雪沼とその周辺

  • 369人登録
  • 3.73評価
    • (57)
    • (45)
    • (107)
    • (4)
    • (0)
  • 74レビュー
著者 : 堀江敏幸
  • 新潮社 (2003年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104471027

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

雪沼とその周辺の感想・レビュー・書評

  • 谷崎潤一郎賞、川端康成賞受賞作品。初堀江さん。雪があるうちにと思って、季節に合わせて手にしてみた。うまく言えないが何かの気配を感じる作品。じんわりと優しい。

    スタンス・ドット イラクサの庭 河岸段丘 送り火 レンガを積む ピラニア 緩斜面の7章短編連作。ゆるやかにつながっている物語が心にしみる。

    目立った出来事も事件もないオチもないし盛り上がりもない。雪野のように真っ白で平坦な雰囲気。 便利になり何でも手に入りやすくなった世の中。なのだけど物語の中の雪沼周辺に住んでいる人々は、そこだけ時間が止まったようでひっそりと暮らす日々を送っている。静謐。

    小物も一昔前のものが多く登場し懐かしく胸の奥ががきりっと痛んだ。ノスタルジック。ぼんやりとした死があって人生を少しずつ閉じてゆくような寂しさ。ここまで来てしまったけど、これでよかったのか自分…と自身に問いかけながら読了。(特に「スタンス・ドット」この章がとてもいい…)

    他、「河岸段丘」と「送り火」がとても心に響いた。あまりに静かすぎて物語の中の人々は死者や魂だけの実体のない状態なのでは…とか思うほど、水の底というか雪の中的な作品でした。毎晩少しずつ読み1章終えるごとに、ほぉ…と息を出して余韻を味わい、それから寝るのが心地よかった。堀江さん他も読んでみたい。

  • タイトル通り、雪沼とその周辺の話。短編集だが、同じ街を舞台にしているから、さりげなく繋がっていたりする。見過ごしてしまいそうなほどさりげなく。

    人生というものは、このページ数でも書き表すことができるのかと感嘆した。その人の生き様が濃縮されて描かれた物語ばかりで、情け深く、味わい深い。いずれもラストに幻のような瞬間があるところが、かえって人間的に映る。
    とりわけ「送り火」が好きだった。レコードからCDへの移り変わりが描かれた「レンガを積む」も面白かった。

    この人の本は読みにくいと思い込んでいたのはなぜだろう。柔らかな文章が、とても好みだ。

  • 資料番号:010606754
    請求記号:F/ホリエ

    『仙台市荒浜地区の図書館員による、あのとき役に立った本』
    ※今回、ゆうき図書館3月のイベント棚では、仙台市荒浜区で被災した図書館員の方に、ご協力頂いています。

  • 湿り気を帯びた文章で描かれた、地方に暮らす人々の姿を浮かび上がらせる物語。織物職人が機織り機で糸を織り込み複雑な模様を形作るように、堀江敏幸という作家は細やかでしっとりとしたその文章で物語と登場人物の人生を丁寧に紡ぎ出している。佳作。

  • 別に、これと言ったドラマチックな展開もなく、刺激的な展開もなく、しかし読むのを止められない。そんな作品です。著者の筆力に脱帽です。また、読み返したいと思わせます。他の著作も読んでみたいです。

  • 再読。じっくり落ち着いて読みたい本です。自分の”スタンスドット”をあらためて考えさせられました。

  • 堀江敏幸さんの文体に憧れています。川端康成文学賞を受賞した『スタンド・ドット』を含む、最新連作短編集。小説ですが、評論のような、エッセイのような、一種名状し難い、うねうねと続く文、いつの間にか物語りに引き込まれ、私は電車を乗り過ごす...そんな文章を書きたいのですが、現実はなかなか厳しい。

