ソラシド

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著者 : 吉田篤弘
  • 新潮社 (2015年1月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104491049

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ソラシドの感想・レビュー・書評

  • すごくいい。
    すごく好き。
    出来ることなら★を100こ並べたい。

    ものすごく優しいお話。
    でも、ちょっと寂しい。
    そして、じんわりと温かい。

    「おれ」は探し物をしている。
    いや、「おれ」だけじゃなく、みんなが探し物をしている。
    探し始めた時には自分が何を探しているのか正確なところは分からない。
    だんだんと見えてくる。
    そうすると最初にイメージしていたものとは違うものだったことが分かってくる。
    いよいよ探し当てたと思い、「そうだったのか」と納得しようとすると、また新たな探し物が始まっている。
    気付かないうちに。

    「この物語はこういう物語です。」と言い切れません。
    ただ、とても美しい物語です。
    とても美しいものが描かれていると思います。

  • 雨の様に降り注ぐ
    幾千もの言葉を
    日々、ぼんやり目にしつつも
    思わず(はっ!)と、手で受け止めたくなる様な
    キラリに出会う事がある。

    それは自分だけに光るキラリ。

    音楽好きの彼が
    パラパラ捲っていた雑誌に掲載されていた
    ほんの小さなコラム。
    その記事がキラリと光った。

    (誰?聞いた事もないアーティスト…)
    それがソラシド。
    どうやら女性2人のデュオらしい。

    彼女達のコメントや弾いている楽器も気になる…

    早速NETで調べてはみたものの、
    彼女達は派手な活動をしていなかったらしく、
    全く手がかりがつかめない。
    でも、
    何故か追っかけずにはいられないし、
    そうせざるを得ない事情も出来た。

    それから
    彼がソラシドの足取りを巡る物語は
    まるで何千枚ものレコードを並べ(勝手に思い描いております。)
    一枚、一枚、のんびり視聴でもしている旅の様な展開となった。

    活字を追っているだけなのに、
    頭の中ではゆるいメロディーが勝手に流れ出す。
    ザ、ザザザ…時折味のある雑音まで混じりながら。

    なかなか出会えないソラシドだが、
    キラリ光った時点で、もう会っていたのではないだろうか…

  • 吉田さんの本を読むといつも静かな気持ちになる。まわりの空気が濃くなって、優しくなる感じがする。それがすごく好き。
    大事なものは意識しなくても側にあって、でもそれに気付かないで探してしまうものなのかもしれない。
    どんな話なの?と聞かれたらうまく説明できないけど、素敵な本だよと答えられると思う。

  • 耳元で心地いい音楽を聴いた後のような、すごく素敵な気持ちで読み終えた本でした。
    全体的に落ち着いたトーンで、コーヒーの茶色から始まり、ニューヨークのグレイ、冬の吐息の白、と浮かび上がるシーンが美しくて、なんとも言えない不思議な世界に迷い込んだようです。

    過去と現在、現実と空想が入り混じった世界は、映像がとにもかくにも美しい。古着屋とバー、世界の果てのような白い荒野、ダブル・ベース「エレファント」、1つ1つのシーンがにくいくらいに素敵で、とにかくうっとり。これは、映画化してほしい。
    美しいシーンも然ることながら、本書に登場する音楽を聴いてみたい。

    音楽には疎い私ですが、とある場面では鳥肌が立つくらい全身ぞわっとしました。読み進めるうちに、本当に耳元に音楽が聴こえる気がしてきます。

    冬を切り取ったような冷たさと一緒に、じんわりとした温かさが同時に楽しめることも魅力的だし、音楽で震える空気感も病みつきになります。

    装丁もすごく素敵で何度も眺めてしまいます。冬に読むのにお勧めな1冊でした。

  • もう まだるっこしいなぁ
    と 思うか
    いいねぇ このまったり感
    と 思えるか

    もちろん 後者になれる人は
    独特の浮遊感が
    なかなか たまりませんでしょうねぇ

    小説の筋というよりは
    そこに描かれている雰囲気を楽しむ
    そこが
    この 小説を楽しむコツでしょうか

    それにしても
    表紙の レコード は
    どんな 音楽 なのだろう と
    ずいぶん 気になってしまいます

  • 意見は言葉で出来ているけど、

    思いは言葉になりにくいよね。

    ***********************

    前半は「これずっとこんな感じなのかな?(まあいいけど)」と思って読んでいたら、主人公によるソラシドの物語が書かれ出して、がらりと変わった。特にキーとなる双子の話が出てきたところから、胸がきゅーっとなった。きゅーっと。


    ”ひとたび存在したものは、誰かの中で生き続ける――”

