殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件

  • 1196人登録
  • 4.38評価
    • (246)
    • (170)
    • (52)
    • (6)
    • (1)
  • 174レビュー
著者 : 清水潔
  • 新潮社 (2013年12月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104405022

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
中村 文則
スティーヴン キ...
横山 秀夫
伊藤 計劃
百田 尚樹
高野 和明
佐々木 圭一
いとう せいこう
有効な右矢印 無効な右矢印

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件の感想・レビュー・書評

  • ここ数年読んだ本の中でぶっちぎりのNo.1と言いたくなるくらい衝撃的な本。
    ☆5つじゃ足りないくらい。☆何個でも付けたい。
    私もブクログ仲間さんのレビューを読んだのがきっかけで本書を手に取ったが、一人でも多くの人がこの本を読んで真実を知ってほしいと心から願う。

    過去に栃木および群馬で発生した5件の幼女誘拐殺人事件。
    そのうちの1件が足利事件。無実の菅家さんが誤認逮捕されたあの冤罪事件である。
    自白の強要、信用できない供述調書、でっちあげられた情報、隠された証言。次々とジャーナリストの清水氏が暴いて行く。
    そして最大の問題であるDNA型鑑定。DNA型判定の結果によって初めて犯人逮捕につながった足利事件。しかし当時最先端とされたこの手法があまりにも杜撰で信用性が足らないとしたら。

    警察は一貫してこの5件の事件を連続殺人とは認めて来なかった。それはもちろん菅家さん逮捕後に最後の殺人事件が発生しているが故だ。
    5件を連続殺人と認めるわけにはいかなかったのだ。
    だが実際に菅家さんは無実。
    そして真犯人は別にいる。今も、現場近くに。
    清水氏はこの未解決事件の取材を開始後たった2週間で犯人を突き止めている。
    だが、警察はどうだろう。いまだなお動く気配を見せない。

    既得権益を守ろうとする検察への憤り、犯人を野放しにし続ける警察への不信感。
    暗澹たる思いになった。
    足利事件も氷山の一角だろう。
    袴田事件の再審が決定しこれでなにかが変わって行くかもと希望も膨らんだ。
    しかし地検の即時抗告、さらに飯塚事件の再審棄却。
    なにも変わってないじゃないか。

    それでも清水氏の様なジャーナリストが存在する限りまだまだ未来は開けると信じたい。
    私自身、メディアの情報に惑わされない真実を見る目を養っていきたいと強く思った。

  • 「ルパン」と呼ばれている男を逮捕するには、もう一度この男が誘拐・殺人をするしかないのか。

    桶川ストーカー殺人事件を読み、こちらも是非、読まないとと思っていて、ようやくです。

    桶川ストーカー事件とは、埼玉県警が不正をして、結果ある女性がストーカーに命を奪われた事件。それを当時雑誌フォーカスの記者であった著者の清水さんが取材、それも現場、関係者への徹底的な取材により、警察よりも先に犯人を暴き、結果、実行犯の逮捕へ。そして主犯を追って―

    という内容は読んでくれ!という大好きな、というのも問題があるかもしれませんが強い思いが詰まっている本。

    今回のテーマは北関東連続幼女誘拐殺人事件。覚えてます。横山ゆかりちゃんの事件は当時にニュースでよく見ていましたし、未解決事件もののテレビで再現映像を何度も見ていました。そして年齢的にも近い子もいるので、親に「知らない人について行ってはいけないよ」と引き合いに出されるようなそんな事件というイメージがありました。

    栃木、というと新しく2005年にも事件がありましたが、これは別件で単独犯でした。

    1979年から96年までに4人の女の子が殺され、1人は20年近く行方不明。

    群馬、栃木と県をまたいでおりますが、その範囲はごく狭いもの。それは今年、私自身の経験として、最後の事件現場となった群馬県太田市に住んでいる友人の家に遊びに行き、足利市は渡良瀬橋周辺に連れてもらったことから、「近い」ということが実感できます。

    車社会の群馬の子からすると、すぐ近くで夕飯を食べに行くような感覚でするりと連れていってもらいました。

    渡良瀬橋の歌詞にも出てきて私も訪れた「八雲神社」。ここでも1人の女の子が姿を消していたのだ。

    近い距離だけど「県境」というのが、捜査を阻むポイントであった。踊る大捜査線とかきらきらひかるで見たような、県境の川で警察が相手に押し付け合うような世界が本当にあり、情報が、捜査が、指示が、ばらばらになる。

