- Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
- / ISBN・EAN: 9784104456093
作品紹介・あらすじ
震災後二年、福島に住む僧侶作家が描く、魂の叫びと遍歴。震災を深く静かに物語る、短篇集。「ホーシャノー、持ってきていいって、本当かね」汚染土や葉を積み上げた仮置場はやがて、瑠璃色の光を放つ山になった(光の山)。三歳の小太郎は、DNA鑑定を受けに警察署に来ていた。身元不明の遺体の中に父はいるのだろうか(小太郎の義憤)。過酷な運命を必死に生きる人々のリアルな姿と心情を結晶させた六つの短篇。
感想・レビュー・書評
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「震災後二年、福島に住む僧侶作家が描く、魂の叫びと遍歴。震災を深く静かに物語る、短篇集。「ホーシャノー、持ってきていいって、本当かね」汚染土や葉を積み上げた仮置場はやがて、瑠璃色の光を放つ山になった(光の山)。三歳の小太郎は、DNA鑑定を受けに警察署に来ていた。身元不明の遺体の中に父はいるのだろうか(小太郎の義憤)。過酷な運命を必死に生きる人々のリアルな姿と心情を結晶させた六つの短篇」
「近未来の視点から国と社会を風刺した「光の山」には、作者の怒りとそれを超えた祈りがある。失われた命の懸命に生きる命と、両方を思い、こうべを垂れる。そんな7編である。」
(『いつか君に出会ってほしい本』田村文著 の紹介より)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人は自分の置かれた状況でしか考えることが出来ない、だからそれが悪ければ未来は「まだこぬ」であるし希望は「のぞみまれ」になってしまうのだ。
そんななか蚊帳の内からどんな言葉が掛けられるのか、少なくとも私の器では心を寄り添わせることしか術を持たない。所謂震災文学の類いに馴染めない理由はたぶんそこにあると思う。
しかしこの短編集はどうだろう、悟りを開いた和尚の眼は現実をこう見るのか、そして明日への糸口をこう開いていくのかと凡夫を平伏させる凄味がある。
人を想い寄り添うこと…それはまさにこういうことなのだろう。
表題作の「光の山」…この異色さは画竜点睛なのか蛇足なのかはわからない。しかしやり場のないクソッタレな気持ちを伝えるだけでも存在の価値はある -
<閲覧スタッフより>
福島に暮らし、被災の当事者でもあった著者が震災間もない現地の姿を6編の物語に紡いでいる。ひとつひとつのエピソードに込められたその眼差しと言葉には、フィクションとは言い難いほどの生々しい実直さと透明感が共存しています。
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所在記号:913.6||ケン
資料番号:10225388
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20140407読了
福島出身、僧侶。東日本大震災に関する6つの短編。「あなたの影をひきずりながら」「蟋蟀」「小太郎の義憤」「アメンボ」「拝み虫」「光の山」。●小説ではあっても、なまなましい感情が詰まっている。震災を経験していない身としては、あの日のことを風化させないよう、毎年3月11日にこの本を開くと追悼につながるような気がする。忘れないために。 -
福島県三春町の臨済宗福聚寺の長男として生まれ、2001年に『中陰の花』で芥川賞を受賞した著者が、東日本大震災を描いた短編集。著者は震災時も現在も同寺の住職を務めており、被災者の一人だ。
著者と同じ僧侶を主人公に、大津波を体験した後で水が恐怖になり、お茶すら飲めなくなった女性に一縷の希望を見る『蟋蟀』、身元不明者の中から夫を探し出すために、3歳の息子とDNAを採取する主人公を描く『小太郎の義憤』、原発の事故で生活を壊された一組の夫婦の一日を追う『アメンボ』など、そこに住んでいる人にしかわからない出来事や感情を「切実な現実の推移の中で綴った」(あとがき)。
表題作であり、結尾の作品でもある『光の山』は1つだけ傾向の違う作品だ。安易な希望を描くことを忌避する著者が、それでも最後に”光”を見なければならないほど、先の震災が悲惨だったということだろうか。 -
非被災者が「絆」と騒ぐのが虚しく思えるほど、被災当事者の分断が見事に描かれているのは、福島在住の作家ならではと感じる。「あとがき」にもあるようにジャーナリスティックな作品・文章も結構あり、放射能には楽観的な著者ならではの視点が随所に挿入されている。ここは読み手によって評価がわかれるところだろう。
玄侑本は初めてだったのだが、ちょっと気になったのは人称の使い方。殆どは神視点で書かれているのだが、一人称っぽく感じる部分が多々あり、少々わかり難く、読み難さも感じた。これがこの人の文体なのだろうか?芥川賞作家にテクニカルな事言うのも恐れ多いのだが。 -
あまりにも色濃く迫ってくるので、小説だと気付かなかった。
被災地の方々の声に耳を傾けた玄侑さんがそのお話を元に書かれたものだと思い込んでいた。
忘れない。
能動的に寄り添う。
子どもにもその事を説く。 -
新聞で見かけてから読んでみたいと思っていた一冊。
一気読み。
書評で見た
『被災地以外の地域において、さまざまな思いが風化しようとしている、いまだからこそ。』
の言葉。
複雑な想い、です。