    わたしには、妹がいるけど双子じゃなくて、妹が困っていたら助けてあげたいって思うけど、きっと双子の兄弟っていうのはそれ以上にお互いを思っているんだと思う。だって、自分の分身、片割れ、だもんね。想像でしか気持ちを汲んであげることができないけれど、自分の分身が消えるということは、自分の中に戻ってくるってことで、それは消失ではないんだと思う。なくなってしまったものの不在を嘆くのではなくて、自分の中に存在させる。ちょっと眠るからあとは頼んだよ、起こさないでくれよ、と。


    ”「いえ、私のことなどもう忘れてください」と、彼らが望んだとしても、彼ら自信、この世から消え去ることは出来ない。”

    わたしも誰かの、そのような存在になれたらいいなと思った。

  • 昔のものは最近はネットでなんでも検索できるが、もしそれがマイナーすぎてネットにも引っかからなかったら自分で探すしかない。
    大変だけど、ネット検索よりもよりリアルに当時の空気に触れられるような気がする。

  • 人は何かを探す過程で新たな物を知ったり、人と巡りあったり、過去の自分に再会したり。思いがけない出会いが生涯忘れられないものになったりするんだろう。

  • 時代と、街と、音楽、そして言葉。

    独特の透明な空気感。

    この人の作品世界には、言葉遊びのようなスタイリッシュな文体によって醸し出されるあざとさと、どこか高踏派的な空気感が漂っている。そして、行間ににじむほのかな哀愁、小粋なエスプリの快さ、ノスタルジアに彩られた世界の意味ありげでポエティカルな浮遊感を味わうために読むものであり、ブンガクって感じじゃない、大人の遊びゴコロ、バーでたわいなくひとときを楽しむ会話にも似たディレッタンティズムだ、と以前断じたことがある。

    が、様々な手法の実験的作品を重ねてゆくような氏の作風の変遷に触れ、そしてこの作品に至って、「吉田篤弘、文学!」という当初は思いもよらなかった考えが私の中でいきなりかたちになった、確立された気がした。それはなにか心の中で劇的な響きを伴った新鮮な驚きであった。そして、気づいた瞬間、その萌芽としての系譜が過去作品の中に浮かび上がり、それ以前の作品をもすべて含めて一連の作品群は新たな見地からの評価の可能性を得るものとなる。

    そして文学的なるものとは私にとって嗜好に関する言説でなく思考に関する論考としての批評に値するものをいう。

    スタイルへの愛、時代の持つ空気への愛着、風景への思い、言葉遊びへの執着。このような思い入れたちは一体どこから来ているのか。何かの「思い」は、一見どんなに通俗的で浅はかなものとして思えたとしても、突き詰めればそれは己と世界との関わりを模索する根本、すべての知の源泉のところへとたどり着く。すべても道はローマに通ず。

    サブカル、娯楽、アクション、ラブコメディ、エログロ、なんでもだ。
    およそ人間が生み出し嗜好する物語ならどの道も等しく至高のところへとたどり着く可能性を持っている。職業に貴賎がないならば文芸ジャンルにも貴賎はない。もともとは文芸そのものが最も賤なるものと最も聖なるものとしての両極から発生してきた。そのひとつの分野の上澄み部分を純文学、芸術として崇敬の対象とし、沈殿部分をことさらに俗として貶める対象とするのは、権力がその両極の」「外部」としての異形の力を持つ文芸を無力化し無害なものとするために放った支配のための物語戦略なのだ。

    芸能の系譜と同じだ。原始の時代神々にささげられたものが、文明の進化発展の中で神事の高貴な舞から中世の被差別民である河原者にまで分岐しそして意図的に分断された。両極からこの世の制度を枠どる。その外部から守りそこに繋がるための防壁でありメディアである。恐ろしい異形、未知なる力、畏敬と差別と侮蔑の対象、アンタッチャブル。

    …で、この人のこの作品でのモチーフである。とても興味深いと思ったもの。

    冒頭で述べたように、いくつものモチーフが絡み合っている。だがとにかく全編を通じて瀰漫しているこのほのかな哀愁、ディレッタンティズム、異界幻想やシニカルな諧謔の混交した作品世界を成立させている要素、それらのすべての共通項はただひとつだ。

    失われたもの、過去へのノスタルジア。

    だがそのノスタルジアは強い執着と偏愛の対象でありながらも決して「ああ若いころ、あのころ、昔は楽しかった。」という楽しい記憶というのではない。寧ろ陰惨で孤独な放浪と迷い惑い挫折のどす黒くにごって先の見えないさえない日々の思い出である。
    「岸に戻りたいのに、戻らない自分にうんざりし、ただただ安息を求めていた。(中略)(おれは救われなかった。)」

