どこから行っても遠い町

  • 933人登録
  • 3.51評価
    • (74)
    • (134)
    • (223)
    • (31)
    • (7)
  • 196レビュー
著者 : 川上弘美
  • 新潮社 (2008年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104412051

どこから行っても遠い町の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 電車の窓から町の風景を見るのが好きです。ごく普通の住宅地を飽きずに眺めています。立ち並ぶ家々の窓の向こうには住む人がいて、それぞれ「生活」があるのだろう。そんなことを思いながら、ぼーっと眺めています。
    この本を読んで、ふとそんなことを思いました。
    古い商店街のある町に住む人々の日常。日常と言えど、それぞれの形があり、それぞれの想いがある。狂言回しとなるような人物や場所を据えず、それぞれの話の登場人物が何となく繋がり重なる。人の営みが集まり町となる。人の想いが集まり町となる。
    日常を描いているのにファンタジーじみて感じるのは、作者川上弘美の掌上に世界があり、作者のまなざしを感じるからでしょうか。そのまなざしは温かいのに、よそよそしく愛想ない。だから登場人物たちは、作者の掌上で思い思いの生活を営むのでしょう。

  • 予想以上によかった。短編集だが、次の物語に前の物語の人が一部かかわっている形式。どの人も、どの家も、幸せ不幸せというよりは、希望と不思議と悲しみとおかしさといろんなものがミックスジュースになっているようだ。自分ひとりの力ではいかんともしがたいもの、思いもしなかったことが起こる喜びや悲しみ、人間の力と弱さ、作者の観察眼と表現力に脱帽。平凡な日常を、深く切り込んで書いていくこの人の作品が好きだ。

  • 東京東部の下町〜商店街を舞台にした連作短編集。
    語り手が老若男女と次々と変わり、それぞれにまったく違った、些細で個人的な物語を進める。その物語の語り手は、いつも自立していて優しいから、読んでいてほっとする。ひとつひとつがどれかの話に薄く薄く繋がっていて、「あ、あの人はあの後こうなったのか…」ということが微かにわかる小さな歓び。読んでいるうちに、読者の中に小さな街が生まれる。
    どの話も面白くて選べないけど、おかみさんの央子さんと板前の廉ちゃんの15歳差の恋愛を描いた「四度目の浪花節」は、大人の恋愛だな〜という風情で素敵だった。
    表題作の「どこから行っても遠い街」は、”生きてきたというそのことだけで、つねに事を決めていたのだ”ってことに、瞬間気づく不倫男性のお話。人生の核心めいたことをはっきりとわかりやすく記してあって、意外な感じがした。

    最初の「小屋のある屋上」で、商店街の魚屋さん魚春の平蔵さんが、両親、義両親、実妹、奥さんと立て続けに亡くしているという事実がわかり、最後の「ゆるく巻くかたつむりの殻」は平蔵さんの亡くなった奥さんが語り手です。
    奥さんは「好きな人が死ぬと、すこし、自分も死ぬのよ」といいます。平蔵さんは、死んだ人間もまだ死んでない、といいます。奥さんが自分の記憶を「はかない」と思い起こしていて寂しい気持ちになるけれど、最後は「捨てたものではなかった、わたしの人生」と終わるから、少し救われた気持ちになりました。
    最初と最後の話のせいなのか、死に包まれたようなふわふわした気持ちが残って、「どこから行っても遠い街」は黄泉の国のような気がしてきます。ただの小さな商店街だけど、黄泉につながっているような。一生辿り着けないような。なにげない自分の生活だって死に向かっているということか。生きること自体が、すべて。

  • 下町の商店街が舞台ということもあって、昭和後半の雰囲気が漂う連作短編集。
    顔見知り程度のご近所さんの今まで知らなかった一面を、ちょっとしたきっかけで共有することとなり、それぞれの生き様に人間味を覚え、今までよりどこか親しみを感じる様になったと言う感覚。
    特に大きな事件も起こらず、各章の主人公のつれづれとした語りで成り立っているので、中途半端な印象はあるけれども、別に嫌ではない。小説を読む上での刺激には欠けているけれども、生ぬるい空気に包まれているのも、悪くはないかという感じ。
    11ある短編の中であえて言うなら、「長い夜の紅茶」のお見合い結婚のお嫁さんと姑さんのお話が好き。

  • 普通の短編集かと思って読み始めたら、
    途中で作者のたくらみに気付いてハッとする。
    面白い、と思う気持ちが加速する。
    どの話を読んでも、不思議と嫌な気持ちにはならない。
    奇妙なエピソードも川上さんに切り取られるとちゃんと様になる。
    タイトルが「街」じゃなくて「町」なのもいいと思う。
    お洒落な「街」じゃなくて、そこらへんの「町」がこの物語にはぴったりだ。
    『貝殻のある飾り窓』と『ゆるく巻くかたつむりの殻』が好きです。

  • 連作短編が大好きなんです。
    誰にでも物語はあるんだ、って考えると楽しくなりませんか。
    たとえば電車の移動中、前に座った人の性格とか、好きな音楽とか、色々想像してしまうような。

  • 好き。良い。

    「四度めの浪花節」がとくによかった。

    わたしも、うんと年上の女の人に夢中になりたい。
    と、なぜか、男の立場で思ってしまった。

  •  川上弘美さんは、趣味に合わないなんて、長らく思っていたけれど。
     だれもが絶賛する「先生の鞄」もいまいち楽しめなかったし・・・。

     でも、これはとてもよい。しっとりと川上ワールドにひたりました。読むのをやめたくないような楽しみ。終わりが近づくのが残念なほど。

  • とある町の商店街を中心にそこで暮らす人々が、話の主人公になっている短編集だが、登場人物が、重なっているので、全部つなげてひとつの話になっている、と思う。「争いをさけて、あつくならず、一歩引いて」というようないつもの女の人が主人公のが多かった中で、男の子が主人公の話は新鮮で良かった。谷内六郎の表紙がまたいい。

  • ある商店街を舞台にいろんな登場人物が少しずつ重なり合う話。それぞれが魅力的な人達で、ちょっとした出来事での感情の動きに、はっとさせられる。
    取り上げていない人物の物語も読んでみたい。
    すっごく好きな作品でまた読み返すと思う。

全196件中 1 - 10件を表示

川上弘美の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
小川 糸
三浦 しをん
絲山 秋子
湊 かなえ
村上 春樹
伊坂 幸太郎
川上 未映子
伊坂 幸太郎
東野 圭吾
万城目 学
川上 弘美
川上 弘美
川上 弘美
伊坂 幸太郎
有川 浩
伊坂 幸太郎
桜庭 一樹
川上 弘美
有効な右矢印 無効な右矢印

どこから行っても遠い町を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

どこから行っても遠い町を本棚に「積読」で登録しているひと

どこから行っても遠い町の作品紹介

男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ「平凡」な主婦とその姑、両親の不仲をじっとみつめる小学生、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房…東京の小さな町の商店街と、そこをゆきかう人々の、その平穏な日々にあるあやうさと幸福。短篇の名手による待望の傑作連作小説集。

どこから行っても遠い町の文庫

ツイートする