天国旅行

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著者 : 三浦しをん
  • 新潮社 (2010年3月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104541065

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天国旅行の感想・レビュー・書評

  •  文庫化されたということで、読みました。しをんさんの作品は、相変わらず綺麗な文章だ。
     この作品のテーマは「心中」だ。短編7作品のうち、5作品はダークな作品だ。だけれども、怖いテーマなんて、何のその、しをんさんの綺麗な文章にどっぷりはまり込んで、ページをめくる手が止められませんでした。
     
     「遺言」がよかったです。何度か死に接近した夫婦が、それでも生きぬいて、そして、夫は最後、妻に遺言を残す。これがよかった。
    「きみが大切だ。好きだとか、愛してるだとかいった、甘っちょろい言葉を超え、きみの愚痴や小言も含めてきみを大切に思う」
     素敵だ。死ぬほど好きとか、殺したいほど愛してるとか、そんなおためごかしをいうよりも、そんな想いを超えて尚、芽生え続けるこの感情をこそ、私は、愛と、呼びたいなあ。と、「遺言」を読んで感じました。

     私たちは、どんなことがあったとしても、いったん生を受けたからには、生きねばならない。終わりの来るその日まで。これは、最後の章、SINKを読んで感じたことです。
     
     心中をテーマにした作品で、生きなきゃな、と感じさせられるとは、さすが、しをんさんだ。

     

  • そこへ行けば、救われるのか。富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、一家心中で生き残った男の記憶…光と望みを探る七つの傑作短篇。
    「BOOK」データベース より

    ◆短編集それぞれを一行で表現すると…
    言い訳できる人は、死なないものだ.
    変わる心と変わらない心、分かれ道はどこにあるのだろう.
    深い情と死者がつなぐ恋.
    妄想の恋、身の破滅.
    真実は闇の中.黒なのか白なのか.
    残る想い、一緒にいるがゆえのやるせない想い.
    消したい記憶、向き合う心.

  • 「死にいたる病」と言う、まだ見ぬ小説のタイトルがふっと浮かんだ。

    (確か、その病って『絶望』だったはず・・・。)

    死んだ事はまだ一度もないので、
    その時の苦しみ、は想像もつかないが、

    『絶望』の痛みは良くわかる。

    私のまわりだけ、
    (もう生きていたってしょうがないでしょ)と、強制的に灯りを消されてしまうような感じ。

    暗闇。

    また呼吸は続くのに、まだ鼓動してるのに、
    生きていくため必要な光を失う。

    そんな感じ。

    読書中感じていたこの胸苦しさは、
    「死」(心中をテーマにした短編集だそう)が覆いかぶさっているのではなく、
    『絶望』が支配している為であろう。


    読後は戻ってこられるものの、
    一瞬あの世を垣間見てきたかのような、
    そういう意味では
    『天国旅行』と言うタイトルはぴったりだな♪と、思った。

  • いろいろな形の「心中」がある。

    樹海で自殺しようとする中年男、駆け落ち同然で連れ添った夫婦、老女の初盆に現れた不思議な客、前世の記憶と現世が曖昧な女、いつの間にか幽霊になっていた彼女、一家心中の生き残り。

    「遺言」と「星くずドライブ」が好きでした。
    死に瀕したとき、人は取り繕わない素の自分に戻るというけれど、やっぱりその瞬間は怖いのかな。

  • 「心中」をテーマにした短編集。

    でも「心中」って言っても、
    それぞれの話は「生きたい」っていう気持ちや、誰かを大切に思う気持ちで出来ているように思いました。

    「心中したいほど愛してる」的な重い話もありましたが、
    基本的にはそんなに重いものではなくて、なんていうか・・・・。
    切なくて、哀しくて、でもどこか冷めていて、でもやっぱり愛おしいんです。

