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この作品からのみんなの引用
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いつかタケオが、中野さんが説教をする前に「どうかしたんすか」と機先を制して訊ねたのを見て以来、わたしもそれに倣うようになった。聞かれると、中野さんは水をはきだすホースのように、しゅるしゅると話をしてくれるのだ。聞かないと、ホースの口近くに固い土が詰まっているかのように、妙な説教ばかりがはきだされてくる。
「うん、あのさあ」しゅるしゅると、中野さんは話しはじめた。
― 33ページ -
でも兆候で死ぬものでもないだろう、人間は。
― 169ページ -
ヒトミさん、おれ、なんか下手で、すいません。タケオが小さな声で言った。
下手って、なにが。
なにもかも。
そうでもないよ、わたしだって、下手だし。
そうすか。あの。タケオは珍しくわたしの目をまっすぐに見ながら、言った。ヒトミさんも、生きてくのとか、苦手すか。
― 66ページ
みんなの感想・レビュー・書評
川上弘美の作品ってわりと曖昧というか、地に足ついてない空気じゃないですか。あれ、そういう気分じゃないときはイライラしますよね。俺はもっと質実剛健って感じのが読みたいんだ、プロレタリア文学とかその辺がいい、みたいな。一方で、よくわからない気分に揺られたいときはなかなか良いですよね。
『蛇を踏む』とかと違って超常現象が起きないタイプの作品です。恋愛要素強いです。
『ニシノユキヒコの恋と冒険』以来川上弘美の描く恋愛についてははっきりとした敵意を持っていて、その感情については本作もあまり変わらないです。流れに流されすぎてるのと、気まぐれすぎるのがよくない。
けれども、描き出される全体的な雰囲気は、なんとなくセピア調に近く、なんだか読んでいると安心します。
サキ子さんの迫力がすごかった。
中野商店のメンツをみてるとどうしようもないけど魅力的なひとたち、という言葉が浮かんできた。いや、どうしようもないから魅力的なのかもと思ってみたり。
その考えは作中で「なんかこう、自分のこと、小出しにしてたなあ、みんな。全開じゃなく。」という言葉をみた時認識した。あぁ、どうしようもないと他人に思わせる所まで自分を余すところなく出し切っていること、それでも周りがそれを受け入れていること、そういう関係って魅力的だなと。
終盤の展開が響いた。祇園精舎の鐘の音・・・ですな。でもどうしようとしない人たちが動き始めるのをみると、同族としては寂しさを感じる。
読み終わったとき、ああなんてしあわせなんだろうなあとしみじみと思った。すごくやさしい終わり方で、心の奥の奥まで満たされていくような、そんな気分になった。
特別なことなどなにもない、ただの日常なのにどうしてこんなにもいとおしくなるのか。登場人物たちの心の動きが、不器用ながらもひとと関わり合っていく様子が作者特有のゆるやかな文体で書かれてあって、せつなさや幸福感やその他いろんなものを連れてきてくれた。特に、ヒトミのタケオへの想いには涙が出そうになった。すきなのに、うまくいかない。だからやめてしまおうか、けれどやめれない。どうしても、思い出してしまう。ちゃんと向き合おうとすればするほど、相手のことを傷付けてしまう。ヒトミの微妙な心の揺れが、読んでいるわたしの心にも移ってきてつらくなったのだけど、でもあの最後のハッピーエンドでああほんとに、よかったなあと心から思った。
(277P)
元気が出ないとき、何もしたくないときでも読める本。
わたし、中野さん、タケオ、マサヨさん他、登場人物はみんなどこか欠けていて不器用で、でもそれぞれが、自分のやりかたで他人を思い合ってるから、孤独なようでちゃんと繋がってる。
ちょっと都合のいいところもあるけれど、だからこそ無理なく読めた。