    前回の本の感想記事にも書きましたが、テレビドラマの刑事もので描かれる世界っていうのはあながち噓ではなく、「優秀な私が描く高尚な全体最適な未来のためには小さな個別事案では悪も辞さない」という人が、人たちは本当にいるんです。

    前回は埼玉県警のひどい人たちが出てきたのですが、今回は科警研。科捜研の女、が都道府県ごとにいる組織だとしたらその中枢機関となるこの科警研が今回のガンです。

    そのために、この本には犯人とおぼしき人物への、明らかに怪しいだろうというインタビューまで入っているわけですが、警察は捜査をしません。

    今も、犯人と思しき人物は女の子と触れ合いながら、パチンコをしています。

    この人物、この本では「ルパン」と呼ばれている男を逮捕するには、もう一度この男が誘拐・殺人をするしかないのか。それが今の日本の現状なのか。

    そう思わざるを得ない、日本に生きていることが悲しくなってしまう本でもあるのですが、ここで暮らしていくことを選んでいますので、この事実を知り、その上で生きていきたいと思います。

    そして多くの方に、この本を読んでもらいたいと思います。

    北関東にお住いの親御さん、気をつけて。今は自衛するしかないのが悲しいですが。気をつけて。

  • 79年から90年代にかけて、数年おきに群馬、栃木の県境で起きた5件の幼女誘拐殺人事件。
    その一つが、最近冤罪であったことが正式に認められた、足利事件である。無実の罪で収監され長い年月を経てようやく釈放された菅家さんの姿を思い出す人も多いだろう。

    本書は、その足利事件を足掛かりに、連続事件としてさえ捉えられていなかった5つの事件を追い、その真犯人に迫ったノンフィクション。
    警察捜査の在り方、情報操作、保身、組織の問題、司法の問題、マスコミの問題、様々な問題を提起する問題作である。

    冤罪がつくりあげられていく過程には、あまりのことに怒りを通り越してあきれるばかりだったし、司法のしくみにはいら立ち、一生消えない深い深い傷を負ったご遺族の姿には涙した。
    警察組織の問題もひどすぎるし、法律ももっと人を救うための仕組みが取り入れられてもいいはずだ。そもそも真犯人が野放しになったまま、何の対策もされていないとはいったい日本の警察は何をやっているのか、などなど、読めば読むほど、素人なりに腹立たしく許しがたいことばかり。あの飯塚事件や桶川ストーカー事件なども取り上げられていて、犯罪捜査の在り方、死刑制度、思うところはいくつもある。
    だが、怒りに打ち震えながら、ここまで孤軍奮闘、徹底的に追いかける著者の並々ならぬ執念、ジャーナリスト魂はどこからくるのか、不思議でならなかった。
    最後に合点がいった。著者も事故という不条理に娘の命を奪われた一人だったのだ。

    今この瞬間にも、幼女連続殺人鬼が平然と街を歩いているかと思うとぞっとする。
    一日でも、一刻でも早く、真犯人がつかまりますように。
    いきなり命を奪われ未来を奪われた女の子たちが、ご遺族が、少しでも安らかな時を迎えられますように。
    行方不明のままの女の子は、一日でも早く、ご家族の元に戻れますように。

  • 足利事件の冤罪、再審無罪判決はTV報道等で見た記憶は比較的新しい。その時自分はどう感じていたか、このような深い闇があることなど気づきもせず、真犯人がどうこうと考えることもなかったと記憶している。無実の罪で収監されていた菅谷さんに同情の念はあったものの、疑われる状況証拠、背景があったのではと根拠のない疑念を持っていたのではないか。そんな、作り上げられた疑念が警察、検察、司法の場で意図的に増幅される恐ろしさを知った。
    あってはならないことななされ、それにより無実の人、その家族の人生が踏みにじられ、事件の被害者、その家族の思いも踏み潰され、許されない許されない決して許されないことがさらりと実行されていること、その不条理さと怖さを痛感しました。
    私たちは事象のうらに潜むその背景を十分に理解しようとしなければならない。知ろうとしなければならない。
    ドキュメンタリーは日頃読まないがこれは目から鱗でした。著者の熱い行動力に頭が下がります。これがジャーナリズムか。