  • 「雪沼」という響きの通り、ここで語られるのは
    とても静かな7つのお話です。
    時代から取り残されたような小さな町。そこに住む人々もまた
    ずっと大切にしてきた旧式の道具や機械とともに日々を送っています。
    今日で最後の営業日となるボウリング場の店主。
    理想の音を求めてスピーカーの下にレンガを積むレコード店主。
    20年以上も旧い裁断機を大事に使い続ける製函工場のオーナー・・・
    ドラマチックな出来事も、辛い出来事も、ここでは声高に語られることはありません。
    でも、どのお話に出てくる人の感情も、記憶も、読みすすめるうちにゆっくりと心の中に残り、読み終えた時には、たとえ幸せばかりではないお話だとしてもおだやかな気持ちになります。
    降る雪は冷たくても、つもるとあたたかい、そんな感じににているかもしれません。
    私たちの生活の中に、日々大声で割って入ってくる効率ばかりを求める騒がしい言葉に疲れたり不安になったりしたら、ぜひこの本を手に取ってみて下さい。
    ここには、世界がどんなに変わっても、ずっと変わらず人とも、物とも心を通わせながら誠実に暮らす人たちがいて、いつでもあなたを迎えてくれるはずです。それは現実から「逃げる」ことではなくて、もう一度自分にとって大切なものを確かめるような時間だと思うのです。(N.M)

  • 誰にでも生活の中に大切な一場面があって、そこだけ見ると地味だけれど、その人がそれまでどういう風に生きてきたかを併せて見ると、ちょっと感動してしまう話になったりする。
    一場面一場面を大切に噛み締めて暮らしてみようかな。すぐに飽きて忘れるかもしれないけど、思い立った今だけでも。

  • 同じ町で、ほぼ同じ時期に起こる、ある人たちのお話7編。一人ひとりの人生って、当たり前だけど、主役は全部違う。テレビに取り上げられなくても、どちらかというと不幸な人だと思われようとも、全員が自身の毎日を生きているわけで。
    そんなこんなを文章から感じられるのが、とても素晴らしく、楽しくなる時間だった。

  • 雪沼という土地の周辺にまつわる7つの短篇集。
    堀江敏幸の物語の主人公たちは、幸せや悲しみや怒りを経て、生活している。感情の起伏を抑え社会と共に過ごしている。いつまでも感情を露わにすると、心が持たない。だから、なかった振りをしながら、やさしく生きている。
    しかし、抑える気持ちは滲み出る。そんな気持ちを表現されていると感じます。
    『スタンス・ドット』のボーリングのピンの音や『河岸段丘』の傾き加減は好きでした。

  • いい場所を見つけたな、と思った。それまでもパリ郊外や東京の中心をすこし外れた町と、そこに住む人々をめぐる物語とも、エッセイともつかぬ独特の小説を発表してきた作家が、新しく見つけたのは、どこか北国にある雪沼とよばれる小さな山あいの町である。静かな雨の音や、ひんやりとした大気のにおいにつつまれ、雪沼に住む人たちが、互いにそれとは知らず、かかわりとも言えないほどの細い糸でつながりながら、それぞれの人生を生きている。

    巨大な駐車場もきらびやかなホテルもないが、「雪質のいいゲレンデで、静かに、ぞんぶんに滑りたいその筋の人たちには人気の高いスキー場」を持つ、その町には、いかにもそこに住むのがふさわしい住人たちがいる。静かな声で、ゆっくりと話す、自分の人生であるはずなのに、どこかしら無駄な力のぬけた、ささやかながらたしかな日々の空気を呼吸する人々。人生に見合う応分の哀しみと孤独を我が身に引き受けながら、愚痴もこぼさず、担ったものの重さにつぶされもせず、毎日を真摯に生きている人たち。

    作家その人を彷彿させる人物が、町の中を歩きながら、友人や出会った人とのふれあいの中で起きる事件とも言えないほどのできごとを淡々と綴るのが、これまでのこの作家の方法だった。それは、それで堀江敏幸という作家の持ち味でもあったが、小説という旧来の枠組みからは意識的にはみ出したような、よくいえば方法論的な試行とも見える反面、どこか正面切って勝負することから逃げているようなところがないでもなかった。

