犬の掟

著者 :
  • 新潮社
3.17
  • (3)
  • (45)
  • (50)
  • (16)
  • (7)
本棚登録 : 300
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104555109

作品紹介・あらすじ

迷わず撃て。お前が警官ならば――。緊迫の四十時間を描く王道の警察小説。東京湾岸で射殺体が発見された。蒲田署の刑事は事件を追い、捜査一課の同期刑事には内偵の密命が下される。所轄署より先に犯人を突き止めよ――。浮かび上がる幾つもの不審死、半グレグループの暗躍、公安の影。二組の捜査が交錯し、刑事の嗅覚が死角に潜む犯人をあぶり出していく……。比類なき疾走感で描ききる本格捜査小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 蒲田署内で起きた暴力団員の殺人事件を軸に、所轄の刑事と、過去の事件と繋がりがあると疑う捜査一課の刑事の目線が交互に描かれる。目線の切り替わりが早く、少し読みにくい感じがしたが、事件の複雑性や、犯人の意外性などは非常に読んでいて重厚に感じた。

  • 二組の刑事コンビが、別々の角度から一つの事件を追いかける。



    徐々に集束してはいくのだが、

    物語開始からしばらくはバラバラ感が気になる。



    謎の輪郭がボンヤリし、どこを目指しているのか、

    きょろきょろ、ウロウロしてしまった。



    二組の刑事コンビが同じ事件の捜査に当たるのだが、

    結末近くまで、その二組が相まみえることはない。

    そのため、なかなか、真相のシッポさえ見つからない。



    だが、ワタシたちは、中盤からひょっとしたら、ひょっとしたら、

    という薄ぼんやりした疑いにひっぱられて、結末まで

    持っていかれる。



    謎の解明や事件の決着にスッキリ感はないのだが、

    人の死は、肉体的な死ばかりではないという事実が重い。



    暴力団幹部の深沢が車の中で、手錠をかけられたままの

    射殺体で発見される。



    その捜査で、所轄の門司、波多野の二人の刑事が再会する。



    警視庁捜査一課のもう一組のコンビ、松本と綿引は、

    二年前に起きた変死事件との類似性から、独自の捜査が命じられる。



    実は、門司、波多野、松本は、七年前に発生した

    事件の現場を共有していた…。

  • *東京湾岸で射殺体が発見された。蒲田署の刑事は事件を追い、捜査一課の同期刑事には内偵の密命が下される。所轄署より先に犯人を突き止めよ――。浮かび上がる幾つもの不審死、半グレグループの暗躍、公安の影。二組の捜査が交錯し、刑事の嗅覚が死角に潜む犯人をあぶり出していく……。比類なき疾走感で描ききる本格捜査小説*

    二つのチームの捜査が交互に描かれるため飽きることなく、それぞれの展開が気になってぐいぐい引き込まれます。が、終盤の真犯人が判明するくだりが唐突過ぎて、え、何か重要事項読み飛ばしてた??と慌てて読み返したほど。動機も何か腑に落ちず、ストーリーとしては読みごたえはありましたが、やや残念な読後感でした。

  •  作者得意の警察小説、かつノンシリーズ作品。最近は道警シリーズも少し軽めの作品が多くなり、シリーズとしての魅力も、作中人物の間でさしたる軋轢もないままに薄れつつある中、ここのところ『地層捜査』以来の快作が途切れている印象があったが、本書は久々の作者真骨頂での娯楽小説ぶりを発揮してくれた感があり、少しほっとする。

     最初に時計を巻き戻した時制での少々刺激的なプロローグシーンがあり、それがとても重大なのだろうと、とても気になりながら、その後現在時制に追いついての通常の刑事捜査小説といった構成となる。ただ事件を捜査する二組の刑事たちが、あのプロローグに繋がる関係者たちであることだけが、気になる。

     少なくとも彼ら二組、四人の刑事たちの捜査シーンにより、二つの捜査が交互に描写される。ハードボイルドを絵に描いたような、素っ気なく、淡々とした描写であり、そこで少しずつながら事件が進展してゆくことがわかる。追うものと追われるものとの追いかけっこや、事件にかかわる者たちとの事情聴取、地どり、勘どりといった作者の真骨頂が続くなか、『地層捜査』シリーズの空気に似たもの、つまり捜査そのものが真実に近づいてゆく面白さというものを感じ続ける。

     これらは古い時代よりエド・マクベインの87分署シリーズなどでお馴染みの面白さであり、その後も多くの警察小説の書き手は捜査イコール、エンターテインメント性といった形で作品を提供している。

     しかし二組の捜査チームのうち一組は、秘密捜査であり、警察内部の捜査チームである。そこに通常の警察小説との違いがあり、ストーリーにはひねりが加えられる。疑いたくもない同僚を仮想真犯人として追い立てる刑事班の二人はだからこそデリケートな存在だ。

     そしてすべてが終盤で炸裂する。用意された伏線がここに来て意味を強め、二組の捜査チームは火のついた二本の導火線となり、大団円の大花火を奇しくも演出することになる。刑事たちも読者たちも騙されるこの一瞬の娯楽性こそに喝采しておきたい作品である。

  • 別々と思われた殺人事件が徐々に繋がり、真相に繋がっていく。
    2つのチームが別の方向から少しずつ確信に近づいていく様は、ミステリーの醍醐味を味わわせてくれる。
    久しぶりのミステリー、佐々木譲で間違いなかった。

  • 高級車内で射殺死体が発見され、波多野と門司が捜査を開始するが、松本と綿引は管理官から警察官が絡む連続殺人に関して内密調査を依頼される.それぞれの組が膨大な人から多くの情報を集めて捜査を進展させる過程が楽しめた.冒頭で波多野と松本の関係が記載されていることの意味に違和感を持っていたが、最終場面での彼らの会話でその思いは氷解した.蒲田周辺の輩の行動とそれを探る刑事たちのやりとりも面白かった.いくつかの死体にあったスタンガンでの傷を注目した解剖医の視点が解決を導いた鍵だと感じた.面白かった.