  • 真犯人はまだこの世間を素知らぬ顔で渡り歩いている、罪の意識も無く、のうのうと。『犯人逮捕』のニュースをどんな感情で観たのだろうか。無実の罪で人生を棒に振った人を嘲り笑っているのか、まるで関心が無いのか。

    『桶川殺人事件』は鮮明に覚えている。暗闇の中ではなく事件が起きたのが人通りのある日中に起きた事件だからだ。その後犯人が特定され、残るは逮捕だという瞬間に流れたのは「犯人の自殺」だった。何処の2時間サスペンスだよっ!と怒りを覚えたのだ。

    清水潔さん。あなたが追って記事にした事実をいつか「真実」に変えて欲しいと切に願います。

    警察や司法は私たち「小さな声」の人々をどうか裏切らないで下さい。正義は貴方方の心の奥底にあると信じさせて下さい、と願います。

  • ノンフィクションならではの重厚な話に引き込まれました!
    冤罪事件が絡んだ連続幼女殺害事件を追う記者である作者が事件の本質に迫る話しで引きつけられましたね!
    それにしても旧来の警察の体質なのかもしれませんが、被害者家族のためにも真犯人を逮捕するという使命よりも、警察という組織を守ることに重きを置いた自分たちの過ちを正そうとしない隠蔽体質というのに怒りを覚えました。
    また、警察の誤りの隠蔽ために1人の尊い冤罪であろう人物の命が死刑という形で葬られたことにも怒りを感じました。
    本作品の事件の真相に作者がたどり着いているのにも関わらず、警察が体面のために真犯人を逮捕しないというのには憤りを感じましたね!
    最近は防犯カメラやDNA技術も発展しているので、誤認逮捕というのは限りなく少なくなっているのだと思いますが、1日も早く冤罪が無くなり、真犯人を早期にきっちりと逮捕したり、新たな犯罪を未然に防ぐための対策というのが今の社会(警察)に求められているのだと思いました!

  • この本を読み終わって数日経つのだけど、毎日、思い出す。著者の叫びを忘れてはならない、と思う。いろんな感情を呼び覚ましてくれた、一生忘れられない一冊だ。

  • 『桶川ストーカー殺人事件』で、独自の調査で犯人を追い、警察組織の不正を追及した清水潔が、今度は足利事件を追ったドキュメント。

    結果的には誤っていたことがわかるのだが、当時はDNA鑑定結果の担保もあり、現場の警察官は本気で菅谷さんが犯人だと考えていたのかもしれない。そういう中で確証バイアスがかかり、自らが見たい証拠だけを見、そうでないものは意識的にせよ無意識的にせよ遠ざけてしまったのかもしれない。その意味では、初期に恣意的に運用されたDNA鑑定の杜撰さが誤審の原因になったとも言える。

    著者は、DNA鑑定以外にも有利な証拠だけを採用し、矛盾する目撃証言は無視し、結果検察の意向に沿ったストーリーが組み立てられたことを明らかにしていく。死刑囚として収容されていた菅谷さんが、著者も加わったTV番組のキャンペーンにより再審を勝ちとるまでのストーリーも圧巻だ。しかし、著者が本書を世に出した理由の核心はそことは別のところにある。

    それは、足利事件を含む5人の幼女が被害者となっている「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の「真犯人」だ。

    『殺人犯はそこにいる』というタイトルは、強くそのことを主張している。著者は、すでにその犯人の目星を付けているという。驚いたことに、その本人にも直接当たり、クロだとの心証を得てさえもいる。

    著者がここまでの確信を得て、本書を含めて多くの場所で示唆する連続幼女誘拐殺人の真犯人を警察があげないのはどういうことであるのか。警察の体面であったり、自組織内での余計な忖度から行動が縛られているのであろうか。『桶川ストーカー殺人事件』でも見せた通り、著者はメディアの露出に関してはきちんとした戦略を立てる方で、考えもなく情報を垂れ流すような人ではない。そこには、明確な意図(目的)とそのためメッセージが含まれているはずだ。

