なめらかで熱くて甘苦しくて

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104412068

感想・レビュー・書評

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  • (2013年5月5日読了)
    BOOKデータベースに、「セックスと性欲のふしぎを描くみずみずしく荒々しい作品集。性と生をめぐる全5篇」とあったので、石田衣良さんの作品のような直球な内容なのかと思っていたら、全く違う世界のものだった。
    世界という言葉を使うのは、大袈裟過ぎではなく、この私の生きている日常と重なる部分は多少あっても(「aer」の母になった女性、「ignis」の妻)みた事もない、知らない生活がここにあった。
    川上さんの作品は、好きでよく読んでいたが、それらの本とは違う雰囲気を感じたのは、受け止める側の私の心が変わったのかもしれない。

  • 最近の川上さんの作品は、読んでいるとどんどん広がっていく。
    1次元的ではなく、曲線となったり、空間となったり、どんどん膨らんでいって、不思議な気持ちになるけれど、すべて「さもありなん」という感じ。

    性的な描写にほどよくフィルターがかかっていて、
    だからなのか?結構きつかったり、大胆だったりする事実も薄ぼんやりしていて、どの作品も曖昧な終わり。
    タイトルも「さもありなん」な感じですね。

  • 妊娠〜出産〜子育ての心境の変化をえがいた『aer』が秀逸。
    ほんと、この期間って、ジェットコースターのようにハイになったり鬱になったりを激しく繰り返すんだよね。
    精神も身体も激変する。出産経験がある方なら、共感できるシーンがあるのでは。

  • 『センセイの鞄』ではじめて知った川上弘美さんの最近作。
    はっきり言って面白いとは言えないな。読んで楽しければそれだけでもいいのだが、この本は引っかかるところがほとんど僕にはなかったなあ。どうなんだろう他の人が読んだら。女性が読むと違うのかも。

  • (2013.04.22読了)(2013.04.20拝借)
    5つの短編が収録されています。2008年、2009年、2012年に「新潮」に掲載したものを一冊にまとめて出版した、ということです。
    表題はなんだか怪しげなのですが、期待したような内容の本ではありませんでした。
    最後の「mundus」が、初期の川上さんのいい加減さが漂っていて、いいかな、というところです。

    【目次】(表題はラテン語のようです。辞典を引いて日本語の意味を追加しました)
    aqua (水)
    terra (土地,地面,地球)
    aer (空気,大気,天空)
    ignis (火,炎)
    mundus (世界)

    ・水
    田中汀さんと田中水面さんのお話です。語り手は、水面さんの方です。
    小学三年から高校一年まで?
    父親の浮気、母親の自殺未遂。
    ・地球
    沢田と私(麻美)の話。沢田の隣人の加賀美が自動車にはねられて亡くなったので、焼き場の手配をし、骨壺を、田舎(山形)のお寺まで届けに行く。
    ・空気
    出産の話。書き出しが(97頁)
    「そのしろものはとてもやわらかくて垢がたまりやすくて熱くてよくわめくものだった。」
    と始まります。赤ん坊のことだと分かるのに、ちょっとかかりました。
    ・火
    「茶畑の中をひとすじに通るこの道を、三時間ほどかけてわたしたちは歩く。」話。
    青木、「クラブ・病院」。
    男は離れている女のことは恋しがる。近くにいる女には飽きる。千年以上前の世から、変わらない。(145頁)
    ・世界
    時々行の頭が、/で始まる。これは何だろう?
    洪水の話なのだろうか?タイムカプセルの話、祖父の話、祖母の話、子供の話、あちこちに話が飛ぶ。幻想?
    それは、子供にとって、なめらかで、熱くて、甘苦しくて、決して知らないふりのできないものだった。(171頁)

    ☆川上弘美さんの本(既読)
    「風花」川上弘美著、集英社、2008.04.10
    「どこから行っても遠い町」川上弘美著、新潮社、2008.11.20
    「これでよろしくて?」川上弘美著、中央公論新社、2009.09.25
    「パスタマシーンの幽霊」川上弘美著、マガジンハウス、2010.04.22
    「機嫌のいい犬-句集-」川上弘美著、集英社、2010.10.30
    「ナマズの幸運。東京日記3」川上弘美著・門馬則雄絵、平凡社、2011.01.25
    「天頂より少し下って」川上弘美著、小学館、2011.05.28
    「神様2011」川上弘美著、講談社、2011.09.20
    (2013年4月22日・記)
    内容紹介 amazon
    最初から、こんなふうなものだと知っていた気がする――性のふしぎを描く瑞々しく荒々しい作品集。なつかしいのは、男たちの弱さだ――。(ignis)「それ」は、人生のさまざまな瞬間にあらわれては「子供」を誘い、きらきらと光った――。(mundus)年齢も男女の別も超越し、生と死の交差する場所からあらわれては消えてゆく何ものか。いやおうなく人を動かす性の力をさまざまなスタイルで描きあげた魅惑的な作品集。全五篇。

  • 五つの短編集。「aqua」「terra」「aer」は普通の小説っぽくて読みやすいけど、「ignis」は伊勢物語の昔男ありけりの現代版風、最後の「mundus」は抽象的で難しい。性は生と死のきっかけなのか目的なのか結果なのか?それはどこからやってきて、どこに行ってしまうのか??

  • 鈍行で秋田に行くterraが好みです。

  • なかなか官能的でした♪

  • いずれも女性からの視点で、男女を中心とする人間関係の営みを官能的なタッチでとらえている。

    そのベースとなっているのは女性特有の感性、というよりは「身体感覚」だと思う。いずれも私のような男性では思いもつかない肉体内部の疼きであるとか、産みの感覚とかエロスの根源とでも言うべき生理的感覚の表現がその独特な言葉の選び方もあって実に巧い。

    この世のこととは思えぬことを書くのは川上さんの得意技。奇想と幻覚に満ちた物語が次から次へと展開されていく、、、

    ただ、一方ではこの身体感覚に基づいて書かれたことを感覚的に受け入れられない男性たる自分もいる、、、

  • 最後の一篇がまったく意味不明で、読んでて疲れちゃった。
    そこまではわりと良かったんだけどな。

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著者プロフィール

作家。
1958年東京生まれ。1994年「神様」で第1回パスカル短編文学新人賞を受賞しデビュー。この文学賞に応募したパソコン通信仲間に誘われ俳句をつくり始める。句集に『機嫌のいい犬』。小説「蛇を踏む」(芥川賞)『神様』(紫式部文学賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞)『溺レる』(伊藤整文学賞、女流文学賞)『センセイの鞄』(谷崎潤一郎賞)『真鶴』(芸術選奨文部科学大臣賞)『水声』(読売文学賞)『大きな鳥にさらわれないよう』(泉鏡花賞)などのほか著書多数。2019年紫綬褒章を受章。

「2020年 『わたしの好きな季語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上弘美の作品

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