- Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104369034
感想・レビュー・書評
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戦前の中国で「阿片王」として暗躍した里見甫を中心に渦巻く「満州の闇」に迫った力作。以下は、一気に読みとおした昨夏の日に書いた、その読後感。「どんよりとした雲とじっとりした湿気に物憂さを感じていた僕にはちょいと“クスリ”が効きすぎた。ストーリーに充満する毒気と妖気にすっかりあてられたまま、ぼんやりとした心地が今も続いている」
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エンターテイメントと呼べるような作品ではない。
綿密な取材と検証に基づいて書かれており、
評伝というよりは「阿片王」と言われた里見甫の実像に
著者がどこまで迫れるか、というルポのような作品。
里見甫はじめ、男装の麗人(?)といわれた梅村淳、
そのほかもろもろの強烈な個性の人物たちを追いながら、
常に冷静な視点を保つようつとめ、
知り得たことのみを記事にしていく著者の姿勢には好感が持てるが、
盛り上がりに欠け、最後まで読み手をハラハラさせることはない。
ノンフィクション・ルポ・ライターとして一級といわれる著者にかかっても、
「阿片王里見甫」の真の姿、またその生涯のほとんどの部分において
明らかにできずに終わるほど、里見甫の世界は広すぎたのだろう。
里見の秘書(自称?)伊達や、里見遺児基金名簿を追う以外の
アプローチがなかったのが残念でならない。
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日中戦争は近年阿片戦争といわれるようになったが、その阿片を扱い、得たお金を日本軍だけでなく蒋介石にも流していた里見甫という謎の男の真の姿を追いかけたもの。佐野真一の調べ方は徹底している。しかし、謎が完全に解けたわけでもない。また、聞かれながら、その信憑性をいちいち書かれるのは聞かれる方としてはたまったものでない。それにしても、かつての日中間の人の交流はかくもいりくんでいたのかと感心させられる。人の評価は簡単に善玉悪玉で割り切れないものだ。
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里見甫(はじめ)甘粕正彦 大連ヤマトホテル