    そのメッセージには、ひとつは犯人へのメッセージ、ひとつは警察へのメッセージ、そしてもうひとつはマスメディアへのメッセージが含まれると考えられる。

    まず犯人は、この本を読んだからといって動ける立場にはない人であるはずだ。なぜならこの本が出ることで、警察にその名を告げられ、さらにはマスメディアの一部に対してもヒントとなるような情報がちりばめられていることを、真犯人とされる人物が知ることが前提になっているからだ。つまり逃亡の危険がないことが前提になっている。もちろん、過去行われたTVでのキャンペーンのときからその前提はあったのだろうが、今回それがより明確な前提になっている。そのような立場の犯人への心理的なプレッシャーをかけるということがメッセージになっているように思われる。
    次に警察へのメッセージだ。現時点で犯人を起訴することがこのままでは難しいと思っていると著者が思っているのではないか。菅谷さんが無実とされた以上、真犯人が挙がることによって警察の体面がつぶされるという問題は、ある意味でなくなっているはずだ。懸念のひとつは、起訴して裁判となったとしても時効や証拠不十分な状況から有罪とするのは難しいと警察が考えている可能性がある。もちろん、もっと悪いシナリオは、警察が悪意を持って証拠の改竄などを行ったことが明らかになるため、あえて放置されているという可能性もあるだろう。いずれにせよ、そういう警察に対して、犯人を逮捕するように外から圧力をかけることが目的ではないだろうか。
    そして、著者が最も強いメッセージを送っているのが、マスメディアであるように思う。警察への外からの圧力となれ、とのメッセージだ。ここまで書かれれば、マスメディアの中にはその真犯人は誰なのだろうかと調べる人が必ず出てくるはずだ。もし、犯人が挙げられたらそれはスクープであり、そのスクープを逃したりしたくはないはずだ。少なくとも裏を取りにくるはずだ。そう動いた人もいるだ... 続きを読む

  • HONZのメンバーが、これはぜひ読まなければならない、
    と力説しまくった本。紀伊国屋で今でも山積みになっていたのでついに購入。警察、裁判所は一体何をしているのか!
    腹立たしい。日本の正義はどこへいってしまったのだろう。

  • 著者のジャーナリストとしての魂や生き様を感じる。執念の取材でこの本が出来たのではないかと思う。冤罪による誤認逮捕で17年半も警察によって人生をめちゃくちゃにされた菅谷さんも北関東幼女連続誘拐事件の被害者である。警察の杜撰なDNA鑑定や取り調べや捜査が無ければ、被害者や被害者家族や菅谷さんが傷つかずに済んだのではないだろうか。まだ、見つかっていない子が見つかる事を願う。被害者の女の子達のご冥福を心からお祈り申し上げます。このような痛ましい事件が無くなるといいのに。

  • 只今怒涛のキャンペーン中?のHONZ本。(http://bit.ly/1cbhKMM)
    一気読み。「あとがき」に泣く。
    これほどの信念を行動に移し続けられる人間になるには、いちいちこんな経験をしなければならないのか?と。(T_T)
    そしてそれを知ると知らないで印象を変える自分の浅さを恥じるのである。
    実際、ノーテンキに生きてきた自分には、ここでこんな判断はできない、絶対大勢に迎合しているというところが随所にある。
    あとがきを読むまでは、正義感だけでここまでできるってすごいと思いつつ、他にもこういう正義感を持つ記者はいるだろうに、他にはできなくて著者には出来たという差は何だろう?結局、運もタイミングもよかったということもあるのだろうなぁ…なんていういやらしい?斜め目線もあったのだ。
    そして、誤解を恐れずに言うと、事件の見直し調査をしていく様が、確かに面倒くさい地道な作業の連続だしご苦労も相当されている、だがそれにしてもそう難しそうではない調査に見えるのだ。何か常人には使えない特殊なスキルを使ってらっしゃるようには見えず、他の記者でもまったく同じことができただろうに、と見える。(まぁ相当な覚悟は必要と思われるが。)
    あくまで、まったく著者の普通の(もちろん長年の記者経験感覚は一般人のそれとは違うとはいえ)「当たり前感覚」で裏が取れていくように見える。
    それだけに、当の司法関係者がこれに気がつかないって素人すぎないか?と私ですら思え、著者の怒りに共感もするのだが!
    著者のこの成果はタイミングもよかったんだろうなぁ~、賞とかも取れてよかったよねぇ~なんてことを思いながら読んでいた側面もあったのだ。それが「あとがき」で吹っ飛んだ…。
    それと同時に、この私の「いやらしい斜め目線」がまさにこの中に出てくる司法側の人間や、マスコミ側の人間にあるものと一緒なのだろうと。
    地獄を見るまで正義が何かわからないようになっている大組織。
    大組織を構成しているのは、ただの「一人一人」だ。
    人ごとではない。
    それゆえに、著者のような経験をしたものでないと追求し続けることができないのか?という「胆力のない大勢」に自分もいるという事実に泣かされる。

