球形時間

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著者 : 多和田葉子
  • 新潮社 (2002年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104361021

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球形時間の感想・レビュー・書評

  • タイトルからは難解な小説を予想して読み始めたが、ここで描かれる世界も文体も多和田葉子のそれとは随分違っていて、一見したところは普通の高校生の日常が描かれるかのようだ。作中の視点人物は3人。サヤとカツオ、これに担任教師のソノダヤスオのそれが加わる。もっとも、最初から随所に不穏な感じがないではない。ことにコンドウとナミコの存在と行動が、この世界に異和を混入させる。それでも、小説の中を流れる時間は、ともかくも日常だ。「序・破・急」の急は、まさに唐突に訪れる。最後に至って一気にシュールな世界に呑みこまれるのだ。

  • 多和田作品では珍しく(?)高校生が主人公。とはいえ視点は複数。見た目ギャルでも頭の良いサヤと、そのクラスメートのカツオ、そして教師のソノダヤスオ。タイトルの球形は休憩とかけてあるのかしら。

    それにしても男子の名前がなぜ「カツオ」。日本人なら老若男女どうしても日曜夕方の某国民的アニメの坊主頭のヤンチャな男の子を思い浮かべてしまうと思うのだけど。この小説のカツオくんはまあ多少お調子者なところはあるけれど、まあまあ要領も頭も良く、しかしフィリピン人とのハーフの美少年マックンと同性愛中、それをカムフラージュするためにサヤにちょっかいをかけたり、なぜか偶然知り合った太陽と火にこだわる危なそうな大学生コンドウと親しくしたりもしている。

    サヤのほうは地元の喫茶店で偶然出会って親しくなった老女イザベラさんとのくだりはとてもファンタスティックなのに、一見大人しそうだけどサイコパスとしか思えないクラスメートのナミコが怖すぎて、ラストは結局ナミコのホラーっぷりにもってかれてしまう。終盤で一気にカオスに突き落とすところがいかにも多和田葉子でした。

  • 少女の青年期の小説である。同性愛異性愛等様々な問題と精神に異常を来たした人と学校が舞台である。

  • ◆むむむむむ。高校生を書いても多和田葉子だった。世界とのズレに迷子になるアリスたち。おうちに帰ることのないアリスたち。◆扱う題材は他作に比べ具体的で理解しやすいが、デリケートな国家や性愛などの話題を言葉遊びで扱ってしまうのはやや軽率ではと思われる記述も多い(読んでいて「多和田葉子、チャレンジャー!」と何度思ったことか)。ぱしっと絵になる断片もなくはないのだけれど、ちぐはぐにやっつけでストーリーにしてしまっている感じ。もっと練ることができるのでは。全体的には多和田葉子の良作とはいえないというのが正直な感想。無論、デリケートな話題を言葉遊びとしてだけ用いているのではないけれど、すべての読み手が多和田葉子の心の襞にまで寄り添ってくれるわけではないものね。

  • 川上未映子の「ヘヴン」を思い出したのは、この本と近い類似があったからではなくて「頭の中と世界の結婚」の4曲目のある歌詞と本書のある箇所との類似があって(といってもわたしが個人的にこの歌詞のその箇所にぐっとして、とても強い印象を残していたため本文中に同じような文章を見つけてはっとした)、そこから川上未映子が浮かんで、球形時間の十代を主人公としていてスクールな感じが「ヘヴン」となんか似てるなって感じた・・・個人的な見解。
     そしていま自分に関心がある事柄について書かれていた。偶然手に取っただけなのに・・・。
    多和田氏の著作からこれを選んだ自分の選定眼てなんだろうとびっくりしました。

  • 電車を待ちながら化粧をする女子高生『サヤ』は、角髪(みずら)は好きだけどちょんまげは嫌い。クラスメートの『カツオ』は男の子と体育倉庫で密会を重ねている。この二人を主軸に潔癖症の女子、ノイローゼ気味の担任、太陽崇拝者の大学生など、壊れかかった面々の心象風景が描かれている。

    どこまでが現実でどこからが妄想なのかも曖昧で唐突に終わってしまうし、最後まで主題がさっぱり掴めなかった。色々なテーマを内包しているようでもあり、つかみどころのない現代を表しているようでもあるけれど、結局のところそんなことはどうでもいいのかもしれない。
    ただ、なにより『カツオ』だ。黒板に落書きをして皆を笑わせるお調子者として登場。しかもカタカナで(これは全員そうだけど)『カツオ』とくれば、当然『さざえさん』が頭に浮かんでも仕方がないよね。どうやら彼は少し不良っぽい今風の男の子らしいんだけど、もうどうしてもいがぐり頭しかイメージできない・・・。ネーミングって大事だなぁ。

  • 女子高校生サヤを中心に、同級生のカツオ、担任のソノダヤスオたちの視点から、道徳や規則に対する疑問、自分の思い込みや偏見、現実逃避的な憧れなどが微妙にからみあう作品。
    終盤で、ばらばらに進んでいた主人公たちの話が重なるような感じになっていて、独特の表現描写も感じられるものの、筋がわかりにくく、まとまりなく中途半端に終わってしまっている印象です。