  • いろんなカタチの「心中」をテーマにした短編集。
    樹海に入って自殺しようとする男性、「遺言」というタイトルだけれど内容的には長年連れ添った妻への凄まじいラブレター、ファンタジーっぽい時間差心中、心中の王道物語ともいえる江戸、男女、前世の生まれ変わり、どれもこれもひねりが効いていて流石はしをんさんです。
    そして物語の最後に心中のテーマの中でも核心とも言える一家心中に辿りつく。
    この構成も見事でした。
    重苦しいものばかりでなく読み終わったあと生きていくことの大切さ誰かを愛していたいという思いを痛切に感じました。 
    行く(死ぬ)だけだと旅行と言わないんだよ、帰ってくる(生きていく)から旅行と言うんだよ。『天国旅行』というタイトルにしをんさんの思いが込められているような気がします。

  • #読了。短編集。
    心中がテーマ。自殺する地を求め富士の樹海に入り込んだ者、幼少時に一家心中から逃れ1人生き残った者、既に亡くなっているはずの人物との対話など、心中がテーマ。
    様々な角度から”心中”をとらえた作品が並び、読後感もずしりと重たく感じるもの、またほのぼのとするものなど色々。自分だったら・・・と考えさせられる作品もあった。なんとなく先が見えてしまうが、「初盆の客」が温かくよかった。

  • “本書は、「心中」を共通のテーマにした短編集である。”と、巻末にあり、あ、そうか、そうだ、と思い至った。

    心中というと…誠を見せるために命をかけて命を捨てる不条理、後がない息苦しさ、というイメージ。
    でも、何故だか、明るい暖かいストーリーもあったりするのが、しをん流ということかな。

    前者のマイベストは『君は夜』
    後者のマイベストは『初盆の客』。

  • “心中”。同じ瞬間に息をひきとることが、そんなに慰めをもたらすだろうか。どんな最期だとしても、人はこの世を去る時、限りなく独りだと思う。

  • 死と生、この世とあの世の狭間にあって浮き彫りにされる人間の心の闇と光を描いた短編集。生はそもそも、死の反対ではなく、内包しているものなのではないだろうか?読後、そういった意味で人生観が変わるような気がする。

  • 「新しい物語を紡いでもいいのかもしれない。これからも生きのびるために。記憶を消すことができないのなら、せめて都合良く改竄してみるのもいいかもしれない。」
    生きのびるために。

  • 心中をテーマにした短編集。
    『森の奥』青木ヶ原の樹海で首吊り自殺に失敗した中年男性と男の話。
    『遺言』年老いた小説家の妻への馴れ初めから始まるラブレター。
    『新盆の客』祖母の新盆に現れた祖母の孫と名乗る男の話。を語る孫娘の不思議語り。前夫と夫を等しく愛し、その縁は孫娘の縁に…☆
    『君は夜』幼い時から夢の中で夫婦として男に尽くす人生を生きる女。
    『炎』焼身自殺した高校の先輩の死因を、先輩の元恋人と探す凡庸な私は、彼女に使い捨ての都合のいい共犯者役にされただけたったんだろうか?
    『星くずドライブ』死んでからずっと僕の側にいる彼女。会話をして一緒に暮しながら彼女には触れられない…。閉塞感。
    『SINK』一家心中の生き残りの自分は、なんやかんやと心配してくれる幼馴染の友人の親切の中の哀れみや暗い偽善的満足感を感じている。あの日海に沈む車の中で、自分の足を掴んだ母親の手を振りほどいた。あの手はもし自分を押し出す為に掴まれたのだとしたら?