  • 前著「桶川ストーカー殺人事件」は19歳の時に読んで衝撃を受け、いまでも生涯ベスト5に入るほど思い入れのある作品です。あの清水潔さんが久しぶりに新刊を出すということで、迷わず購入し、あっという間に読み切ってしまいました。読み終えてから気づいたのですが、清水さんが本を出すのは「桶スト」以来なんですね。

    「桶スト」以来…清水さんが本を出すというのは、きっとそれが“最終手段”のときなのだと思います。「桶スト」がつまびらかにしたのは警察組織の腐敗と、それを追求できないマスコミとの関係性でした。犯人は明らかだ。しかし、それを分かっていても警察は組織の都合、動こうとしない。だからこそ清水さんはそれをあえて世間に公表し、警察が動かざるを得ない状況を作ろうとしたのです。

    本作も基本的な構造はそれと同じです。清水さんも本文で言っている通り、菅谷さんのえん罪をはらすのは通過点でしかなく、あくまでも真犯人を追い、それを世間に公表することを主眼にしています(だから第6章以降が加速度的に面白いです)。ときに警察・検察に、ときに国会へと場所を移し、真実を明らかにするように訴えるのですが、組織の様々な事情が物事をすんなりと運ばせない。

    一読者の僕ですら、警察・検察組織のちんたら具合にイライラするのですから、当事者である清水さんの心中はいかほどだったでしょう。少女5人を殺した犯人はそこにいる、でも捕まえられない。これは惨い。詳しくは本文で書かれているので割愛しますが、もう二進も三進もいかない状態です。これは世の中に訴えるしかない、世論を動かすことで霞ヶ関を包囲するしかない、清水さんはそう考えたのではないかと思います。

    清水さんの本を読んでいると、「警察は正しいものの味方」という僕たちが当たり前のように持っている感覚に疑問符を抱かざるを得ません。人間が動かす組織だから、ある程度の脱線は仕方のないことでしょう。しかし、桶ストにしろ、この事件にしろ、警察は常に身内の味方しかしていないのです。警察神話を信じている市民、そして何より被害者家族にとってこれほど恐ろしいことはありません。菅谷さんの再審判定に関する毛髪鑑定の下りなど思わず笑ってしまいました。

    犯人へむけた最後のメッセージは強烈でした。この本を読んで、真犯人は一体どう思うのでしょうか。警察関係者は何を感じるのでしょうか。被害者家族の痛々しい様子を目の当たりにするにつれ、本作がきっかけでこの連続殺人の真実が明らかになることを願います。

    年の瀬に出会った2013年のベスト本です。

  • 事件ノンフィクションは基本的に苦手で、避けて通りたい。でもこれは読まねばならないと思っていた(そういう本ってやっぱりあると思う)。意を決して一気に読む。

    予想通り非常に重い読後感。自分の日常の地続きで、こんなことが起きているなんて。焦りとあきらめが交錯するような、整理のつかない気持ちになった。本書の出版からすでに一年以上、その後の動きが聞こえてこないということは、この件は筆者が危惧しているように葬り去られていくのだろうか。

    警察の負の面がつきつけられて、暗澹とした気持ちになる。よく考えてみればこれは「組織」の持つ恐ろしさなのだろう。自己防衛のためならば、事実を平気でねじ曲げ、責任逃れをはかり、都合の良いことを強弁し、謝罪すべき相手を逆に攻撃する。警察は強大な国家権力を背負っていることと、マスコミを操れることによって、その害が甚大であるわけだ。