また元気がないときに読みたいな、と思う。
川上弘美『古道具 中野商店』読了。古道具屋に集う、個性的な面々とその日常。文章の中に感情を表現する部分がすごく少ないので、一見淡々としているが、どこか居心地の良さを感じさせる。アマゾンを見てみたら、この著者にはけっこう熱狂的なファンが多いのでちょっとびっくり。
骨董好きには、たまらないバイトだー
こんなゆるい雰囲気の人たちに囲まれて、暮らせたらなー
と考えさせられる今日この頃。
川上弘美さんの文章って、内容にしっくりくるとおもしろいんだけど、内容とずれると途端に読むのがいやになってしまう。でもこの小説はすらすら気持ちよく読めた。
終わり方も好き。
面白かった。
登場人物4人の関係性がゆるくて、話している内容もぐたぐだな感じが好きでした。映画を見てるような本でした。
よかった。
川上弘美作品の語り手の中ではいちばん好きかも。中野商店まわりの靄のかかり方がとてもリアルでいて慕わしい。
久しぶりに読み返したのでレビューを。
古道具を売っている中野商店が中心の日常の話。日々の流れがたんたんと。人とのやり取りがたんたんと。
でも登場する人々がみんな一癖も二癖もある人ばかりで話がぐーんと面白くなる。大きな出来事はないけれど、その日常の中での主人公の不器用な恋愛がとても心をうつ。なんかせつない感じとか、やりきれない感じとか、しあわせな感じとかが伝わってくる。終わり方もとても良い感じ。
また読み返すだろうなぁ。
たんたんとしていて、それでいてディティールが細かい。バイト先での中野商店での日常を、主人公のヒトミちゃんは普通に「居て」「見て」いる。主人公は中野商店自体かも。不思議な雰囲気。
恐ろしいほど前のストーリーが頭に残らない1冊。きちんと順を追って読んできたはずなのに、読み終わった後は文字通りからっぽ。不思議な感覚を味わえる作品です。
登場人物は、皆生きて行くのが下手くそで、危ういのに、やたらとたくまいいというアンバランスさが好ましい。便利さからちょっと外れた幸福が心を温めてくれます。
川上さんの作品は短い言葉に凝縮された光景や雰囲気が好きなのだけどこの作品は、必要以上に言葉が多かったし、説明的な文章も多かった。登場人物もあんまりタイプじゃなく、途中でやめたくなった。でも登場人物を芸能人にあてはめ、頭のなかで映像化出来るようになってからはちょっと楽しかった。中野さん→さま~ず 大竹 、マサヨ→秋吉久美子 、ヒトミ→堀北真希、タケオ→錦戸亮、サキ子→井川遥、自転車屋→さま~ず三村(友情出演)2011/4/22
去年は、男性作家の本をよく読んでいた。男性作家特有の、四角い、無駄のない文体が心地よくて、逆に、女性作家の遠まわしな表現がいやで避けていた。
今年は、女性作家にもどってみようかな、うん。
このお話、派手な事件なんてなにもないけど、でも一冊を通して読んでみるとストーリーの奇抜さに驚く。
一見、なんの変哲もないただの古道具屋に集うひとたちのお話なのに、表現のうまさでこんなに奇麗なお話になるのか、そんなかんじ。
また、言葉の選び方、書き表し方がすごいよ。感情を文字で表現するってすごく難しいはずなのに、どうしてこの人はこんなに簡単に書いてのけるのかな。
ほんのり、しっかり、しみました。
古道具屋、中野商店で働く「わたし」と周りの人との小さい日常が描かれています。
なにか特別な出来事があるわけでもないのに、淡々とおもしろい1冊でした。
以前から読みたかった1冊。古道具屋さんを舞台にほのぼのとした日常が描かれる。登場するキャラクターがなんとも不思議で憎めなく、淡々とした毎日を彩る。ほのぼのとした話で新年にはちょうどよかった。

まずタイトルがすごく好きです。
文章も読みやすくて、大好きな雰囲気の一冊でした。
みんながさみしくて、暖かい人達で。
「タケオがきらい」だと繰り返すところが好きです。
「きらい」と思うたびにヒ...