  • この作品については、荒川洋治さんという私の好きな詩人が評した文章を引用します。

    文学とは、その作品を読んだ人が、もっと楽しいことや、新しいことを自分でもして みたい。ためしたい。そう思えるようになることだ。
    多和田葉子さんの「球形時間」は、現代の教室と、日本が舞台。女子高校生サヤと、 その友だちのカツオ、その他の人たちでつくる物語である。
    <中略>
    と、これはほんのわずかなシーンを取り出しただけだけれど、ぼくもこんなふうになりたい、この小説のなかにあるものが、全部ほしいと思った。ほのかな真剣味をおびて、心とからだに、はたらきかけるのだ。何かをはじめたくなるのだ。
    これはそういう「はたらきかけ」をもつフィクションなのだと思う。「私小説」の手法によらない小説が、ここまで怒りと、笑いと、あつみのある現代小説を「創造」できること。そこにぼくは新鮮なおどろきを感じる。しかも流れているのは、とても明るいひかりだった。作者の文学の、ちからであろう。

    (引用元:http://p.tl/eZOp

    ぜひ、読んでみてください。

  • サヤはプラットホームの端で、手鏡と口紅を出して、あわただしく、鏡の中を覗き込んだ。

  • ある日の放課後、高校生サヤが出会った英国女性は、時空をさまようイザベラ・バードだった…。あっちへこっちへと転がりながら、はからずも核心へと向かっていく少女と少年の日常を描く、愉快かつ挑戦的な長編。

    と書いてありました(笑)。
    私、多和田葉子さんにものすごい苦手意識があります(苦笑)。
    その昔、昔話や民話の類の授業で「異類婚」(ヘビが人間と結婚するとか、あ、鶴の恩返し的な実は動物が婿・嫁でしたという話のことです)の話になり、多和田葉子さんの「犬婿入り」が課題になったんですね。

    全っ然、わからなかった!!

    難しくって何を言わんとしているのかがまったく…。それから多和田葉子さんは苦手です。
    が、今回は上記のようなあおりがあったので、多和田葉子さんにしてはわかりやすいかも!!と思ったんですけど…

    相変わらずわからなかった!!

    あまりのわからなさに、ネットの海に書評を求めて旅立ってしまいました…←これも久々にやったのでリハビリにはちょうどよかったかも。
    そういうネットの書評を手掛かりにして、ちょっとは自分の中で落ち着いた感じなので覚書程度にぽつぽつと。

    ●球形=休憩 という解釈をしている人が多い。確かに、学校の休み時間をあえて休憩時間とかいているのも目立つので、休憩であっているのかなー、と。人生の休憩=モラトリアムというふうにとらえている人がいてちょっと納得。

    ●登場人物たちの思考がただひたすら積み重なっていくんだけど、閉塞感が強い。だからこその球形?

    ネットの海を徘徊していて、こんな記事をみつけました。

    この作品は「ミズミズシイ感性とかいうものを持っていることにさせられている若い女の子が書いた小説」がもてはやされることについて、「感性は思考なしにありえないのに、考えないことが感じることだと思っている人がたくさんいる。」と書いた著者の、ひとつの解答のような青春小説の試みとして読めると思う。

    なんかこれを読んで、
    あ、私にはすんなり読みとけなくて当然だわ☆
    と思いました。(なんてオチ!!)

    よくわかんなかったので(自分の責任ですが)
    ★★☆☆☆

  • あまりにも読みやすくて拍子抜けしてしまうほどですが、
    登場人物たちの妄想や、相互の交わりを考えると、
    読み終わっても噛み締めるように心に残っています。

  • あまりに退屈で無為な日常に相反し、
    人々は誰もが、偏りに満ちた超現実的な
    妄想・偏執を内包し、爆発的に増殖させている。

    そんな、時間・空間さえ歪めてしまうほどの強烈な
    妄念たちが世界にあふれ出したら・・。

    眩暈すら起すほど、クラクラと上下左右にストーリが蠢く
    ラスト数十ページにわたる大団円は真に圧巻。

    日本語の表現力を含め
    「歪」であることの力強さを実感。

  • 2009/1/22購入
    2017/3/26読了

  • 正直わからなかったというのが本音。でも引き込まれたのは確かだ。

  • うーん、「やることがいちいちクール宅急便」「ピエロッテル」とかの言い回しの段階でちょっと…。表紙はきれい。

  • 2004.1.30 良識 ,
    2004.1.31 ホラーチック

  • 文体読みやすくて最初の辺りの女子高生の考察とか好きなんだけど、終盤はあまり好きでなかった。なんか気持ち悪い。

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球形時間の作品紹介

鋭くも愚かしくも聞こえる問いをつねに発している高校生サヤは、ある日の放課後、喫茶店で謎のイギリス女性と出会ってひきつけられる。クラスメートのカツオは、フィリピン人の混血少年と性関係をもちつつも、太陽を崇拝する青年への興味を抑えられない。あっちへこっちへと転がりながら、はからずも核心へと向かってゆく少女と少年の日常を描く、愉快かつ挑戦的な最新長篇。

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