急事態に脆弱なことも・・・。)

    また、東電が如何に無策で、横暴なのかも
    良くわかる内容になっていると思います。

    読んでいて思わず目頭が熱くなりました。

  • 読みました! 電車で読みましたが、何度か胸の奥からぐっとこみあげてくる感触を受けました。 大震災という状況の中、それぞれが個々人のプロフェッショナルを活かして、「俺はこれを今せねばならない!」と頭ではなく心で判断した人々。 特に、2章の地元の土建屋さんらが「俺たちの出番だ、好きに使ってくれ!」と積極的な支援に名乗りでるところなんて、もう涙です。(これができなかった自分への歯がゆさにも跳ね返りますが・・)

    こんなに東電って恐ろしい会社なのか?という純粋な疑問もありますが、それは専門家の分析に任せるとして、ただただ、まっすぐに前へ!という魂の本。 心高ぶります!!

  • 自衛隊員、警察官、官僚らが、いかにして震災、原発事故、津波被害に立ち向かったか。考察を付け加えない語り口は賛否両論あるだろうが、知り得た事実を淡々と綴った文章は読みやすく、好感が持てる。
    ここに描かれている東京電力の姿は、もちろん取材対象者らの主観がある程度反映されているのだろうが、それを差し引いて考えてもひどい。危機管理能力、当事者能力が欠落している。海江田、菅らも然り。

  • 2011/10/10-10/10
    新聞やテレビではほんの一部しか報道されなかった記録がここにある。「東電 保安院」の歯がゆい対応報道の影に、「自衛隊 警視庁機動隊 東京消防庁 国交省東北地方整備局 内閣危機管理センター 災害派遣医療チーム 福島県警」に代表されるサムライ魂は確実に存在していた。

  • 哀しかったり、切なかったり、嬉しかったり、感動したりで人は

    泣くのだが、あまりにも激しい怒りにかられても涙が流れるん

    だなぁと実感した。

    未曾有の災害に対して、多くの機関、多くの人たちが史上空前の

    作戦に立ち上がった。自衛隊や消防、警察の活躍は様々なメディア

    で報道されたので今更言うまでもないだろう。

    本書での注目は国土交通省の外局である東北地方整備局の

    対応である。

    震災発生直後から、今後の人命救助・支援活動の為、緊急車両の

    通行に必要な道路の確保に各人が苦闘する。

    傘下にある国道事務所・維持事務所、そして災害発生時に協力

    体制を敷くことになっている民間企業が一丸となって、余震が続くなか

    利用出来る道路の状況確認が行われる。

    菅直人、海江田万里がどうしようもないなかで、当時の国交相・

    大畠氏の「すべて現場に任せる。国の代表として必要と思われる

    ことはすべてやれ」の指示は、やっと国務大臣らしい発言だった。

    大規模災害の全容も分からないうちから、対応のあった人たちは

    それが任務であるから「前へ」と進んだ。そして、その足を引っ張った

    のは日本政府と東京電力ってのは本当に腹立たしいよな。

    自衛隊に燃料不足の危機が襲う。通常、燃料元売り会社からは

    直接納品されるのに燃料元売り各社が供給を止めた。

    「官邸の意向」

    元売り会社の幹部から帰って来た答えがこれ。被災地への優先

    供給を考えてのことらしいのだが、自衛隊への供給まで止めて

    誰が人命救助・災害支援に係わる活動出来るんだよ。素人でも

    何が優先順位か分かるってのに。

    そして、大たわけ企業の東京電力。機動隊に高圧放水車の貸し出し

    を依頼したのはいいが、複雑な操作が必要である為、自社社員では

    操作不可能。「やっぱりそっちでやってね」だと。

    全電源喪失した福島第一原発に、各電力会社所有の電源車を

    パトカー先導で送り込んだら、「高圧電源なので使えません」。

    そんなもん、送り込む前に分かるだろう。

    こんな企業、もう潰れていいよ。ついでに原子力安全・保安院も

    解散しろ。

    尚、本書は良書ではあるのだが著者の筆が感情に流されている

    部分が多い。事実のみを淡々と記してくれた方が、現場の臨場感は

    伝わると思うのだけどね。

著者プロフィール

大阪府生まれ。小説デビュー作『宣戦布告』がベストセラーになり映画化。以後、『ZERO』『瀕死のライオン』『外事警察』『奪還』『特命』『銀色の霧』『QUEEN スカイマーシャル兼清涼真』など話題作を発表し続けている

「2022年 『トツ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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