  • たまたま図書館で手に取った本なのだけど、
    なんともまあ、故人をお迎えするこの時期に
    ふさわしい本でした。
    この前に読んだ本が『ツナグ』でしたので、
    なにか不思議な巡り合わせを感じます。

    死は誰にでもいつか等しく訪れ、
    これは抗いようのない事実なのですが、
    「ああ、おもしろかった!」と
    自分も家族にも思ってもらえるような
    終わり方がいいな、とふと思いました。
    そういう気持ちにさせてくれた
    『遺書』が一番心にせまってきました。

    『初盆の客』『星くずドライブ』は
    『世にも奇妙な物語』でドラマ化できそう。
    どちらもこの時期に読むのにぴったりなお話。

  • 本のタイトルが独立していて、所謂「表題作」を冠した作品は無いのだね。
    ちょっと珍しい。
    テーマがテーマだから、暗い話が多い…暗いというか重い?湿気が高い?
    うまく言えないけど、それでも生きている。

  • 富士樹海のお話がものすごく好きです。互いが互いの愛の証明だというお話も好きです。長い年月をかけて一緒に死んでいくお話も好きです。生まれ変わっても一緒に居ようとするお話はちょっと好きになれません。若気の至りで暴走するお話も少し好きになれません。スピードを出し過ぎると追いていかれてしまうお話は少し好きです。一人取り残されたお話は好きです。「心中」ってあんまり良いイメージが無いものですが、『天国旅行』にはあなたの好みの「心中」が見つかるかも知れません。

  •  心中をテーマにした短編集だそう。
     人はどんな理由で死にたくなるのか、と興味をもった。
     心中という感じのするものがあまりなかった、のは、私がわからなかっただけだろうか。
     
     もっと重いものを想像していたけれど、その心の準備のおかげか
    そうでもなかった。

  • 短編集 7編収録
    共通テーマが「心中」なのですが、ドロドロ感はなく読後感もいいです。
    それぞれに趣が異なっているので、読んでいて飽きない。  
    「森の奥」「星くずドライブ」「SINK」が好み。 「星くずドライブ」はラストで号泣。軽いタッチでサラリと書かれているのに、切なくてたまらない。 
    「遺言」のラスト1行にはやられました。ここまでの静かに激しい愛情(激情)をアタシは知らない。

  • 「心中」をテーマにした短編集。どれも、死は軽く取り上げているののに、話は深い。人間、こんなに簡単に死なないで欲しいと思いながらも、話に引き込まれてしまう。

  • 「森の奥」「初盆の客」がよかった。

  • 心中をテーマにした短編集。にも関わらず、絶望的じゃない。始めの話で出てくる自殺をしようとするおじさんの心理描写がすっごくリアルに感じた。「遺言」は思わず泣いたわ…。

  • 初三浦しをん!とまでは言わないけど三浦しをんの本を読むと認識して初めて読んだのが本書でした。
    「心中」をテーマにした作品だと帯に書いていたのにかかわらずあとがきで知り、おお!と一寸感動してしまいました。
    七つの短編が収録されているのですが、どの作品も小刻み良く穏やかであったり激しかったり様々な面を含んでいて読んでいて心地よかったです。

    特に好きなのは「森の奥」、「遺言」、 「初盆の客」
    「森の奥」は自殺志願者の男と若者の出会い。序盤はよくある感じだなぁと思っていたら最後の、“父親・息子”というキーワードの訪れで予想外に感じが変わりました。もし、青木君が富山さんの子供だったら…だなんて考えると切なくて、おもしろい。

    「遺言」は男女が老夫婦になるまで、それから。夫がとっても良い味出していてグイグイ読めました!所々の夫のとぼけた感じとかがたまりませんね!個人的にノートの切れ端のやりとり(しりとり)の流れが「若さ」って感じがしてニヤニヤしました。この作品を読めただけで十分満足かなっと思います。

    「初盆の客」はうるっとしながら読了しました。解りやすい話しの流れなのにやはり、しをんさんの上手な描き方でお話を作っていたように思います。良かった。

    「炎」と「SINK」等はキャラ萌えと言っていいのか解らないんですけどそういうのもありました(*´`*)
    特に「SINK」は某と似通った雰囲気からこういう話しをしをんさんの筆致で読んでみたいと思わせるものでした。