    …が、その卑屈な自虐の感情と同時に、それと結びついたままのジレンマに似たねじれをもちながらも、強い「そのような己」への執着、偏愛と矜持、いわばそのように生きてきたことへ肯定、誇りのようなもの、それ以外にはありえなかったのだという後悔のなさ、…いうなれば「矜持」を語っている。まずい珈琲を飲みつづけ、日銭を稼ぎ... 続きを読む

  • ぐわしと一気に世界に引き込まれる感はなんなんだろうなぁと毎回思う。強引なところは全くなく。
    途中ちょっと中だるみ感があったけど,終盤の展開にはやはり脱帽。

  • もう一度、The Beatlesの音楽が聴ける喫茶店で読み直したい。

  • かつて奏でられた音を求める物書きの話。
    読後に、文章で読んだ光景が自分の記憶だったように錯覚する、そんな一冊。
    音と当時の空気を閉じ込めた一枚のレコードは、耳にした人に影響を与え、文章として記述され、読み手は音を求める。
    なんて穏やかで、心地良いループだろう。

  • 「新潮」の連載でちょいちょい読んでいたのだが、
    これは一冊の本の方が楽しめた。

    相変わらずの心地よい空気感のある作品。
    ただ、「ソラシド」という名前しかわからないミュージシャンを探し求める、とゆーストーリー上、
    ちょっとミステリーチックでもあり、いい意味でずっと緊張感、みたいなものが作品を通してある。
    彼女たちが今どうなっているのか、という疑問を
    登場人物たちと同じように、持ちながら読み進める。

    妹との関係にどーもラブっぽさを感じてしまったのだが、
    よく考えたら血、繋がってるんだよなー。

    冬の音楽。
    聴きたいです。

  • 読み終えるのに時間がかかった。不思議な印象。

  • だいすきな本になった。

    吉田さんの本は、読んでいてにやついてしまうことがある。

    ノート。1986年。ダブルベース。ソラシドの2人。音楽。言葉。レコード。コーヒー。

    今のこの気持ちをうまく言葉にできない。
    何度でも読みたい。

  • 1986年。まずいコーヒーを飲み続け、給与の大半はレコードを買い集めることに費やし、腹違いの妹が生まれた年を、中年になった男が改めて追いなおす物語だ。
    ソラシドというユニット名の音源の残っていない女性デュオに惹かれ、導かれるうちに浮かび上がってくる過去と現在を美しく描写している。
    この人の作品って出てくるものは何気ないアイテムなのに(ピザの箱、割箸で食べるカレー)なんでだか洒落てるんだよなぁ。

  • ん〜。
    何だったんでしょ。

  • 読まなくても良かった。なんだかな。
    なんだかなー。

  • もっとこの人の本を読んでみたいと思った。

  • レビューの評価がすごく高かったので読んでみたけど、繊細で感傷的すぎて私には合わないようです。半分くらいで挫折。ほぼ同じ時代を生きてきても、見えてたものが全然違うという不思議。

  • 「オレ」という一人称の篤弘さんはこれまで以上に気取りがなくて親しみやすい兄ぃなのです。
    1986年と今を行ったり来たりしながらまた素晴らしい音楽を聴かせてくれました。(実際。ネットなどで音楽を捜しながら聞いて読んで・・・)
    この本もまた大事な一冊となりました。

  • 主人公の過去を巡る旅が私も分かる年になっていた。

  • +++
    拍手もほとんどない中、その二人組は登場した。ひとりはギターを弾きながら歌い、もうひとりは黙々とダブル・ベースを弾きつづけた。二人とも男の子みたいな女の子だった。彼女たちの音楽は1986年のあの冬の中にあった――。消えゆくものと、冬の音楽をめぐる長篇小説。
    +++

    現代と1968年とをゆるやかに行き来するような物語である。「冬の音楽」を奏でたいと言ったカオルとソラのデュオ「ソラシド」を探す旅の物語でもあり、主人公と異母妹とその親たちをめぐる物語でもある。躰は現在に在るとしても、想いが流れるように遠く近くに旅をするような印象の一冊である。

  • 吉田さん独特のストーリーのテンポが大好き。いろいろと都合よく収束していくのでファンタジーだと割り切って読んでいる部分もあるけれど、こんな素敵なことがおこったらいいなって思える。一緒に「ソラシド」を探しているうちに、自分も遠い昔の何かを探してみたくなった。

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ソラシドの作品紹介

拍手もほとんどない中、その二人組は登場した。ひとりはギターを弾きながら歌い、もうひとりは黙々とダブル・ベースを弾きつづけた。二人とも男の子みたいな女の子だった。彼女たちの音楽は1986年のあの冬の中にあった――。消えゆくものと、冬の音楽をめぐる長篇小説。

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