信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104336012

感想・レビュー・書評

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  • 何年ぶりかの再読。呪術・オカルトから読み直す信長を中心とした戦国史。遠くローマ皇帝ヘリオガバルスとの接続。信長が両性具有だったという見立て。1930年代のアントナン・アルトーと信長に仕えた僧の子孫總見寺龍彦との信長とヘリオガバルスをめぐるダイアローグと戦国時代が交互に語られる。信長とヘリオガバルスのつながりは、時に論理飛躍、時に状況証拠に依存、オカルティックだけれども、妖しい魅力があることは否めない。ただ、細かいところでいうと、長篠の戦いの時の柵の構造だけはどうにも頭の中で像を結ばなかった…遠くから見たら第一陣しか見えないのに、それをやぶると第二陣、第三陣があり、それが山の斜面を登るような構造とあるが、斜面を登るようなら遠くからもわかるのではないだろうか、それともその先の斜面を覆い隠すほど第一陣が高くつらねられていた?…と。また、信長のライバルたちは、次々と信長に仕える僧堯照の妖術で命を奪われていくという設定。信長と光秀は不老不死なのかというぐらい年を取らず、周囲もそれを不思議に思う設定。宣教師に「黙示録」の内容を聞いて比叡山を焼き討ちにした。そういった数々の設定の妙をたのしむのもまた一興。そしてもう一つのアントナン・アルトー「ヘリオガバルスあるいは戴冠せるアナーキスト」成立史にもなっているという仕掛け。◆ヘリオガバルス: あるいは戴冠せるアナーキスト (河出文庫)、藤巻一保「第六天魔王信長」(学研M文庫)、定方晟「須弥山と極楽」(講談社現代新書)あたりは読んでみたいと思った。◆新潮文庫版読了。

  • とにかく、行ったり来たりは読みづらい。

  • ちょっと読みづらかった。
    長くかけて、少しづつ少しづつ読み進めて。
    内容よりも読み終えたーって気持ちが勝っちゃってます。いまのところ。楽しく読める部分と苦手な部分の振幅が自分史上最大かも^^;
    いずれまた再挑戦したいので、評価保留の(?)★3つ。

  • 日本史をベースにしながら横に広がる大陸の感覚と、耽美でオカルト的な視点が独特で魅力的です。
    別の視点から読むと物事の意味がまったく変わる、そんな本の楽しさがつまっています。

    ストーリーの軸は信長の生涯ですが、ローマ時代の異端信仰を元に戦国時代を読み替え、最後には20世紀の狂気にまで繋がります。

    途中までの盛り上がりに比べると、私はラストが理性的すぎるように感じましたが、もし同じように感じた方には他の宇月原作品もおすすめしたいです。

    とくにこの本では道化役の秀吉が「太閤の錬金窟」で猿なりに報われたかな…というエピソードがあったり、短編集の「天王船」では少年信長と「黎明に叛くもの」で秘術使いとなっている松永久秀との邂逅を読むことができます。天王祭の描写も大変うつくしいです。

    また澁澤龍彦さんの「陽物神譚」は、信長と対になる王として出てくるローマ皇帝ヘリオガバルスを題材にした短編で、鉱物的な美しさや残酷に流血を求める所など共有するシーンが多く、合わせて読むとより楽しめます。

    さらに異端のバール神に興味があれば、作中の語り部アントナン・アルトーの「ヘリオガバルス あるいは戴冠せるアナーキスト」もおすすめです。

    史実の細部を積み重ねてできた、歪んだ世界像にどっぷりつかれる一冊です。

  • 信長を題材にした時代小説。
    アンドロギュヌスっていうかふたなり(フィクションの生き物)だなぁ・・・
    異形に聖性を付与するタイプの話は好きじゃないんだけど、これを読んだ頃は気にする知識も無かったから、なんとなくモヤモヤしつつも面白くよめた。

  • タイトル通り、信長がアンドロギュヌス(両性具有)だったら・・・という内容。

    荒唐無稽な設定に期待を抱きすぎたせいか、読後感があっさりしすぎていて少し残念。異色のテーマだけに期待しすぎていたのかもしれない。

    作者の豊かな知識量と独創的な解釈で全く違う三つの時代の事柄がつながって展開していく。日本の戦国、1930年代のヨーロッパ、そして古代ローマ皇帝の時代。一見無関係に見えてそれぞれににきな臭く、退廃的な部分が共通していてオカルスティックな魅力にあふれている。

    それにしても信長公は女にされたり両性具有にされたりとなかなか大変である。それだけ作家にとって魅力的な人物なのだろう。

  • たまたま図書館で題名が目に入り、手に取った本。
    ゴシックホラーなのか?わからないが、私の好みにぴたりと当てはまってしまった。あまりにもナンセンスで退廃的、耽美的。織田信長に対しこの視点はすごい。この作家は見逃せない。

  • 伝奇と云うべきか?奇書と云うべきか?
    「信長=両性具有」、これ程ぶっ飛んだ設定の歴史ものも無いだろう。好き嫌いがはっきりと分れそうな作品だが、私は大好き♪
    日本の戦国と古代ローマとシリア、一見何の関係の無さそうな、古今東西の様々な宗教と事象が絡み合っていくのが楽しくて、終始ニヤニヤしっぱなしで読み終えた。荒唐無稽な話なれど、歴史浪漫を堪能できる作品だと思う。
    ミステリ要素を含んでいたり、恋する少年の様に信長に最後まで付き従う秀吉・光秀の姿など見所は沢山。
    こんな壮大で耽美な妄想を浮かべられたら楽しいだろうなぁ♪

  • 1930年ベルリン。ある日、俳優、詩人であるアントナンアルトーは総見寺龍彦と名乗る日本人の青年から手紙で呼び出される。
    青年はアルトーに織田信長がアルトーが興味を抱くローマ帝国の少年王ヘリオガバルスの生まれ変わりであることを告げる。
    両性具有、近親相姦、宗教戦争、魔術、アナーキズム、ヒトラー等、オカルト的要素をてんこ盛りに盛り込んだストーリー展開。
    着想は面白いが要素を詰め込みすぎて、いずれも消化しきれていない感じ。

  • ファンタジー歴史小説。様々な歴史小説がありますがこの作品ほどぶっ飛んだものもなさそう。

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