    今回の『雪沼とその周辺』は、ひとつひとつの作品はそれぞれが、独立した短編小説でありながら、連続して読むと雪沼という町のクロニクルとしても読める仕掛けになっている。これまで、話者の方に置かれていた作家の関心が、登場人物の方に一歩近づいたのである。それは、随筆家と小説家のあわいという曖昧な境界上に位置することをあえて意識的に選びとっていたように見える堀江の、短編小説家への名乗りととればいいのだろうか。それとも、一時的な試みにすぎないのだろうか。

    登場人物たちは、善人ばかりだが、主人公になりうる資格を持つのは、どこか内省的であからさまに自分を語りたがらない人々である。難聴であったり、背が低かったり、不器用であったりと、大きな不幸とまではいえないが、本人にとっては意識から去らない程度のコンプレックスを背負っている人も多い。そして、それぞれが、自分の生きる場所については小さなこだわりを持っている。

    『スタンス・ドット』で、閉店が決まったボウリング場のオーナーがこだわるのは、「ストライクのときすばらしい和音を響かせるかわりにかすかな濁りとひずみがまじる」ブランズウィック社製の最初期モデルであるし、『レンガを積む』のレコード店の経営者がこだわるのは、古い家具調ステレオの再生機。『緩斜面』の和凧といい、『送り火』の灯油ランプと、この作家ならではの修飾語を多用した息の長い情景描写に堪える、聊か古風な趣をたたえる小道具選びは、ますます渋みを加えてきている。
      
    フランス語の本の話題が出るのは『イラクサの庭』一編であることからもわかるように、給費留学生当時の思い出を生かして書いていた初期とくらべると、より地に足の着いた生活が表現されるようになってきている。作家の成長ぶりが窺えて、ファンとしては次回作が楽しみな半面、今回は、新鮮な風景として目に映じた雪沼とその周辺の人物スケッチだが、パリ近郊の乾いた空気と合理的な気質の中で、日本人の主人公が感じる異和のようなものを主題に据えたときに生まれる著者独特の日本離れした空気のようなものを、日本の湿潤な風土の中で、今後どのようにして保ち得るのかが、老婆心ながら心配になったりもしたのである。

  •  小さなレコード店や製函工場で、時代の波に取り残されてなお、使い慣れた旧式の道具たちと血を通わすようにして生きる雪沼の人々。廃業の日、無人のボウリング場にひょっこり現れたカップルに、最後のゲームをプレゼントしようと思い立つ店主を描く佳品「スタンス・ドット」をはじめ、山あいの寂びた町の日々の移ろいのなかに、それぞれの人生の甘苦を映しだす情緒豊かな短編集。

     他人にとって、うちっていう存在は例えば何となく手に取って、すぐ棚に戻されるスプーンのようなもので、うちとって他人は、水彩で描かれた森にすこしだけ混じる水色のようなものでしかないと思ってたんだけど、他人っていうものの存在が懐くものが個々にあって、読むとそれを思い出すことができる。猥雑ななかで生きているけど、そのなかの他人っていうものはパーツではなくて、美しいとかそうでないとか、勝手に評価できるものではないと、改めて思うくらいに、それぞれ全く異なる生き方をして、全く異なるやさしさを持っている

     生きたすべての時間を絵だとして、他人というのは、ひととの関わりというのは、それぞれに色を持っている。それは幾つも混ざり合ってたくさんのうつくしい色、時にはそうでない色をつくる。それで、描いていく。最期、その絵を自分らしいと満足できればいいなあと思う。

     読みながらふとそんなことを思えるようなやさしさがあった

  • 雪沼(という地名?)と、その周辺の一見するととるに足らない、でもやわらかくあたたかな出来事を紡いだ連作中編集。
    眠りに落ちる寸前を、この物語と共有する日々は、しあわせだとおもう。
    すべてすきだけれど、特に挙げるならば川端康成文学賞受賞の『スタンス・ドット』はやはり秀逸。
    センター試験にも出題された『送り火』もいい。

  • 忘れ去られたような静かな町で静かに暮らす人たち。
    誰もが寂しさを胸に、でも幸せに向かって生きている。
    自分の今までと、これからの生き方について
    ふと考えさせられた。

