警官の条件

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (546ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104555086

作品紹介・あらすじ

都内の麻薬取引ルートに、正体不明の勢力が参入している-。裏社会の変化に後手に回った警視庁では、若きエース安城和也警部も、潜入捜査中の刑事が殺されるという失態の責任を問われていた。折しも三顧の礼をもって復職が決まったのは、九年前、悪徳警官の汚名を着せられ組織から去った加賀谷仁。復期早々、マニュアル化された捜査を嘲笑うかのように、単独行で成果を上げるかつての上司に対して和也の焦りは募ってゆくが…。

感想・レビュー・書評

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  • 「警官の血」の続編。
    ただし、親子三代にわたる警官の物語だった前作とはスケールは違い、三代目の部分の続きです。

    安城和也は、祖父も父も警官だった。
    暴力団との癒着を疑われた加賀谷警部の素行を内偵するために、その下につかされ、上司を裏切って告発することになったのが、前作の終わり。

    覚醒剤を使っていると睨んだ摘発だったが、捜査のために覚醒剤を持っていた加賀谷も、一緒にいた女性も、覚醒剤を使ってはいなかった。
    恋人をとられたための自分の偏見だったかと驚く和也。
    スキャンダルが大きくなるのを畏れた幹部は、加賀谷仁の依願退職を許し、その後に逮捕という挙に出る。

    騙された加賀谷だが、1年半拘置所にいる間、詳しいいきさつを何も喋らず、無罪となる。
    隠退して三浦半島の釣船宿の親父となるが、その名前は伝説になっていった。

    この間に、和也は警部に昇進。
    叔父には、殉職した父親は和也が警官になったことを喜ばないだろうと非難される。潜入捜査のために神経を病んで暴力をふるうようになった父が自殺のように死んだことは覚えていたが、叔父の言う面だけではないだろうとも思う。
    子どもの頃住んでいた谷中にあるマンションに引っ越した和也。そこは祖母が元々住んでいた所だと驚かれる。

    加賀谷の築いた人脈は全く役に立たなくなり、情報を得るのも人間同士の信頼だったのだと、和也らは痛感させられることに。
    組織犯罪対策部では、成果が上がらないことを苦慮していた。
    警察内部の縄張り争いも悪い方へ作用し、潜入捜査した警官が殉職する事件が起きた。ついに加賀谷の復職が求められる。
    加賀谷は「一人前にしておくべきだった」と言ったという。潜入していた警官のことだろうと思う和也。

    麻薬密売ルートの動きに、これまでとは違う現象が起きていた。
    難しい捜査のために加賀谷を頼りながらも、彼の動向は完全に信頼されてはいない。
    中堅どころのボス江藤のビルに招待されている様子を見かけた和也も、やはり取り込まれたと思う。
    男が立てこもる事件が起き、男が加賀谷を名指ししたために、人質の代わりとなる加賀谷。犯人は別れた妻子に遺したいことを加賀谷に頼んだのだった。

    和也らは警官殺しを追ううちに、加賀谷の単独行動を怪しみ、その言動を誤解してしまう。
    理解したときには…

    加賀谷警部がカッコよすぎます!
    その点では☆5つ。
    和也も誤解が解けたのは良かったけど…それなりに頑張ろうとしてはいても、敵役というかほとんど引き立て役だったんで~今後どう成長するのか? 人間、急には変わらないし~とあまり先を期待出来ない気分になるので☆4つ。
    実際にあった有名な事件が途中で取りざたされ、年月を感じさせます。
    いろいろな警官がいるものだとは、納得。

  •  『警官の血』続編である。最近、「警官」という文字のついた作品が目立つ佐々木譲であるが、そもそも警察小説の書き手ではない。本来が冒険小説のリーグの若き旗手としてあまりに多くの実績を残した作家である。『エトロフ発緊急電』が当時冒険小説界にもたらした疾風の強さを覚えている人は決して少なくないはずである。日本版『針の眼』と言えるあのエスピオナージュは、今後も永遠の金字塔となるに違いない。


     さてその冒険小説作家が昨今凝っている分野が警察小説である。筆頭は『笑う警官』(『歌う警官』改題)に始まる道警シリーズだが、あちらがテンポのある活劇主体のシリーズであるのに対し、この『警官の血』『警官の条件』のシリーズは、日本の歴史にどっしりと根を下ろした太河小説である。とりわけ前作は父子三代に渡る警官の生き様が、昭和史をなぞる格好で語られる力作として、読書界の話題をひっさらった観がある。


     さて、そのシリーズ、もしくはサーガと呼んだ方がよさそうな安城家の系譜に基づいてページを開いたものの、これはそうした昭和史というところよりも、警官が内部に向かって存在を問うような、むしろ人間哲学のような小説となっている。それ以上に、ミステリとしての読みどころが多く、前作に比べ、はるかにエンターテインメント性が強くなっており、ある意味裏切られ、ある意味楽しめる内容となっている。


     とりわけ若きエリートである主人公の安城和也と対照的な位置に立ち位置を構える一匹狼加賀谷仁という老刑事の存在が浮き立つ。殉職した和也の父とかぶせて、刑事の世代といったところに踏み込み、その世代差のギャップを、ここぞとばかりに楽しんでもらえる構成になっているのだ。


     道警シリーズも楽しく浮き浮きするチーム小説であるのだが、本シリーズは、とりわけ力の入った大作イメージを持ったまま、重たく、おそらく作者にとっても重要な金字塔的要素を強く持っているように思う。昨年の評価も高かった本書は、確かなシリーズ小説として、今後もぜひ書き継がれてゆくことを望みたい。

  • なんか切なかったなあ…何故、加賀谷が復帰したのか、わりと最初の段階で分かっちゃったから、全部の行動が切なく感じて……。
    おもしろかったです。

  • え、これで終わるの?って思ってしまった。
    警察とか悪い集まりとか、本当にこんな世界なのかな、怖いなぁと思いながら読みました。

  • ふむ

  • 1

  • 警官の血の続編。真の主役は加賀谷警部。

  • 「警官の血」の三代目、安城和也が主人公。

  • 前作『警官の血』は、親子三代に渡る大河ドラマのような内容であった。
    だが、今作は普通の警察小説に成り下がってしまったような物語。
    本作を読んでヤクザが全面に出てくる警察小説が苦手だということに気がついた。

  • 警官の血の続編ということで読んでみた

    安城和也、加賀谷仁のそれぞれの立場、やり方を通して
    事件が描かれていくが、結末が良かった。

    はたからみると「悪徳」警官だった加賀谷
    実際は、職務に忠実な警官で、安城と変わらない気持ちを
    持っていたことがわかり、少し切ない

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著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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