俺俺

著者 :
  • 新潮社
3.06
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本棚登録 : 844
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104372034

作品紹介・あらすじ

マクドナルで隣り合わせた男の携帯電話を手に入れてしまった俺は、なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった。そして俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺でない俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎてもう何が何だかわからない。電源オフだ、オフ。壊ちまうす。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて-。孤独と絶望に満ちたこの時代に、人間が信頼し合うとはどういうことか、読む者に問いかける問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 石田徹也さんのイラストと、謎なタイトルにひかれて読み始める。
    マックで隣合わせた男のミスで、ひょんなことから携帯を盗んでしまった俺。その携帯の持ち主に電話をかけてきた母。
    魔が差した俺は、息子に成り済まし借金があると話し母親にお金を振り込ませてしまった。
    翌日、家に帰ると知らないおばさんが部屋に入りこんでいた。
    どうやら、おばさんは俺のことを携帯の持ち主の息子だと思いこんでいるらしい。
    その日を境に、俺が増えはじめる。
    不安になって、自分の実家に帰省してみたら、別の俺が住んでいた。
    俺と俺と俺と俺と俺。まわりは全部俺だらけ。
    思考が追い付かないまま、終盤へ。
    いつのまにか、俺をとりまく壮大なストーリーになっていた。
    不思議な読後感であり、理解しがたい後味の悪さが癖になりそうな作家さんだ。

    • アールグレイさん
      こんにちは!
      ----俺、俺、俺、俺?
      不思議な本を見つけましたね。
      頭がこんがらがってしまいそうです。
      実家に他の俺なんて、「どけ!ここは...
      こんにちは!
      ----俺、俺、俺、俺?
      不思議な本を見つけましたね。
      頭がこんがらがってしまいそうです。
      実家に他の俺なんて、「どけ!ここは俺ン家だ」といいそうです。
      次の本も楽しんで下さいね!
      (*^.^*)
      2021/06/29
    • 奏悟さん
      ゆうママさん

      初作家さんでしたが、すごく不思議な本でした。
      他の作品も読んでみようと思ってます( ´∀` )b
      ゆうママさん

      初作家さんでしたが、すごく不思議な本でした。
      他の作品も読んでみようと思ってます( ´∀` )b
      2021/07/01
  • 俺がたくさん出てきて、どの俺かもわからない。最後まで読んだが自分には何が何なのか、良く分からなかった。

  • 上手いなあー
    テンポもちょうどいい。楽しく疲れず勢いづいて読める。面白い。長さも最適。

  •  「他者のいない楽園」への欲望とその崩壊を描く。「氷河期世代」以降の人びとの抱える孤独感やアイデンティティの危機、弱肉強食的社会の矛盾、ナショナリズムの現況と予想される末路をうまく戯画化している。作中太字で表記される「俺」「俺たち」を「日本人」と読み替えるとこの作品が理解しやすくなる。

  • 【515】

    アイデンティティの喪失がテーマだと思われ。
    中盤までの3人でわいわいやってるとこまでは、面白かった。ミステリーでもなんでも解決しそうな展開だった。

    でも削除っていう、バトロワシステムに入ってからはなんだろう。解決するわけでもなく、解決しないわけでもなく終わってしまった。

    全体的には嫌いじゃない。

  • 出来心から俺俺詐欺をしてしまった”俺”は、奇妙な日常に突入する。”俺”に出会ってしまう、そして”俺”は増殖し、”俺”達は殺し合いを始める…。
    という話。

    シュール…。シュールすぎて意味が分からなかったけれど、なんとなく言いたいが分かるような気がした。
    他人と自分の境界線、時々なくなってしまうような気持ちなることがある。
    そういう部分を強調した作品だろう。

  •  オレオレ詐欺が真に恐ろしいのは、両親が電話の主が自分の子どもかどうかわからないことだ。両親が自分の子どもを区別できないなら、自分が自分であることを区別できる人間がどこにいるというのだろうか。オレオレ詐欺は、現代人のアイデンティティーに深刻な疑念を投げつける。

     「俺俺」は、「俺」が増殖していくSF小説だ。実家に行くとそこには「俺」がおり、コミュニケーションの障害に悩んでいた「俺」は、「俺」との交流に満足を感じるが、やがて「俺」との間でも不協和音が生じ、無数の「俺」が出現するに至って、事態は急速に破綻へと向かっていく。

     この小説を読んでいると、読んでいる方もアイデンティティーの揺らぎを感じることにならざるをえないだろう。というのも、自分の意志が明確でなく、「場」に染まりやすいとか、コンプレックスの塊であり、自己卑下的で、しかしそれとは裏腹の高いプライドも持っているとかいった「俺」の性格は、読者の「俺」のものでもあるに違いのだから。この小説は、語り手の「俺」と読者の「俺」が混線していくことも明らかに狙いとして持っている。

     そのことを考え合わせると、「俺俺」が読者参加型のリレー小説というツイッター企画の素材として提供されたこともおもしろい。読者が書き手となり、「俺」となって、無数の「俺」を書き継いでいったということなのだから。ここでは、「主体の揺らぎ」についての幾重もの実験がある。

     「俺」という主体の自己同一性の不確かさを小説において展開した意欲的な実験作と言えるだろう。

  • 職場付近のマックで成り行きから隣のお客になりすます…というはじまりから、最後はずいぶん遠くまで行く。

    生きるために自分らしさを身につけるすべは教わらず、形ばかりで互いの切実さに触れあわない絆しか作ってこなかった人々ばかりが増えていき、自分が死んだことすらわからなくなる。

    そんな下等な連中と自分は違うと馬鹿にしているが、馬鹿にしているのは自分のことだから、下等なのも自分自身ということになる。自分で自分を貶めているんだから、この悪循環は終わらない。

    でもこんな下等な自分の最後が誰かの役に立っていることに気付き、歓喜するもその時にはすでに…

    ユーモアがあって子気味良く読み進められるが、底なしに自分を映し出してくる、気が変になりそうなくらい恐ろしい話。でももっと今の「俺」が知りたくなる。

  • 安部公房の赤い繭を思い出した。片や「俺」が増える、片やいなくなるの違いはあるけれど、「俺」が分からなくなるという点では近いものが。

  • クロマニョン人の夜明けみたい

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著者プロフィール

1965年、 アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、 早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務後、 メキシコに留学。97年 「最後の吐息」 で文藝賞を受賞しデビュー。2000年 「目覚めよと人魚は歌う」 で三島由紀夫賞、 03年 『ファンタジスタ』 で野間文芸新人賞、11年 『俺俺』 で大江健三郎賞、15年 『夜は終わらない』 で読売文学賞を受賞。『呪文』 『未来の記憶は蘭のなかで作られる』 など著書多数。

「2018年 『ナラ・レポート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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