  • いい本ですな
    文章力、構成力も非凡です
    が、ひねくれ者の小生には、やや不満
    4.0

  • 静かな一日の終わりにぴったりな本です。
    堀江氏の文章力はすごいなあ。
    この小説の全体のように、大きな出来事がなくても、自分を見つめて、他者とも関わりながら、前向きに、そんな風に一生を過ごしたいものです。

  • 「雪沼」という、小さな町を舞台にした短編集。
    衝撃的なお話なんかはないのだけれど、
    読むと心がほわっとなるような、そんなお話がたくさん。
    それぞれのお話の中で、登場人物たちが少しずつ関わりを持っているのもおもしろい。

    -----------------------------------------

    入試に向けて過去問をやっていた時に、
    「送り火」の一部が小説の問題として出題されていました。
    不思議な雰囲気のお話だなぁと思いつつ、
    肝心の問題そっちのけでのめり込んで読んでしまいました。
    受験も終わったので、気になっていた全貌を知るために図書館へ!

    「送り火」についてですが、
    問題文だった時には読めなかった、前半のランプのくだりと、
    後半の念のあたりが読めてとても満足でした!
    途中の部分を読むのは2度目になりましたが、
    抱負のところはやっぱりじーんときました。

    登場人物にはすべて「~さん」と敬称がつけられています。
    このような書き方の小説はあまり読んだ事がなく、
    普段読む、登場人物が呼び捨てになっている小説とは
    違ったぬくもりが感じられて、とてもいい読み心地でした。
    他に、「イラクサの庭」も心に残りました。
    先生と店名、遺言… 読み終わった後、切なさと納得が残りました

  • 雪沼という山間のまちと、その周辺で生活する人々を書いた短編集。冬の静かな日に暖炉にあたりながら、温めたブランデーをかたむけながら読めたら素敵だなあという印象。というのもあって、全体的に好きではなかった。なんだかさみしくなった。「送り火」だけは好き。他の短編はどれも、もう少し後に読みたかったなあと思う。登場人物の年齢層がみんな高いからかもしれない。

  • 山あいの町を舞台に時代に流されない、というか時代に乗り遅れたような人々のそれぞれの現在と昔の生き様がさらりと描かれています。すごい事件は起きないけれど、人生のちょっとした出来事や出会いについて考えさせられました。連作短編集ゆえに別の短編の登場人物が他の短編にちらりと出てきたりするのが少し楽しいです。

  • 堀江敏幸の入門としてもよい、優れた短編集。
    最近はセンター試験なんかでも出題されるんだとか。
    いままさにバリバリ書いている人の小説がセンター試験とかに出てくるとなんとなく嬉しいのは私だけだろうか。

  • 前にダ・ヴィンチでプラチナ本of the yearに選ばれていたので期待して読んだが・・・。
    うーん、地味。
    もう少し年をとったらこの良さがわかるような気もする。

  • 古くからの知り合いの話を聞いているような
    親しみとあたたかさを感じる短編集。
    それぞれの暮らし、それぞれの人生。
    淡くて心地いい、だから印象も、少し薄い。
    どちらかといえば、長編で読みたい文章かもしれない。

    じんわり。

  • 堀江さんいいですねえっ第1話のスタンス・ドットから良かったっ次も是非読みたいっ

  • 古びた小さなボウリング場の最後の営業日。
    やってきた客はトイレを借りに来た若いカップルだけだった。
    最後の日だからと2人に1ゲームプレゼントし、
    それを眺めながら彼はハイオクさんのピンの音を思い出す。
    「スタンス・ドット」他7編
    装丁:新潮社装丁室 装画:清宮質文

    タイトルにあるように同じ地域の人々を描いた短編集。
    古いものを大切にして暮らす静かな生活が浮かぶ。
    「送り火」の40個ものランプが燈ったところとか
    「レンガを積む」のレコードのジャケットを盗み見するところとか
    ものすごくいいなぁと思う。

全74件中 1 - 25件を表示

雪沼とその周辺に関連する談話室の質問

雪沼とその周辺を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

雪沼とその周辺の文庫

ツイートする