    これを読むと、事件報道というものを信じられなくなる。大量に垂れ流される「物語」を鵜呑みにすることだけはやめようとあらためて思った。

  • 北関東の連続幼女誘拐殺人事件に克明に迫ったノンフィクション。犯人はまだ捕まっていない、著者も警察も犯人が誰なのか、何処に居るのか分かっているにも関わらず。衝撃の一言。

  • 世の中には理不尽なことがたくさんあるが、腹立たしいけどまあいいか、というものもあれば、これはちょっと看過できまい、と感じるものもある。
    このルポルタージュは、著者の清水潔氏が、前述の中でも後者の類に入る、とりわけエクストリームな事柄に執着し、彼が思うところの真実を追求していく過程を克明に記したもの。
    ご本人は否定しつつもやっぱりちょっと自慢に聞こえてしまうような嫌いはあるものの、誰もがおかしいと思うことについて「おかしい」と声を上げ続け、行動に移し続けていく様には、例えそれが最終的な結実にはつながらなかったとしても、感服せざるを得ない。

    合法的に人間の身体を拘束し、その人生を狂わせることができる公権力が判断を誤り暴走した場合、我々個人が手にできる武器はほとんどない、という現実的な恐怖がよく伝わる。

  • 2014.5.13読了
    ここ数年読んだノンフィクションの中ではダントツだった。夢中になって読んだ。今のマスコミの在り方には色々と思うところがあるけれど、こんなにもジャーナリスト魂を持っていらっしゃる方がいるんだと驚いたと同時に、とにかくこの本を沢山の人に読んで欲しいと強く思った。今、この瞬間も警察は何をやっているの?早く、早く、と思わずにはいられない。菅家氏や袴田氏、免田氏、そして飯塚事件の久間氏の人生を思うと言葉が見つからない。考えられない信じられないことが現実に起きている。警察・検事は一体誰の味方なのだろう。それが一番哀しい。

  • 怒りがほとばしるような文章だった。
    足利事件の容疑者となった菅家さんを逆転無罪へと導き、丹念な取材によって真犯人までもあぶり出していく。なによりもこの筆者の執念がすごい。それとあまりにも対照的な警察・検察のずさんで横柄、怠慢な捜査に辟易する。
    真犯人ルパンが逮捕され、真実が明らかになる日がくることを心から祈るのみ。

  • 驚くほど杜撰。毎度毎度思うのだが警察も検察も裁判所も被告、及び容疑者をなんだと思っているのか。
    しかも足利事件は捜査当初から100%の見込み捜査もいいところ。事件が解決されれば良いと思っている。
    結局起訴した元刑事はのうのうと生き延び、反省の色も感じさせないと来ている。これでどうやって警察を信用すればいいのか?
    実際に容疑濃厚な容疑者を筆者は特定しているのにもかかわらず全く動きがない。呆れるばかりだ。
    みなさんにも忘れないで欲しいと思う。警察官は犯罪者だ。絶対に信用してはいけない。起訴した事件の99%が有罪、なんていう国は日本以外にないことだし。とにかく疑ってかかること。それが大事だと強く思った。

  • おもしろかった,という表現では終わらないような。思考過程とかすごく説得的だと思うのは,動機においてとても共感できるからなのかなと思う。動機も思考過程もすごくオーソドックスだと思うのだけど,どうして捜査機関や法曹にはできなくなってしまうのだろう。私自身も,同じことをしてしまっているのかもしれないけれど。

  • とにかく、仕事をさぼって読む本ではないなと思った。罪悪感がすごすぎる。爪の垢を煎じて飲みたい。それだけ。

  • 最後の1ページまで食い入るように読んだ。いまだ真犯人が逮捕されていないという事実が大変理不尽であり、憤りを覚えた。これは、素晴らしいノンフィクション。特定秘密保護法下ではこうした著作も減ってしまうのか。ジャーナリストのみなさまには不屈であって欲しい。

  • あなたたちが守るべきものは何なのだ。何を信じればいいのか。この本をきっかけに犯人が逮捕されることを、真実が明らかになることを願ってやまない。

  • 「遺言 桶川ストーカー殺人」の著者の第二弾。

    菅谷さんの無罪事件と、栃木・群馬にまたがる5件の
    未解決幼女誘拐事件をからめた本作。

    ビックリなことは、この未解決事件の犯人(ルパン三世
    に似ているからルパンと命名)を特定して
    話まで聞きに行っていること。

    なぜ、この犯人が野放しになっているかは
    菅谷さんが犯人という断定によって、捜査を
    終了させてしまっているから。
    警察発表をそのまま掲載することの問題点。
    例えば、DNAがほぼ一致していた、という表現は
    あり得ない。
    完全一致か不一致のどちらかしかないこと。