    他作品も是非読んでみようと思えました。

  • 3月11日以来、小説を読んでいなかった。父が亡くなったときにも数ヶ月小説が読めなかった。
    ほかのエッセイや、映画、漫画なんかは大丈夫なのだが、
    小説は無理だった。


    小説は、そこに生きる世界にどっぷり浸かってしまう。
    そのあいだ、こちらの世界を忘れてしまう。


    そう考えると。


    私には読めなくなってしまうのだ。



    それでも、なぜだかふと、
    そのときはきた。


    図書館で、前触れなく、
    3歳児の息子を追いかけて
    溜め息をついたとき。


    三浦しをんの本が目に入って
    タイトルがよかった。


    読んだら短編集で
    不思議ば感触の話ばかりだった。


    抜群のところで終わる物語たち。
    まるで昔話みたいだった。


    ひさしぶりのわたしの小説旅行に
    うってつけだった。

  • 表紙の毒々しさに若干戸惑い、テーマが「心中」の短編集と知ってさらに引いたが、読んで良かったと思う。

    心中と言うとテレビで見聞きしたような絶望的な情景が思い浮かぶけど、そんな単純化された物語はこの本の中にはない。

    死のうとする人、生きようとする人、死なれてしまった人のそれぞれの心が丁寧に描かれていて共感出来てしまう話が意外にも多い。
    なんら特別なことではないとも思える。
    登場人物の誰もに共通しているのは思い込みが強いこと。
    一途とも言える。

    人間の心の核に迫った物語と言えるかもしれない。

  • 樹海で自殺に失敗した中年男性。そこで出会ったのは自衛隊隊員風の青木青年で・・・「森の奥」
    死んでしまえばよかったという「あの時」。省みつつ回想する私ときみのものがたり・・・「遺言」
    祖母の初盆にやってきた客が語る、不思議な祖母の過去の話・・・「初盆の客」
    幼いころから夢に見る、小平という名の男。彼はきっと、前世の恋人だったに違いない・・・「君は夜」
    何もかもパーフェクトな高校の先輩が焼身自殺した。先輩の彼女と共に、その理由を探る私だったが・・・「炎」
    死んでしまった恋人と一緒に走る、時速83キロを超せないドライブ・・・「星くずドライブ」
    細かな泡が立ち上っていく。そんな夢を見る、一家心中で生き残った男の話・・・「SINK」

    「森の奥」「初盆の客」「SINK」がよかったな。
    特に「SINK」のラスト1ページは涙なくして読めない。
    たすけてと呼べば応えるもののいる、信頼と希望に満ちた物語を、本当は誰もが求めているのかもしれない。

  • 三浦しをんさんの「天国旅行」です。
    『心中』を共通のテーマにした短編集と書いてあります。全部がそうではない気がしますが・・・・。7個のストーリーです。
    タイトルを見たときには、自殺しかけた人が死に掛けてもう一回生きようと思い直す話だろうなあと思いました。だって『旅行』ってことは帰ってくるもんね。これはちょっと正解。そういう話もあります。
    他に意外とほのぼのした話もあります。「初盆の客」。
    「遺言」は苦笑いかな。
    表紙がちょっと気持ち悪いので、
    そういう話がメインかなあと思っていたので、意外でした。
    でも、重たい話もあります。ホラーとか、説明のつかない出来事もあるし。7個のストーリーの全部が印象が違っていて、一つのテーマで、こんなにいろんな話が書けるのかと三浦さんすごいなと思いました。
    「SINK」が一番余韻が残る気がします。

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天国旅行の作品紹介

そこへ行けば、救われるのか。富士の樹海に現れた男の導き、死んだ彼女と暮らす若者の迷い、命懸けで結ばれた相手への遺言、前世を信じる女の黒い夢、一家心中で生き残った男の記憶…光と望みを探る七つの傑作短篇。

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