  • んー、微妙。中盤で2組の刑事たちが真相に迫ってくところはなかなか盛り上がったけど、ラストへの流れが唐突だし動機もイマイチわかんねえ。この同期の2人に最後手繋がせてゲイっぽい感情の交流を仄めかすのもよくわかんねえ。相棒の刑事をあそこまで描写しといてあっさり殺すのも好きじゃない。結末が予想できなかったらそれは面白いというわけではない好例かな…

  • ドンデン返し、してやられた!

    一つの事件を、2つの別の捜査チームが負う。それぞれのチーム(バディ)の若手の方目線で話が進んでいく。警察組織の影の部分、やくざと半グレの共生と抗争、裏の事件談組織、生活安全課のモテ女…一つの事件の様々な面が重なりタペストリーのごとく模様が浮かび出す。

    ところが…のオチ、意外性はかなりある(俺比)んだが、せっかくのタペストリーとは違う模様に見えるんだが…。この犯人説はこれでありやと思うが、ミスリードに持って行く方向が何か違うように思えたのがちょっと残念。

    佐々木譲の小説は余韻を楽しむ小説、という自説を持っているが、この作品の余韻は少々苦い雑味を含んでると感じた。

  • 伏線が絡みに絡み、最後に至る。
    なかなか、この結末は想像できなかった。

  • 序盤からの登場人物の中に犯人がいる場合、犯人の心情や一人での行動を描くと直ぐに犯人が分かってしまうか、又は辻褄が合わなくなるため、一人での行動や心境が描かれない人物=犯人臭い、というパターンがある。正にそんな作品。400ページ読んだ成果がラスト50ページで結実するけど、切ない最後。スッキリはしない。

  • 最初、二つに分かれてストーリーが展開しているのだかその区別がつかず混乱していた。
    後半に入って面白くなり始め、おや?と思ったあたりからグイグイ引き込まれる。思いもかけない展開にページが進んだ。
    一緒に動いてた人を殺害してしまったのはどうにもやりきれない…

  • 面白かった。
    気になることをひとつひとつ、丹念につぶしていく地道な捜査。
    徐々に綻びが出てしまう犯人。
    街の描写がリアリティを増す。
    少しずつ真相が明らかになり、加速度的に物語が展開していく。
    男の世界。面白かった。

  • これだけのページ数があるなら、捜査より、同期二人の人物の掘り下げをして欲しかった。犯人の意外性を立たせるためにあえてそうしなかったのだと思うが、真犯人が分かっても「へ?」とポカーンとなってしまった。七年前の事件によって心が死んでしまったというのは何となく理解できるし、最後のシーンは良かったので、勿体なかったな。

  • ちょっと、はっきり言って途中挫折しそうになった。なんとか最後まで読み終えたけれど・・。最後にもう一山あるのかな?思ったがそれもなくて、あまりにも後味悪く終わってしまったのはちょっと解せなかった。
    しかも、犯人も動機もどうも納得させられるものでもなかったし・・。途中であまりにもダラダラしてたので、読む気がうせてしまいそうになった。もう少し、納得させる動機と盛り上がりがあれば面白いと思うのだけれど・・。500ページ近くあるのにもう少し何か引きつけるものが欲しかった。ちょっと辛口だけどタイトルも、もう一つでした。

  • やくざの殺人事件から過去の事件のつながりと真犯人を解く警察ミステリー小説。

    作者らしい純粋な警察小説と思いましたが、後半急展開する真相には気づきませんでした。
    警視庁捜査一課と所轄にそれぞれ配属された同期が先輩刑事と組んでそれぞれのミッションとアプローチで真相に近づいていくところは、地道に展開していて骨太系かと思いました。
    真犯人の動機が弱いのが残念ですが、ラストは哀しいです。

  • 佐々木譲さんの作品にハズレは少ないのだが、これはちょっと。刑事2人の組合せが2組いて、どっちがどっちだかわからなくなる。せめて章を変えるとかしてくれないと混乱して読み難い。

  • 160714図

  • 7

  • 2つの事件を別々の刑事たちが追い、少しずつ、時にはすれ違いながらも収束に向かっていきます。
    最初の伏線が、最後には見事に取り込まれていきます。
    それぞれの刑事の人間性、警察官の苦悩もよく描かれています。
    相変わらず読み応えがあり、重厚な出来上がりです。

  • タイトルの付け方が秀逸だと思う。


    暴力団員が殺害されたことから、暴力団同士の抗争かと思われたが、意外なところからの繋がりが見つかり、犯人も、、、

    途中で明らかに怪しい人物描写になり、犯人はやはりといったところ。

    中弛み感があったがラストは面白かった。

全41件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐々木譲の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×