    自転車に乗っていた人(菅谷さん)という
    目撃証言はないのに菅谷さんは逮捕、
    歩いていた人が
    いたという目撃証言はあったのに(これがルパン)
    これは無視される捜査。

    この真犯人ルパンの存在を認めてしまうと
    警察のDNA鑑定を全て否定してしまう=警察の
    信頼低下、から菅谷さんの無罪でしゃんしゃんに
    してしまう、警察の体質を前作同様に
    糾弾しています。
    この警察の糾弾部分、後半最後の部分、
    やや書かれている内容が少なかったので
    もっと盛り込んで欲しかったことだけが、惜しい。

  • これは読むべし!みんなに読んでほしい!!筆者は『桶川ストーカー殺人事件 』で警察より早く犯人にたどり着き、また同時に埼玉県警の不正を糾弾し解決させた日本テレビの記者(当時は雑誌記者)。
    今回は菅家さん冤罪事件で有名な足利事件。無罪を勝ち取った裏にこの記者の存在があったのだ。ただ冤罪事件で思うのは一つ。それじゃ、犯人は誰なんだ?って事。この地域の周辺ではこの事件を含む5件の幼女強姦殺害事件が起きている。素人目でも同一犯の犯行。菅家さんは無実。では・・・・
    筆者である清水記者は独自調査の結果犯人にたどり着く。犯人は通称『ルパン』。足利事件で採取されたDNAとも一致。別件の誘拐事件でパチンコ店の防犯カメラに映っている人物とも同じだと。記者はその『ルパン』にインタビューもしている。でも警察は動かない。警察は犯人を知っている。いや、知っていて捕まえないのだ。そしてあの連続幼女殺人犯はまだこの地域に住んでるのだ。これはあのストーカー事件と同じ警察内部の問題、いや、国家としての問題。
    清水記者の文章も上手い。読んでいてこの『ルパン』を何とかできないものかと、正義の殺し屋がいるとするならヤツを殺してくれと、読んでいてくやしい、本当にくやしい。
    なぜ犯人が野放しになっているか。みなさんもぜひ読んで周囲に知らせてほしい!絶対読んでくれ!たくさんの人が読んでこの事件をもっと大きく取り上げてくれ!!

  • ほんもののジャーナリスト

    新年早々に読んだこの本が、今年のマイ・ベスト本になるかも。
    ・現場に行かないと分からないことがたくさん有る。
    ・再発防止! (警察・検察は「意図的」にやっていない)
    ・警察・検察のやり方は、仮説ではなくレッテル貼りになっている。
    (証拠が仮説を検証するものではなく、レッテルに合うものだけを残すというインチキ)

    菅谷さんの無実を認めながら、真犯人(著者は真犯人を警察に伝えている)を逮捕しない警察・検察って???


    菅家さんの無実が明らかになった足利事件を含む北関東連続幼女誘拐殺人事件。連続した事件だと見つけるところからスタートし、真犯人を追い詰めるため、菅家さんの冤罪をはらし、警察にも連続事件と認めさせるまで追い込んでいく。
    それでも、
    真犯人は未だに自由の身だ。
    本書の最後の言葉。
    いいか、逃げきれるなどと思うなよ。

全174件中 1 - 25件を表示

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件に関連する談話室の質問

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件を本棚に登録しているひと

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件を本棚に「積読」で登録しているひと

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件の作品紹介

犯人が野放しになっている? 「桶川ストーカー事件」を手掛けた記者が迫る! 5人の少女が標的になった知られざる大事件。それを追う記者が直面したのは、杜撰な捜査とDNA型鑑定の闇、そして司法による隠蔽だった――。執念の取材で冤罪「足利事件」の菅家さんを釈放へと導き、真犯人を特定するも、警察は動かない。事件は葬られてしまうのか。5年の歳月を費やし、隠された真実を暴きだす衝撃作。

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件はこんな本です

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件の文庫

殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件のKindle版

ツイートする