ヘダップ!

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104568024

作品紹介・あらすじ

こんなはずじゃなかったのに――。顔をあげろ、勇! 人生もゲームも、逃げたら、負けだ! 桐山勇、18歳。かなりの天狗。J1所属のチームに入団が内定していたが、〝ある噂〞により取り消される。仕方なくこの春から、JFLの武山FCへ腰掛けのつもりで入ることになった。父と姉を残し向かった新天地で、天狗の鼻はぽきりと折れる――。汗と涙と泥にまみれ成長する勇を、好きにならずにいられない。ザ・青春小説金字塔!

感想・レビュー・書評

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  • 幼少時よりFWをして活躍してきた桐山は、高校時代にJ1のチームに内定をもらうも、ある事情により取消しとなる。やむを得ずJFL所属の武山FCに入団するが、そこで与えられたポジションはボランチだった。慣れないポジション、選手間の軋轢、サポーターとのいざこざの中、シーズン優勝を目指しレギュラーとして戦い続けると・・・
    サッカー好きであれば楽しめる一冊。サポーターとの関係は興味深かった。この先の成長が見てみたいが、続編は?

  • 「なんで皆さんは、俺が間違ったことをやってるのを見た時、そういう細かい事情を教えてくれないんですか?」
     咲田は一瞬、驚いたような表情を見せた。だがすぐに真顔に戻り、勇を改めて上から下まで見て、腰に手を置いた姿勢で「ふぅん」と鼻から息を吐いた。
    「それは、君の方から訊かないからでしょう」
     言うべきか否か悩んでいるような少しの沈黙を挟み、咲田は「あのね」と言った。
    「みんな君のこと褒めてるけど、同時にこうも言ってるの。〝極端に質問が少ないんだよなぁ〟って。私もそう思う」
    「そう、ですか」
    「ここは学校じゃないの。たいていの人は自分の仕事で手一杯だし、君がなにを分かっててなにを分かってないかなんて、知ったこっちゃない。だから、自分で訊かなきゃ。分かる?」
    「はぁ……」
    「自分で判断を下す前に、ただ一言〝こうしますけどいいですか?〟って確認をとって欲しいの。そうでなければ〝これはどうしたらいいですか?〟ね。分かる? 自分で判断できないことや、分からないことは、周りの人に尋ねればいいの」

  • サッカー小説ということしか知らなかったけれど、これは面白かった。

    高校を卒業して家を離れ、JFL所属のクラブチームでプレーをすることになった桐山勇。
    プロ契約ではないので、生活の糧はスーパーで働くことによって得ることになる。

    J1やJ2のチームと違って、J3やJFLのチームはプロとアマの選手が半々…というより、アマチュアの方が多い。それはフットサルのチームでもなでしこリーグでも、そう。
    だけど、彼ら選手の生活ってあまりよく知られていない。

    地元の少年団と、強豪校ではない地元の中高のサッカー部での経験しか持たない勇は、ひとりよがりなプレーをみんなから批判される。
    だけどしょうがないじゃないか。
    こんな環境でプレーしてたから、勇の意図するサッカーに合わせられるチームメイトがいなかったのだから。

    でも、勇が有名クラブのユースに入らなかったことも、ひとりよがりと言われるほどに自分に厳しくプレーすることも、実はちゃんと理由があった。

    素直になれない家族との関係、希薄な高校サッカー部メンバーとの付き合い、J1チームの内定が取り消された事情など、勇が故郷においてきたいくつもの謎が徐々に明かされて行き、社会人としてサッカー選手の矜持を持つ先輩や職場の人々と触れ合うにつれて成長していく勇の姿が実にすがすがしい。

    ヘダップ=Heads Up
    頭をあげて、周りを見て、前へ進め。

    〝なにかから立ち直るということは、すべてを忘れたり、なかったことにすることではない。すべてを受け入れ、それでも前へ進むことだ。(中略)頭を上げて。”

    勇が10歳の時に起きた、起こした出来事。
    それが今の勇を作る始まりだったのかもしれない。
    それを否定することはできないし、出来事をなかったことにすることももちろんできないけれど。
    それでも、勇の母はきっとこう思ったはず。

    ハットトリックなんてどうでもいいこと。
    勇が仲間とみんなで楽しく、一生懸命プレーをしていれば、そんな様子を見ることができれば、お母さんはそれだけで充分に嬉しいし、勇のことを誇らしく感じることができる。
    もう、苦しまなくてもいい。

    勇が捕らわれていた過去が解き明かされるにつれて、ひとりで気を張ってきた勇が健気で健気で、ちょっと泣いてしまった。
    そういう小説ではないはずなんだけれど。

  • 桐山勇、18歳。
    かなりの天狗。
    J1のチームに加入が内定していたが、「ある噂」のために、突然の取消。
    仕方なく、JFL所属の武山FCへ、腰掛けのつもりで入ることにした。
    父と姉を残し、向かった新天地、そこで天狗の鼻はぽきりと折れる。

  • サッカー。社会人。
    『波』2016.12にて。

  • サッカー選手の裾野は広い、改めて日本代表のすごさを感じる、みんなあまり好き勝手に批判しないように。

  • これはサッカー好きに読んでほしい一冊!

  • サッカーの話。

  • サッカーは全く分からない。ちゃんとやったことがないし、入れ込んで観戦した事もない。
    ポジションの名前すらうろ覚えで、どうなったらオフサイドになるんかとかすら不明瞭。だからサッカー小説としての出来は分からない。

    ただ、一つのボールを追いかけることについてこんなにも熱くなれて、こんなにもクレバーになれて、こんなにも感動できるってことが凄い。野球だったら独立リーグ、陸上だったら草レース…色んな競技のトップリーグ以外のところでも、必死に取り組むプレイヤーがいる。その輝きは十分小説足りえるんだということだと思う。(勿論、三羽さんの筆力があるからこその部分も大いにある)

    トッププロじゃない競技者の物語ってジャンルは、かなり面白い。こんな俺だって下手でも面白いスポーツに取り組めば物語があるかもなぁと思える身近さが良い。
    明日もジョギングしようか、クライミングジムへ行こうか…とモチベーションも高めてくれるしなぁ。

  •  北上次郎氏は、高評価だった。たしかに楽しんだけれど。

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著者プロフィール

1968年岡山県生まれ。2002年、第8回小説新潮長篇新人賞を受賞した『太陽がイッパイいっぱい』でデビュー。06年『厭世フレーバー』で第27回吉川英治文学新人賞候補、09年『太陽がイッパイいっぱい』で第5回酒飲み書店員大賞受賞。12年『Junk 毒にもなれない裏通りの小悪党』で第33回吉川英治文学新人賞候補。『ニート・ニート・ニート』は18年に映画化された。他の著書に『イレギュラー』『タチコギ』『Y.M.G.A 暴動有資格者』『路地裏ビルヂング』『ヘダップ』『俺達の日常にはバッセンが足りない』などがある。

「2021年 『共犯者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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